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白い布が被せられたまま、誰も中身を見たことがない「幽霊時計(ゴースト・クロック)」その理由とは?

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(著) (編集)

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image credit:Dave McIntire
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 アメリカのカンザス州出身のアーティスト、ウェンデル・キャッスル氏(享年85歳)は、家具をアートに変えた人物だ。

 彼が手掛けた家具作品の数々は、ただ家具として使用するにはもったいないほどのユニークさと表現力、巧妙さに富んでいる。

 階段のようなひきだしを持つデスクや、炎を象徴したかのような椅子など、全ての作品が躍動感を持ち、まるで今にも動き出すかのようだ。

 そんな作風を多く手掛ける同氏が、1980年代に時計シリーズ13品にチャレンジ。最後の時計は前回の12作とは全く異なるデザインに仕上げられ、『幽霊時計(ゴースト・クロック)』という名がつけられた。

 その名に相応しく、13番目の時計には白い布が被せられ全く中が見えない。しかし、実はこの作品は、巧妙なトリックが仕掛けられてあったのだ。

Ghost Clock by Wendell Castle

誰も中を見ることができない『幽霊時計』

 ワシントンD.C.にあるスミソニアン・アメリカン・アートミュージアム(Smithsonian American Art Museum)には、『幽霊時計(ゴースト・クロック:Ghost Clock)』と題されたオブジェが展示されてある。

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image credit:imgur

 1985年にウェンデル・キャッスル氏が手掛けたこの作品は、これまで仕上げた12の時計作品の最後のものとされているが、なぜか展示には白い布が被せられたままになっており、誰も中の時計を見ることができない。

 シーツのような大きな布は、時計のほぼ全体を覆っており、しっかりと胴体が紐で縛られている。

 中の時計が破損し修理を待っている間、このように布で覆いながらも展示を続けているのか、もしくは展示の準備ができていないのか…訪問者はこの作品を前にして、様々な疑問を抱き首をかしげる。

 しかし、作品について書かれたプラーク(銘板)に目をやると、誰もが「アッ」と驚くことになるのだ。

白い布も木彫りの彫刻の一部だった!

 家具をアートなデザインに仕上げることを得意としていたキャッスルは、この作品に実に巧妙なトリックを仕掛けることに成功した。

 一見、保護シートで覆われた古時計のように見える作品は、実はマホガニー材を使って手彫りされた「彫刻」だったのだ。

 作品の細部にこだわったキャッスルは、柔らかくしなやかな布の輪郭を木で再現し、白く漂白。また時計のように見える部分は茶色で染色し、高さ2.2メートルの完璧な幻想を完成させた。

 過去の12作品は実際に時計だったが、最後のこの作品は内部メカニズムがなく、「心に留まり続ける静寂は、時の不在(永遠)を表している」とプラークには記されている。

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image credit:imgur

『ゴースト・クロック』に対するRedditでの反応

 このトリックアートとも呼べる彫刻作品について、Redditでは次のような声が寄せられている。

・美しい。

・天才的と呼べる作品だな。

・手彫りって…冗談だろ!?と思ってしまった。

・プラークの説明を読まなきゃ、これが全て彫刻だとは絶対に気付かないね。

・実際にこの彫刻を目にしたことがあるけど、ほとんどの人が素通りしていた。自分もよく見ずに通り過ぎようとしたら、警備員に『プラークを読んでみて』って言われて。真実を知って、すごくクールだと思った。

・自分は、プラークを読んで思わずガン見したよ。

・これ、布しか見えないんだけど。驚くべきスキルだ。

・あまりにもリアル過ぎて、作品から目が離せないよ。

・「時の不在」か…。作品に沿ったテーマが奥深くて、素晴らしいの一言だ。

written by Scarlet / edited by parumo

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この記事へのコメント 37件

コメントを書く

  1. よくもだましたアアアア!!だましてくれたなアアアアア!!

    • +17
  2. 白い布が木彫りって読むまで写真見たのにわからなかった

    • +55
  3. こういう騙し絵的な彫刻を手がける彫刻家はわりといるけど、これはそれまでのシリーズは本当に時計をつくってるとか設定から手が込んでておもしろい

    時計で思い出したけど、いまだ仕掛けのわからないただのガラス板についた針が正確に回り続けてるって言う天才奇術師フーディーニの時計って言うのがあるのは昔から知ってんだけど、現在どこの誰が持ってて具体的にどんな姿なんかわかんないんよね
    どっかで記事を発見したらアップしてくれると嬉しい

    • +4
    1. ※3
      一枚のガラス板に長針を描いて、もう一枚に短針を描いたら、その2枚重ねる。
      それぞれのガラスを長針、短針に見立ててそれぞれの速度で回転させる。
      長針のほうは一時間に一回転。短針側は12時間で一回転だ、これで時計になる。
      ガラスを円く円盤にすれば、円周の一箇所にモーター(駆動軸)を当てるようにすれば、機械部分は目立たない。
      時計を水平に置けば仕掛けは簡単、縦においても真ん中を止めるだけでいい(中央に軸がありギアで聴診・短針を回す、これは普通の時計と同じ、針を回すか、文字盤ごとまわすかの違いだけ)。

      こんな仕掛けじゃないかな?

