不注意、多動性、衝動性を持つ発達障害の一種であるADHD(注意欠陥・多動症)は、かねてから遺伝子と関連があると言われてきたが、国際的な研究チームが行った大規模なゲノムワイド関連解析によってその仮説が実証されたようだ。
ADHDのリスクを高める遺伝子の変異体が発見されたという。
これまでにない大規模研究からADHDに関与する遺伝子を発見
『Nature Genetics』に掲載された研究によると、ADHDと診断された20,183名と対照群としてのADHDと診断されていない35,191名を対象とした関連メタ解析から、ADHDに寄与する12の独立した遺伝子座(遺伝子の位置)が発見されたという。リスクのある変異型は、基本的に遺伝子が発現する程度を調整しており、脳の発達にかかわるものだ。
たとえば、脳細胞のコミュニケーションに影響するものや、言語や学習といった認知機能に重要なものなどである。
ADHDのリスクを高める遺伝子のほかにも、遺伝子的にADHDと大きく重なっており、大うつ病、過体重、2型糖尿病、不眠と相関関係がある40種以上もの疾病や特性も特定された。
ヨーロッパ、北アメリカ、中国の研究グループが参加した本研究は、世界中の患者が対象とされた、遺伝学的なADHDの研究としては類を見ないほど大規模なものだ。
言語や学習機能、神経の伝達や機能に影響する遺伝子の変異
変異型があるとADHDを発症するリスクがある遺伝子には、たとえば「FOXP2」という、人の言語発達との関連でよく研究が進んでいるものがある。また「DUSP6」は、ドーパミン作動性神経伝達という、ADHDを薬で治療するさいに一般に標的とされるプロセスの制御に関連するものだ。
「SEMA6D」は、胎児が発達する期間に脳で発現するもので、神経を枝分かれさせるうえで重要な役割を果たしていると考えられている遺伝子だ。
ADHDの主な症状
世界的には、子供の5パーセント、成人の2.5パーセントに見られるADHDは、神経細胞の結合形成、神経伝達物質ドーパミンの調整、言語の発達、学習といったプロセスに関係している可能性が高い脳の疾患である。主な症状としては、不注意(すぐに気が散る、忍耐力の欠如、集中し続けられないなど)や、多動・衝動(じっとしていられない、絶え間なく話し続ける、人の話を遮る、危険なまでにせっかちなど)といったものがあり、社会生活で支障をきたすようになる。
・大人の注意欠陥・多動性障害(ADHD)が抱えやすい4つの悩みとその解決方法 : カラパイア
リスク遺伝子がたくさんあるほど発症リスクが高まる
研究者によると、ADHDと診断された人の遺伝的背景は、不注意や落ち着きのなさといった一般に見られるADHD的な特性とかなりの部分を共有しているという。ADHDと診断される遺伝子リスクを20,000人以上のADHD的な特性を持つ子供の遺伝子マーカーと比較してみたところ、両者に97パーセントという高い相関関係が見られたからだ。
こうしたかなり多岐にわたるADHDの定義間の相関は、病院でADHDと診断されるほどの症状は、一般に見られるADHD的な症状の連続的な分布のもっとも極端な形である可能性を示唆している。
要するに、リスクのある変異型を多く持っているほどに、ADHDを発症する危険性が高まるということだ。
症状も複雑で個人差があるため、誤解も多いADHD
ADHDにははっきり知られた原因がなく、また症状が数多く複雑であり、個人差も大きいために、いくつもの誤解がある、と研究チームは話す。そのために誤った俗説が流布している。例えば「子供がADHDになったらそれは親に責任がある」、「社会的なストレスがあまりにも大きすぎることが原因」だとか、「ADHDは病気ではない。子供に病気というレッテルを貼っているだけ」などだ。
今回の発見は、ADHD発症の原因についての理解を深め、こうした誤解を解く一助となることだろう。
また、それほど効果的でない上に副作用もある現在の治療法を改善し、患者にとって有効な治療を作り出すヒントにもなるはずだ。
ADHDに関連する遺伝子はまだまだ数多くあるはずで、大半はいまだに発見されていないままだ。
これらを明らかにするには、今後さらに大規模な研究が必要であり、研究チームは次回は最低でも10万人以上のサンプルが欲しいと考えているそうだ。
References:ADHD’s First Genetic Risk Variants Determined Through Large Genetic Study/ written by hiroching / edited by parumo
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コメント
2.
