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大便移植に続き女性の膣液移植の研究が進行中。細菌性膣炎の治療に効果あり?(米研究)

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(著) (著)

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 以前、カラパイアでは、大便をフリーズドライした肥満治療薬についての話題を伝えたことがあった。

 便微生物移植(べんびせいぶついしょく / FMT)と呼ばれる移植術で、ダイエットに絶大なる効果があるため実用化に向けて治験が開始されたという内容だった。

 これが思いのほか上手くいって味をしめたのかどうかはわからないが、研究者たちは今度はなんと女性の膣壁から分泌される液体・膣液を移植してみようと考えたようだ。

 米ジョンズ・ホプキンス大学のグループが『frontiers in Cellular and Infection Microbiology』(8月28日付)に掲載した論文によると、膣液移植は「女性の生殖器官の治療に革命を起こす」のだという。

健康な大便を移植することで腸内の細菌コミュニティを復活

 膣微生物叢移植は、便微生物移植とまったく同じ発想である。細菌がたっぷり含まれた体の物質を利用して、患者の体の中に適切な細菌コミュニティを復活させようというのだ。

 健康な人間の腸内では食べ物の消化ばかりかホルモンの分泌や免疫反応、病原菌との戦いまで、無数の腸内細菌がありとあらゆる機能にかかわっている。

 そうした細菌がいなくなってしまったりバランスを崩してしまったりすると、悪玉菌が増えて体調が悪くなってしまう。

 そこで健康な人からもらった健康な大便を移植して腸内細菌のバランスを回復させてあげよう、 というのが便微生物移植の狙いだ。

 こうした治療は何世紀も前から活用されてきた。

 たとえば4世紀の中国にはひどい下痢を治すために「黄色いスープ」を飲ませていたという記録があるし、ベドウィンたち(アラブの遊牧民族)は赤痢の治療にラクダのフンを使っていた。

 この歴史ある治療法は1950年代に西洋にも伝わったことがあるが、当時は不人気で一般的になることはなかった。

 ところが、大便の中にひそむ豊かな細菌叢が明らかになり、ついでに抗生物質が効きにくい細菌が登場してしまったことを受けて、最近では便微生物移植に再び熱い視線が注がれるようになっている。

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クロストリジウム・ディフィシル腸炎に非常に高い効果を発揮

 嘘のような話だが、便微生物移植の効果は目覚ましいようだ。

 お尻にチューブを入れて流し込んだり、浣腸で注入したり、あるいはカプセルで飲み込んだりすることで、肥満、食物アレルギー、炎症性大腸炎、うつ病、多発性硬化症など、さまざま症状を治すことができるらしい。

 ただし専門家はその効果をはっきりと立証することに苦労しており、これまではっきりと効果ありという証拠が得られているのはひどい下痢の原因となるクロストリジウム・ディフィシル腸炎だけだ。

 この感染症に対しては、一度の移植で8~9割が治るという非常に高い効果が証明されている。

 腸内にひそむ細菌は複雑怪奇で依然として多くの謎に包まれており、それ以外の症状に対する治療効果についてはまだ完全に理解されていないのが現実だ。

 健康を改善してくれる細菌の特徴、組み合わせ、割合、種類などなど、明らかにしなければならないことはまだまだたくさんある。

 つまり、移植するのに望ましい大便がどのようなものかよくわかっていないわけだ・・・クソッ!

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腸内に比べると比較的単純でラクトバシラス属が占める膣内環境

 一方、膣微生物叢移植(VMT)の場合、そのような面倒はなさそうだ。これまでの研究によって、健康な膣内の細菌は腸内に比べると単純であることがわかっている。

 今回の研究グループが述べているように、”普通”という状態には非常に広い範囲があることが認識されるようになっているが、”最適”な膣内細菌叢はラクトバシラス属(乳酸菌群の大部分を占める)の一種に占められていると概ね考えることができるのだ。

 膣内の細菌たちが活発で多様になりすぎて、本来多数を占めているべきラクトバシラスの勢力が弱まってしまうと細菌性膣炎になることがある。

 こうなると、尿道感染症や性感染症、不妊、早産になる恐れがある。

 ほかにも再発しがちなカンジダ膣炎、生殖器関連のがん、新生児にひどい感染症を起こすB群連鎖球菌との関連も指摘されている。

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膣微生物叢移植なら再発しがちな細菌性膣炎を治癒させられると期待

