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透明なサルパの中に潜んでいたのはなんとタコ!ダイバーが奇跡の遭遇

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(著)

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Image by Istock Flo Li
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 アメリカ、南カリフォルニア沖の澄んだ海で、透明な樽のような体を持つ海洋生物サルパの中に、なんとタコがすっぽりと入り込んでいた。

 このタコは「アミダコ」 という非常に珍しい種類で、外洋に生息するため人間の目に触れることは滅多にない。

 さらに、サルパを宿借りする個体となるとさらに希少で、この奇妙な共生行動が記録されたのはわずかしかないという。

 なぜタコはわざわざ他の生物の中を住処に選んだのか。そこには厳しい自然界を生き抜くための、驚くべき生存戦略が隠されていた。

サルパに違和感、よく見たらタコが入ってた!

 水中写真家のヘンリー・クーパー氏は、南カリフォルニアの海岸近くでフリーダイビングを楽しんでいた。

 その際、クーパー氏はゼリー状の不思議な生物が漂っているのを見つけた。

 その生物は体が透明で、内部にはオレンジ色の器官が見えており、オオサルパ(Thetys vagina))であることがわかったが、微妙な違和感がある。

 そこでクーパー氏は慎重に距離を詰めると、なんとサルパの中にタコの姿が!

 このタコは「アミダコ(Ocythoe tuberculata)」という種で、サルパの体を間借りして、移動式住宅のように利用していたのである。

海の掃除屋サルパの生態

 サルパは世界中の海に生息する尾索動物だ。濾過摂食者(ろかせっしょくしゃ)で、透明な樽型の体を使って水を吸い込み、植物プランクトンをこし取って食べる。

 この水を噴き出す力はジェット推進の役割も果たしており、自力で海中を移動することが可能だ。

 サルパは「海の掃除屋」として地球環境を支える重要な役割を担っている。

 1日に数千リットルもの海水をろ過し、植物プランクトンを大量に摂取する。

 その際に出る排泄物は、大気中の二酸化炭素を取り込んだ炭素を豊富に含んでおり、高密度で重いため、他のプランクトンの死骸などよりも速いスピードで深海へと沈んでいく。

 この仕組みは生物ポンプと呼ばれ、炭素を深海へ隔離することで、地球の気候を調節する一助となっているのだ。

 サルパは、一匹で生活する単独個体が、自らのクローンを鎖のように長くつなぎ合わせた連鎖個体の世代を生み出し、その連鎖個体が受精して再び単独個体の子供を産むという世代交代を繰り返すというユニークな生態を持つ。

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Image by Istock Damocean

 今回、宿主となったオオサルパは、サルパの仲間でも最大級の種類だ。単体でも全長30cmを超える大きさに成長する。

タコ界でも特別な存在のアミダコ

 一方のアミダコは世界中の熱帯から亜熱帯域にかけての暖かい海に広く分布している。日本近海でも太平洋側や日本海側で時折その姿が確認されるが、水深200mより浅い表層を一生漂って過ごす外洋性のタコだ。

 生物学的にも非常に特異な性質を持っており、タコの仲間で唯一、体内に浮袋を持っている。

 一般的なタコは海底で生活するため浮袋を必要としないが、海中を漂って暮らすアミダコは、この浮袋を使って浮力を調節し、効率よく移動している。

 さらに、アミダコは卵を産み落とさず、メスの体内で卵を孵化させてから子供を産む卵胎生という繁殖形態をとる。

 一度に10万から20万個もの卵を抱えるメスは、全長90cmを超える巨体に成長する。

 一方で、今回サルパの中にいたようなオスは最大でも3cmほどにしかならず、メスの10分の1以下の大きさという極端な雌雄差がある。

 なぜこれほどまでに極端なサイズ差が必要だったのか。そして目印の少ない広大な外洋で、小さなオスたちがどうやってメスやサルパと出会うのか、その真相はまだよくわかっていない。

