アメリカの大統領とホワイトハウスの猫たちの歴史
 先月、アメリカの大統領官邸、ホワイトハウスに猫のウィローが迎え入れられたという話はカラパイアでもお伝えした通りだが、ホワイトハウスに入室を果たした猫はウィローだけではない。

 ほとんどの大統領が任期中に何らかのペットを飼っており、ジョー・バイデンは猫を飼った大統領としては11番目となる。

 2月22日は猫の日、しかも2022年でスーパー猫の日でもある。今日は、ホワイトハウスの猫たちの歴史を見ていこう。
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バイデン大統領夫人に迎え入れられた猫「ウィロー」

 2020年の大統領選前夜、ペンシルバニア州のリック・テレズの農場で行われた選挙集会で、グレーと白の短い毛のトラ猫がステージに飛び乗り、演説していたジル・バイデン夫人の前で跳ねまわった。

 ジル夫人は話をやめて猫を見たが、猫はそのまま知らん顔で歩き続け、彼女の真正面の最前列の席に飛び乗って座った。

 旧姓テレズだったこのウィロー・バイデンは、その後ホワイトハウスに引っ越し、ジョー・バイデン(第46代大統領)はペンシルバニア通り1600番地を猫と共有する、11番目の大統領となった。

初めて猫を飼ったのはエイブラハム・リンカーン

 エイブラハム・リンカーン(第16代大統領)は、猫をペットとして飼った初めての大統領だ。国務長官のウィリアム・スワードが、タビーとディキシーという子猫をリンカーンに贈った。

 大統領ペット博物館の歴史家アンドリュー・ヘイガーによると、ホワイトハウス内を闊歩していた最初の猫には、おそらく名前はなかっただろうという。

 19世紀半ばのことなので、おそらくは、食糧庫のネズミ対策として、猫が飼われていたのではないかという。

 だが、リンカーンの猫好きは伝説的だ。ヘイガーは、出どころは怪しいが、次のような当時のエピソードがお気に入りだ。

 リンカーンが、皿から猫にエサをやっていると、メアリ・リンカーンが言った。
あなた、それは尊敬に値しない行為ですわ。この場所は、政府の中心地できちんとしたところです。猫に皿から直接食べ物を与えるべきではありません
 それに対してリンカーンは
ジェームズ・ブキャナン(第15代大統領)には十分だったなら、この猫にも十分だろう
 と答えたという。

 一本とられた感じだ。さらに歴史に基づいた逸話では、夫の趣味を訊かれたメアリが、"猫"とだけ答えたという。

 財務次官のマウンセル・B・フィールドは、"大統領が1匹の猫を1時間もかわいがっているのを見た"と語っている。

アメリカで最初のシャムネコを飼ったヘイズ大統領

 1878年、ラザフォード・B・ヘイズ(第19代大統領)の妻ルーシーが猫好きであることを知った、バンコク米領事館のデヴィッド・B・シッケルスは、おそらくアメリカ上陸初と思われるシャム猫を彼女に贈った。

 1879年、マホガニー色のシャム猫がアメリカに到着し、かわいがられて過ごした。だが、その年の9月に突然、謎の病気で死んでしまった。

 ヘイズの主治医が、3時間ごとに猫に魚、鶏肉、鴨、クリーム、牡蠣、牛肉スープやミルクなどを与えて治療したが、猫の健康は回復しなかった。

 猫が死んだ後、大統領補佐官はその亡骸を後世のために保存するため、農務省に引き渡した。ところが、どういうわけか遺骸はそのまま行方知れずになってしまい、農務省やスミソニアン博物館が懸命に捜索したが、結局、見つからなかった。

 現在、ヘイズの大統領図書館では、ぬいぐるみの猫が売られている。

Stuffed Animal - Siam - Rutherford B. Hayes Presidential Library & Museums
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歴代大統領と猫たちの触れ合い

