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種の垣根を越えて移動する遺伝子があるという説が、進化の常識に一石を投じる(オーストラリア研究)

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(著) (編集)

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 あなたは遺伝子をどこから手に入れただろうか?

 明確な答えは両親だ。卵子と精子の結合が、あなたを作る遺伝子のユニークな組み合わせをもたらした。

 だが、最新の研究はこの常識に一石を投じる。人体に存在する遺伝物質のかなりの部分が、かつて他の種から飛び込んできたものだというのだ。

 これはカモノハシからヒトまで、動物の進化の重要な推進力なのかもしれない。

DNAの水平移動という説

 『Genome Biology』に研究論文を掲載したオーストラリア・アデレード大学ポスドク課程のアトマ・イヴァンチェビッチ氏によれば、相当な量のDNAが水平移動するという説は、ヒトや動物の由来の理解を変えてしまう可能性があるという。

 最初から解説しよう。まず、跳躍する遺伝子は本当の遺伝子ではない。それは遺伝子の間にある非コード遺伝物質である転移遺伝因子だ。

 人間にはこれが大量にあるが(ゲノムの半分以上が、転移因子で構成される)、その役割の多くは謎とされている。「その1つの役割が、できる限り自己を複製することのようです」とイヴァンチェビッチ氏は話す。

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転移因子BovB(Bovine-B)とL1

 彼女のスーパーバイザーで、研究論文の共著者でもあるデビッド・アデルソン氏は以前、BovB(Bovine-B)という転移因子が、サイ、トカゲ、カモノハシといった異なる種の間を飛び跳ねていることを発見していた。

 これを詳しく調べるために、すでにゲノム解析が完了している759種の動植物や菌類を対象に、BovBとやはり転移因子であるL1があるかどうか探してみた。

 BovBが異種間を移動できることはあらかじめ分かっていたので、まずこちらの追跡を始めた。その結果、一部のBovBが少なくとも2度はカエルとコウモリの間を転移していたことが判明した。

 またイヴァンチェビッチ氏によれば、ヘビ由来のBovBがウシとヒツジのゲノムの25パーセント以上を構成していたという。

 さらにヒトゲノムの約17パーセントを構成し、BovBよりもおそらくずっと古いL1を追跡した結果、これもまた水平移動するらしいことが初めて確認された。

 こちらは数多くの動植物種に存在し、今回調査した哺乳類の中ではカモノハシとハリモグラ(単孔類。現存する哺乳類として唯一卵を産むグループ)を除く、すべてで確認された。

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 この結果から、この転移因子は単孔類には存在しない可能性が高く、1億6000万年から1億9100万年前のどこかの時点で共通の祖先に転移したと結論づけられた。

転移因子は寄生虫などを媒介して様々な生物のDNAに侵入した可能性

 イヴァンチェビッチ氏には、そのメカニズムに関する仮説もある。

 決定的なのは、BovBがトコジラミやヒルのような害虫、L1が環節動物やカキのような水棲寄生虫にも発見されたことだ。

 このことから、転移因子は寄生虫あるいはノミや蚊のような吸血生物を媒介して様々な生物のDNAに侵入したのではと推測されている。

 コウモリもまた役割を果たしている可能性がある。

 転移因子は多くのオオコウモリ種で機能しておらず、それはその餌となる昆虫のために水平的な遺伝子伝達が特に起こりやすいことが原因かもしれない。

 つまり、コウモリは自分の体内にあるこれらの因子を抑制する能力を発達させたように思われるのである。そして、同時に、それを他の種に伝達する宿主として振舞っている。

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転移因子のメリットとデメリット

 こうした転移因子のすべてが本質的に悪いわけではない。

 イヴァンチェビッチ氏は、L1がガンや統合失調症のような神経疾患と関連している可能性がある一方で、他の転移因子が胎盤の形成や免疫系を助けている可能性も指摘する。

 彼女は「それが偶然にもメリットとデメリットの両方の作用を発揮していることを示す証拠があります」と説明しつつ、人間のL1もまた機能していないことを付け加えた。

 「まるでゲノムはそれを利用しようとしているか、その機能を黙らせているかのようです」

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遺伝子の平行移動

 英プリマス大学のキアラ・ボスケッティ氏(今回の研究には参加してない)によると、こうした研究は、これまで”がらくた”と考えられてきた因子も、遺伝子の機能や制御に関連する重要な役割を果たしている可能性があることを示しているという。

