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迷信はどのようにして広まるのか?生物学者たちがその仕組みを研究(米研究)

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(著) (編集)

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Gerd Altmann / Pixabay
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 一見、不合理だと思われるなんの根拠もないことが、みんなに信じられて通常の社会規範の中に根づいてしまうことがある。

 「迷信」はそれが社会生活に実害を及ぼすものであっても、昔から世界各国で信じられてきた。そして現代でも人間は皆それぞれ、迷信や思い込みやジンクスを心に抱いているものだ。

 生物学者たちがその仕組みを研究した。

古代ローマの時代から人間は迷信にもとづいて行動する

 古代ローマの指導者たちは、いつ選挙を行なうか、どこに新たな都市をつくるか、といった重要な事柄を決めるのに、鳥の姿形や飛行パターンに基づいて決断を下した。

 建設業者は、フロアプランからたいてい13階をはずし、歩行者は、わざわざ回り道をして梯

子の下を歩くのを避ける(梯子の下を歩くと不幸になると言われている)。

 こうした迷信は、根拠のないものと広く認識されている一方で、こだわる人も多く、現代である今日でもかなりの人がこうした行動に従っている。

ゲーム理論を使った迷信に関する研究

 ふたりの理論生物学者が、ゲーム理論に基づいた新たな分析を行い、迷信がどのようにして社会規範の中に根づいていくのかを示すモデルを考案した。

 米国科学アカデミー紀要に発表された彼らの論文は、それぞれが異なる信念体系から始まる個人のグループが、一連の社会規範によって強制される数々の行動を、どのように協調的(みんなが従う)に発展させていくか、を示している。

ここで興味深いのは、誰も特定の信念などもっていないのに、そこから一連の信念が生まれて、みんなが同じことをするという協調的な行動が現れてくるということなのです

ペンシルバニア大学の准教授エロール・アクチャイは言う。

そして、こうした”アクターたち”が、ゆっくりと迷信を蓄積していくのです

博士課程研究者のブライス・モースキーは補足する。

彼らはこう言うかもしれません。”そう、こうした出来事を自分の目で目撃して、ほかの人がそのように行動しているから、自分もそれと同じように行動するべきだと信じている”と。

そのうち、他人がやっているのと同じ行動をとった結果、うまくいくことがあれば、たとえ根拠がなくても、その迷信は理に適うのでどんどん広まっていき、いつの間にか定着するようになるわけです

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Javier Rodriguez / Pixabay

個の行動に影響され同調する集団心理

 モースキーとアクチャイの研究は、ゲーム理論を適用している。

 これは、人々がどのように相互に影響し合い、社会の中で決定を下していくのかを予測するための試みだ。とりわけ、彼らは相関均衡として知られているものを考えた。

 つまり、すべてのアクターには、与えられた状況に対するの彼らの反応を指示する相関シグナルが与えられているというシナリオのことだ。

 「典型的な例は、交通信号機です」アクチャイは言う。「ふたりの人間が交差点に近づいてきたとして、片方は赤で”止まり”、もう片方は青で”進む”。これは誰でも知っているいわば常識で、両者にとって信号のライトの色に従うことは道理にかなったことなのです」

 この場合、信号機というシグナルは、相関的なデバイス、または行動を喚起させるいわば”振付師”と考えられる。

 だが、研究チームは、この振付師がいなかった場合、なにが起こるのかを知ろうとした。

 もし人々が、彼らの行動を指示し、その行動の成功によって、ある信念(迷信)を伝達するほかのさまざまなシグナルに注意を払うことができるとしたら、みんなが従う協調的な行動は生じるのだろうか? 言い換えれば、こうした発展した行為は、”見えない振付師”になりえるのだろうか?

自転車に乗った人が交差点に入ってきたとき、信号機の代わりに猫が現れたのを見たとします。

猫は交差点とはなんの関係もないのに、黒猫を見たら(誰でも)止まるべき、あるいは、その自転車の人は止まるだろうとまわりが思い込むかもしれない。黒猫とのなんらかの意味を感じとるわけです

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Huda Nur / Pixabay

 猫の体の色は、自転車の人が止まるか進むかにはなんの関係もないにもかかわらず、ほかの自転車に乗った人の迷信と相関関係があるならば、この手の条件つき戦略は、自転車に乗っている人によりメリットをもたらすことがある。

