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中世の写本に書かれた呪い。そこには切実な思いがあった

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(著) (編集)

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selimaksan/iStock
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 印刷機が発明される前、本を作ることは大変骨の折れる仕事だった。羊皮紙を用意することから始まり、文章や挿絵、製本まで、一冊一冊すべて手作業だ。

 筆記者の多くは、たいてい修道僧で、羽ペンを使って、インクで慎重に丁寧に美しいカリグラフィー書体で書いていき、さらに豪華な挿絵もつけた。線はまっすぐか、本全体の文字の大きさは統一されているか、といった細心の注意を払いながら、間違いを犯さないようにしなくてはなかった。

 とても時間のかかる作業で、それゆえに本はとても貴重なものだった。筆記者が本に呪いの文言を書き記す気持ちもわかるというものだ。

 本を盗む泥棒たちに恐ろしい災いが降りかかるようにと…

本泥棒対策として書き記された呪いの文言

 中世では、図書館は本を鎖で机につなぎ、利用者が本を勝手に持っていかれないようにしていた。さらに、筆記者は独自に本泥棒対策をしていた。

 本の冒頭、あるいは最後に、本を盗んだら神の怒りをかい、耐えがたい苦しみや災難をこうむることになるという恐ろしい呪いの言葉を書き入れて、泥棒を脅かしたのだ。

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この本を持ち去る者に死をもたらしたまえ。大鍋でフライにされ、病にむしばまれ、熱に炙られ、車輪に砕かれ、そして吊るし首にされよ。アーメン

 英国図書館に所蔵されている、12世紀にドイツで書かれたアルンシュタイン聖書には、こんな呪いが書かれている。

 当時、本泥棒は殺人や神の冒涜と同じくらい卑劣な犯罪だと思われていた。だから、図書館員は本をくすねた奴らに手痛い反撃をすることを誓った。

 その罰とは、たいていは教会からの破門や永遠の地獄堕ちだが、必ずやもだえ苦しみながら死ぬというものもある。

 スペインの図書館ですべての本を守るために使われた強烈な呪いのひとつ。

本を盗んだ者、本を借りたのに返さない者は、その手の中でヘビになった本に引き裂かれよ。全身麻痺に襲われ、家族を全員破滅させよ。

激痛にボロボロになり、泣き叫んで慈悲を乞わせ、死ぬまでその断末魔の苦しみを味わわせよ。紙魚にこの当然の結末を食らわせ、地獄の業火でこやつを永遠に焼き尽くせ

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kvkirillov/iStock

呪いは本を粗末にする者にも向けられた

 呪いは、本泥棒予備軍だけでなく、本を手荒に扱ったり、粗末にしたりした者にも向けられている。

 なにか飲み食いしながら本を読んでいる間に、本のページに飲み物をこぼしたり、脂ぎった手でしみをつけたりするけしからん輩を、激しく非難する呪いもある。

 本に向かってくしゃみをする者、本を開いたまま顔をつっぷして居眠りする者、その他、本の健全性や耐久性を損なうあらゆる罪を犯した者を、昔の図書館員は徹底して軽蔑した。

ページを折ったりしたら、悪魔がおまえを真っ黒に焼き焦がすだろう

しみをつけたりしたら、悪魔がおまえをあぶり殺すだろう

本を盗んだりしたら、悪魔がおまえを料理してしまうだろう

本をまた貸しすることも禁忌である。

この本を他人に貸した者は、バビロンのすべての神々に呪いをかけられますように

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Studio-Annika/iStock

印刷機発明以降、呪いレベルはちょっと低下

 印刷機が発明されてからは、こうした本の呪いは陰惨な警告から、ちょっとした脅しに移行していった。

 以下の絵のように、ちょっとブラックな絵で表わされることが多くなった。

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“ロイド・ダグラスから借りた本を返さなかった男、殺される”

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References:bookbindersmuseum / amusingplanet/ written by konohazuku / edited by parumo

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この記事へのコメント 40件

コメントを書く

  1. 印刷機が無いならクラウドで配信すればいいじゃない

    • -14
  2. 印刷機の普及後は作家がボツにしてきた
    編集部の人間に呪いをかけて、
    ネット社会になると、作品を愛する者と
    作品を批判する者が呪いの言葉を
    投げ合い地獄の炎を生み出す呪いの連鎖。

    • +18
  3. 「こういう奴は悪い奴だから殺せ!!」って教えはどんな宗教にもあるね
    無宗教が一番平和

    • -18
  4. 「ページを折ったりしたら、悪魔がおまえを真っ黒に焼き焦がすだろう」

    ちょマジですいませんした…

    • +15
  5. なるほどなぁ!昔の本の作成者にとって、本は自分の分身みたいなもの…だったのだろう。他の例だと、精根込めて作られた人形には魂が宿る…とか言われているけれど、昔の本にも作成者の魂が乗り移っている事が有るのかも?(でも他の品で所有者が次々と不幸になる呪いの品も有る様だから、笑えんわ(個人的に呪いの言葉が掛かれた本を所有する時には御払いでも受けるかな?))

