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アメリカ・ニューヨークのタクシー業界における14の面白裏事情

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(著) (編集)

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 私がアメリカでタクシーを利用して、まず最初にびっくりしたのが「自分でドアを開けて乗り込む」ことで、次にびっくりしたのが、「自分でドアを開けて出ていく」こと。待ってればドアが開いて着いたらドアが開く日本式のタクシーに飼い慣らされていたので、しばらくは気まずい空気が流れる沈黙の時間を作り上げていたもんだ。

 そんなこんなで、アメリカ、ニューヨークでは、毎年5万人以上のイエローキャブドライバーたちが、住民や労働者、観光客を乗せてニューヨークの町中を走り回っている。タクシー1台につき、年間7万マイル(11万2600キロ)走るというドライバーたちは車を走らせるだけでなく、さまざまなことを見聞きしている。

 40年のベテランドライバーであり作家であるユージーン・サロモンは、著書『ニューヨークのタクシードライバーの告白』の中で、ニューヨークタクシー業界の知られざる裏側の世界を教えてくれた。

1. 警察向けの秘密のシグナルがある

 1970年代に、ニューヨークの犯罪発生率がうなぎ登りだったころでも、タクシードライバーが強盗のターゲットになることはそれほどなかった。だが彼らは用心している。なにか危険の兆候があったら、ダッシュボードの下にある非常ボタンを押せば、最寄りのパトカーを呼ぶことができるようになっているのだ。

 ボタンを押すと車の前後の黄色いライトが光る。これがパトカーを呼ぶ合図だ。身の危険が迫った場合はもちろん、無賃乗車されそうな危機に陥ったときにも使用しているという。

2. 乗車拒否は合法

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 もしあなたが、ニューヨークの歩道でタクシーを待つのにちゃんと立てずにふらふらしていたら、タクシードライバーには乗車拒否する法的権利がある。彼らは酔っぱらいやヤバそうな客は無視することができるのだ。その身振りで酔っぱらいはすぐにわかるそうで、彼らが車に乗り込んでくる前にドアをロックしてしまうのだという。

 店のウエイターなどに抱きかかえられている客を乗せようものなら、酔っぱらいをタクシーに押し込んだ者はたちまち姿をくらましてしまうことが多いという。

3. 泥酔した客はふりだしに戻すことができる

 意識が半分とんでいるような泥酔客は、乗せた場所に戻すことができる。車を1ブロックぐるっと回して、最初に追い出されたバーやクラブへ泥酔客を戻すのだ。

4. 客を捕まえるために毎日が公道レース状態に

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 多くのイエローキャブは、通りで客の争奪戦をしている。小さな町では予約送迎がほとんどだが、個人タクシーの運転手は料金を稼ぐため、我先にと積極的に客をつかまえに乗り出さなくてはならない。

 ニューヨークは流しの客がほとんどだそうで、最初に客をつかまえた車が勝ちとなる。2ブロック先で手を上げている人影をものにしようと、熾烈な競争になる。まるでスローモーションでナスカー(全米自動車競走協会)レースをしているようだという。

5. タクシーを停めるのにはコツがある

 タクシードライバーの注意を引くのに、アリ地獄に飲み込まれているがのごとく、必死に手を挙げる必要はない。まず、ちょっとだけ道路に足を踏み出す。それからはっきりわかるように、腕、状況によっては体の別の部分を動かす。最後に、できれば運転手としっかりアイコンタクトして、わたしが乗りたいのはほかの車ではなくて、あなたの車よ、という意思表示をする。両手がふさがっていたら、鼻を使って呼び止めることも可能だという。(ホントか?)

6. 行くあてもなく、なくなんとなくタクシーに乗る客がいる

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 めったにないことだが、なんの目的もなくタクシーに乗り込んでくる客もいるという。ある女性は、”ただ走って”と言うだけで、一時間近くも車を走らせたあげく、”わたしを乗せた場所に戻って”と乗った場所で降りていったという。

7. タクシードライバーに嫌われる乗客・好かれる乗客

 座席の前後を隔てている仕切りを無言で閉めること。これは運転手に対して無礼な行為であり、意味のないことだという。仕切りを締めても会話はすべて運転手に筒抜けなのだ。

 他には、車に乗り込むときも連れとおしゃべりをやめない客、チップの習慣を知らない観光客、安全運転をほのめかす客だそうだ。

 逆にニューヨークのタクシードライバーを喜ばせるには、延々とCMや番組を垂れ流す、座席の後ろに取りつけられているタクシーテレビを消すことだそうだ。

8. 一人客が助手席に座りたがるのはヘン

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 一人客で、運転手の隣に座ろうとする人はまれだ。普通は客のほうが嫌がるからだ。ドライバーとの距離が縮まることで二人の間の関係が変化する。運転手が前で乗客が後ろという位置づけは、一定の仕事上の関係を意味している。一方で、両方とも前の座席に座ると、自動的に友人のような関係が意識され、ほとんどの乗客は居心地が悪いはずなのだ。

