メインコンテンツにスキップ

猛毒注意な「カツオノエボシ」、少なくとも4種いることが明らかに。うち1種は新種

記事の本文にスキップ

21件のコメントを見る

(著) (編集)

公開:

カツオノエボシこの画像を大きなサイズで見る
カツオノエボシ image credit:Pixabay
Advertisement

 世界中の海に漂う「カツオノエボシ」は、鮮やかな青色と強力な毒性で知られる刺胞動物だ。

 これまで単一種と考えられていたが、国際研究チームによる遺伝子解析によって少なくとも4種の異なる種から構成されていることが明らかになった。

 しかもそのうち1種は新たに発見されたものだという。この発見は、海洋生物の多様性に対するこれまでの理解を大きく覆すものだ。

 この研究は『Current Biology』(2025年6月19日付)に掲載された。

見た目は美しいが触るな危険の「カツオノエボシ」

 透明な烏帽子のような姿が特徴的な「カツオノエボシ(Physalia physalis)」は、その透明感溢れるアートのようなビジュアルとは裏腹に、強力な毒を持つ生物だ。

 太平洋・大西洋・インド洋に広く生息し、日本の海でもよく見られる。

 もしカツオノエボシに遭遇した時は要注意! その長い触手の刺胞に仕込まれたヒプノトキシンは、刺されると感電したような痺れと激痛が走る強力な毒で、人間が命を落とすことだってある。

 それゆえに電気クラゲと呼ばれることがあるが、じつは一般的なクラゲとは異なる。

 いわゆるクラゲもカツオノエボシも同じ「刺胞動物門」に分類されるが、クラゲが「鉢虫綱(はちむしこう)」であるのに対し、カツオノエボシは「ヒドロ虫綱」に属す。

 ただでさえ不思議な姿をしたカツオノエボシだが、その体は1つの個体に見えて、無数のヒドロ虫が集まってできた群体なのだから、興味深いことこのうえない。

この画像を大きなサイズで見る
カツオノエボシ Photo by:iStock

少なくとも4種いることが判明、うち1種は新種

 カツオノエボシはこれまで、単一の種とされてきた。

 ところが、イェール大学・ニューサウスウェールズ大学・グリフィス大学などの国際研究チームの最新研究によって、少なくとも4種いることが明らかになった。

 研究チームは、世界中から集めた151個体のカツオノエボシの遺伝子解析を行ったほか、市民科学者から寄せられた数千枚の画像を参照。ここから新種1種を含む、4種の存在を確認している。

 新種1種を含むというのは、4種のうちのいくつかは18、19世紀に別種として提唱されていたこともあったからだ。

 この見た目による分類はその後退けられていたが、最新のゲノム解析によって、じつは正しかったことが裏付けられた。

 グリフィス大学 カイリー・ピット教授は、「すべて同じ種だと思っていたので、本当に衝撃を受けました」と語っている。

 今回確認された種は以下の通り:

 ・Physalia physalis(これまでカツオノエボシとされてきた種)

 ・Physalia utriculus

 ・Physalia megalista

 ・Physalia minuta(ニュージーランドおよびオーストラリア近海で確認された新種)

 また高度な海洋循環モデルによると、これらの種それぞれには、風や海流の影響で形成された遺伝的に異なる「亜集団」が存在しているという。

外洋はすべてつながっていて、カツオノエボシも1種だけが世界中を漂っている、というのがこれまでの考え方でした。でも、それはまったくの誤りです(ピット教授)

この画像を大きなサイズで見る
カツオノエボシ Photo by:iStock

カツオノエボシはなぜ複数種に進化したのか?

 カツオノエボシに自分で泳ぐ力はなく、ガスの入った浮袋で浮かび、烏帽子のような帆で風を受けることで、海面を漂っている。

 そんな生態を持つ彼らだが、面白いことに同じ場所に生息していても複数の種に進化し、それぞれ交雑することなく生きている。

 「同じ環境で一緒に生きているはずの生き物が、なぜ別々の種に分かれていったのか? そこにはどんな選択圧があったのか? とても興味深いことです」と、ピット教授は語る。

 研究チームは、この遺伝的多様性を生み出した物理的・環境的・生物的なプロセスを解明することが、外洋の生物多様性を根本から見つめ直すうえで不可欠であると述べている。

References: Not one, but four – revealing the hidden species diversity of bluebottles / 10.1016/j.cub.2025.05.066

📌 広告の下にスタッフ厳選「あわせて読みたい」を掲載中

この記事へのコメント 21件

コメントを書く

  1. 単一種と思われてたが少なくとも4種、そのうち1種は新種

    …ではそれ以外の3種は以前から知られていた、でも単一種だった???

    • -11
    1. 最低限本文読んでからコメント書けよ
      18世紀から19世紀に「ここの形が違う!別種では!?」と提唱されたことがあるものの、個体差の範囲だろと退けられてた主張が実は正しかったらしいという調査結果だ

      • +13
  2. 子供の頃、初めて見たクラゲがカツオノエボシだったな
    あちこちに打ち上げられて、何だろうと思ってたら父が刺されてクラゲだと気づいた
    少し痛いだけで病院に行くほどでもなく、何ともなかった
    運が良かったのかな

    • +9
  3. 絶対に触っちゃいけないのは知ってるけどあの透明なプニプニを触りたいと思っている人間は俺だけじゃないはず
    人間が触っても大丈夫なカツオノエボシの新種の発見マダー?

    • +13
    1. 刺細胞は触手にしか無いのであのぷにぷにには別に毒ないよ(もちろん毒のある触手が張り付いてる時があるので注意だが)。

      だから海辺の子供らだとプニプニを触る肝試しとかしてたりするw ネットでも掴んで見せてる動画や画像あるよ。

      • +11
      1. そうなの!?いいことを聞いたけど流石に…子供は恐れ知らずですな

        • +3
        1. 触手の有無には要注意ね。細いのがプニプニに張り付いている時あるから。

          余談だけど毒無いからとエボシ部分掴んで持ち上げて、女の子達に向かって走って行って、触手が風にあおらてお腹から腿にかけて刺された上級生が居たw

          • +5
    1. スーパーガーディオンとかペガサスセイバーとか

      • +2
    2. 勇者王ガオガイガー。
      ガイガー・ステルスガオー・ライナーガオー・ドリルガオーの4機合体。

      • +1
  4. 分業してまで一体化してまるで個体のように振る舞うならいっそ群体じゃなく一個体になるように進化してきても良さそうなものだが、そうならなかったのは群体であることに何かしらの利点があるに違いない。具体的に何かは思いつかないけど。

    • +14
    1. 群体だとダメージコントロールがしやすいのかも。捕食者に一部を食われても全体の機能を損なわないとか。

      • +6
    2. 一人ではなく一つの都市ということではないかな?
      多数の遺伝子が一つの場所に集結している
      風任せ海流任せでは、相手を見つけるのが大変でしょ

      • +5

コメントを書く

0/400文字

書き込む前にコメントポリシーをご一読ください。

リニューアルについてのご意見はこちらのページで募集中!

知る

知るについての記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。

水中生物

水中生物についての記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。

最新記事

最新記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。