メインコンテンツにスキップ

毎日記憶がリセットされる少女。朝目覚めると事故を起こした日に戻ってしまう稀な記憶障害を発症したケース(アメリカ)

記事の本文にスキップ

72件のコメントを見る

(著) (編集)

公開:

この画像を大きなサイズで見る
Advertisement

 ケイトリン・リトルは、アメリカ・ノースカロライナ州グリーンズボロにあるサウスイースト・ギルフォード高校2年だ。

 一年半前、クロスカントリーの練習中の事故で脳震盪を起こし、その後遺症で特殊な記憶障害に苦しんでいる。

 毎日夜寝ると、ケイトリンの新しい記憶はすべて消えてしまい、朝、目覚めるといつも今日は事故があった2017年の10月だと思ってしまうのだという。

Caitlin Can’t Remember episode 1: Greensboro teen has anterograde amnesia

映画「50回目のファースト・キス」の主人公と同様の記憶障害

 ケイトリンのこのケースは、ドリュー・バリモア主演の映画『50回目のファースト・キス』を思い出させる(なおこの映画は2018年に日本でリメイク作品が公開されている)

 この映画の主人公も、悲惨な自動車事故の後遺症で、事故以降の新たな記憶を保つことができない。彼女にとっては、朝、目覚めるといつも事故の日なのだ。

 2004年にこの映画が封切られたとき、バリモアが苦しんでいたのは、ゴルトベルグ症候群という架空の健忘症という設定で、ある臨床神経心理学者は、これは神経学や精神医学で知られているどんな症状とも関係はないと主張していた。

 しかし、それ以降、短期記憶がリセットされてしまう症例が実際にいくつか報告され、今では、この架空のゴルトベルグ症候群は、医学的にきちんと認識された前向性健忘症という疾患として周知されている。

Caitlin Can’t Remember episode 2: Greensboro teen with anterograde amnesia – how does she do it?

朝目覚めると、事故を起こした日の記憶に戻ってしまう

 当時16歳だったケイトリンが高校のクロカンの練習中に脳震盪を起こしてから17ヶ月がたったが、彼女にとってはそれは文字通り昨日のことなのだ。

 2017年10月12日、チームメートのひとりがよろめいたはずみでたまたまぶつかってきて、ケイトリンは転んで頭を打った。

 当時、コーチや神経科医は、ひどい脳震盪だが、数週間で解消すると考えた。しかし、時間が過ぎるとともに、ケイトリンは通常の経過とは違う症状を見せ始めた。毎日、両親は彼女を起こし、今日が何日なのかを伝えて、2年前に頭を打ったことを説明しなくてはならなくなった。

わたしはいつも怖れています。あの子がベッドから起きてきて、”それは違う”とか”それはありえない”と言われるのではないかと。

どうして、あの子に嘘をつけるでしょう? だから毎朝、今日は何日なのか、あの子に伝えるときに本当にためらいます。でも、それがわたしの務めですから、あの子に伝えなくてはならない

ケイトリンの父親は語った。

‘Caitlin Can’t Remember’ – episode 3: Getting through school with anterograde amnesia

記憶障害と戦う少女とそれを支える大人たち

 幸いなことに、ケイトリンは自分の状態について知った後、自分の身に何が起こっているかを理解することができた。

 しかし、彼女にしてみれば、当然のことながら驚愕以外のなにものでもなく”どうしてそうなるの?”という疑問ばかりだった。

 父親は娘に、事故以来起こったことについて書き留めた日誌を読ませ、疑問があれば、パパのところに訊きに来なさいと言っている。

 ケイトリンの記憶障害は、前向性健忘症の一種だと思われるが、、学校生活にも支障をきたしている。毎日学んだことを記憶できないからだ。

 自分の先生の名前も忘れてしまうため、いちいち書き留めておかなくてはならない。彼女の特殊教育の先生、トレイシー・ヘルムスは、毎朝、ケイトリンは初対面のようにふるまうという。

わたしが教室に入っていって、ケイトリンと会っても、彼女はわたしが誰だかわからない。クラスで自分の席がわからないし、担任が誰だかもわからない。彼女にとって、毎日は新鮮で初めての体験なのです。忘れてしまうので、すべて初めて目にするのですから

‘Caitlin Can’t Remember’ – episode 4: Devastating conclusion for teen with anterograde amnesia