9. ドライバーがあなたの母親に電話するかもしれない

 タクシーの忘れ物で多いのがスマホ・携帯電話である。充電がまだ残っている間は、持ち主が自分の番号に電話すれば取り戻すことができる望みがある。親切なドライバーなら、携帯にロックがかかっていなければアドレス帳から誰かに連絡をするだろう。その場合、「母親」として登録されている番号に電話をするという。たとえそれが「母親」という名前で登録している母親以外の誰かでもだ。

10. タクシーの車両はたった3年で引退

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 タクシードライバーに決まった引退年齢はないが、町を走るタクシー車両は、法律により3年ほどで引退しなくてはならない。走行距離が20万マイル(32万1800キロ)を越えるとタクシー車両として使用できなくなるからだ。ただし、5年か7年に延長できるさまざまな例外はある。

 お払い箱になったタクシーはどうなるかというと、パーツに分解して個人の修理工場に売り払われ、修理された後に個人の関係者が買い上げる。それを買い上げる人のことは業界用語でサッカー(sucker)と呼ばれていて、たいていひどい目にあっている。だが、それは人生の教訓を受けることでもあり、取引のうちなのだ。その教訓は、「どんなことがあってもタクシー修理工場のオーナーから中古タクシーを買うな」ということだ。ニューヨークのタクシーは、3年も走っていると結構なガタがきていて、修理してもすぐにダメになる。

11. タクシーの中で着替える客がいる

 ときどき、電話ボックスの中のクラーク・ケント(スーパーマンのこと)のような乗客を乗せることがあるという。警察がおもしろがるようなさまざまな理由で、タクシーの中で着替えたがる客のことだ。セントラルパーク南から乗ってきた身分の高そうな女性客は、11番街に行くまでの間に車の中で町歩き風のカジュアルな服装に着替えたという。まわりはビジネス街だったので、彼女はそれに見合った格好をしなくてはならなかったのだろう。

12. 乗客が急いでいても、実は運転手は気にしていない

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 運転手に「急いで」と頼むのは、急いでくれたサービスに対するエキストラを払うつもりがなければ言うだけムダな行為だ。ほとんどの乗客はそんなつもりはない。

 運転手が違反切符を切られる危険を冒したり、曲芸みたいな運転さばきを見せたりしても、ほとんどの客はそれにふさわしいチップを払わないどころか、平均またはそれ以下のチップしか払わないのが通例だ。それを知っている運転手は無理して急いで運転しようとは思わない。

13. 他のタクシードライバーと秘密の合図

 イエローキャブにはクラクションを使った特別な合図があると噂されているがそれはない。しかし、前述の非常ボタンを押し、黄色いライトを点灯させているタクシーが、そのライトを誤ってつけていた場合にそれを教えてあげる秘密の合図がある。

 運転手が片手を上げて、何度も素早く手のひらを開いたり閉じたりしていたら、”おまえの車の非常ライトがついてるぞ”という意味だ。こうした誤報は警察から違反切符を切られることになるので、お互いに助け合うのだ。

14. 銅像のために車を停めることも

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 タクシードライバーは、通りにいる潜在的な客を素早く見つけ出す本能が体に染みついている。誰かが手を上げているような姿をちらっとでも見かけると、すぐにブレーキ踏んでしまう。

 その特殊能力は人ならざるものにも適応されてしまうようで、手をあげた銅像を見かけると、客と思ってうっかり車を停めてしまうという経験を持つ運転手は相当いるようだ。しかも1度や2度じゃないという。

via:14 Behind-the-Scenes Secrets of NYC Taxi Drivers/ written konohazuku / edited by parumo

 日本のタクシー業界にもいろいろな裏事情がありそうだよね。私が小耳にはさんだ話だと、青山墓地付近で仮眠を取ったタクシードライバーは、休憩後に車を走らせると誰も乗せていないはずなのに後部座席に人のようなものが乗っていて、バックミラーにその人影がしっかり写っている…というものなのだが。

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この記事へのコメント 27件

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  1. 日本でも助手席乗りたがるやつちらほらいるらしいね。
    変とかよりも恐怖を感じるって。

    • 評価
  2. ピカデリーサーカスまで10分で行けたら
    もう1シリング出すよ

    • +6
    1. ※2
      ダンナ、どうせなら半ギニーにしてくんな!

