iStock-487922876_e_e
kosmos111/iStock

 まだ孵化していない卵の中のヒナたちは、親鳥からの警告だけでなく、同じ巣のきょうだいたちとも卵の中からお互いに情報を伝えあっていることが判明したそうだ。

 胎盤で母親とつながっている哺乳類とは違い、ヒナの場合は母鳥とは切り離されており母体の変化の影響を受けない。

 それでもきちんと孵化前に環境への適応を促す仕組みがあったということだ。ヒナでも胎教ができそうな、そんな新事実だ。
スポンサードリンク

卵の中のヒナに危険サインを与えると?


 今回調査の対象となったのは、スペイン、サルボラ島にある野生のカモメの営巣地から集められた、アシセグロカモメ(学名 Larus michahellis)のヒナたちだ。

3_e

 実験では、卵3個をひとまとめにして孵卵器に設置。そのうち2個(常に同じもの)は1日に4回孵卵器から取り出し、防音の箱の中に入れて、そこで捕食者が巣に近づいてきたときに親鳥が発する警戒音を聞かせてみた。

 一方、孵卵器にそのまま残されている卵には、そうした警戒音を一切聞かせない。箱は防音になっているので、警戒音が漏れて聞こえてくるということもない。そのため、危険が迫っていることなど何も知らないままだ。

1_e0
黄色は実験群(実験されるグループ)、青は対照群(なにもしないグループ)を示す。濃い色の卵は、取り除かれて警戒音を聞かされるもの。
Noguera&Velando、Nature Ecology&Evolution、2019

知らないはずのヒナまで危険に反応


 取り出した2個の卵を孵卵器に戻すと面白いことが観察された。何もされなかった卵に比べて振動することが多かったのだ。

 そのせいだろうか? 何も知らないはずの卵は、対照群に比べて孵化するまでに長く時間がかかった。

 それだけではない。孵化してからの実験群のヒナは、警戒音を聞かされた2羽だけでなく、何も知らないはずのヒナまでもあまり音を立てず、じっとしゃがんでいる傾向にあった。これは親鳥からの警戒の鳴き声を聞いたときの反応だ。

 さらに3羽とも、対照群のヒナにはない生理学的な特徴が見られた。ストレスホルモンが多く、各細胞のミトコンドリアDNAが少なく、足が短かったのだ。

 研究チームによると、こうした特徴はある種のトレードオフの結果であるらしい。ヒナたちは危険に対して敏感に反応した。しかしその代償として、細胞がエネルギーを作り出し、成長する力がいくぶん低下してしまった。

iStock-177810583_e
fabiomangani/iStock

振動でコミュニケーション


統計的な分析からは、こうした生理学的な違いは孵化するまでの長さだけに起因するものではないことがわかっている。

 卵同士の扱いの違いは、警戒音を聞かせたか聞かせなかったかだけであり、卵の振る舞いで観察された違いは、振動の頻度だけであった。

 そのために、どうやら卵の中にいるヒナは振動を使ってきょうだいに危険を知らせていたようだと考えられるのだ。

 なんだかヒナにも胎教が有効そうな結果だ。少なくとも卵を孵化させて、元気なヒナが生まれてほしいと考えている人がいれば、あまり怖がらせるような環境だけは避けた方がいいみたいだ。


孵化前に環境への適応を促す非遺伝的メカニズム


 「これらの結果は、カモメのヒナがきょうだいから自分も関係する環境情報を受け取っていることを強く示唆している」と研究論文では述べられている。

 発達の可塑性を促す非遺伝的メカニズムとして、孵化前に仲間から伝えられた情報が重要であることを示しているのだという。

 なお、こうしたきょうだいからの情報が、他の状況における適応表現系の可塑性を有利にするものなのかどうかは、今後の研究が明らかにしてくれるだろう。

 この研究は『Nature Ecology & Evolution』に掲載された。

References:We Just Learned Baby Birds Communicate With Each Other From Inside Unhatched Eggs/ written by hiroching / edited by parumo
あわせて読みたい
胎教だった。ヒナ鳥は孵化する前にすでに親鳥からさえずり方を学んでいることが判明(オーストラリア研究)


鳥も鳥語を話す?音を組み合わせて言語化して会話する鳥の存在が明らかに(英/スイス研究)


