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ナチスの人体実験の免罪符として例に出される、米国の囚人を使ったマラリアの人体実験

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(著)

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 1940年代前半、アメリカでは恐ろしい人体実験が行われていた。イリノイ州シカゴにあるステートヴィル刑務所では、抗マラリア薬の効果を調べる為、マラリア媒体を持つ蚊に囚人らを吸わせ感染させていたのである。この研究は功を奏し、死亡者がでたものの、かなりの研究成果が出たという。

 現在では非人道的とされる人体実験だが、かつて米国では様々な人体実験が行われていたのはぬぐいようのない事実である。

 ステートヴィル刑務所で行われたマラリア研究は、囚人を使った実験の倫理性について議論する際の焦点となった。

 マラリア研究は、世界第二次大戦中に効果のある抗マラリア剤を得るために行われた。この実験は人間以外の動物では適さなく、また申し込む人もほとんどいなかった。

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 このような背景の中、囚人たちを対象に実験を行うことになった。実験を行う前に、囚人達は以下のような説明を受けた。「この試験に参加すれば、刑期が減り、特権が得られ、特別な治療も受けられる。」 と。しかし、マラリア熱にかかり死んでしまう可能性も高かった。

 被験者として囚人は格好の材料であった。行動を制限できるだけでなく、一日中監視されている。そして、例え死んだとしても気に掛けるものはほとんどいない。実験に参加する囚人たちには実験に費やした時間を刑期の削減に充てられことが約束された。

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 最終的には441人もの囚人たちがこの試験に同意し、参加した。「私はこの試験の全てのリスクを負います。」囚人たちは書類にサインし、実験が始まった。

 初日、マラリア原虫を持つ蚊を使い、10回血を吸わせた。用いた蚊は生命力が強く、また実験を行った場所には1名の医師を除き誰もいない状態にし、蚊に囚人の血を吸わせた。囚人の中には、悪名高い誘拐殺人犯、ネイサン・レオポルドもいた。彼は被験者としてだけではなく、実験中の医療助手・医療奉仕者としても働いた。

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 実験期間中、彼だけでなく多くの囚人たちがアシスタントやボランティアとして動いていた。お互いに様子を見たり、抗マラリア剤を管理したり、またマラリア熱にかかった者の看病もした。薬が原因で心臓発作が起き、1名の被験者が亡くなった。その原因は看病不足とされたが、、その日に接種した薬が原因で心臓発作が起きた可能性が高い。

 死者も出たが、最終的に実験は大きな成功を収めた。この試験は、その後約30年間に渡って行われた。

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 皮肉にもステートヴィル刑務所の実験は、ナチス軍が強制収容所の収容者を対象として行っていた人体実験を正当化する材料として使われていった。

 第二次大戦後、ドイツでは戦争犯罪を裁く国際軍事裁判「ニュルンベルク裁判」が開かれた。収容者を使って人体実験したとして、医師たちは裁判にかけられた。裁判でナチス保守派と医師らは、自分達の行った実験はアメリカの刑務所で行われた囚人を使った実験と全く異ならないと主張した。

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 裁判で、連合軍側は、アメリカの実験の場合は囚人たちは自らの意思で同意書にサインしたが、ナチスが行ったものは、強要されたもので自発的な参加ではないことを主張した。

 これに対し、ナチス保守派は、刑務所での実験は自分たちが行った実験と全く変わらなく、誰も医師たちを咎めることはできないと反論した。これに対し、連合軍側は刑務所での実験はナチスで行われたものとは全く異なり、医師たちは罪をつぐなうべきであると主張した。

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via:io9/原文翻訳:Copris

 この主張は法廷で支持され、米国内でもその主張が世論となった。当時の米副大統領により発行された、大学で医療試験を行う際のシステムに関する報告書もあってか、その後30年間、囚人を使った医療研究が続けられてきた。

 その後、ゆっくりではあるが、世論は変わって言った。1970年代に入りようやく、囚人を使った本人の同意なしの医療試験は非倫理的であると考えられるようになっていったのだ。

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この記事へのコメント 36件

コメントを書く

  1. うぐう、自分にはこれの是非を簡単に言うことはできん。
    この実験のおかげでその後何人もの命が救われたということを考えるとな…
    今の自分たちは間接的にこの知見の恩恵を受けているのは確かだろう。とくに熱帯地方に住む人、行く人は具体的に。

    • +6
    1. ※1
      タスキギー梅毒人体実験のようなナチス並の最悪な人種差別やらかしたアメだし、批判されても反論できんだろうと俺は思う。

      • -3
  2. そらたくさん人殺したほうが正義な戦争ですからね
    だから必死こいてどこも殺し合いするわけですし
    難しいねーでも同じことしても罪の重さが違うってのは法律違えば今でも起こり得ますしねー中国での麻薬密売とか

    • 評価
  3. 結果オーライとまではいかないよな
    強制と自主的じゃ全く意味も違うし、場合によっては結果も違ってくるわけだし。
    今後大きな戦争があったときにこういう非人道的なことはあってはならないよ

    • +10
  4. アメリカは被験者に一切了承をとらずにプルトニウムを注射して反応をみる実験もしてたはず。妊婦も対象にして。あと1960年代に沖縄で生物兵器の散布実験もしていた。これも実施していた事自体一切公表せずに