      • 評価
  3. そういえばパトカーやFBIなどの公用車はよく売ってるけど
    完全状態のタクシーだけは見たことがない。
    おまけに売っていても5000円という高級フグコースで買える値段
    しかもクラッシュ実験で破壊された車でも20万以上付いたのに
    日本車が70万キロでようやくお役目御免しても使えるのを見て
    畏怖の目でビビるのが少しだけわかる気がした

    • 評価
  4. どっちにしろ既存のタクシー業界なんてUberで潰れる運命

    • 評価
  5. 行き先告げたら「You talkin’ to me?」って言い返される
    ・・・かも知れない。

    • +2
  6. 知人の結婚式が郊外の式場でありましてね
    タクシー分乗で二次会の会場に移動したんですよ
    その時に憧れのアレを人生で初めてやりました
    「運転手さん、前の車を追いかけてくれ」

    • +1
  7. 英語が通じない運転手がいると聞いた事がある

    • 評価
  8. 2と3は日本でも合法化して良いと思うの。

    • -10
  9. >チップの習慣を知らない観光客
    タクシー乗るのにもチップいるの? めんどくせー

    • +3
  10. 地方出張時の運ちゃんグルメ情報はマジで当たる

    • +26
    1. ※10
      現役のドライバーだけど、追う側も追われる側もやったことありますww
      追う時は必死になって追うだけだけど、追われる時は後ろがちゃんと付いて来てるかどうかちょいちょいバックミラーで確認してた
      「前の車を追って」だなんて刑事ドラマみたいだな、なんて思ってたけど、実際結構あるあるなんだよね

      • 評価
  11. 酔っ払いは迷惑だしタクシーにも電車にも乗せなくていいよ
    徒歩で帰れ

    • +3
  12. 広告屋をやっているけど、深夜の帰宅ではタクシーの運ちゃんに景気とか流行りモノの話を振ってみてます
    けっこう良い情報が手に入ったりする
    どこぞの業界は羽振りが良いとかそういう話ね

    • +7
  13. 自動運転になったらどうなっちゃうんだろうな。

    • +12
  14. タクシーに限らず他のサービス業に共通するものがあるなー。これ見よがしに煙草を買おうとする未成年とか、アル中の廃人なんかは一目見ただけですぐわかる。接客業は人を見る職業でもあるからね。

    • +4
  15. タクシーの前に仁王立ちして止めようとする酔っ払いがいるんだよねぇ。
    まあ、誰も止まってくれなくてキレてるんだろうけど、ビックリするよねぇ。

    • +6
  16. 俺は20代の時、
    都内で10年タクシーやってた。
    当時は若い運ちゃんは珍しがられたなー
    さて、流しだとぶっちゃけ公道レースさながらはマジだ
    実は客が見える前にすでにポールポジション争いがされてる
    カーナビない時代で地理を都内ほとんど覚えてたw凄かったよ
    乗車拒否は日本もできるようにしてほしいな!
    俺の時はいなかったけど、
    今の時代は、ふざけた因縁吹っ掛け、暴行する客もいる。
    客もマナーや秩序を教育せにゃならんよ

    • +2
  17. >10. タクシーの車両はたった3年で引退
    日本だと、一般車両のコロナとかコンフォートみると感動するけどな。
    あれ、割と見かける割に、
    一般車両バージョンは、すごいレアなんだもの。

    • 評価
  18. どんなベテランでも初心者の時代はあるもので、横浜に住んでいた時、新米の運転手の文字道りのバックシートドライバー をやりました、

    • +2
  19. 面白い記事だったのに、最後の青山墓地云々で台無し。
    蛇足だってなんでわかんねえかな。

    • +1
  20. NYで憧れのイエローキャブを沢山利用したんだけど、英語がイマイチの運転手も多かった。ちょっと会話したらドライバーにはプエルトリコからの移民が多いんだって教えてくれたよ。
    だもんで、目的の所在地も不慣れで道順もあんまり。キャブとすれ違う時にちょっと車止めてドライバー仲間と道順の確認しちゃうもんで、その度後方から盛んにクラクションが。ぶっきらぼうだけど親切だった。
    チップの時だけ笑顔ね。

    • +10
  21. 3年で引退させるんだ。
    相当ハードに使われるんだね。

    • +2

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