      • +2
      1. ※5
        フーディーニの時計は、下でガラス板を直立させている台以外にどことも接していないただの素通しの円形ガラス板の中央に留められた本物の2本の針が時刻通り正確に回り続けると言うものなので、そういうトリックではないですね
        何人もの科学者が検分しても動力がどこにあってどんな原理で動いているのかさっぱりわからなかったと言うしろもの
        実在してたのは確かで、フーディーニが非常に有名な人なんで捨てられたりはしないと思われ現在もどこかに保管されていると思うのですが、話だけ残ってて写真も出てこないんでどんなもんなのか昔から見たかったんですよね
        ここ向きの話題だと思ってw

        • +1
        1. ※13
          フーディーニが解明不可能なミステリークロックを作成したって話、聞いた事ないけど
          もしかして映画やドラマなんかの、フィクションの中の話ではないの?
          海外だとフーディーニを題材にした小説とか映画、ドラマが結構あるので
          もし違ったらゴメンだけど

          動力機構が見当たらないタイプの時計は mystery clock で検索すればいっぱい出てくるけど、フーディーニのそれは話すら出てこないなあ

          • +1
    2. ※3
      houdini clockとかで軽く検索掛けても、出てこないのがちょっとびっくり。

      • 評価
    3. ※3 ※16 ※26
      えっと、ミステリー・クロックを作った奇術師は
      フーディーニじゃなくて
      フーディン(フランス語読み:ウーダン)の方だと思います。
      フーディーニは、「近代奇術の父」と呼ばれた彼に
      あやかって芸名を付けたんだよ。

      「Houdin mystery clock」などで検索すると
      いろいろ解説が出てくる。
      自分の英語力では、今いちよく分からないけど。
      (文字盤のほかに真っ透明なガラス板も中にあって、
      針はその透明ガラスに固定され
      周囲の円形枠にあるギザギザの歯車でガラス板を回している、
      的なことが書いてあるように思う。)

      • +9
  4. 13番目とかゴーストとかから見たら呪われる系を想像したら全然違った!!

    • +16
    1. >>4
      私もなんかやばい奴だと思ってました。
      ゴーストの意味が違いましたね。

      • +5
  5. 人の皮膚とか布とかをリアルに再現したくなる芸術家って多いね。

    • +3
    1. ※6
      石造で薄絹とか、そういう明らかに質の違うものを使っての表現の挑戦なんじゃなかろか
      それで成し遂げてるんだから変態的と言わざるを得ない

      • 評価
  6. コンセプチュアルアートって物の一種ですかね
    別な作家だけど、便器がポツンと一個だけ置いてある物とか、有名なので見た事がある人は居るんじゃないだろうか。

    • -7
    1. ※7
      それはデュシャンの泉ですね
      写真しか現存していません
      概念とオブジェの関係性が曖昧で不明確なため、厳密にはコンセプチュアル・アートではないですね
      ああいう既製品をそのまま用いた作品はデュシャン本人の言葉のままレディメイドと言うことが多いです
      コンセプチュアル・アートと言うのは、ソル・ルウィットとかジョセフ・コススとかで検索して出てくるようなタイプの作品を指します

      • +3
    1. >>8
      騙されたのに愉快な気分になるって珍しいわw

      • +13
  7. 「すごいだろ?」ってイキッてる感じが好きになれない。

    • -34
  8. 本文読む前に、夜中になると高さが伸びるような仕掛けとかどうか、とか発想してみてたw
    布かぶってるからゴーストとかいうのは、ちょっと安直じゃないのか?ww

    • -13
    1. ※12
      >布かぶってるから

      それも掛けてるのかも知れないけど、
      日本語でも「幽霊部員」とかに使ったりするように
      「痕跡はかすかに見えるが、実在しない」的な意味での
      ゴーストだと思う。

      • +4
  9. 誰もめくれないスカートとか、お願いします!!

    • +1
  10. 時の不在とか粋すぎいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい

    • +11
    1. ※17
      あなたの書いた「時の不在」もものすごいセンスある意訳だと思う。
      好き。

      • 評価
  11. 違う角度でも見せて欲しい
    まだ納得いかない

    • +3
  12. タイトル見てシュレディンガーの時計かって思ってたら全然違った、すげえ

    • 評価
  13. これ木から彫ったのか。畳んだ折り目まで再現してるじゃん

    • +7
  14. 奇妙な不自然さはある
    光だな
    時が張り付いた様で、それもまたいい

    • 評価
  15. 本物の芸術作品って凄いな
    やはりトリエン○ーレの作品レベルとスタンスって芸術と呼べないな

    • -8
    1. ※25
      「自分が気持ちよくないゲイジュツは認めない!」てか
      幼稚だなあ

      • +8
    2. >>25
      「トリエンナーレ」は「3年に一度開かれる芸術展」って意味だから何か特定のイベントを指して言ってるなら誤用だし、
      そうだとして実際に鑑賞もせずに判断してるなら、世の芸術家全てに対して失礼だと思うぞ

      • +6
  16. 幽霊時計というと夜中に13回ボンボン鳴る大時計かと思った
    それにしても布地のドレープの表現が見事
    幽霊が中に潜んでいるようにも見える

    • +1
  17. これは認識災害系のSCPオブジェクトですね

    • +2
  18. うわ幽霊って・・・そういう意味かあ!
    真相知ってから写真見ても布まで彫刻だとは思えない

    • 評価
  19. いやいやいやいや…
    説明書きを読むことで認識が変化するってトリックだろ?
    ほんとはやっぱり布で木彫りなんかじゃないってってオチだろ?
    これが木ならもう世界なんて信用できなくなる

    • 評価
  20. 他の12個の時計が見たい…どう調べたら出るんだ?

    • 評価

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