家の屋根が吹き飛び、車は倒木に埋もれる。アメリカ中西部を襲った記録的な暴風雨「デレチョ」の怖さがわかる災害現場

　8月10日、脅威の破壊力を持つ「デレチョ（Derecho）」と呼ばれる暴風雨がアメリカ中西部を襲った。今月3日にアメリカ東部から高速で移動し、アイオワ州へと辿り着いた激しい雹を含んだデレチョは、激しい竜巻と共に地域一帯に襲い掛かり、史上最大と言われる停電を引き起こした。

　その被害状況が分かる災害現場の写真が次々とSNSに投稿されていったのだが、屋根が丸ごと吹き飛ばされていたり、車が倒木に埋もれてしまっていたりと、その恐ろしさをまざまざと物語っている。『Mashable』などが伝えている。

最大級の暴風雨「デレチョ」

　「デレチョ」とは、スペイン語で「前方へまっすぐ」という意味で、弓状の強雨域「ボウエコー(Bow echo)」が長時間かつ長距離にわたって発生する現象のことだ。

　そのスピードも速く、風害の距離が400km以上で、広範囲に風速が26m/s以上、一部で34m/s以上が観測されると「デレチョ」と認定される。

　大型台風並みの暴風をもたらし、さらには竜巻を引き起こし、強烈な雨や雹は地表を突き刺していくほどの凄まじさだ。

　今月3日から発生したとされるデレチョは、まずアメリカ東部カンザス州からテネシー州にかけて驚異的な破壊を引き起こし、11日にはアイオワ州に襲来した。 70,000 still without power a week after powerful Midwest derecho | WNT

デレチョの恐ろしさがわかる災害現場が次々に投稿される

　デレチョによって、アイオワ州リン郡シーダーラピッズとその周辺地域の家屋はもろに打撃を受け、交通機関にも影響を及ぼし、激しいスコールは約1000万エーカーにおよぶアイオワ州の作物に被害をもたらした。

　気象学者が「驚異的な犠牲」と口にするほどの被害はあまりにも大きく、デレチョ襲来から1週間たった17日の時点でも、7万人を超える住民が未だ停電状態で過ごしている。

　多くの人々が、Twitterでデレチョによる災害の恐ろしさをシェアした。

・家に突き刺さった長い板。まるで飛行機の翼のようだ

Yes, this is AN AIRPLANE WING in a house on the SW side of Cedar Rapids pic.twitter.com/2lY3xYqBvH

— Molly (@notrealMolly) August 15, 2020

・木の下敷きになった車

Hi from the disaster zone in Cedar Rapids. I spent the morning coordinating some food deliveries to neighbors in need. People without phones, without internet, cars trapped in garages, cannot call for help. We need more aid and we need it today and not Monday, @IAGovernor pic.twitter.com/43t82xSzXI

— Lyz Lenz (@lyzl) August 15, 2020

最悪な状況のシーダーズラピッド。電話もインターネットも繋がらない。ガレージに入った車を出すことも叶わない。助けを求めることにさえ苦労しています。私は午前中、困っている近所の人への食料配達を調整するのに費やしたけど、もっとみんなの支援が必要です。

・なぎ倒された木々、崩壊した家

Good morning from Marion, IA, on day 6 of #derecho2020 cleanup pic.twitter.com/QLG2aYb3dM

— Isabella Murray (@ibellamurray) August 15, 2020

こちらはアイオワ州マリオン郡から。デレチョ襲来から6日目の様子。

・窓ガラスは全部われ、家の中がハチャメチャに

Marion nursing home Crestview Acres had to move all of its 80 residents to sister facilities across the state. #derecho2020 pic.twitter.com/z0zNPpJqja

— Isabella Murray (@ibellamurray) August 15, 2020

デレチョのせいで、介護施設の入居者80人が州を超えた姉妹施設へと移動を強いられました。

・屋根が吹き飛ばされた家。車はがれきの下敷きに

Hard to understate the severity of #derecho damage at the Cedar Terrace apartment complex in SW Cedar Rapids. With nearly all homes destroyed, the mostly resettled refugee inhabitants have been sleeping outside, in their cars or at friends’ houses the past 4 nights. pic.twitter.com/jcrRh54kmm

— Isabella Murray (@ibellamurray) August 15, 2020

南西シーダーラピッズのシーダーテラスアパートメントコンプレックスでのデレチョによる被害の深刻さを過小評価することは困難です。ほぼすべての家が破壊されました。ここではほとんどが第三国からの定住難民だったので、これまでの4日間は外や車の中や友人の家で寝ていました。

・壊れたアパートのビフォア・アフター

People are hard at work repairing this apartment complex this morning after the #derecho.

I think this neighborhood is technically over the line in Marion city limits, but on the NE side of Cedar Rapids. #IowaStorms pic.twitter.com/5a5GHikg5F

— Kate Payne (@hellokatepayne) August 15, 2020

今朝、人々はこのアパートを修理するのに一生懸命でした。

・ぐにゃりと曲がったアイオワ州ルターにあるサイロ（穀物倉庫）

My god. A friend in eastern Iowa sent me this photo of grain silos near his house. This looks like Frank Gehry. #derecho #Iowa #IowaStorms pic.twitter.com/wlZqEpfj54

— Brad Masktastic (@Yeah_Brad_B) August 10, 2020

アイオワ州東部の友人から送られてきた写真。家の近くにあるというサイロが見事に破壊されているよ。

・道路の路肩には壊れた家屋のがれきの山に

At Westdale apts in Cedar Rapids. This is the same complex where Cheryl Barnes lives, a diabetic women I met on Thursday. At that point it had been 2 days since she had insulin & she was running out of food, has no power, no car, no phone. Hoping to find her. #IowaDerecho #iowa pic.twitter.com/dMn8pa2qen

— Kate Payne (@hellokatepayne) August 15, 2020

　アメリカでは新型コロナウイルスの感染者数も世界一となっているし、カリフォルニア州デスバレーでは日中の最高気温が54.4℃と、史上最高記録を更新するほどの猛暑だし、暴動事件はあるし、野生のリスが腺ペストに感染しはじめているというし、2020年はかなり試練の年となっているようだ。

　とは言え日本も対岸の火事というわけではない。長い梅雨がやっと開けたと思ったら猛暑日ラッシュ。今年は台風が少ない感じがするが、あとでまとめて一気にくるとか、デレチョ並みの大嵐がこないとも限らない。とりあえず災害に備えた準備だけはしておくことにしよう。そうしよう。
written by Scarlet / edited by parumo
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