 その後も、セオドア・ルーズベルト(第26代大統領)、ウッドロウ・ウィルソン(第28代大統領)、カルバン・クーリッジ(第29代大統領)、ジョン・F・ケネディ(第35代大統領)など、数々の歴代大統領たちが、猫との触れ合いを楽しんだ。
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ジョン・F・ケネディ夫人の猫、トム・キッテンを抱きかかえて紹介する報道官、パメラ・ターニャ / image credit:JFKWHP-AR6292-A

秘書の指を噛み問題を起こしたジェラルド・フォードの娘の猫

 だが、ヘイズのシャム猫の次にセンセーションを引き起こしたのは、1世紀近くたってから、ジェラルド・フォード(38代大統領)の娘、スーザンとホワイトハウス入りした、ミニチュア・シールポイント・シャムのシャンだ。
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スーザンと猫のシャン / image credit:National Archives

 この猫は、リンカーンの寝室の家具の下に隠れるのが大好きだった。

 シャンは、1974年、ジョン・ウルブリヒトによって、ファーストレディ、ベティ・フォードの公式肖像画に描かれるはずだった。

 ところが、シャンはその日、やけに神経質になっていて、手がつけられない状態で、ベティの秘書ナンシー・ハウの指を手術が必要になるほどひどく噛んだ。

 シャンのこの噛みつき事件は大きく報道され、挙句の果ては、猫は家庭的なイメージを与えるので、大統領の公式の肖像画の題材にするには向かないとまで言われた。

ジミー・カーターの娘の猫

 フォード大統領一家が猫のシャンをつれてホワイトハウスを去った後、次のジミー・カーター(第39代大統領)の娘、エイミー・カーターも猫のミスティを連れてやってきた。
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エイミー・カーターとシャム猫ミスティ・マラーキー・イン・ヤン / image credit:Jimmy Carter Presidential Library / National Archives

 ミスティは、1977年にハンガリーのギタリスト、ガボール・ザボ作のジャズ曲にその名を貸したオスのシャム猫だ。

 ミスティは、クリントンのソックスが登場するまで、しばらく最後のホワイトハウス猫だった。

 だが、彼女は2014年にニューヨークのハイラインで行われたカーターのMalaise Speechのための創作ダンスと朗読向けに、レオタードにプリントされた初めてのホワイトハウス猫となった。
Ryan McNamara, "Misty Malarky Ying Yang," a High Line Performance

クリントン大統領の猫、ソックス

 ビル・クリントン(第42代大統領)の猫、ソックスは、タキシードを着ているような毛並みの、人好きのする元ノラ猫だ。

 子猫のときに自分の家族に選んだクリントンの長女、チェルシーの腕の中に自ら飛び込んできた。NNN(ねこねこネットワーク)の暗躍によるものかもしれない。

 報道カメラマンは、キャットニップでソックスの気を引いて、高々と持ち上げて写真を撮ろうとしたが、大統領夫妻のスタッフにすぐに止められ、「すべての報道陣への特別な注意:二度と猫に触れないこと」お達しがでた。
NBC DateLine Socks the Cat and Photographers

ソックスは、ビル・クリントンの肩に乗ったり、大統領執務室の机の後ろに座ったり、ホワイトハウスのブリーフィングルームの演壇の上に乗ったりしてくつろぐ。

 また、アメリカの若者へのうってつけの大使としても役立った。ヒラリー・クリントンは、『Dear Buddy: Kids’ Letters to the First Pets, “Establishing a connection with the First Pets』の序文で、「子どもたちがファーストペットとつながりを持つことは、彼らにとってホワイトハウス、大統領府、政府の仕事との一番始めの出会いとなることが多い」と書いている。
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クリントンの肩に乗るソックス / image credit:National Archives

ジョージ・W・ブッシュの猫

 2001年にソックスがホワイトハウスを去り、ジョージ・W・ブッシュ(第43代大統領)一家の黒猫インディアが入れ替わりにやって来た。

 彼女は、ブッシュ政権の最後の数週間以外、ずっとここに住み続けた。

 2009年1月に死んだインディアは万事控えめで、よく知られていた犬のスコティッシュ・テリアのバーニーやミス・ビーズリーのほうが脚光を浴びがちだった。
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ジョージ・W・ブッシュのインディア / image credit:George W. Bush Presidential Library