    • +46
  5. 被曝させて死ぬまでを観察する実験もやってたよね
    あれは病気の末期患者使ってたけど

    • +48
  6. 現代の医療も暗い歴史と人体実験に支えられて
    進化したといっても過言じゃないね。

    • +7
  7. 死刑犯は死なないならばとでもいいと考えて実験を受け、そのあと死んでもいいと……

    • +5
  8. 強制じゃなかったら、あった方がいい制度じゃね?
    合意の上なら双方利益があるんだし、ちゅーか囚人はただ檻の中で過ごすだけの税金食らいよりは、
    何らかの形で社会に貢献しなくてはいけないと思う。
    一般人が社会に貢献して生活してるんだし。

    • +1
  9. 良くも悪くもチャレンジ精神旺盛だよな。

    • 評価
  10. アメリカの実験は犯罪を犯した囚人でナチスの方は人種差別による囚人だからこの時点で免罪符は通用しない
    しかもアメリカの方は囚人に選択する自由もあった。刑期が短縮されるならそれは取引の成立ということ
    ナチスの実験と一緒じゃない

    • +16
  11. 原爆投下、東京大空襲、人体実験などを正当化しておいて
    よく日本、ドイツの軍人たちを平気な顔して裁けたよね。
    アメリカ人がどれだけ自己中心的、覇権主義的であるかがわかる。

    • 評価
    1. 色々思いながら記事読んだけれど、※12で全部吹っ飛んだ

      • +4
  12. 医学に多大な功績を与えた人を人とも思わない鬼畜な実験なんだから、どっちが正しいとかどっちが間違ってるとか関係ないと思うけども。
    でも、同意があるから正しいと思うなら、今の世で同じ実験出きるんだよな。
    出来ないならナチスと同レベル。

    • 評価
  13. 放射性物質の人体実験や、ナチス「が」真似た「優生学的手術」はどうした合衆国?

    • +4
  14. 1947年に出来たニュルンベルク綱領ってのに
    アメリカも調印しているんだけれど、
    あいかわらずmkウルトラ計画とかやらかしてるからなぁ。
    ttp://med.kyushu-u.ac.jp/recnet_fukuoka/houki-rinri/nuremberg.html
    1.被験者の自発的な同意が絶対に必要である。

    • +53
  15. 同じ国のお話で、犯罪者でもない非戦闘員を砂漠のど真ん中に詰め込んでってのがある
    気温差激しい砂漠の掘っ建て小屋に人間ぶち込んだらどうなるか、やらなくても結果が見えてますどね

    • +6
  16. ”致死量”ってナチスの人体実験があったからこそだからなぁ

    • 評価
  17. 本人の同意があったのかなかったのか記事の文章は矛盾している気がする。明確で正確なリスクの説明がなかったってことなのかな?

    • +9
  18. アメリカもやってるから俺達だっていいじゃないという理屈は通らない
    ただアメリカのほうも裁かれるべき

    • +1
  19. ぶっちゃけ本人が拒否しなければやればいいと思うよ。或いは日本には死刑制度があるけどこれの代わりに人体実験刑にすればいい。どうせ殺すなら役に立てようぜ。もったいない精神だよ。まあ本人にとっちゃたまったもんじゃないだろうけど。

    • +3
  20. そう思うと先人達には感謝だよな、
    この食べ物が食えてこれは食えないなんてまったく未知だったのだから

    • +1
  21. 死ぬ可能性のある人体実験に何百人も同意する時点でトリックがあるんだよ。危険性を正しく教えられなかったか、死んでもいいから抜け出したいような酷い環境だったか、同意が半強制だったか

    • +4
  22. アメリカは
    インディアンに対して行った事考えたら
    他国の差別を批判なんて出来ません。

    • 評価
  23. 人体実験を行っていたと一時期いわれていた731部隊もここ最近じゃ「防疫部隊」とわかってしまって、「マスコミだんまりモード」ってのをふと思い出した。

    • +15
  24. アメリカのは広義の強制を伴う死ぬ可能性もある実験ってとこだが
    ナチの場合は狭義の強制で死ぬ条件を確かめる実験をバリバリにやってたからね
    慰安所の運営と拉致強姦殺人くらいの差がある

    • 評価
  25. これは双方メリットあるわけだし
    治験と似たようなもんじゃないかなあ
    囚人で奉仕活動に目覚めた人もいるみたいだし
    被験囚人自体も罪を償うチャンスと思っている人にはある意味とてもいいんじゃないかな

    • +1
  26. 所詮目くそ鼻くそだよ。
    他者に害を与えるものは裁かれなくてもやがて自ら滅びるだろう。

    • -2
  27. 日本もドイツも戦争に負けたのが一番大きい。
    戦争に勝ってさえいれば、という「たら、れば」。
    戦争に負けたせいで、クズの朝鮮人ごときに何十年もガタガタ言われる。
    いつでもこんなクズをぶちのめせるのにね。戦争には負けたくないわ。

    • +9
  28. この行為が絶対的に悪なのか、正義なのかはどうでもいいし、答えがない。
    ただ、明らかに確定的なのは
    同じことしているのに、こちらは正義で、あちらは悪だとのたまうことだろ。
    戦場婦しかり、人体実験しかり、空襲しかり、植民地しかり

    • +16
  29. 弱肉強食、勝てば官軍がいつの世も絶対正義か

    • 評価
  30. 同意を得ようと考えるだけ、まだマシとしか・・・
    もうちょい昔だったら、何の罪もない黒人さんをとっ捕まえてやってたかもしれないし。
    リスクの説明がちゃんとなされていて、減刑と引き換えの希望制だったなら、
    そこまで人道にもとるとは自分は思わないけどなぁ。

    • +1

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