3. 匿名処理班
遺伝性ということになるのかな?
1.
4. 匿名処理班
遺伝子差別に繋がっていくような話だなぁ。
症状も判別方法もふわっとしていて原因もわからない、そんなものにふわっとした統計をとってみてもね。その遺伝子変異があったら実際にどの程度ADHDのリスクが上がるというんだろう。どうせ1%とかそんなレベルの話だろう。変異とかいう離散的な値で相関関係が97%出ましたと言われてもだからどうしたと。
5. 匿名処理班
ADHDがゲシュタルト崩壊
6. 匿名処理班
自分もADHDですが
筋トレしたら症状が治まりました
その前はやたら集中できるものを
やって抑えてた・・・・・・・・
でもこれやると本当にそれ以外
見えなくなり気づいたら9時間
経過してたなんて事もありました
7. 匿名処理班
ADHDの研究が進むにつれて、社会そのものの受容体制は今以上に整っていくだろうし、それが個人の考え・行動の変容に繋がるのも時間の問題かな。もちろん簡単なことではないけど、少しずつ実現に向かっていくしかないね。
8. 匿名処理班
〉要するに、リスクのある変異型を多く持っているほどに、ADHDを発症する危険性が高まるということだ。
多い少ないの差はあれど、変異型はほとんどの人が持ってはいるということかな。
まったく持っていないのも、それはそれでマイナス面があるのかもしれない。
遺伝子から変異型を取り除くという方向に行かず、うまく生かすやり方を考えられるようになるといいな。
9. 匿名処理班
遺伝というか組み合わせ次第で発動?
両親ともに健康だがそれぞれ因子を持っていたために、子供が先天的な疾患を持って産まれることがあるらしいから
10. 匿名処理班
欠点しかないように見えるけどADHDの人は大成功する人が多いというのも事実
多くのことができるよりも1つのことに集中できる人の方が実は優秀なのかもしれない
11. 匿名処理班
そろそろ宇宙人が接触してくるかな
12. 匿名処理班
自閉症スペクトラムの方も進んでるのかな
せめて感覚過敏さえ和らげば良いのに
13. 匿名処理班
>>8
おそらくそういうことだと思う。
元々一部ではアトピーやアレルギーレベルで遺伝するっぽいって言われてるようだしね。
定型同士の親の間にADHDが生まれるなんて珍しくないようだから、アトピー程度の認識で療育や対応ができる社会になればいいね。
14. 匿名処理班
※12
一度「自閉症児の感覚を体験できる動画」を見たけど、あれはつらい。
周りの人間が平気なのに、一人だけであんな世界に身を置いているなんて。
自分の子も自閉症なんだが、「本当に強い奴だ」としみじみ思うよ。
あれが少しでも楽になってくれるなら、と願わずにいられない。
ADHDの人も出会うけれど、こういう研究が一人でも人を救えるなら、一日も早くと願っています。
15. 匿名処理班
ADHDな私に朗報だわ。
今の薬は副作用が多くて治すための薬じゃないから
これでなにか画期的な治療法が別に見つかってくれると嬉しい。
いつ完成するのかな・・・そのころに私はまだ生きてるんだろうか
16. 匿名処理班
実際に診断されるADHDの原因は後天的(結局は間接的に遺伝子の仕業だけど)と先天的組でだいぶ差があると思ってた(で、最終的に出る症状が似てるだけだろうと思ってた)けど、
でもこの実験が正しいならそうではないんだろうな
あと一致具合だとちゃんと診断の精度も高いっぽいな
17. 匿名処理班
「戦場で英雄になるタイプの人間は、平和な都市では刑務所に入れられている」という格言があるが、
現代社会への適応が難しい性質だからといって排除することが正しいことなのかどうか、わからない。もしかしたら原始時代を生き抜くために必要な資質だったかもしれないわけで。
18. 匿名処理班
>>4
どうせ1%って部分だけ脳内だけで飛躍していて説得力がないぞ
非ADHDと対照してるんだからそんな割合しか発現しないなんてあり得ないのでは
19. 匿名処理班
ADHDが市民権を得てきたのは良いけど選民意識っぽいのが出て来てるのが心配
皆創造性に優れていて大成功する人が多い
ジョブズやアインシュタインを発達障害認定したりとか
定型発達者でも普通にある過集中を発達の専売特許にしたりとか
果てはギフテッド扱いとか…やめてよね
20. 匿名処理班
遺伝とか遺伝子ってワードが出るととたんに批判しだす人がいるなあ
ポリコレにウンザリしたアメリカ人の気持ちが少し分かる
21. 匿名処理班
※19
まあねえ、ギフテッド扱いとなると行き過ぎというか…
拡大解釈感はあるけども。
ただ「選民意識」って何処から来たの?
