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幽霊の軍隊?第二次世界大戦中に暗躍した米軍の特殊部隊「ゴースト・アーミー」の欺瞞作戦

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(著) (編集)

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米軍のゴーストアーミーimage by:public domain/wikimedia
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 第二次大戦が勃発し、枢軸国がヨーロッパで進撃を続けている中、連合国側の国々は試行錯誤して、既成概念を破るとんでもない対抗策を打ち出し始めた。

 この緊張した時代、強敵に立ち向かうためには、誰も考えつかないような独創的な戦略を考えざるを得なくなったのだ。

 突拍子もない作戦が数多く考え出され、実際に実行された。偽装遺体を使ったスパイ、犬のパラシュート兵士など、奇想天外な手段を考案されたが、中でも奇妙な作戦 は、米軍の「ゴースト・アーミー(Ghost Army)」だろう。

敵を欺き、混乱させるための偽装部隊「ゴースト・アーミー」

 1944年に誕生した米軍の第23本部付特殊部隊(通称ゴースト・アーミー)は、敵を欺き、混乱させるための偽装部隊だった。

 ありとあらゆる知恵と知力、技術を総動員して、本物の部隊だと思わせるダミーの装備を作って敵を惑わせ、脅かし、攪乱した。

 動員された隊員は、生粋の軍人ではなく、芸術家、建築家、俳優、舞台デザイナー、エンジニアなどで、彼らは美術学校や広告代理店などからリクルートされた。

 隊員は1100人だったが、その中には第406戦闘工兵隊(保安担当)、第603偽装工兵隊、第3132信号中隊、特務信号中隊などから引き抜かれた本物の軍人も含まれていた。

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ゴースト・アーミーの記章(1944年頃)image by:public domain/wikimedia

偽の軍服に風船の兵器、臨場感あふれる音はスピーカーで

 こうした欺瞞作戦を実行するために、ゴースト・アーミーはあらゆる秘策を駆使した。偽の記章の入った軍服を着用し、戦車などの装備はすべて風船で作ったダミーだ。

 米軍はこうしたアイデアを、1942年のエル・アラメインの戦いにおけるバートラム作戦で、似たような戦略をとって成功したイギリス軍から借用した。

 風船のダミーは、戦車、大砲、ジープ、トラック、航空機まで多岐にわたっていて、すべて特殊なコンプレッサーで空気を入れ、数時間以内に設置することができた。

 細部までこだわって入念に作られていたため、遠方や空から見たら本物と見分けがつかないほどだった。

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フェイクのバルーン戦車

 これら偽兵器に加え、歩兵の大群が行進する音や戦闘機の轟音などを録音したものをスピーカーで流し、その威力を増幅させた。

 目的は、いかに本物らしく見せて、1100人しかいないはずの部隊を実際よりも大規模に見せるかだった。

 ダミーのトラックの列の中に、ふたりしか乗っていない本物を紛れ込ませて、大勢が乗っているような効果を出してみたり、本物の部隊から発信されたようにみせかけて嘘の無線情報を流したり、煙やライトの効果を利用して錯覚を起こさせたりした。

 『第二次世界大戦のゴースト・アーミー』という著作があるリック・バイアーはこのユニークな部隊についてこう書いている。

正式には第23本部付特殊部隊という通称ゴースト・アーミーの任務は、部隊をより大きく見せ、いる位置や規模を偽装してドイツ軍を騙すことで、そのためにありとあらゆる秘策を使った。

空気で膨らませたダミーのバルーン戦車、トラック、戦闘機を使って、敵の偵察機の目を欺き、夜間に大勢の兵士や戦車が移動しているように見せかける音を流したり、ダミーの本部を作って、嘘の無線情報を流して敵を攪乱した

Remembering The Ghost Army that Saved US Lives in WW II

歩兵師団4万人を偽装、22の作戦にかかわったゴースト・アーミー

 それは非常に巧妙な手のこんだ作戦で、ゴースト・アーミーの隊員たちは、ニューヨークのパイン基地に動員された後、船でヨーロッパへ渡った。

 1944年5月始め、Dデイの直前、英国のストラットフォード・アポン・エイボン近くに上陸し、すぐにノルマンディーで秘かに活動を始め、フランスとライン川付近の危険な前線近くでも任務にあたった。