    • +19
  6. こうして後の世に古代の本を見つけた人が「やっべー呪いの本だ」ってなったのか

    • +5
  7. 本が、情報がどれだけ貴重なものだったのかよくわかる

    • +37
  8. 活版印刷の発明がどれだけ偉大かわかった気がする

    • +16
  9. 題材は印刷が発明される前の本の話なので、私は印刷発明後の本の面白いと思った話を一つ。

    1631年、イギリスで発行された聖書は、重大な出版ミスを犯して発行された。
    「汝、姦淫するなかれ」という文が「汝、姦淫せよ」となっていた。
    勿論、チャールズ1世と大司教は大激怒wで、発行した所は罰金&出版業停止、本は殆ど焚書にされてしまった。
    けど、数冊が網を掻い潜って残っており、それは姦淫聖書と呼ばれ各地の図書館に収蔵されている。

    • +20
    1. ※11
      それは「取っておきたい」という心理もあったんだろうな…w

      • +9
    2. ※11
      今となっては非売品クラスの珍品だろうなそれ

      • +4
    3. ※11
      フロイト先生なら膝を叩いて「これぞ願望のいいまつがえ!」と喜んだことだろう

      • +1
  10. 印刷・製本技術が進歩し、本は昔のような貴重なものではなくなった。
    医療技術が進歩し、デザイナーベビーや安楽死などが当たり前になったら、命の価値は・・・

    • -1
    1. >>12
      「本の価値が下がる」→「庶民も教育出来る」というメリットがあるからな?
      一概に価値が下がる=悪い、とは言えない。
      少なくとも本に関しては。

      • +9
  11. 教科書に落書きしてた俺、地獄の業火に焼かれるどころじゃ済まされないなガクブル

    • +4
  12. 現代と変わらん、
    万引きは警察に叩き出し、
    法の裁きを受ける事になるでしょう。

    • +6
  13. アナトール・フランス『本は人に貸してはならない。貸せば戻ってこないからだ。私の書斎に残っている本といったら、そうやって人から借りたものばかりだ。』

    • +18
  14. あまりに当然のことが書かれていて大いに同意する。
    本を粗末にするものには死を!

    • +8
  15. こんだけ苦労して書いた本ならそら盗んだやつとか汚すやつはぶち○したくなるってw

    • +9
  16. 殺意が煮え滾っててちょっと笑っちゃった
    そんな風に貴重な時代でも図書館はあるんだね

    • +1
  17. 言葉の選び方ってものがあるでしょ
    注意書きにいちいち罵倒するような事が書いてあったらその気がなくとも気分が悪いと思うよ
    子どもにも見せられないし、注意の目的は私怨をぶつける事じゃない

    • -20
    1. ※23
      昔の表現だし、翻訳もされてるので激しい言葉の羅列にはなっているが、「雷様におへそを取られるよ」とか「閻魔様に舌を抜かれるよ」などの教訓的なものじゃないですかね。本は大事に扱うものという意味では、むしろ子供に見せたほうがいいかも。

      • +12
    2. >>23
      いや、当時の本は完全注文製で数十万する代物で所有していることが寺院、貴族のステータスなのです
      うちの教会にはなんと10冊も本がある!と鼻高々の坊さんの話もありますし
      隙あらば盗んででも手に入れたいお宝ですよ
      子供が触れるとしたら「盗んでも欲しい宝の価値」が分かる、本を読む地位に就いた成人後ですよ

      • +17
  18. 現代では万引きに苦しむ本屋さんの心の声を代弁しているな。

    • +10
  19. インドアフィッシュみたいな呪いが有るんですけど。

    • 評価
  20. あの当時の書籍は全て手作業だったから分からんでもない。けど図書館とかあったのね。聖書の勉強したかっただけなのにエホバに捕まってしまった(#`皿´)

    • +1
  21. こういう記事を読むと…ヴォイニッチ写本は何故作られたか?
    が更なる疑問として思い出される。
    そんな現代価値にして数十万円以上もの手間を掛けて、
    無意味な奇書を作り出す価値が有ったのかと?

    例えば、当時に何かの見世物小屋的な施設が有ったとして、
    そこの収蔵書用として、とにかく不思議な本が必要だった…
    とかの理由が無いと、個人的には納得が行かんよ?

    • 評価
  22. >バビロンのすべての神々に
    唯一神じゃないのかよ!

    • 評価
  23. 21世紀の今でさえ、大量生産品の自分の本でだって
    うっかり汚損しようものなら呪うやつは大勢居ると思うよ
    手書き全盛期なら尚更だよね
    本に限ったことじゃないけどね

    • +7
  24. ウンベルト・エーコの小説「薔薇の名前」では、読ませたくない本のページに毒薬を染みこませて、知らずに素手で読むと死に至るアイデアがあったけれど、そもそも本とは開かれた(ページを開くという意味)存在ではなかったということか。

    • +1
  25. 本と動物の扱いはその国の民度と比例する。
    本を焼くような人間はやがて人を焼くようになる。
    個人的には本を粗末に扱うような人間は粗末に扱われても仕方がないと思ってる。

    • +3
  26. 本に平気で書き込みをする奴がいるよね、あれが信じられない。ボールペンで傍線ひいたり感想書いたり、参考書あつかいか。たとえ数百円の本でも、汚す事にはすごい抵抗があるよ。

    • +6
    1. ※38
      自分で買った本ならそれでも別に構わんと思うが、たまに図書館で借りた本にそれがされていることがあって何考えてんだと思うことはあるな

      • +2
  27. いやこれ、現代の本屋さん(特に個人書店)での万引き窃盗犯にも強く思うことだわ。
    もちろん昔の本の価値と今の1冊の価値が違うのは承知なんだけど。

    たかが盗みって思う人もいるかもしんないけど(万引きする手合いやその家族は結構そう言うんだけど)、窃盗で店がつぶれたら店主やその家族が路頭に迷って店員も失職するんだからね。
    時代や国を問わず大罪ですよ………

    • +3
  28. 『薔薇の名前』では、唾をつけた手で本をめくった人間が本に塗られた毒で死んでいたけど、あれって当時は普通にそうしていたのか、それとも本を汚す人間への殺意がそうさせたのか。どちらなんでしょう。

    • 評価

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