 いくつかの事例では、これがDNAの分離や複製、さらには染色体の機能にまで影響を与えている可能性すら窺えるようだ。

 細菌の間では遺伝物質が水平的に移動することはかねてから知られていた。

 これは細菌が抗生物質への耐性を素早く身につけられる理由でもある。しかしもっと複雑な生物でもこれを行なっていることが判明した現在、この知見はますます重要なものとなるだろう。

 このメカニズムがあらゆる生命にランダムでダイナミックな因子を与えているのだ。

References:genomebiology / pnas/ written by hiroching / edited by parumo

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この記事へのコメント 57件

コメントを書く

  1. 持病の状態で見てみるとなぜかペルシャ猫や血縁まで
    さかのぼることができる
    サルはともかく猫の遺伝子って何じゃい。猫耳なんて
    生えちゃいねえぞw

    • +4
    1. ※3
      はいはい。人間がネコの事を好む人が多いのも、『ネコの事を好むのじゃ~!好むのじゃ~!』という内容が描き込まれたネコ由来の DNA を NNN が人間向けに拡散させ続けている結果なのかもよ?

      • +6
  2. 動物の目のロドプシン遺伝子は植物プランクトン由来だと言うしね.
    プラスミドなんかも核外DNAを伝染させる事が出来るそうだし,
    遺伝子が異種生物間で紛れ込むような事は例外的だけど
    珍しくはない現象なんでしょうね.

    • +10
  3. まあ、DNA って極論すると、記述用のプログラム言語だと個人的には理解している。だから他の種族でも問題なく動作する条件さえ満たせば、キチンと動作させられるんじゃないの?後の問題は『異なった種族間で、どうやって DNA が移動しているのか?』だけだと思うけれどね。

    • +11
    1. ※5
      異なった種族間での移動…
      蚊が運んでいるとか?

      • 評価
  4. え、なんなのこれは
    とりあえずみんな昆虫食はやめて?

    • -8
    1. ※6
      そんな事を言うと、じゃあ植物はどうする?て事にならない?
      生で食べる事さえ有るんだけど?

      • 評価
      1. ※11
        >餌となる昆虫のために水平的な遺伝子伝達が特に起こりやすい
        植物の話はしてない。それより鳥も食いたくなくなってきた

        • -1
        1. ※35
          ふむ、言っていないから何?『相手が言及していないのだから、そんな事は起こるはずがない』と考える方が私にとっては不自然だけどね。もし昆虫を食して DNA の平行移動が発生するのであれば、程度の差こそ有れ植物を食しても同様の事が起こるのでは?と私は普通に思ったよ。

          でもまあ、余り心配する事でもないかな?と思うのが自然だと思うよ?(だって大昔から昆虫も植物も良く食されていたと思うからね)もし心配であれば、ちょっと加熱すれば DNA なんて分解されてしまうと思うし。

          • 評価
          1. ※39
            植物自体に無くても「レタスに付いてるナメクジ跡に付着した虫」とか「横を通ったイノシシに付いてた何か」とか考え出すとキリがないからな。そもそも「おそらくオオコウモリの場合は昆虫・・・」ってだけの仮説段階だ。ぶっちゃけ原因はキノコでしたと言われても納得しちゃうw。まあ現段階で防げる事は何もない(蚊取り線香とダニ退治くらいか)