難しい治療と困難な日常

 多くの医師を訪ねたが、誰もケイトリンの症状を改善することはできなかった。ケイトリンの現在の治療には一日1000ドルかかるといわれているが、両親の貯金も急速に底をつきつつある。

 そんなとき、MyFox8のドキュメンタリーシリーズで、「ケイトリンは記憶できない」という番組が放映されて、彼女の症状が取り上げられ、それ以降、クラウドファンドのGoFundMeを通して支援を受けている。

 ケイトリンの家族は、いつか娘の脳のスイッチが元に戻って、また新たな記憶を保つことができるようになることを願っているが、当分は彼女はこの珍しい健忘症とつきあっていく術を学ばなくてはならない。

わたしはとてもまめにやっていかなくてはならないわ。あちこちにたくさんのポストイットが貼ってあるの。

そこには”さあ、これをやろう”とか、”これは新しいこと”とか”わたしを助けてくれるもの”とか、書いてある。これらがなかったらどんなことになるか、すぐに想像はつくわね

ケイトリンは言う。

References:Rare Condition Causes Teen’s Short Term Memory to Reset Every Day/ written by konohazuku / edited by parumo

📌 広告の下にスタッフ厳選「あわせて読みたい」を掲載中

この記事へのコメント 72件

コメントを書く

  1. 50回目のファーストキス思い出すわな

    • +1
  2. キラークイーンのバイツァ・ダストみたい

    • +1
    1. >>4
      実際に時間が戻るわけではないので、どちらかというと6部のジェイルハウスロックに近いかも

      • 評価
  3. 上に載ってた映画は知らないけど、博士の愛した数式みたいだとは思う

    • +17
  4. ドリューの映画みたいに周りの人が一丸となって同じ日を繰り返してあげたら楽そうだけどな。難しいわな。

    • +2
  5. あの映画は好きだよ。
    でも日本で作られたファミチキ先輩が学生プロレスする奴は酷かった。
    小川洋子の「博士の愛した数式」では毎朝、博士が驚き混乱し嘆き悲しむさまを暗示させてる(映画?そんなの知らない)。
    あの状態なんだろう、今は映像記録も簡単だから状況をわかりやすいんだけど、メモと違って理解するのに時間がかかる(最初から最後まで見ないといけない)。
    早く改善することを願うよ。

    • +3
      1. ※34
        そうかーそういう人も居るよね、最後は好みだから。
        あっマイナス入れたのは僕じゃないから。

        • 評価
  6. 「101回目のプロポーズ」は
    だんだん武田鉄也の記憶がなくなって
    車の前に飛び出しちゃいけない社会常識も
    わからなくなって、指輪が何かもわからなくて
    道路に落ちてたナットを渡すんだよな。

    • +1
    1. ※9
      マイナス評価が多いけど・・・そういうボケ嫌いじゃない

      • +3
  7. サスペンス映画ならニコール・キッドマンの「リピーテッド」

    • +2
    1. ※11
      それ思い出してた。てか、原作の「わたしが眠りにつく前に」を。
      映画よりももっとじわじわ怖いよ(私感)。 もしまだ売ってたら読んでみて。

      ※17
      あなたの想像する通り、↑に書いた映画と小説では、知らないおっさんの横で目覚めて、「いやだ、前の晩、何があったの?」と思いながらバスルームに行って、自分より老けてる自分を鏡で見て驚くの。これが毎朝よ。
      彼女には助けてくれるお医者さんがいたけど、現実はどうなんだろう…。

      • +2
  8. efで似たようなキャラいたけどこういう記憶障害実在したのか

    • +4
  9. 漫画・アニメだと一週間フレンズっぽい。
    こっちは一週間どころじゃなく毎日だけど。

    • +3
  10. 自分はパコと魔法の絵本を思い出した
    10年20年この症状が治らなかったら目が覚めるといきなりおばさんになってるんだもんな
    治ると良いな

    • +17
  11. 50回目のファーストキスや、一週間フレンズもやはり、記憶が消失してしまう物語ですね。この方の様に同じ日を繰り返すのか、一定の期間で特定の事を忘れてしまうのか。両作品も家族のサポートの大変さが描かれていましたね。

