オバマ大統領の下で2030年代半ばの有人火星飛行実現というビジョンが提示されているが、そのコストを大幅に削減する画期的な方法として、NASAでは人工冬眠が検討されているらしい。人工冬眠には既存の医療技術が利用され、宇宙飛行士の代謝機能を低下させることができるそうだ。目が覚めたらもう、そこは火星とか・・・
米アトランタに拠点を置くスペースワークス・エンタープライジズ社の航空宇宙工学者マーク・シェーファー氏によれば、医療に応用可能な冬眠の理論は1980年代頃に提唱され、2003年からは重傷患者の治療にあたって必要不可欠な技術となっている。大きな病院なら大抵の場合、医療用冬眠を患者に適用する手順を有しており、治療がなされるまで命をつなぎ止めるうえで欠かすことができない。
医療現場で使用されている冬眠システム The body cooling system
この手法に点滴による栄養補給を組み合わせれば、宇宙飛行士を冬眠させたまま最短で片道180日を要する火星まで送ることが可能となる。
ただし、現在のところ、医療の現場で患者が冬眠状態でいられるのはおよそ1週間が限界だ。これは医療においては7日以上冬眠を保つ必要性がないためであるが、火星有人探査計画においてはこの期間を90日、その後は180日へと延長させなくてはならない。
コスト面での恩恵は非常に魅力的だ。調理場や運動器具のほか、水、食料、衣服といった物資をこれまでより減らし、宇宙船も小型化できる。そうした小型化可能な設備の中には、骨や筋肉の減少を防ぐため回転して低重力を発生させる居住空間も含まれる。
NASAが出資したスペースワークス社の研究では、冬眠中の乗員のスペースは5分の1、食料や水などの消耗品の量は3分の1に削減可能であるとしている。基準ミッションでは、全体量を約440トンから220トンまで削減できるそうだ。これは重量物打ち上げロケット1機分にも相当する。
この人工冬眠の研究では、入眠と覚醒の双方が実験されている。入眠については、鼻孔から冷却剤を吸入することで行われるが、これはどうやらあまり快適なものとは言えないようだ。しかし、外部の冷却パッドを用いた方法よりも望ましい方法だ。と言うのも、身体の外部から冷却した場合、震戦や細胞組織損傷の危険性が高まるからだ。
このライノチル・システムで冬眠状態となる31.6〜33.8度まで体温を下げるには6時間もかかる。一方で、冬眠中の人間を目覚めさせるには、冷却剤の循環を止めるだけでいい。ただしスペースワークス社では、緊急事態に備えて覚醒を促す加熱パッドも研究されている。
また乗員全員を冬眠させる代わりに、2、3日の起床期間と14日間の冬眠期間というスケジュールを組み、乗員のシフトをずらすという手段もある。こうすれば常に1人は起きており、実験や機内のメンテナンスに当たることができるのだ。
シェーファー氏の説明によれば、人工冬眠は心理面での利点もあるそうだ。180日間狭い母船の中に閉じ込められるよりは、眠っているうちに目的地へ到着した方が気持ちも楽だろう。
長期間、安全に人工冬眠を行うにはまだまだ今後の研究が必要であるが、これまでのところ結果は上々だ。健康面でも、技術面でも今のところ大きな問題はないそうだ。
via:io9・原文翻訳:hiroching
▼あわせて読みたい
人間は冬眠が可能なのか?訓練された人間ならば可能(米研究)
まさかのコールドスリープ?雪中の車に2ヶ月間閉じ込められた男性が「冬眠」状態で生存していた(スウェーデン)
死を克服することはできるのか?人体冷凍保存研究所をたずねて(米ミシガン州)
世界の人体冷凍保存技術の舞台裏
科学者やジャーナリストが考える「科学がいまだ解決できない24の難問」
コメント
1. 匿名処理班
こっちみんな!
2. 匿名処理班
よく映画とかでも見るけどさ、床擦れとかしないのかな…
3. 匿名処理班
確かに180日狭い宇宙船の中はキツイな。
冬眠失敗→永眠とかにならないように、確実な研究をオナシャス!
4. 匿名処理班
無重力空間での筋力低下は著しい。同様に寝たきりというのも筋力低下の要因となる。それで火星に着陸して活動できるのだろうか? 「宇宙空間における長期滞在」という観点では、コールドスリープが解決できる問題はまだ限定的である。ハードSFファンにとっては是非とも実現してほしいものだが。
5. 匿名処理班
特別な装置が無くても熊なら毎年やっている。
訓練された熊を宇宙飛行士にしたほうが早そう。
6. 匿名処理班
HAL! 扉を開けるんだ。HAL! … HAL!!
7. 匿名処理班
※2
無重力。
浮いてる状態でどうやって床ずれできるんだ?