            • +3
    2. ※6
      20XX年、世界を伝染病が襲い人類の9割が死滅した。ただ長野県と群馬県など一部の地域では被害が軽く。東京は壊滅だが長野県民と群馬の農村出身者のみ生き残った。原因はイナゴの佃煮である。有る種の抗体が出来ていたのだ。そして長野帝国と群馬共和国の長い戦いが始まった。——てな事が無いとは限らないので、ハッキリわかるまで昔の食文化は残しておいた方が良いよ。

      • +19
  5. ウイルスが媒介するっていう話もあったね

    • +15
    1. ※7
      ウィルス進化論
      これだとミッシングリンクも辻褄が合うし、素人考えだけど正しいと思う。

      • +3
  6. 他の動物から突如、飛び込んでくる遺伝子って受けとる側にとって遺伝子じゃ無いんじゃ・・・・・・全く分からん!

    • 評価
  7. ウイルスによる水平伝搬なんて普通にだいぶ前から生物系のとかに載ってる話では?

    • 評価
    1. ※9
      きちんと読むのだ。ウィルスでそれが起こるのは知られていたが、それ以外の高等生物もそれを行ってる可能性があるという記事やねんで

      • +9
  8. これ凄いな。
    食べたり感染したりした親が妊娠すると子供が変化するのか?
    それとも生きてる間に他の遺伝子を取り込む事が有るのか?
    もし完全解析出来たならヤバイ利用法が確立され・・・
    興味は尽きない。

    • +6
  9. 自然淘汰と突然変異が進化の鍵と言われるが後者は謎が多すぎる
    異種間で生まれた生物は生殖能力がないと言うし
    ウイルスや放射能による遺伝子の変異が原因とも聞いたことがあるが…
    しかし吸血生物を媒介してDNAの水平移動ってもう漫画の世界だな…

    • +2
  10. つまり俺でもスパイディになれる可能性があるってことか?
    鉄十字キラー始まったな

    • +1
  11. ちょっとよく分からんが
    ネコぉぉぉ!こっちに来い!!

    • +5
  12. 収斂進化なんかも、これで説明できるかもなー

    • 評価
  13. ワニみたいな頭部に見えるユカタンビワハゴロモという虫もこれで説明つくのかな

    • 評価
  14. ものすごーくレアな現象だろうから人間の人生のスケールで心配する必要はないよ
    ただ進化はこのレアな現象が何千万年分も積み重なった結果かもしれない

    • +8
  15. カモノハシってあんな躍動感ある動きするんだな

    • +1
  16. 少し前にカラパイアで蚊を絶滅させる方法について載せてたけど、もし蚊が進化に重要な影響を与えてたら色々まずい。
    人間は自分で自分を進化させることができる事ができるとはいえ、何らかの理由でその技術を失ったり、他の動物の進化が遅くなる可能性がある。
    環境変化への適応が遅くなれば大量絶滅を引き起こすわけで、それが人間に悪影響を及ぼしかねない。

    • +5
  17. カモノハシは見た目以上に、哺乳類・鳥類・爬虫類のDNAモザイクだったらしいからね。おそらく寄生性の生物による遺伝子水平伝播が高頻度で起きたのでしょう。水平伝播が良い方向に作用する確率を高める進化とかがあれば面白いけどね。

    • +4
  18. 水平遺伝って結構基礎中の基礎だと思ってたけど意外と最近まで認められてなかったんか

    • +1
  19. 神「あらっ、気が付いちゃった、基本的に設計図いっしょだからね、ミジンコもヒトも。」

    • +2
  20. 病原菌の多剤耐性が複数の病原菌で同時並行的に起きる現象について、ウイルス伝搬が言われていたが、ウイルスを媒介として水平展開されている可能性があるな。

    また、人間が進化する原因となった理由として、染色体が「倍体」になった話は時々されるが、それが人間だけでなくほぼ同時期に多種多様な種で同時並行水平的に起きたのは謎だったが、これもこの話で説明できるな(媒介原因は不明だが)、倍体化に失敗し種がならなくて球根で増えるヒガンバナの悲劇も何か関係がありそうだ。

    • +3
  21. 難しかったが異種姦が生物の多様性に貢献しているのはわかった

    • -4
  22. 動植物の特異体質、進化の一要因になりうるってことも言えるかな?
    無知故に的外れだったらすまんね

    • 評価
  23. ペロ~ンとカモノハシの口から出てるのは、舌? ミミズ?

