全地形対応型の体内を走るマイクロロボット
全地形対応型の体内を走るマイクロロボット image by:Purdue University image/Georges Adam
 犬型ロボットとセクシー二足ロボットが披露する軽快なステップも見事なものだが(関連記事)、この超小型ロボットのバク転だってかなりのものだ。

 アメリカ・パデュー大学の研究グループが開発したそのマイクロロボットは、バク転しながら乾燥した表面や濡れた表面など、体内に入り込み、あらゆる悪路を走破することができる。

人間の体内に入り込み、磁力による操作で薬をデリバリー

 あえてロボットぽくない見た目でバク転するように設計されたのは、人間の体内に薬を運ぶことが目的だからだ。ロボットが患部に直接投薬することで、胃が荒れたりと毛が抜けたりといった副作用を抑えることができる。

 しかし体内に入り込めるほど小さく設計されているために、動力源としてバッテリーを搭載することができない。そこで、かわりに外部から磁力を使ってコントロールする。

 「外部から回転する磁場をロボットにくわえることで、車のタイヤのように回転し、荒れた路面でも移動することができます。体内で使うロボットにとってはぴったりなことに、磁場はどんなものでも安全に貫通します」と、パデュー大学のデビッド・カッペレッリ氏は説明する。
tumbling-in-vivo
image by:urdue University video/Elizabeth Niedert and Chenghao Bi

マウスの腸内をさかのぼることに成功

その性能を確かめる実験の場所として、研究グループが選んだのはマウスの直腸だ。お尻からお腹の中に潜り込めるくらい小さなロボットにとって、腸内はかなり難度の高い悪路である。

 何しろ、腸は動き回る上に、そこには消化された食べ物やら粘液やらがある。しかもそれらは上から流れてくるので、そうした流れに逆らいながら進まなければならない。

 それでもバク転ロボットは過酷なマウスの直腸内を見事に動き回ってみせたとのこと。麻酔をかけたマウスの直腸から生理食塩水に混ぜて挿入したところ、その内部をバク転で軽々と動き回っている姿が超音波ソナーに映っていた。

 さらに人間と同じような腸を持つブタでの実験でも、同様にしてロボットの移動を確認。くわえて生理食塩水に混ぜた薬をボディから放出する実験にも成功したそうだ。
Tumbling Magnetic Microrobots In Vivo

将来的には内視鏡のかわりになるかも?

バク転ロボットのボディは、安価なポリマーと金属で構成されており、もちろん体に有害なものは使われていない。また一般的な製造機器で一度に無数のロボットを生産することも可能であるようだ。

 「大きな動物や人間をさかのぼるには、たくさんのロボットを投入せねばならないかもしれません。ですが、それは複数の薬を複数の患部に届けられるということでもあります」と、グレイグ・ジョルジャン氏は話す。

 投薬以外にも診断ツールとしての潜在能力も秘めているとのこと。もしかしたら将来的には、患者に負担のかかる内視鏡のかわりに、無数のロボットが注入されるなんてこともあるかもしれない。

この研究は、『Micromachines』(9月17日付)に掲載された。
Micromachines | A Tumbling Magnetic Microrobot System for Biomedical Applications
https://www.mdpi.com/2072-666X/11/9/861
References:All-terrain microrobot flips through a live colon - Purdue University News/ written by hiroching / edited by parumo
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コメント

1

1. 匿名処理班

  • 2020年10月24日 09:34
  • ID:YUB.B8AT0 #

内視鏡検査、経験したことあるけど、地味にキツいんだよね…
いつか、この技術が日本で内視鏡に使われるようになるのだろうか?

2

2.

  • 2020年10月24日 09:40
  • ID:psDXB.XI0 #
3

3. 匿名処理班

  • 2020年10月24日 10:08
  • ID:psDXB.XI0 #

技術とは表裏一体。ドローンは人間が行けないところの写真や映像を取って来てくれるが、すでに中東の戦争で使われているという悲しい事実もある。

4

4. 匿名処理班

  • 2020年10月24日 10:33
  • ID:gSwvBl9J0 #

引っかかりそうで怖い

5

5. 匿名処理班

  • 2020年10月24日 10:54
  • ID:GHvMScYD0 #

周りから磁力で動かすて
薬に磁石入れといた方が楽じゃないか?

6

6. 匿名処理班

  • 2020年10月24日 11:16
  • ID:oMdzUfwk0 #

こういうのがさらに進化して肉眼で見えないくらい小さくなり、体内に常駐して健康監視するような時代がいずれ来るんだろうな

7

7. 匿名処理班

  • 2020年10月24日 11:20
  • ID:UYJv8fAC0 #

可愛い

8

8. 匿名処理班

  • 2020年10月24日 11:36
  • ID:NaZ3rDR20 #

ヤッターマンでは口から小さなロボットがたくさん出てきたな

9

9. 匿名処理班

  • 2020年10月24日 11:39
  • ID:PLYzEdQH0 #

ロボットを球形にして回転「しない」磁場で誘導するよりは走破性がよさそう。考えたもんだなあ。

10

10. 匿名処理班

  • 2020年10月24日 12:15
  • ID:Td9PQrgI0 #

迷子になっても残存しても小さいからまあ大丈夫なのかな

11

11. 匿名処理班

  • 2020年10月24日 16:28
  • ID:pW6.Xilf0 #

スマホのアプリで今どこらへんにあるかチェックしたりできるようになるんだろうなあ

12

12. 匿名処理班

  • 2020年10月24日 16:36
  • ID:wuDV2ard0 #

ビーカーの中に放り込んで、中の溶液を
外部からの地場でかき混ぜ続ける
マグネチックスターラーって装置があるんですが、
それ見てて閃いたのかも。

13

13. 匿名処理班

  • 2020年10月24日 17:49
  • ID:iGVlrkdA0 #

20年前のテレビドキュメンタリーで似たようなロボットの話をしてたけど
まだ実現できてないのか

14

14. 匿名処理班

  • 2020年10月24日 18:03
  • ID:Fj8IMSmQ0 #

カプセル内視鏡とかだと任意の場所を撮影できないから、
この技術と合わせれば、もうバリウム飲まなくてよくなるかも。

15

15. 匿名処理班

  • 2020年10月24日 18:37
  • ID:yZUiS5QN0 #

原発が分かってる固形ガンなどには有効かもしれんね
あとCTやMRIでうつらない箇所や画像診断では
腫瘍を確認できないがPETでは集積ありな箇所の
ピンポイントな撮影とか

16

16. 匿名処理班

  • 2020年10月25日 15:12
  • ID:ZDMmHgOB0 #

※5
薬に磁石を直接入れたら、もしかしたら磁石が溜まって、組織を挟んじゃって取るのが大変になることもでてくるかもしれないね

17

17. 匿名処理班

  • 2020年10月25日 20:18
  • ID:jdI2F9c30 #

※3
確かに、容易に体内に入り込む殺人兵器だと思うととても怖い

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