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捕食獣、ピューマの食べ残しが森林の生態系を育んでいた(米研究)

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(著) (編集)

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photo by istock
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 ヘラジカは別名オオジカとも呼ばれ、オスとなれば、体重300キロを超える偶蹄類でも最大級の草食動物だ。

 それは捕食獣であるピューマのオスの3倍もの大きさだ。

 それでもピューマは非常にたくましく、また狩りの技術に長けており、そうした食べきれないほど大きな獲物を仕留めることができる。

 人間の食べ残しなら残飯として廃棄されるよりないが、ピューマの食べ残しの場合は、生態系への恩恵となる。

 クマ、キツネ、トリなどの腐肉食動物にとっての食料になるばかりか、無数の甲虫にとっても嬉しい贈り物なのである。

ピューマは生態系のエンジニア

 ピューマを研究するマーク・エルブロック氏は、これまでもオオカミ、キツネ、グリズリーといった数多くの大型脊椎動物がピューマが残した屍肉を食べていることを報告してきた。

 だが、今回新たに判明したのは、それによって惹きつけられてくる昆虫である。

 2016年5月から10月にかけて、調査チームが米ワイオミング州ブリッジャー=ティートン国立森林公園でピューマに殺されたヘラジカとミュールジカ18頭を調査したとき、そこにトラップを仕掛け、1週間ごとに何がかかっているか確認した。

 その結果、ピューマの食べ残しから215種、2万4000匹の甲虫を収集することができた――周辺で見ることができる生物多様性を超える数である。

 『Oecologia』に掲載された研究によれば、このことから、ピューマがたんなる捕食者などではなく、「生態系のエンジニア」であることが明らかになったのだ。

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image credit:NATIONAL PARK SERVICE/PUBLIC DOMAIN

腐敗の状態に応じて腐臭が変わる

 集まってくる甲虫の種類は、腐敗の進行に応じて異なる。腐敗する死体は揮発性有機化合物(VOC)を発散するのだが、その種類が腐敗が進むにつれて変化するからだ。

 甲虫はその臭いを嗅ぎつけて(中には8キロ先の腐臭を嗅ぎつける仲間もいる)、自分の食の好みにぴったりな腐敗状態にあるかどうかを知るのである。

 これによって、さまざまな生態的ニッチが満たされる。まさにウィンウィンな関係で、2ヶ月もすれば死体は骨になってしまう。

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photo by pixabay

ピューマの食べ残しに群がる甲虫

 研究で一番多く見られたシデムシ科の一種(northern carrion beetle)は、新鮮な肉に引き寄せられて、おこぼれに与ろうと寄ってきたほかの甲虫をいじめる。

 一方、ルリホシカムシ(cosmopolitan blue-boned beetle)のような仲間は、ずっと後になって飛んできて、乾燥した皮膚を削り取って食べる。

 こうした死体に引き寄せられる生物を狙う捕食者もいる。たとえば死体の周囲の血を吸って湿った地面にはナメクジが集まるのだが、オサムシの仲間(snail-hunter beetle)はそれを食べる。

 モンシデムシの仲間(Orange-and-black burying beetle)は、子供のために屍肉を剥ぎ取り、それを土で覆う。それからその下に卵を産み、幼虫の餌にする。

 捕食者の多くは獲物をきれいに食べるものだが、ピューマの場合は食べ残しで生態系の布地を織り上げる。その様子はまるで森全体に餌を与えているかのようだ。

References:springer / mongabay/ written by hiroching / edited by parumo

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この記事へのコメント 29件

コメントを書く

  1. 行け 行け ピューマ~ どんとぉ~~ 行けえぇ~~~~♪

    • +1
    1. ※5
      あんなモンハンに出てきそうなやべえやつどうやって狩るんやろか・・・

      • +1
      1. ※9
        ネコ科の狩りは急所狙い
        首の後ろ(脊椎)を噛んで麻痺させ、
        窒息死させるから鮮やかなもんです

        • +3
      2. ※9 ※21
        単純に体が小さい子供とか年とってたり病気で弱ってるヤツしか襲わないからだよ

        • 評価
        1. ※25
          ピューマより小さい単体のハイイロオオカミでもヘラジカやそれより大きいバイソンまで仕留めてるね
          でも元気で大きな個体には例え群れでも襲い掛からない
          狩りの上手い個体ほどこの見極めがしっかりしている

          • 評価
  2. モンシデムシは夫婦で子育てをするそうな

    • +3
  3. 自然の位置並みには無駄なものはないんだな どこかで役立ってる

    • +5
  4. ピューマが食べんでもいずれ死ぬのだから結果は同じ

    • -11
    1. >>11
      狙ってヘラジカを狩れない熊や狐にとってはありがたい存在だと思うよ。

      • +8
    2. ※11
      残念! シカ等に対する捕食者がいないことで個体数が爆発的に増え、森林環境を害しているのは世界中(日本、カナダ、アメリカ、インドetc)で深刻化しているんだなあ。

      だからオオカミを導入する動きすらあるって言うのに、そんなことも知らないなんて、ちゃんとカラパイア見てるぅ?(煽っていくスタイル)

      • +2
    3. >>11
      最上位の捕食者に奪われるぶん狩りの頻度が高いので、貢献度は大きいそうです。

      • 評価
  5. 方言でねこわけってという言葉があるんだが
    猫属って一気に完食せず食べ残ししないか?

    • +2
    1. ※13
      ライオンに妻を食い殺された戦士がその習性を利用して食べ残し(妻)の傍らで待ち伏せし復讐を果たしたってニュースを昔耳にしたことがある

      • +3
    2. ※13
      一気に完食は余程美味しかったかお腹空いてたかだね。
      何も無く「いつもの日常」なら継ぎ足しで時々真っ新にって感じでぜんぜんOK
      (ウェットフードはこの限りではない)

      • +2
  6. 半年間2万4千びきの虫を数え分類。。。
    忍耐力のいる調査だ。

    • +3
    1. ※18
      ピーマン、外側の皮だけ食べて中身残すの僕。

      • 評価
  7. ヒグマも似たようなことがあって、アザラシとか漂着したクジラとかの皮は固くてキツネ達では破れない。ヒグマがそれらの皮を破ってその食べ残しをキツネや鳥たちがありつける。
    他にもヒグマは鮭の腹しか食べなくて残りを捨てる。それを自分では鮭を捕れない小型の動物たちが食べる。

    ってな感じで食物連鎖の頂点の生物が自分より下位の生物の食料確保に一役買っているってのはとても面白いと思う。

    • +7
  8. 「始末がいい」という言葉があるけれど、まさに自然界は、始末がいいな。

    • +4
  9. 食物連鎖がうまくできているのか、食物連鎖から外れたものは淘汰されて現在の自然界になったのか・・・

    • 評価
  10. 「・・・その様子はまるで森全体に餌を与えているかのようだ。」

    良い表現ですね。

    • +2
  11. 木の実を食べる鳥が種を運んだり
    花粉を集めるハチが植物を交配させたり
    自然ってたくましく面白く、何だか素敵だね

    • 評価

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