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店の駐車場で寄生植物の変種が発見される(イギリス)

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(著) (編集)

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変種の寄生植物を駐車場で発見 /iStock
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 他者に寄生してその生き血や養分を吸い取る生き物は、動物だけでなく植物にもいる。たとえば「ヤセウツボ」という地中海沿岸原産の植物は、他の植物の根に寄生して栄養を奪い取る。

 なんだか自分たちとはまったく縁がなさそうに思える奇怪な植物だが、日本にも外来種として定着している。

 今回、イギリス、IKEAなどの店の駐車場で、ヤセウツボの変種が発見された。

「太陽大好き」という名の寄生植物

 英オックスフォード大学などの研究グループが発見したそのヤセウツボの変種(学名 Orobanche minor var. heliophila)は、葉も根も葉緑素すらない。ただ地面から紫っぽい花をつけた茎が伸びるだけだ。

 そんな奇怪な寄生植物が意外にも近所のスーパーに生えているのは、イギリスでは生垣としてお馴染みのキク科ブラキグロッティス属の「ブラキグロッティス・サンシャイン(学名 Brachyglottis × jubar)」と呼ばれる品種が大好きだからだ。

 だから変種名である「heliophila」は、どこかダークな寄生植物のイメージからはちょっと想像しにくい「太陽愛好家」という意味だ。

 そんな明るい名前のおかげかどうかは知らないが、この変種が宿主を脅かすようなことはないそうだ。

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image by:Oxford Science Blog

栽培品種の導入が進化をうながした?

 ヤセウツボの変種は、イギリス全土に分布するが、特に南部と南東部に多く自生している。ただ、いつ変種として進化をしたのか詳しいことは分かっていない。

 変種が宿主としているブラキグロッティスがニュージーランドからイギリスに持ち込まれたのは1910年以降のことだ。ここ数十年で特に数多く導入されたことで、宿主が原生植物から栽培品種に変わり、それが進化をうながした可能性もあるようだ。

意外にもたくさんある寄生植物

 ヤセウツボのような寄生植物は、顕花植物の中では特に理解が進んでいないグループだ。進化の視点から見た生物学や生活史の大部分が謎に包まれている。

 寄生植物は4000種以上が知られており、毎年のように新種が発見されている。生息域も広く、熱帯雨林から北極圏のツンドラまで、主要な生態系のすべてに分布している。

 宿主から栄養を得ているので、葉緑素・茎・根といった一般的な植物の特徴がなくなってしまっていることもある。こうした特徴は植物を分類する手がかりにもなるので、各種寄生植物の進化的な関係は長い間謎に包まれていたそうだ。

ヤセウツボ/Orobanche minor 04_190519_北野調整池

 ちなみにヤセウツボは日本では1937年に千葉県で初めて確認され、現在では本州と四国と全域に定着している。牧草に紛れ込んで海外から入り込んだと考えられており、牧草や農作物に寄生した場合、生長を阻害させてしまうため、外来生物法により要注意外来生物に指定されている

あなたの身近にも未知の植物があるかも

 最近の研究によれば、ヤセウツボは宿主を切り替えることで新種を作り出してきたらしいが、その見た目はどれも似たり寄ったりなので、専門家ですら見落としてきたという。

 こうした事実は、植物の新種を発見するために、わざわざ遠く離れたジャングルまで探検しに行かなくてもいいということでもある。

 今度買い物に行ったら、駐車場の生垣をちょっと調べてみたらどうだろうか。案外そこに誰も知らない植物が生えているかもしれない。

 この研究は『British & Irish Botany』(8月31日付)に掲載された。

References:Botanists unearth new ‘vampire plant’ in UK carpark | University of Oxford/ written by hiroching / edited by parumo

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この記事へのコメント 16件

コメントを書く

  1. 根も葉も葉緑素もない究極の寄生生物
    そういふものにわたしはなりたい

    • +3
  2. これは知らなかったな。
    身近な寄生植物で言えばヤドリギだよね。冬に葉が落ちた後モヤモヤと見えるからよく分かる。

    • +6
  3. 普通に生えてそうに見えて実は地面じゃなくて、植物から生えてるってわけか

    • +6
  4. こういう身近で見落としてる新種に、とても役立つ物質が含有してたりしたらいいね

    • +3
  5. 寄生生物とか寄生植物とかには心理的な忌避感があるけど、同時に何かしらの浪漫的な物も感じる

    • +6
  6. これ寄生植物だったの?!
    グランドの土手に春になるといっぱい出てくる。
    紫色なんだけど茶色がかってるんで、
    つんで飾る気にならないんだよね。
    ちなみにその土手にヘリオフィラはない。
    動画のような感じで、雑草天国。

    • +4
  7. すすきの根元とか見てみるとしばしばナンバンギセルが咲いていたりする

    • +4
  8. ウツボの変種なのか。和名は山姥にしよう

    • 評価
  9. 外来種だとリナリア系が二種程野生化しようとしていたり、ルドベキアかなんかの原種が河原一面に咲いてたりしますね
    園芸品種でも原種に近いのは生態系を荒らすので、住宅地に限らず駆除は早めにしないとです

    • +1
    1. ※11 リナリア系はマツバウンランしかしらないな。
      かわいいよね。そんなに生命力強くなさそう。
      ルドベキア系はオオハンゴンソウかな。
      こっちは特定外来生物だね。

      • +1
  10. 古いマンガだけど、小山田いく・著『フォーナが走る』っていう近未来SFでこの手の突然変異ネタをテーマにしてたっけ。冒頭1発目が繁殖力の強い新種の雑草だった。

    • 評価
  11. 5月頃に河川敷の堤防にこの花がたくさん咲いてる。

    • +1
  12. ナンバンギセルなら祖母の家に生えてるな

    • +2

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