だから、こうした根拠のない信念を信じることは、あながち不合理とはいえない、理にかなったこともあるのかもしれません

モースキーは言う。

メリットで変化する信念

 モースキーとアクチャイは自分たちの考案したモデルの中で、世間の規範にやみくもに従わず、自分たちの信念がメリットがあるようにみえるときだけ従う人たちは合理的だと考えている。

 こうした人たちは、うまくいった(メリットを感じた)人々の信念を真似することで、自分の信念を変化させていく。

 これは、さまざまな規範同士が互いに競合し、集団を通じて普及率を上げたり下げたりする、進化する力学をを生み出す。この進化的なプロセスが、最終的に新たな社会規範の形成につながる。

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Brigitte Werner / Pixabay

それでも人は迷信を信じる

 モースキーとアクチャイは、進化・発展して安定した規範は、他の規範にとって替わられることなく、首尾一貫しているはずで、たとえ外的な”振付師”がいなくても、個人の行動をうまいこと協調させていくということを示している。

 彼らは、こうした進化・定着した規範が、アクターがどう行動すべきかを規定することと、他者がどう行動すべきかをアクターが期待・評価することの両方で、たとえ、外部の振付師によって指示されなくても、多くのアクターがやっている行動全般に協調して合わせるための一貫した信念体系を作り出すことを発見した。

 さらに彼らの発見を掘り下げるために、研究者たちは振付師的なものがなにもないときに、個人が自分たちの迷信や信念を考案し始めるかどうかをみる、社会的実験に関わることを望んでいる。

こうした信念(迷信)は作り上げられたものであるけれど、誰もが実際にそれに従うことで、現実のものになるということが興味深いのです。

だから、あなた自身もこうした社会的現実をつくりだすことができます。それをさらに検証していくのは、本当に興味深いのです(アクチャイ)

References:How superstitions spread | Penn Today/ written by konohazuku / edited by parumo

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この記事へのコメント 28件

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  1. 霊柩車や救急車が通ると親指を隠す
    これも日本全国にあるのかな?

    • +6
  2. Aが起きた後にBが起きた、ということが数回連続で起こり
    なおかつAが起きなかった時はBも起きない、ということも数回体験すると
    AとBにはなんらかの相関関係があるのでは、と推測される
    これが迷信
    黒っぽい雲が低空を覆うと雨が降る、という事が数回連続で起こり
    そうでない雲の場合はいくら覆っても雨が降らない、ということも体験すると
    雨雲というものがあり、それが雨を降らせる、という相関関係が立証される
    これが科学

    違いは「なんで雨雲の場合は雨が降るの?」という原理まで解明されるかそうでないかだけ

    • +5
    1. >>2
      「黒猫が前を横切ると不運になる」という迷信だって、「黒猫を見なくても不運なことが起きる」という事象は当然あるのに、広く信じられてるよ。
      つまり、「A→B」がそれっぽければ、「notB→notA」がなくとも迷信は成立する。
      あと、原理が解明されていない科学法則もある。

      主観と経験則に基づく法則が迷信、客観的データや根拠に基づく法則が科学。

      • +5
  3. 「騙されてはならない!!」
    と言う人が使命みたいに迷信を広めているのを腐るほど見てきた
    迷信そのものが悪いわけじゃないと記事にもあるけど、ポジティブな迷信ばっかり廃れていってる気がしてならない

    • +3
  4. ワイは未来人も宇宙人も信じてるで
    この宇宙が箱庭だって可能性もな
    そして、自分以外が全て超高度なAIで出来てる事も

    • +3
    1. ※4
      自分自身が超高度なAIで、自分がそれを認識していないだけの可能性は?

      • +5
  5. 極論を言えば、宗教も言語も貨幣も広い意味の迷信といえる。ドルと言う紙切れを、「他の人も価値を持っていると信じている」から交換が成り立つ。
    そういう”お約束”が成り立たないと、迷信が迷信であるということが明らかになってしまう。
    アマゾンに住む未開の人々にドル札を見せて「すごい価値がある」と言っても迷信と受け止められるだろう。

    • +6
    1. ※6
      貴様サピエンス全史を読んだクチだな?

      • +1
  6. 最小の行動で最大の利益を得たいからだろうね

    • +2
  7. 迷信とは違うかもしれないけど自信たっぷりな感じで且つでかい声で言われると
    仮に嘘や間違いであってもまあそうかもねと従ってしまうことってよくあって
    反対に本当でも自信がない感じだと不安になってしまうから声がでかい方が頼りがいがあると勘違いしがちになりますね

    • 評価
  8. 今思えばアホらしくても
    当時の人にとっては原始的な科学
    …みたいな話とは違うのか??