 一般に、細菌性膣炎の治療には抗生物質が使われるが、この場合、7割が3ヶ月以内に再発してしまう。

 だが膣微生物叢移植ならば、一度の移植で再発のリスクなく、きちんと治癒させられるのではと期待されている。

 研究グループによる20名の女性が参加したパイロット試験では、アンケートや診察を通じて、安全かつ適切な膣液のドナーとなれるのは7名(35%)のみであることが判明。

 特に決め手となるのは、膣液のペーハー(pH4.2以下)であったそうだ。

 なお研究チームは、より大人数が参加するスクリーニングなら、ドナーになれる人の割合はさらに少なくなるだろうと推測している。

 女性の同性愛者から得られた疫学的データからは、膣微生物叢移植は可能であることが示唆されているが、今後実際に臨床試験を行いその効果や安全性を確かめてみる必要があるとのことだ。

References:Ars technica / frontiers in Cellular and Infection Microbiologyなど / written by hiroching / edited by usagi

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この記事へのコメント 32件

コメントを書く

  1. 糞便移植の歴史については、漢方の「人中黄」がそれ。
    「人の中の黄色いもの」の意味で、田舎に行き健康な子供のものを求め、乾燥粉砕して使っていたとされる。

    寄生虫とか心配だけど、当時は居るのが普通だったから、問題にしなかったのでは???

    膣のほうもやると思っていたよ、他にも中に住む乳酸菌が漬物にいいとか聞いた。
    ただヒトパピローマウイルスによる感染症が大きな問題。
    どう処理して感染を防ぐのだろうか。

    • +6
    1. >>2
      自分も思った、子宮頸癌の原因になるウイルスね。

      • +1
  2. ヨーグルトを膣内注入ではダメなのか?種類が違うのかな?

    便に関しては納得する部分がある。
    うちの母方の家系は、掌蹠膿疱症という美容器の家系で、腸内細菌が大きく関わっている。
    腸内細菌環境を整える治療をして上手くいった親戚と、そうでないうちの母・・・

    • -1
    1. ※4
      昔からヨーロッパの民間療法とかでは普通にあるね。
      >ヨーグルトを膣内注入

      現代だと、一応
      そこに注入することを前提とした品質管理はしてないし
      不測の雑菌感染などもあり得るから
      おおっぴらにオススメはされてないけど。

      • +1
        1. >>40 やったんか。きっと、毎日続けなあかんのや。

          • 評価
  3. 便移植?その前に食生活変えてみた?何を食べてきたの?という疑問。
    例えば虫歯も感染が原因。何を口に入れたか?感染源は他人(というか親が殆ど)。

    これに準えれば、膣に何を入れたか?ということになる。
    遡れば産湯がその最初。次に自宅の風呂場。その後は男性器ということだろか?
    子供の頃には膣に問題無かったなら産院も家庭(両親)も問題無しということになる。ならば感染源は…

    鹿の食害が増えたので海外狼を移植しよう(ニホンオオカミ絶滅させておきながら)、みたいな話にも思えるが、そう言えばマスコミが一時期「セカンドバージン」とやらを流行らせようとしてたがそれにも似ているね。「土台無理な話」の最右翼になりそうな。

    • -13
    1. ※7
      感染源も何も、細菌性膣炎やカンジダ膣炎は
      原因菌自体は、何も特別ではない
      普通の人にも一定数は存在している常在菌だよ。

      過労やストレスで免疫力が落ちたり
      生理前や妊娠で分泌液の質が変化したり
      過剰な洗浄や性行為などで保護粘液が流失したりして、
      乳酸菌により酸性に保たれていた膣内のバランスが崩れると、
      他の雑菌が増殖して日和見感染を起こす。

      • +6
  4. 爪の垢を煎じて飲むって発想は正解に近かったんだな
    良い菌ビジネス到来の予感

    • +5
  5. ウンチ移植では先日死亡例が出たとニュースになったようだが。

    • +3
  6. げげっっ……..
    もうついていけない。

    • 評価
    1. ※13
      たぶん『便』と考えるから、嫌に思えるのだと思う。
      『腸内菌の〇〇で、お腹の調子を整えましょう!』とかは
      ヨーグルトや健康食品でも普通にやっている事だと思う

      後は『腸内菌の育成を助ける糖が含まれています!』も、
      同じ様な効果を狙った商品開発手法だと思う(何だ?普通じゃん)

      • +5
  7. 上の人のコメントにもあるように、菌の抽出(だけ)でいいと思うんですが

    ところで文中の「黄色いスープ」って何なの…?
    何の生物のどこからの体液なのよ…(;_;)