    • +1
  12. よくわからないな

    もし自分なら
    朝起きて記憶が無いことを知った時点でパニック
    理解するのに一日かかってその日は終わる
    そして翌日また同じことを繰り返す

    学校なんか行く余裕なんてないだろ

    • +1
    1. ※17
      >朝目覚めると、事故を起こした日の記憶に戻ってしまう

      これが間違っている
      なぜなら”それは違う”と必ず言うはずだから
      「言われるのではないかと」ではおかしい

      >わたしはいつも怖れています。あの子がベッドから起きてきて、”それは違う”とか”それはありえない”と言われるのではないかと。

      • -9
    2. ※17
      自分の記憶に空白があるという認識すら無いなら、自然と記憶が無くなる前の日常の続きをしようとするものだろ

      • +3
  13. 海馬に障害が起きて長期記憶が不可能になった症状
    物語のネタとしては割と珍しくないものになってるよね
    かつて、癲癇の治療として海馬を切除する手術があって、同じように記憶障害が出たんだっけ

    こういう難儀な症状も治せる時代が来てほしいよ

    • +8
  14. 新しいことを覚えられないということは反復による古い記憶の強化もできないのかな。年とともに古い記憶もあいまいになっていくのだとしたら、彼女は将来的に過去も未来もない人間になってしまう。

    • +4
  15. 「パコと魔法の絵本」ってのがあったな。

    • +2
  16. ガッキーがコスプレしてるドラマの設定じゃん。

    • 評価
  17. (パコかポコ?)と魔法の絵本の女の子みたいだ…
    それにしても、漫画みたいな記憶喪失ってあるんだ…

    • 評価
  18. こういう脳の「エラー」の話を見聞きするたび、人間の身体って本当に複雑なバランスで成り立っていて、たった一回ちょっとした事故でショックを受けただけで自分もそうなるかもしれないとか思うとこわくなる
    かと思えば、スポーツや格闘技やケンカやらで自ら無茶な衝撃与えまくっても問題なく長生きする人も多いわけで
    不公平だな、とも思う

    • +11
  19. 寝ると消えるということかな。睡眠は記憶と関係してるということか。
    徹夜したらどうなるんだろう

    • +16
  20. クラウド(魂)にはバックアップ(経験)が刻まれてるのかな
    逝去して肉体から開放されたら統合されるといいなぁ

    HDDは次に使うときには毎回リセットされた状態になってた大学のパソコン思い出すわ

    • +1
  21. 酒に酔っぱらって空のコップを何度も飲み干そうとするあの症状か

    • -7
  22. 15年だか20年だか前に日本人で同じような症状になった人のTVで見た
    当たり前だけど毎回ショックうけるって

    • +3
  23. 睡眠をとらなければ、ずっと記憶を保てるのだろうか…?

    • +6
    1. efの千尋だなぁ。
      ※33さんが言うように、睡眠をまともに取らずに記憶を繋ぎとめようとしたら、ある時緊張の糸が切れて倒れて、それまでキープしていたことが全部吹っ飛んでってシーンもあったね。

      • +2
  24. 起きたらということは睡眠がスイッチになってるということだろうか。

    ある日寝なかったらどうなる?短く寝たら?ノンレム睡眠だけで済ませたら?

    • +3
    1. ※35
      夢を見るのは記憶を整理するためだって説もあるけど、少なくとも睡眠が記憶の定着に重要な役目を果たしてるってことかな?
      とにかく早く原因が解明されて治療できるようになることを願う。

      • +4
  25. まさに今年の正月にさんまの「あなたの夢かなえたろか」という番組でこれと同じ症状の日本人の女の子出てたでしょ。
    婚約者がいるのに毎日会うたびに「どなた様ですか?」ってなるのが衝撃的だった。

    • +1
  26. 微妙に違うけれど。

    自分は10年前に家族を亡くしているんだが、夢の時間はあの時より前で止まっている。
    夢の中では家族はみんな元気で、全員一緒の生活を送っている。
    そんな夢を毎晩見ている。