 彼らのもっとも有名な作戦は、1945年3月、米軍がライン川を渡って攻撃する予定にしていたすぐ南で、ふたつの歩兵師団4万人を偽装した作戦だろう。

 大軍勢がやすやすとライン川を渡って攻撃をしかけてくると思わせ、ドイツ側を混乱に陥れた。戦争末期までに、ゴースト・アーミーは22ものさまざまな作戦にかかわった。

 その間、戦死した者もいたが、彼らの見事な偽装作戦のおかげで何千もの命が救われたことも確かだ。バイアーは彼らが戦争に与えた影響を語る。

ゴースト・アーミーの力だけで第二次世界大戦に勝利したわけではなく、彼らがいなくても戦争には勝っただろうとは思う。だが、彼らが行った敵を欺くさまざまな作戦で多くの命が救われ、米軍兵士に大いに有利になったことも事実だ。

彼らの伝説は、あるひとりの兵士が語った言葉に集約される。”もし、ひとりの母親、ひとりの新婚の花嫁が最愛の人を失う苦しみを免れたなら、それは第23本部付特殊部隊のおかげなのだ”

 戦争が終わり、ゴースト・アーミーの生き残りたちはかん口令を敷かれ、その数々の秘策や作戦は闇に葬られた。

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情報の一部が機密解除され日の目を見ることに

 元隊員の中には、その後も芸術の世界で成功した者も多い。

 ファッションデザイナーのビル・ブラス、写真家のアート・ケイン、画家のエルズワース・ケリーもそうだ。

 何十年もの間、勇敢な彼らの創造性に富んだ偉業は忘れ去られていたが、1996年に政府がこのプロジェクトを機密解除し(一部はまだ極秘のまま)、日の目をみることになった。

 第二次大戦の歴史の中でも非常に大胆不敵な作戦であり、戦勝国、敗戦国両サイドから、奇妙で突拍子もない風変わりな話として語られている。

 2013年には公共放送サービスがドキュメンタリー番組『The Ghost Army』を放送した。

The Ghost Army

References:Ghost Army / mysteriousuniverse/ written by konohazuku / edited by parumo

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この記事へのコメント 30件

コメントを書く

  1. ゴーストアーミーが救った兵士も確かにいただろうけど、戦争そのものはたくさんの人を犠牲にしたことは決して忘れちゃいけない
    戦争反対と言うと、じゃあ攻め込まれるに任せるのかって反論がくるんだけど、戦争そのものを起こさないように不断の努力をしていくことは決して無駄じゃないし必要
    実際に戦争が起きた時と、起こさせないようにすることはまた別の話

    • -18
    1. ※1
      戦争反対には基本的に賛成だけど、『戦争を起こさないようにする努力』もまた偽装の対象になることは、忘れてはいけないと思うよ。別の話、で済まないケースも多々あると思うんだ。

      平和に平和に、と仲良くして、相手国の中枢にまで入り込んだ”外国人”が、ある日突然機会に乗じて国を乗っ取る、なんて話もある。映画のシナリオにも良くなってる。ネタバレになるからあまり詳しくは言わないけど例えばJohnny Englishみたいなコメディでもそういう話があるくらいだよ。

      戦争は『じゃあ今日から』といって堂々とはじまるものばかりとは限らない。むしろ大抵は、気がついたら既に攻め込まれていた、というケースの方が圧倒的に多いと思う。

      戦争を起こさないようにする努力もまた、利用されて侵略に使われることもあるってことさ。平和とか友好というスローガンも、それを掲げる政治家によっては民族浄化と同じくらい胡散臭くてグロテスクなものになり得ると思うんだ。

      • +7
    2. >>1
      この記事を戦争礼讃と捉える、その考え方を改めた方が良いと思う
      思想の対立は戦争の一因よ
      平和団体の主張も、殆どは対立思想の存在すら認めない、戦争的なもんだし

      • +10
      1. >>12
        この文脈から「>>1は<この記事は戦争礼讃をしている!>と主張している!」ってレッテル貼りできる方が”対立思想の存在すら認めない戦争的なもの”だと思うけど

        • -5
        1. >>22
          それこそ考えるな!と言っているに等しいコメントだよね
          愚民は考えるな!と

          • -1
        2. ※22
          そもそもこの記事と
          「戦争反対と言うと、じゃあ攻め込まれるに任せるのかって反論がくるんだけど~」
          という※1の突然の論理展開に何の関連性も無い
          お前は突然何を言ってるんだ?って反応されてるからマイナス評価が付いてるし
          あまりにも無関係な話をしているから「戦争礼賛をして居る記事だと早とちりでもしたのか?」ということを疑われてるんだと思うよ
          対立思想の存在を認めないとかどうかそれこそレッテルを貼る前に、なんでこんな反応されたのかの原因が※1側にあるかもしれないと省みたほうがいい