    • +5
  8. 濡れにくい人と、ものすごく濡れやすい人がいるけど、女性自身が好みに調整できると良いね。

    • 評価
  9. 確か野生動物の習性でも…
    生れ立ての子供が親の便を食べる…って例は有った気がする
    確か、草食動物の消化を助ける腸内細菌が子供には居ないので、
    親の便を食べる事によって、腸内細菌を獲得しているとか?
    野生動物がやっているくらいだから、正しい方法なのだろう

    • +6
  10. 常在菌は生まれつきの体質じゃないの?
    自分は小学校の頃から抗生物を服用するとカンジダになる
    調べたら膣内の常在菌が極端に少ないためバランスを崩しやすいって言われた
    飲み薬で改善されるなら試してみたい

    • +2
    1. ※19
      カンジダ膣炎「失敬な。パンの酵母菌として使えるぞ」

      • 評価
  11. 便や体液をそのまま移植するんじゃなくて、有益な菌を採取し培養して移植すれば安全なのでは?

    • +4
    1. ※21
      それは既にやっていると思うよ?
      例えば便の内容には大腸菌が付き物だけど、O157 等を含んでいたら
      命に関わる事になるから。
      『有用な菌だけを培養して使用』でないと、怖くて使えないと思う
      (雑菌も色々な役割りを果たしているとか読んだが、主な効果だけね)

      • +2
  12. 過敏性腸症候群の人が大便移植で治るもんかなぁ・・・

    • 評価
  13. ヒトパピローマウイルスのワクチン、男も受けることにすれば良いのにね

    • +3
  14. 既に上で指摘してる人いるが特定菌種だけ培養すりゃいいのになぜ便や分泌液を”直接”移植する発想なのか
    「人には人の乳酸菌」ってCM台詞の商品やプラセンタ(原料がヒト胎盤)も抵抗ある位なんでちょっとキツい
    しかし腸内フローラに続き膣内フローラか
    環境改善は皆が幸せになれる予感

    • 評価
  15. 便移植は宣伝している医療機関もあるけど、公式に効果があるという論文や治験が存在しないって医療系の専門家が警告を流し続けているデマ医療だよ。効果があるならリスクと天秤にかけて必ず公式で採用されるのが医学なのに便移植にはそれがない(だから標準医療にならず高額のお金がかかる)。効果がないというのは大規模な調査で明らかにされているのにうつ病や発達障害にきくともうたってるところもあるとか

    • 評価
  16. 昔、見たドキュメントで「絶対に治らない中耳炎の少女」みたいのがあって。
    要は多剤耐性菌(おそらくMRSAのはしり)に罹った10歳くらい女の子を中心に置いて、その怖さを警鐘する内容だった。
    便移植の件で思い出したのはこの少女、大腸で出来るのだから耳でも可能じゃんて。
    (その後の経過は知らないのでバンコマイシンで治したかも)
    で口腔でもアトピー、臍炎、膣炎、何でも常在菌の移植治療の可能性を考えた。

    常在菌というのは、アパートに雑多な住人が暮らしていると考えると、半数弱は良い人、2割が悪い人、残りは日和見な人。
    普段は住民の移動も少なく大丈夫だけど、建物が汚れたり古くなると悪い人が増え、日和見が増長する。
    またアパートが新築の頃は誰も住んで居ないから、近くの住人が引っ越してくる。
    (親から子への移動・感染 乳酸菌などは血液をめぐり母乳に入るとも)
    もし病気になり、強い抗生物質を使うとアパートの住人の多くが出ていってしまい、住人の質が悪くなることがある。
    先のMRSAやESBL(産生菌群)の感染症がそうだ。

    さて菌の移動を簡単に行うには、シャワーのあと健康な人の着ていたTシャツ(軽く汗付きがいい)などを着るだけでもいいはず(スーパー銭湯で水虫貰うのと同じだよ)。
    大腸などではわざわざ内視鏡ファイバーで洗浄してということになるけど、耳や臍は洗ってから誰かの其処を拭ったモノ(滅菌した麺棒は不可)を半日詰めればいいだろう。

    • 評価
  17. 一方、他人のそういうモノを気持ち悪く感じる心理も、自身の健康に役立ってるはずなんだよね

    • 評価
  18. 糞便移植も他人の菌が定着しないから
    毎度移植するたびに儲かるシステムになりそうだな

    • +1

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