    で毎朝、目が覚める度に、「ああ、これは夢だったな。もういないんだな……」
    これの繰り返しを10年続けてきた。

    いつまで経っても夢の中の時間が更新されない。あの時より前の古いキャッシュが脳に残ってて、夢ではずっとそれを参照し続けてるみたいな感じ。

    まあ自分の場合はあくまでも夢だけの話なので、この記事の少女よりは全然深刻じゃないけど。

    • +10
  27. 我々とこの少女に、どうして違いがないといえるだろうか。

    • -1
  28. 「あの人は違う人だよ、人違いだよ」と繰り返し説明しても
    いつまでたっても人違いに気づかない人が近所にいるよ
    同じ症状かな

    • 評価
  29. こういうケースを扱っているフィクションが予想外に多いのを
    コメント欄で知って驚いた

    • +3
  30. 記憶の年齢と実年齢が離れてくるとキツイだろうな。

    • +5
  31. 昼寝して起きても記憶がリセットされるんだろうか

    • +2
  32. efの千尋はちょっと違うけどな
    千尋は寝る前に日記見直したら次の日も覚えていられるからまだなんというか救いがあるわ…
    毎日リセットは辛いな…

    • +1
  33. 1年ごとに記憶を消されるインデックスは、まだ幸せなのか…

    • +1
  34. 日本にもいた気がする。確か部活中に落雷受けてなってしまった

    • 評価
  35. 嘘だろ…酷すぎる
    想像したら人間の尊厳を失ってしまうくらい恐ろしい事だと思った…
    記憶って本人のアイデンティティそのものだろ
    蓄積できないって…ループに取り残されてるようなもんじゃん
    本人は…気の毒だし家族も可哀想すぎる
    なんとか治療してあげてほしいわ。あんまりだろ…

    • +5
  36. 脳は寝てる間に記憶の整理を行うからその時に今日の記憶はすべて要らないものとして消去されてしまうという事なんだろうな
    逆に言うと脳が防衛機能として事故の記憶を守ろうとしてそういう極端な処理になってるのかも

    • 評価
  37. 新しいことを記憶できないなら学校へ通う意味ないのでは…
    先生やクラスメートの心身に負担を強いるだけじゃない?
    正直、徒労感・虚しさ・悲しみ(親しかった友人なら)がすごいと思う。
    形だけ通学して高卒の資格を得ても無意味だし、働くにも事故以前でも
    可能だった単純労働をさせるくらいしかないよね。

    • -2
  38. 掟上をあげる人がもっといるかと思ってた
    意外と知名度無いんだね

    • 評価
  39. かなり昔NHKスペシャル「人体」シリーズの「脳」編で記憶が定着しない人のことを取り上げてましたね
    結構面白かったのでまたどこかで見られるといいんだけど
    「博士の愛した数式」はそれ見て思いついて書いたんだと思ってた

    • 評価
  40. もう一回脳震盪起こして戻ったりしないのかな

    • 評価
  41. 彼女の父親が生きている内は毎朝に説明してくれる人が居るから良いと思うけれど、説明してくれる人が居なくなった時にどうするか?が問題だろうな。こういう障害を持った女性でも良いと言ってくれる相手の男性が現れてくれれば良いが…もっとも毎日記憶が無くなってしまうと恋愛も進行しないだろうから、結婚も無理という事に?何だか可哀相に思えて来た。とにかく彼女には、毎朝過去の事を簡単に説明してくれる人が必要だと思う。この症状が完治してくれる事を祈るよ。

    • +2
  42. 映画じゃなくても、ノンフィクションかなんかのドキュメンタリーで一般人がこの症状を抱えながら働いてるの見たことある。
    毎日毎朝緊張しながら仕事場へ向かうの・・・。
    あまりにもショックだったので部分的にだけど時々思い出してしまう

    • 評価
  43. アニメの一週間フレンズを思い出した

    • 評価
  44. 人間の脳とPCやAIとの違いは、不要な記憶や思い出したくない記憶(都合の悪い記憶など)を忘れたり、改竄したりできること。

    つまり、彼女は”覚えていられない”のではなく、忘れる能力がコントロールできなくなり事故の日以降の記憶を睡眠時に全て消去(もしくは記憶の再生が出来ない)されるのではないだろうか

    • 評価
  45. 毎朝起きると戸惑い、毎晩恐れながら眠りにつくのか

    • +1
  46. 症状は違うけど、毎朝両親が状況を説明しなきゃいけないとかのくだりは
    『ハイペリオン』のレイチェル・ワイントラウブに近いと思った

    • 評価

コメントを書く

0/400文字

書き込む前にコメントポリシーをご一読ください。

リニューアルについてのご意見はこちらのページで募集中!

動画

動画についての記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。

人類

人類についての記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。

最新記事

最新記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。