当事者としては、ただただ穏便に済ませて居たいのが本音なんだけど…
有名人を勝手に発達障害認定するのは愚の骨頂だけど
そう言う風潮見て、発達障害者が付け上がってる、選民意識を持ってる
みたいに思われるのはキツイなぁ…orz
溝が深過ぎじゃないか
22. 匿名処理班
※21
現実に居るからねぇ…
「欠点しかないように見えるけどADHDの人は大成功する人が多いというのも事実」というセンテンスを読まなきゃ書くつもりもなかったけど
自分もワークやグループに参加した事ある"当事者"だけど、一部にそういう思想有るのは 見てきたよ?
23.
24. 匿名処理班
遺伝子が問題なら解決は簡単だ
その遺伝子を持つ人間は去勢すればいい
元を絶たなきゃダメ
25. 匿名処理班
選民意識ってのは、ある一定の割合がある多数派グループに当てはまるものだから、何万人に一人の逸材となる可能性のある特徴を持つ人々は単純に少数派で、逆に差別される可能性の方が高いよ。同じ発達障害でも、そんな天才として名を残せない人の方が圧倒的に多数なんだから。
26. 匿名処理班
努力教の信者が遺伝子で左右されることもあるなんて事実を知ったら
拒絶反応を起こすのは当たり前
遺伝子は努力ではどうしようもない上に人の人生を大きく左右するから余計にイラつくのだろう
27. 匿名処理班
子供の頃よく一緒に遊んでた友達で典型的なADHDな奴がいたけど周りに適切に突っ込める奴がいれば特に問題にはならないんだよね
授業中は騒いでよく最前列の特別席にさせられてたけど
一時は特別席が3つになってて、先生よく頑張ったよなあと今になって思う
28. 匿名処理班
※21
多分、なんかしらのコンプレックスから変な幻想を抱いてるだけと思われ……
俺はADDのグレーゾーンだけど、俺がバイトで「ほんとにお前頭悪いなぁ」とか「お前は要領悪いから任せられない」とか言われてる状況を彼のような人が見たら、良くも悪くも発達障害に対する認識が改まると思うよ。
29. 匿名処理班
>>4
この記事を読んでふわっとしてると感じたら元論文を読んでみるといいよ。それに遺伝子の変異が離散的だからといって、形質が離散的かは関係ないよ。例えばヒトの身長は少なからず遺伝子に影響を受けるけど、連続的なばらつきがあるでしょ?それと同じだって今回の研究でわかったんだよ。
30. 匿名処理班
あくまでリスクの高低である以上、高いからそうだとか、低いからそうじゃないとか決め付けないようにする必要はあるな。でも、本人とか親のせいにしたがる人が多いから遺伝的要因だってことが判明するのはいいことだね。
31. 匿名処理班
※22
選民思想っていうか、お花畑になる人はいそう。当事者よりも親とか。
でもそんなに広がることはないと思う。アインシュタインが発達障害であったとしても、発達障害が全員アインシュタインみたいになれるわけじゃないことくらい、当たり前すぎだから。当事者自身はそんな期待されても困惑するだけでしょ。全体がそう思い込むなんてあり得ないから、心配しなくてもよさそうだけど。
32. 匿名処理班
※10
ASD(自閉症とかアスペルガー症候群)と勘違いしてない?
ADHDはむしろ集中できない人が多いよ
33. 匿名処理班
※6
分かります。
溢れるアドレナリンを消費するというか、
体に負荷を掛けてあげると何かポジティブなものが出てきます。
34.