アミダコがいるサルパを見つけられたら超ラッキー

 クーパー氏はサルパもアミダコも見たことがあるが、両者が一緒になって泳ぐ姿を見たのは初めてだったという。

 彼が調査を行ったところ、この行動が科学的に確認された例は16年間でわずか2例だったという。

 しかし、日本近海では近年、熱心なダイバーや研究者によって貴重な瞬間がいくつか報告されている。

 2018年には静岡県沼津沖で水中写真家の峯水亮氏が撮影に成功したほか、幼魚水族館館長の鈴木香里武氏も同年にサルパに入ったアミダコの採集記録を公開している。  

 さらに、2024年の冬には伊豆半島にある大瀬崎でも、科学ジャーナリストの山本智之氏によってサルパに入るアミダコが撮影された。

 黒潮の影響を受ける日本近海は、こうした外洋性の生物が姿を見せる貴重なフィールドとなっている。

アミダコがサルパに入り込む理由

 アミダコのオスの成体や子供(幼体)は、サルパを巧妙に利用する。なぜサルパの中に入り込むのだろうか。

 アミダコは、サルパの内部に入り込む際、その主要な器官を食べて中を空洞にしてしまうことがある。

 サルパを乗っ取り、自分専用のシェルターへと作り替えているのだ。

 この行動には、サルパのジェット推進を無料のタクシーとして利用して移動の体力を温存する狙いや、硬い外壁を鎧にして外敵から身を守る目的があると考えられている。 

 知能の高いアミダコがサルパを道具として使いこなす姿は、外洋という過酷な環境を生き抜くための究極の知恵といえるだろう。

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この記事へのコメント 18件

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  1. 通常の姿を知らないから凄さがよくわかんない

    • +5
  2. サルパから見ると災難以外のなにものでもない!
    外洋ってほんとに水の砂漠みたいな場所と聞くから、使える物をなんでも使うヤツが生き残るってことなのかなあ
    生き物の不思議は尽きる事がなくて素敵だ

    • +16
    1. 命名者の時代では「鞘」という意味で、娘フラワーの意味は無かったらしい

      • +5
  3. 共生みたいなほんわかとした話じゃないのね
    自然厳しい

    • +15
    1. サルパ側に被害が無ければ片利共生で済むけど
      中身を食べてしまうとなるともう寄生の領域だね

      • +14
  4. エイリアンみたいなタコだ
     
    世の中には知らない生物が沢山いるんだなあ

    • +8
  5. 器官を食われたサルパが平然と泳いでいられるものなのか

    • +17
  6. タコって進化的には自分から殻を捨てたのに代わりの物は欲しがるから、ちょっとヤドカリ的だよね。

    • +17
    1. ああ、そうか
      祖先はアンモナイトだった
      これって蛸壺にタコが入る理由になるよね
      殻を作らなくても自然に代わりがあったわけだ、それをタコは利用して生きていたわけだ
      そもそもこんなツボみたいな生き物が居る方が驚き

      • +3
  7. じゃ長~く繋がってるサルパって、近親交配を含めた家族ってこと。。。?

    • +3
    1. つながっている状態のものは、無性生殖のクローンですよ
      無性生殖で増えたそれぞれの個体がつながったままで有性生殖をするそうで
      メスとして成熟してから時間をおいてオスにもなるそうです
      時間差を設けることで別の個体から精子をもらうわけですね
      受精した卵子は、個体内にとどまり成熟してから出ていくというのですから
      アミダコと同様の卵胎生であり子持ち家族ともいえますね

      • +4
    1. 動画では、水槽に閉じ込められたのを察知したのか
      タルパから出て、周りを偵察しているように見えます
      そして、あきらめてタルパに入ったようにも見えます
      タルパを見失う危険性がなければ出入り自由なのでしょうね

      • 評価
  8. パッシブ外骨格のタダ乗りはいただけませんね…

    • +3
  9. 矛盾しているようで成立しているのが自然だからなあ。

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