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宇宙最大の謎「ダークマター」の痕跡か。検出器が奇妙な反応を検出

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(著)

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Image generated by dall·e OpenAI
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 宇宙の質量の大部分を占めるとされる、目に見えない暗黒物質「ダークマター」。

 何十年にもわたり物理学者が追い求めてきたその正体がついに判明するかもしれない。

 アメリカの地下深くにある世界最高感度のダークマター検出器が、通常の物質では説明できない粒子の反応をとらえたのだ。

 研究チームは数か月かけて原因を正体は依然不明なままだ。だが、これがダークマターであるとは言いきれないと、慎重な姿勢を見せている。

 この研究成果は日本で開催された『2026年 TeV粒子天体物理学国際会議』の科学トークで発表され、論文は『Physical Review Letters』に投稿される予定である。プレプリントはarXiv(2026年9月2日付)で公開されている

参考文献:

地下1.6kmに置かれたダークマター検出器

 ダークマター(暗黒物質)は、宇宙の質量の約85%を占めるとされながら、光を出さず目に見えないため、その正体は謎に包まれている。

 アメリカのサウスダコタ州にあるサンフォード地下研究施設(SURF)では、宇宙線などの余計な放射線の影響を受けにくい元金鉱山の地下約1.6kmに、「LUX-ZEPLIN(LZ)ダークマター検出器」を設置した。

 この検出器が待ち構えているのは、ダークマターの正体として最有力視されている「ウィンプ(WIMP)」と呼ばれる仮説上の粒子である。

 ウィンプは「弱く相互作用する大質量粒子」の頭文字を取った呼び名で、その名の通り、通常の物質とほとんど反応しない。

 私たちの体も地球も素通りしてしまうため、目に見えないだけでなく、捕まえることが極めて難しい。

 だがごくまれに、ウィンプが原子核に直接ぶつかることがあると考えられている。

 そこでLZ実験では、10トンの超高純度液体キセノンを満たしたタンクを用意した。

 キセノンの原子核が弾かれると、ごくわずかな光の閃光が生まれる。この一瞬の光を見逃さないための装置なのだ。

 ダークマターがウィンプという粒子でできているという考え方は、以前カラパイアで紹介した、ダークマターが惑星の内部にたまってブラックホールを作るという仮説でも前提になっている。

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UX-ZEPLIN(LZ)ダークマター検出器の本体、地下に設置される前に地上の実験室で撮影されたもの。Image credit: Matthew Kapust/Sanford Underground Research Facility

220日分のデータから見つかった1件の異常

 アメリカ・エネルギー省のローレンス・バークレー国立研究所が管理し、39の研究機関から集まった250人の科学者と技術者からなるチームが、2023年3月から2024年4月にかけて実際に観測できた220日分のデータを解析した。

 当初は最もシンプルな粒子の衝突を探していたが、より高いエネルギーでの衝突にまで範囲を広げて再分析を行った。

 すると、通常の物質による既知のノイズ(バックグラウンド信号)では説明が難しい、異常な原子核反跳エネルギーを示す事象が1件だけ見つかったのである。

 研究チームは、この1件がありふれたノイズによるものではないかを数か月かけて調べた。だが、原因は最後まで見つからなかった。

 バークレー国立研究所の物理学者アーロン・マナライセイ氏は、その異例さをこう語っている。

データの中に外れ値が現れること自体は珍しくありませんが、深く調べていけば、たいていは何らかのノイズだと分かります。あらゆる面で正当に見える外れ値というのは、私が関わってきたどの実験でも初めてのことです(マナライセイ氏)

 LZ実験の広報担当であるリック・ゲイツケル教授も、この事象に強い関心を示している。

ダークマターが現れると予想される領域、しかも競合するノイズが非常に少ない領域で、この事象がデータに現れたことに強く興味を引かれています。

事象が1件しかない以上、先走りたくはありません。

ダークマターを見たと主張しているわけではないのです。ただ、興味深いものを見たので、科学界の意見を聞くために共有したいと考えました(ゲイツケル教授)

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ごくわずかな光を捉えて信号に変える光電子増倍管。検出器に組み込まれる前に撮影されたもの。Image credit:Matthew Kapust/Sanford Underground Research Laboratory

まだ「発見」とまでは言えない理由

 もしこれが本当にダークマターだとすれば、陽子の200倍以上の質量を持つ計算になるという。

 だが、科学者たちは「ダークマターを発見した」と宣言するには早すぎると慎重な姿勢を崩していない。

 科学の世界で「発見」と認められるには、「5シグマ」という厳しい統計的基準(偶然起きる確率が約350万分の1)をクリアする必要がある。

 今回のデータの有意水準は「2.6シグマ」にとどまっており、既知のノイズで説明できる確率が約0.5パーセント残っているからだ。

 SLAC国立加速器研究所のダニエル・アケリブ氏は、謎を解明するには、同じ結果が繰り返し確認されること、そして液体アルゴンなど別の物質を使った実験でも同じものが見えることが必要だと述べている。

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液体キセノンを満たした円筒形の容器と、それを囲むノイズ遮断用の層(左)。ウィンプがキセノン原子にぶつかると光と電子が生じ、上下の装置がその光を捉える(右)。Image credit:Greg Stewart/SLAC National Accelerator Laboratory

宇宙の謎解明への果てしない道のり

 ダークマターの謎は、1930年代にスイスの天文学者フリッツ・ツビッキーが、銀河団の質量が目に見える星の光から計算されるよりはるかに重いことに気づいたことから始まった。

 一時期は、浮遊惑星や燃え尽きた星のような、光を出さない天体(MACHO)がその正体ではないかと考えられたが、宇宙の質量を説明できるほど存在しないことが分かっている。

 現在、最も疑われているウィンプのほかにも、強く相互作用する大質量粒子(SIMP)やアクシオンといった理論上の粒子も候補に挙がっている。

 イタリアや中国の研究施設でも同様の探索が進められている。

 LZは今後もデータを集め続ける計画で、事象が積み重なれば有意水準が上がるのか、それとも消えてしまうのかが確かめられる。

 たった1つの信号が、壮大な宇宙の謎を解き明かす鍵になるのか、今後の研究結果から目が離せない。

References: Lz.lbl.gov

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