賢いのは知ってたけども...カラスに関する興味深い10の事実


巣から落ちたカラスのヒナを助けたところ、カラス式恩返しが待っていた。頭の上で監視すること。家族の一員になること。


セキセイインコは人間の会話を聞いたことがなくても、その音声を解読できる(米研究)

この記事に関連するキーワード

キーワードから記事を探す

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
カラパイアの最新記事をお届けします
この記事をシェア :    

人気記事

最新週間ランキング

1位
4504 points
孤児になった子熊たちが大量のりんごを目の前に、猫のゴロゴロのような音をだす

孤児になった子熊たちが大量のりんごを目の前に、猫のゴロゴロのような音をだす

2020年10月21日
3364133233
2位
4500 points
野良犬のピットブル、迷子の子供を発見し自らボディーガード役となり親と再会するまで守り抜く(アメリカ)

野良犬のピットブル、迷子の子供を発見し自らボディーガード役となり親と再会するまで守り抜く(アメリカ)

2020年10月22日
914370237
3位
4449 points
雪積る日、猫をくわえ自分の犬小屋に運び寒さから守ろうとした犬

雪積る日、猫をくわえ自分の犬小屋に運び寒さから守ろうとした犬

2020年10月26日
2284171248
4位
4247 points
野良の子猫、犬の散歩をしていた人にロックオン。粘り強く後をついていき永遠の家を手に入れる(アメリカ)

野良の子猫、犬の散歩をしていた人にロックオン。粘り強く後をついていき永遠の家を手に入れる(アメリカ)

2020年10月25日
1334094119
5位
3940 points
ちっちゃかわっ!5匹のコツメカワウソの赤ちゃん生まれたよ(ニュージーランド・オークランド動物園)

ちっちゃかわっ!5匹のコツメカワウソの赤ちゃん生まれたよ(ニュージーランド・オークランド動物園)

2020年10月19日
もっと読む
スポンサードリンク

Facebook

コメント

1

1. 匿名処理班

  • 2019年07月26日 10:31
  • ID:827Y9OQJ0 #

鳥さんのきょうだいってタマゴから出たじゅん?

2

2. 匿名処理班

  • 2019年07月26日 11:16
  • ID:m0BAfVf70 #

つまり鳥のヒナも人間の子供も、ストレスがかかるとすごく身体に悪いってことね(メンタルも心配)

3

3. 匿名処理班

  • 2019年07月26日 13:59
  • ID:0ML3gQWy0 #

托卵したカッコウの卵はどーなのかね

4

4. 匿名処理班

  • 2019年07月26日 15:05
  • ID:f..OGALk0 #

私が短足寸胴なのは、もしかして…

5

5. 匿名処理班

  • 2019年07月26日 16:32
  • ID:P.MRIUEf0 #

同時孵化する鳥の雛は、
卵の中で肺呼吸を始めた時点で鳴き声の早さでお互いの発育段階を知り、
短時間に一斉に孵化するようにするってネットで読んだことがある
生き物の能力って底知れないなあ

6

6. 匿名処理班

  • 2019年07月26日 23:11
  • ID:mpH6Jers0 #

人間の双子の胎児も子宮内で会話(非言語)してるとか

7

7. 匿名処理班

  • 2019年07月27日 03:31
  • ID:cePzUxs10 #

なんか可愛いね

8

8. 匿名処理班

  • 2019年07月27日 09:47
  • ID:ZT.JWaQ10 #

同じ孵卵器で一緒に孵ったうずらは血縁がなくても仲良し

9

9. 匿名処理班

  • 2019年07月27日 21:46
  • ID:.p7A1zAS0 #

※2
「悪い」とは一概に言い切れないんじゃないかな?

物音を立てずにじっとしゃがみ、足が短いのは
外敵に見つかりにくくする為に有利な性質だろう。
一方で、外敵がいない環境なら
のびのびと行動して背が高い方が
餌取りや繁殖など何かと有利だろう。

人間も、物騒な環境で育てば、子供だてらに
早熟で危機対処力が高く立ち回りが巧い。
天真爛漫にのほほんと過ごせる時期は無いか短いが、
逆にそんなのほほんと育ったボンボンだと
ひとたび危険な環境に放り込まれたら生存能力が低い。

記事にもある通り、状況によって一長一短に働く
「トレードオフ」関係なのだろう。

お名前
スポンサードリンク
記事検索
月別アーカイブ
スマートフォン版
スマートフォン版QRコード
「カラパイア」で検索!!
スポンサードリンク