          • 評価
        3. ※22
          スゴイ軍隊というネタに対して、戦争反対と書き込む時点で意図が丸見えだからだよ
          イヌとネコが仲良くしてるネタで、不自然だ、ストレスだ、虐待だと書き込むのと同じ

          • 評価
  2. ポーランド戦からバルバロッサまでのブランデンブルク部隊、北アフリカでのロンメルの欺瞞戦車など、独軍の方が先にやっている。

    • +1
  3. 例えば野生の生き物も自分を大きく見せることで威圧したりするけど
    軍でもそういう事が行われてたとは
    兵士に運ばれるバルーンの戦車がちょっと丸っこくてカワイイ

    • +9
  4. ロンメルもやったよね。パリだかでの凱旋で敵のスパイを欺くために大軍隊に見せるために戦車から顔を出す人と戦車の番号を変えて何度もグルグル凱旋してた。それと砂漠でトラックを戦車に偽装させて砂埃を多く巻き上げて大軍隊に見せかけたり。偽装工作は何処でもやるんじゃないかな。

    • +8
  5. イギリス軍にもジャスパーマスケリンというマジシャンがいた。まぁ書くの面倒だからこっちは調べてみてくれ。

    • +5
  6. やってる事自体は古代から行われているわけだし、既成概念を打ち破る程かは微妙な気が

    • +7
  7. よし、俺も空気嫁で温かい家庭を偽装するぞ(落涙)

    • +12
  8. 湾岸戦争でも”軍団”とまでは行かないまでも、ダミーを置いて偽装したり、作戦開始時刻までに長距離を移動したりとかしているかな。

    • 評価
  9. トラックもすごいリアルだな。キャンプ用テントに一つ欲しい

    • +3
  10. 人類は根源的に闘争を好む生き物だから、その歴史の続く限り「戦争」という要素は排除できないだろう また皮肉な話、それが社会を発展、推進させる原動力となってしまっているのは歴史的に見てもまぎれもない事実 なくすことができないのなら想定できるあらゆる「損害」を最低限に留めるべくコントロールしていくしかない
    闇雲に「戦争反対!」と叫んでいても永遠に問題の解決にはならない そういう「反戦論者」たちに限って「具体的かつ現実的に」ではどうしたら戦争をなくせるのか?についてはノープランだったりするから腹が立つ
    …どうでもいいが、ゲームなんかにはなぜかやたらに登場する「M10パンター」を思い出したw

    • 評価
  11. 負け組じゃないのに非戦闘員導入しなくても…と思うが
    必死だったということか

    • 評価
  12. ダミー戦車もけっこうクオリティに差があるよね

    • +2
  13. バルーン戦車はグレードによって値段とか違うのだろうか

    • +1
  14. 実はそんな部隊は存在していなかった。「かつて存在していたし、今も活動している」と、敵国に信じ込ませることが目的で、つい最近始められた謀略かもしれない。
    という可能性もある。

    • 評価
  15. シャーマンのバルーン欲しい 欲しくない?

    • +2
  16. 実にマカロニ作戦
    バルーン戦車商品化希望

    • 評価
  17. 人間が道具を使うから凄惨な結果になるだけで、
    やってることは異性やボスの座を巡った生物闘争と本質は同じ。

    生命は協力し合う一方で、いがみ合う作りになってる。それが進化を促す。
    押さえつけたところでどうにもならない。
    だから、戦争反対と適当に言うより、「どう戦争するか」を考えたほうが前向きだと思う。

    つまり、命が大切ならeSportsにすればいいし、
    何が何ならチェスでも良い。鉄砲や剣を使った殺し合いだけが戦争ではない。
    国をかけて勝敗を決すれば、それが戦争よ。

    • -3
  18. 航空基地に張りぼてを置いたり機影を滑走路に描いたりなんかは各国がやってるね。坂井三郎がフィリピンの基地を機銃掃射したときもそんなダミーがあったがバレバレだったそうな。

    • +2
  19. ゴーストリコンのような特殊部隊化と思ったら偽装部隊だった。

    • 評価
  20. ヘイワ団体が平和を主張したり戦争反対を主張しながら、構成員が暴行事件や恐喝事件、強要事件を起こしてるのをみんな知ってるからな

    • +2
  21. 今でも北朝鮮が滑走路にMigのバルーン置いたりしてるよな

    • 評価

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