    • +4
    1. ※9
      「梯子の下を通るな」とか、迷信うんぬん以前に
      通ったら普通に危ないもんな。
      下の奴も(工具の落下物などの虞れ)、
      上に乗ってる奴も(梯子を倒されるリスク)。

      でも、「危ない」という理由で諭しても
      「馬鹿にするな! 俺がそんなヘマすると思ってんのか!」と
      未熟な奴に限って何故か自信過剰で高を括ってたりするから、
      「不幸になる」という意味不明なジンクスの方が
      なんとなくで忌避してくれやすかったのかもな。

      • +11
      1. ※14
        なるほど
        生き残りやすい情報のカタチが迷信なのかな

        • +2
  9. とりあえず黒猫は可愛い。
    黒くなくとも可愛いが。

    • +9
  10. 迷信というより「経験則」に近いような気がします。根拠を問われてもきちんと答えられないが、「こうしたらうまく行った」という情報が集団内で蓄積されていくうちにルールにまで押し上げられていくことは、普段の会社勤めでもよくあることです。

    また、なにかのきっかけで、もっとうまいやり方が見つかると「今までのやり方は何だったんだ!」なんてのもよくある話。

    別の集団に移った際に、「こっちではこんな方法でやってるのか、なるほどこれはこれで合理的だな」と感じることも多いです。

    • +7
  11. 今なら、「沼やら谷やらついてる地名が危険」ていうのが逆に迷信になりつつあると思う

    山の手にある小さな沼に由来して〇沼と広範囲に地名がついていても
    豪雨だろうが地震だろうが被害が出たことはないし
    かつて実家から少し離れたところにあった川は、以前はよく氾濫していたけど
    水に関連する地名などついていない
    以前、大規模水害があった場所は「美しい」とか「希望」などの綺麗な名前がついて
    まったく当時の面影を残さない(当時も水に関する地名ではなかった)

    そんな子供でも判断できるような簡単なネタに一喜一憂していないで
    古い地図でも見たほうがまだマシだと思う

    • +3
  12. 道徳に繋がる迷信なら信じられてた時代の方が平和だったと思う

    • +6
  13. ツバメが巣をかける家には幸運が訪れるとかな
    明治に入って西洋合理主義が都市部の民衆を極端に啓蒙した結果
    ツバメ狩りをする羽毛業者が問題になったと小泉八雲の著書にあった

    • +4
  14. 行動主義心理学の迷信行動だね
    生物模倣のニューラルネットワークAIも
    迷信行動で間違った行動を学習をしてしまうことがあるよね

    • +3
  15. 夜中に爪を切ると親の死に目に会えないのは
    電気がなかった時代に暗い夜にで爪を切るとケガをして
    破傷風菌などで親より早く自分が死んでしまうから、とネットで読んだ。

    由来の真偽はともかく、科学の進歩とともに迷信も更新したほうがいいのかもね

    • +5
  16. 夜中に爪を切ると親の死に目に会えないのは
    明るい電気などなかった時代、暗い夜に爪を切るとケガをして
    破傷風菌などで親より早く自分が死んでしまうから、とネットで読んだ。

    由来の真偽はともかく、科学の進歩とともに迷信も更新したほうがいいのかも。
    宇宙開拓時代に入ってからの迷信とか、どんな風になるのかワクワクする

    • +2
  17. ・人類の推論能力の高さが逆に災いして、無関係な事象に因果関係があると思ってしまう
    ・さらに社会性の高さのせいで、他者と同じ行動をすると安心する
    迷信が生まれて定着するのはこんなプロセスかねぇ。

    • +4
  18. 日本でもっとも信じられてる迷信は血液型で性格がわかるとかいうもの。

    • +5
  19. そりゃ猫がいたら止まって見るべ
    可愛いし

    • 評価
  20. 皆が洋服を着ている中、和服を着るのは避けがちになってしまうかのように。

    • 評価
  21. 「コーラで骨溶ける」とかだよな、比較的新しい迷信とかだと。

    日本の場合、すぐ隣に迷信を捏ね上げてできた国があるし。
    日本の新しい迷信は大体そこの尖兵の仕業だと考えたら辻褄合っちゃうんだよな。

    • 評価

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