13年ぶりにホワイトハウスに戻って来た猫、ウィローに期待

 ブッシュ大統領のインディアが去ってから13年、ホワイトハウスに猫が戻って来た。ウィロー・バイデンは、自分の種族の先導者となれるかもしれない。

 公立動物病院のサンフランシスコSPCAで、行動・福祉プログラムを担当する獣医行動学者ワイラニ・サンは、ホワイトハウスに猫がいることは、世間における猫の地位を高めると考えている。

 アメリカにある保護施設では、犬に比べて猫の安楽死の数は2〜3倍にもなるという。

 どうやって、元食糧庫住まいだった猫のウィローをホワイトハウスの暮らしに慣れさせるのだろう?

 獣医行動学者のサンはこう語る。
まずは数週間、同居犬に少しずつ紹介していき、ホワイトハウス内どこでも行けるところはどこでも探索させます。

このとき大切なのは、ウィローに日々の生活パターンを確立させ、彼女が自分の居場所だと思える部屋や場所を明確にすることです。

とくに重要なのは、彼女のトイレをあちこちに置くこと。大きな家では、いつでも使える複数のトイレを戦略的に配置することが必要です
 さらに、ソーシャルメディア対策をおろそかにするわけにはいかない。
人々がウィローの冒険を追いかけて、彼女に恋をし、結果的に自分でも猫を1匹か2匹飼い、自分自身の愛の物語を始めるといいと思っています。私自身、猫のいない生活など考えられませんから
References:A Colorful History of Cats in the White House | History | Smithsonian Magazine / written by konohazuku / edited by parumo
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コメント

1

1. 匿名処理班

  • 2022年02月22日 20:06
  • ID:IcSvo5Ij0 #

猫の日だけあって
トピックが猫だらけですね

2

2.

  • 2022年02月22日 20:48
  • ID:HlGXLirk0 #
3

3. 匿名処理班

  • 2022年02月22日 21:01
  • ID:PzRnVQRm0 #

ああ今日は、にゃん!…にゃにゃん!にゃん!にゃん!にゃん!の聖なる日か

4

4. 匿名処理班

  • 2022年02月22日 21:27
  • ID:By8Fve4o0 #

自分は頭が悪いので「ジェームズ・ブキャナン(第15代大統領)には十分だったなら、この猫にも十分だろう」の言い回しがわからない。どういう意味

5

5. 匿名処理班

  • 2022年02月22日 23:09
  • ID:ur.A1ZGM0 #

※4
リンク先のwikiにもあるけど、ブキャナン大統領はトランプ大統領やグラント大統領と同じ「任期中から評判の悪かった大統領」の一人なので、リンカーン夫人の「ここはきちんとしたところです。」に対して「ブキャナンがここで公務を執っていたなら、ここで猫を飼ったっていいだろう。」と暗に前任者を馬鹿にした発言ではある。

6

6. 匿名処理班

  • 2022年02月23日 13:30
  • ID:lQ0e8Fq90 #

ヘイズ大統領夫人の猫、ワイよりいいもん食って……
(´・ω・`)

7

7. 匿名処理班

  • 2022年02月23日 15:59
  • ID:U.6pJwCI0 #

因みに、好物は名古屋の和菓子です

8

8. 匿名処理班

  • 2022年02月23日 16:09
  • ID:I7tpfA.z0 #

※7
選んでまっしぐらだもんねw

9

9. 匿名処理班

  • 2022年02月23日 18:22
  • ID:o.5Ijkh10 #

ソックスくんは
サービス精神旺盛だったのね

10

10. 匿名処理班

  • 2022年02月23日 19:30
  • ID:u5rVQXQR0 #

猫がゲーム機のリセットボタンをうっかり踏んでしまうように大統領専用のブリーフケースの中の核ミサイルのボタンも踏んづけて押しちゃったりして

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