35. 匿名処理班
※32
ADHDで過集中状態になる人多いよ
普通に症状の1つとしてある
ADHDにもいろんなタイプがいる
36. 匿名処理班
※32
asdとadhdの違いがどうも良くわからないという人はかなり多そう
自分も医者の先生からはアスペルガーと診断されたが
集中力なんて全くないし食感過敏で聴覚過敏だし不注意の極みだし
adhd用の薬のコンサータ様がすごい良く効くので手放せないし
いったいどっちなのかわけがわからない
37. 匿名処理班
根本的な治療、というか社会に適応できるレベルへの調整は遺伝子治療しか無いんだろうなきっと。
38. 匿名処理班
事実として、後天的な試みは症状や性格に影響を与え得る
遺伝が大きな要因となってるのは間違いないだろうが、遺伝がすべてのように扱うのは絶対に良くない
39. 匿名処理班
>>24
これが優生思想ってやつですね。
遺伝子が原因とされるとき、こういう考えの人が一定量いることを忘れてはいけない。
あなたや、あなたの大切な人にもその遺伝子あるかもよ。
40. 匿名処理班
すごいサンプル数だなー。いいなー。
研究費総額いくらかかってんだろ
41. 匿名処理班
>>24
この記事の内容によると全人類がその遺伝子を持ってるのではないか、という内容だよね
貴方の解決策を適応するとなると、貴方も含めた全人類を去勢しなくちゃいけなくなるけどどう思う?
42. 匿名処理班
サヴァンみたいなもんだろ。
内臓でも脳機能でも、
異常がありながら突出した能力を発現できるのは
ほんの僅かな人々だけだ。
大抵は、素質はあっても発現しないまま死ぬんだから
病状の緩和、治療方法の研究は必須課題だよ。
人類全体で見た時、生存において必要な能力の1つかもしれないが
それをコントロールする【選択肢を得る事】は重要だと思うね。
医者から自身の病気に起因するメリットとデメリットを聞いた上で
患者本人が治療やその方法を選択できるように。
43. 匿名処理班
研究が進むのは良いが根本的な問題は教育にあるだろう。
ADHDに限らず少数的要因で苦しむ人間は沢山いるからね。
治療法が確立されたところで症状を持つ人全員が治療を受けられる訳でもないし、症状を自覚せずに苦しみ続ける人たちも少なからずいることを考えるとやっぱり教育を変えていくべき。
正しく学び、受け継がせていかないと歴史は繰り返すだけ。
過ちによって遺されるものは傷ついた心、犠牲になる人、救われない現実。
直視せず闇に葬っている限りこの地獄は続く。
44. 匿名処理班
>子供の5パーセント、成人の2.5パーセントに見られるADHD
これは近年ADHDが増えているのか
以前は見逃されていてそのまま大人になってしまった人が多いのか
成人すれば治るってワケじゃないよね
45. 匿名処理班
※10
アメリカ人はADHDの子供が生まれると大喜びで自慢する人もいるそう
大手企業も積極的に雇ってるとこあるくらいだし
ただ日本では厳しいね海外だと楽に生きられるってよく聞くけど
日本社会では歓迎されないし軽い人はちょっと変わった人程度で
本来なら個性と捉えてもいいくらいの人でも生き辛い社会だと思うよ
46. 匿名処理班
※39 ※41
自分はADHDだけど※24も一理あると思うよ
ADHDはそれ自体が遺伝するというよりもADHDを発症しやすい遺伝子が遺伝するんだよ
そしてその遺伝子を受け継いだ子供がADHDを発症する確率は変異遺伝子の数が多いほど高くなる
全くADHDを発症しない遺伝子なんてのはないんだろうけど、ADHDを発症しにくい遺伝子と発症しやすい遺伝子があるのは確かで、その確率には数十倍の開きがあると言われている
だから優生思想ではないけど発症しやすい遺伝子を持っている人は子供の幸せを考えるなら子孫を残さない方がいいと思う、たとえ子孫を残したとしても子供が苦労するし周囲の人間にも迷惑をかけるだろうからみんな辛い思いをすることになる・・
47.
48.
49. 匿名処理班
※13
失礼ながら両親が定型で生まれてきた話は聞いたことがない
やっぱり遺伝的な要因が強いと思う
50. 匿名処理班
>>49
最近ADHDの子供が増えてきていると言うことは、生殖戦略的に有利なのか?
はたまた一夫一婦制による変化なのか、どちらなのかなぁ〜
と答えのない妄想にはまったりしています
51. 匿名処理班
うちの両親はADHDではない 祖父が未診断だがおそらくADHDでそっちから遺伝した隔世遺伝もあるようだ