8. 匿名処理班
くまもんには冬眠してる時
筋力が低下しないと聞いた事がある
瞬時に活動する為遺伝子にそう組み込まれてるらしい
くまもんの冬眠遺伝子を見つけ出して
人間に移植したほうが安く済むかもね
冷凍による冬眠は危険な感じがする。
あとどちらにせよ宇宙船には必ず1人は
起きてるクルーが安全性状、必要だろうね
9. 匿名処理班
火星まで片道180日じゃ着かないだろ
なんか別の数字と間違ってないか
10. 匿名処理班
コールドスリープと聞いて真っ先にPeeping Lifeのオタク君を思い出した
11. 匿名処理班
サムネで吹いたw
12. 匿名処理班
そこまでして生身の人間を火星に送り込む意味があるのかな?
生きて帰ってこれる可能性も低いというのに。
13. 匿名処理班
眠るのに冷やすって、寝冷えになりそうで違和感がある。体温が33程度になったら寒くて眠れそうもない
14. 匿名処理班
※15
他の生命体は銀河間を旅行すらしてるというのになにをいう
目覚めたら100年経ってて、地球に戻ったら文明や知識についていけなくてサル扱いは嫌だ
15. 匿名処理班
宇宙ドラマみたいに物質転送や航行時間短縮装置も
ないと人工冬眠だけでは厳しいと思う
16. 匿名処理班
火星について目覚めたら自分以外のクルーが永眠してたら…
17. 匿名処理班
情報を収集するだけなら遠隔操作できる高度なロボットでもいいと思うけどなw
人間が行く必要性は無いと思うがw
18. 匿名処理班
倫理的にもパイロットは火星から帰って来なきゃならないんでしょ?
行きはまだマシで帰りが怖い
19. 匿名処理班
早く飛ぶ宇宙船を開発したほうが良いと思う
20. 匿名処理班
長期の宇宙旅行にコールドスリープ技術と
高度なVR技術は欠かせないだろうな
21. 匿名処理班
目が覚めてから正常に活動出来るようになるまで
かなり時間がかかりそう…
22. 匿名処理班
一手でもトラブルがあったら恐ろしく悲惨な状態になるよな
自決用の手段だけは備えておいてやって欲しいものだ
23. 匿名処理班
実はもう火星への移住は行われているのである
既に、数万いや数十万人はいるであろう
それは米国地下基地にあるテレポーテーション装置からわずか30分で火星へいける
オバマは若い頃、既にいっているのである
信じるも信じないもあなた次第
24. 匿名処理班
いわゆるコールドスリープと違って心臓まで止まるわけじゃないみたいだな
文字通り「冬眠」が近いのか
25. 匿名処理班
※4
なんかの映画で冬眠失敗して永眠してたやつがいたな・・・
26. 匿名処理班
それで過酷な火星の任務から、安穏とくらす地球人に八つ当たりして、
火星の騎士達が憧れの住まう青い星に攻めて来るんですね
元々同じ地球人とはいえ、住むところが変われば、国や共同体の意識も変わる
多国籍の人々が打倒地球で一つに結びついてしまうんだ
技術的条件が揃えば 星間戦争ってきっと思ったよりも簡単におきてしまうんだろうなぁ
27. 匿名処理班
高重力と仙豆を用意して、ずっと鍛え続けたほうが有意義じゃないか?
28. 匿名処理班
ヒキニートならゲーム与えとけば180日ぐらい狭い空間でも余裕だ
ただ使えるかどうかは別だ
29. 匿名処理班
『火の鳥』宇宙編もそんな話があったな
30. 匿名処理班
記憶とか認知障害とか出そうだなあ。
31. 匿名処理班
※29
映画「猿の惑星」(1968年公開)のマリアン・スチュアート中尉(ダイアン・スタンレー)です。
32. 匿名処理班
凍死しないの?
33. 匿名処理班
その前にNASAは月と火星にある巨大人工物について真実を公表せよ
34. 匿名処理班
※17
つ「マン アフタ− マン」
35. 匿名処理班
時代はパーシャル
36. 匿名処理班
コールドスリープの実験台になるのって嫌だよね。
37. 匿名処理班
180日間寝てたとして
その180日間分歳をとるということになるのかね?
火星に行くだけで精一杯だな
38. 匿名処理班
コールドスリープを実現させるには、組織が破壊されるのを何とかしないといけないな。あと心臓をどうするか・・・・。
39. 匿名処理班
もう雷電みたいなサイボーグでいいんじゃないか?
40. 匿名処理班
※8
体を固定してるでしょw
41. 匿名処理班
宇宙軌道エレベーター見たいから、長期間冬眠したいな。
42. 匿名処理班
栄養が足りていれば冬眠中に筋力が低下しないのは
熊の冬眠を見ればわかる気がするが
老化を遅らせることは出来るのだろうか?
43. 匿名処理班
※45
無重力でも床ずれは起きるよ。局所的な圧迫が原因だから。まあそんなのは固定の仕方次第だと思うけどね。むしろ無重力で180日も動かなかったらカルシウムが逃げるので冬眠カプセル内は遠心力による人工重力発生させるんじゃないのかな。そうするとやっぱり床ずれ起きるなw