    • +1
  24. レバサシ食ってる奴は牛の遺伝子を溜めこんでるかも。

    • 評価
  25. ウイルスが本来類縁関係にない生物間でDNAの運び屋として振る舞っているなんて話もそれこそだいぶ昔からあるわけだし、これも同様だから別に目新しい話題ではないように思われ。

    • +1
  26. ヒトの遺伝子に水平伝播が確認されたのって何年も前の話じゃなかったっけ?
    なんにせよ、ちょっとした遺伝子の変異が致命的になることはそんなにないし、怖がる必要はないんじゃないかな。

    • +2
  27. ソマチッドとかの動画をこの前見ていたけどそういうのも関係あるんだろうか
    よくわからないけど。

    • 評価
  28. ヒト・ゲノムを調べてたら、ウィルスが運んできたと思われる
    DNA片があちこちから出てきた、なんて話を聞いた事があります。

    • 評価
  29. 寄生虫が媒介するんだから経口で摂取しても寄生虫がいなければ問題ない。
    ましてや人間なんて何十億いてみんな自分が進化の過程を観察する前に死ぬんだから気にすることはない。

    • -1
  30. 親が蚊やコウモリを媒介として他の生物の遺伝情報を体内に注入されたとして、それがどうやって卵巣や精巣にたどり着くのだろう。生殖細胞が変異しなければ遺伝しないはず…。
    百歩譲って、タマタマを蚊に刺されることはあり得るとしても、体内深くに位置する卵巣は無理だよね?

    • 評価
    1. ※50
      何らかの段階で遺伝子の書き換えが行われてるんだろうね。AIDSみたいに何かに感染され病気の状態で性交すると母子にも感染する場合が有る。だが何も発症しない物は観測されないし、数十年後にガンにかかる可能性が増えた所で因果関係は証明されにくい。

      • +1
  31. そりゃ基本システムが同一の生物どうしが接触すれば、その構成要素が混じっちゃうこともあるよな。
    大概の場合は病気として発現して淘汰されるけど、まれに古傷のように子孫にまでのこっちゃうこともある。そして35億年もあれば、稀な古傷も積もりに積もる。
    そういうことか。

    • 評価
  32. 細胞と共生状態のミトコンドリアも、大腸菌の中にあるプラスミドもおんなじようなもん。ウイルスなんかはまさにそのものだよね。自分で増殖する力がないから寄生先の資源で自分のDNAを複製して増殖するんだし。

    • 評価
  33. 牛乳を飲みまくるんだがなにか影響あるかな?
    ちょっとわくわくしてきた……

    • 評価
  34. だって哺乳類が卵生から胎生を獲得したのもレトロウイルスとの戦いに拠る副産物なんだよね?

    これ人と豚の臓器が近い事や霊長類の中で人だけが特異な存在だとか
    も色々紐解けそう。

    牛と羊がヘビ由来のというのもなんか分からないでもない。
    特に羊やヤギは何故か瞳孔がヘビみたいじゃない?w

    • 評価
  35. ええ…これマジなの
    どっと複雑さが増すじゃん。知らなかったわ…遺伝子の水平伝播って
    一般的に知られてたんだね
    どれくらいの頻度でどのくらい影響あるんだろ
    こんなの追いかけたりましてやコントロールなんて絶対不可能だよね

    • 評価

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