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南極の極限環境下の湖で、未知の生態系が発見される

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(著) (編集)

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Photo by:iStock
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 氷に閉ざされた南極の湖で、未知の生態系が発見されたそうだ。謎を意味する「エニグマ」と呼ばれるその湖は、これまで完全に凍りついた湖だと考えられてきた。

 ところが、その氷の下に液体の水の層があり、生物を育んでいたのである。

 大気から隔離された極限環境は、木星や土星の衛星にも似た場所だという。それゆえにそこで発見された生態系は、地球外生命探しのヒントになると考えられている。

エニグマ湖の氷の下に液体の水があった!

 エニグマ湖は南極東部のヴィクトリアランドにある栄養に乏しい湖だ。エニグマ(謎)と呼ばれるのは、その中央に謎めいた円錐状の破片があるからだ。

 これまでこの湖は水面から湖底まで完全に凍っていると考えられていた。

 ところが、イタリア学術会議のチームが地中レーダーでその下を調べてみたところ、氷の下に少なくとも深さ12mの水が液体のまま存在していることが判明した。

 研究チームは、氷を掘削し、カメラを送り込んで謎の湖の深奥を覗き込んでみることにした。

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エニグマ湖の深さ22.2mの底 Smedile et al., Communications Earth & Environment, 2024

 まず問題となったのは、その水の出所だ。

 この地域は雨があまり降らず、風が強いうえに、太陽による蒸発も激しい。だから、どこかに水源がなけば、エニグマ湖は干涸びてしまっているはずなのだ。

 湖水に含まれる塩類の化学組成の分析からは、おそらくは未知の地下水路がつながっており、そこを通じて近くのアモルファス氷河から流れ込んでいるのだろうと推測された。

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エニグマ湖への融解水の流入は、アモルファス氷河から来ているようだ Smedile et al., Communications Earth & Environment, 2024

氷の下で大気から隔離された生態系を発見

 氷に閉ざされたエニグマ湖の水は、大気から完全に切り離されている。驚いたことに、そんなところでも微生物が発見されている。

 面白いことに、そうした微生物たちはマットのような塊(微生物マット)となって生息していた。

 しかも、その多くは光合成をしており、おかげで湖水は非常に酸素濃度が高い。

 一部の微生物マットは、薄くとげのある被膜のように湖底をおおっていた。「しわくちゃの厚い絨毯」のようなものや、高さ40cm、直径50~60cmの木のような形のものもあった。

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「エニグマ湖」の水深9mの湖底をおおう微生物マット Smedile et al., Communications Earth & Environment, 2024

 湖底の住民の中で研究チームが特に注目したのは、「CPR細菌群」の仲間だ。

 これは自分より大きな宿主細胞に付着して生きる小さな単細胞生物で、その寄生の形態は、両者にとってメリットがある互恵的なものもあれば、一方的な捕食関係であることもある。

 この細菌の仲間が氷でおおわれた湖で発見された前例はない。

 CPR細菌群は一般に酸素濃度が高いところでは繁栄しないため、エニグマ湖の種はそこで生きることを可能にする特殊な代謝能力を進化させたと推測されている。

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光合成を行う微生物が集まる微生物マットの表層を共焦点レーザー走査顕微鏡で観察した画像に色を加えて加工したもの Smedile et al., Communications Earth & Environment, 2024

 研究チームによれば、「これまで知られていなかった共生・捕食的な生活様式に表されるように、南極の氷に永遠に閉ざされた湖における食物網の複雑さと多様性」を浮き彫りにしているとのことだ。

 なお、エニグマ湖のような環境は、木星の衛星エウロパや土星の衛星エンケラドゥスにもあるという。

 ゆえに南極の湖で見つかったユニークかつ極限環境の生態系は、地球以外の生命を探すヒントになると考えられるそうだ。

 この研究は『Communications Earth and Environment』(2024年12月3日付)に掲載された。

References: Scientists peered into a secret Antarctic lake hidden beneath the ice — and uncovered a never-before-seen ecosystem | Live Science / Mysterious Frozen Lake Is a Time Capsule From Millions of Years Ago : ScienceAlert

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この記事へのコメント 11件

コメントを書く

  1. 見てるだけで寒くなる
    絶対この生き物たちにはなりたくない

    • +1
  2. 某御大が宇宙に出るより地球をもっと調べろって言ってたなぁ

    • +1
  3. これは素晴らしい寂具合だね、極限状態で且つ対流もなければ
    転がることも浮くこともなくただ沈むままに
    そしてついに繊維の集まりとなって絨毯になり皺と突起の地形と化してしまうんだねw

    • +3
  4. >エニグマ湖は南極東部のヴィクトリアランドにある

    南極の東部、ってイメージしにくいな
    東半球部分が東部ということになるのか。

    • +3
  5. 細菌の世界ってほんとに逞しいなぁ
    エウロパの探査も将来進むのかなぁ

    • +2
  6.  氷の厚さがわからないから水圧がわからないけど、光合成ができる程度には光が届くようだからそう厚くはないのでしょうね。 それに南極だからおそらく淡水かかなり塩分濃度が低そうという予想から水の温度もそれほど低くなくて 0 ℃くらいと考えると南極の中では比較的暖かいともいえそう。 微生物マットを採取しているだろうからどんな生物がいるのか興味深く思います。

    • +1
  7. こういう特殊な閉鎖系の生態系は脆いから、調査で無茶しないといいけどね

    • +1
  8. 地球外にもこんな生態系があるかもしれないと考えると、すげーわくわくする
     
    子供の頃には想像すらしなかったよ

    • 評価
  9. 氷は保温効果があるから
    氷河とか、僅かな地熱で少しず~つ溶けて行くそうな

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