メインコンテンツにスキップ

アート界の奇才「サルバドール・ダリ 」の驚くべき広告・CM作品

記事の本文にスキップ

33件のコメントを見る

(著) (編集)

公開:

この画像を大きなサイズで見る
Advertisement

 シュルレアリスムの代表的な作家として知られているサルバドール・ダリ(1904年5月11日 – 1989年1月23日、84歳没)だが、多くのテレビ広告に出演していた時期があったようだ。

 「アルカセルツァー(胃薬)は胃でシュワッと爆発します」居間でくつろいでいるときに、こんな言葉をダリの口から聞くとは思わないだろう。

 だが、1960~70年代にテレビを観ていた人たちにとって、このシュールリアリストのレジェンドは、小さな画面の中で必要不可欠な存在となった。

 そう、チョコレートやインク壺、航空会社、胃薬まで、さまざまなコマーシャルにダリ自らが出演していたのだ。

ダリのコマーシャリズム

 当然のことながら、評論家やほかのアーティストたちはこれに激怒し、ダリはもう終わったのか? 路線を変えたのか? と口々に叫んだ。

 ダリの死後30年がたった今、こうした雑音はもうないが、誰もが忘れているこうしたダリの遺産をどう解釈すべきか?という疑問がわいてくる。

 彼がどのようにして、様々な商品のコマーシャリズムにたどり着き、驚くべきコラボをしてきたのか?

 ストッキング会社からディズニーに至るまで、ダリの広告やコマーシャルのキャリアをもう一度見直してみることにしよう。

自身が出演することも。ダリの手掛けたCM

 アーティストたちは、コマーシャル業界の仕事を、出発点としても副業としてもよく知っていた。アンディ・ウォーホルは、ファクトリーでの制作活動以前には、優れた靴デザイナーだったし、アルフォンス・ミュシャ はその飲料品の広告で愛され、トニー・ドゥケットは、デパートのディスプレイをびっくりするほど高くした。
・チョコレートCMに出演するダリ

この画像を大きなサイズで見る

ランバンのチョコレートCMに出演したダリ(1970年代)

・ダリのストッキングの広告

この画像を大きなサイズで見る

 1939年から1948年、ダリはアメリカに住んでいたとき、多くの広告会社と仕事をしていた。

 ブライアンズの靴下、ジョンソン・ペイント、さまざまな香水や宝石会社の広告、さらにはフランス国有鉄道SNCFの美しい広告も制作している。
・ダリによるSNCFのポスターの数々

この画像を大きなサイズで見る

ダリ、ハリウッドに参入

 次にダリは、ハリウッドに参入し始めた。

 アルフレッド・ヒッチコックの映画『白い恐怖』(1945年)に出てくる幻想的な夢のシーンの構想を担当したのだ。
・アルフレッド・ヒッチコック『白い恐怖』(1945年)ダリの夢のシーン

この画像を大きなサイズで見る

 さらに1970年代、アレハンドロ・ポドロフスキーの『デューン』に、ミック・ジャガーやオーソン・ウェルズと共に出演する予定だったが、この企画は頓挫した。

 だが、ダリの没後、2013年、ドキュメンタリー『ホドロフスキーのDUNE』が製作された。

ウォルト・ディズニーとの出会い

『デューン』は完成しなかったが、両映画とも傑作であることは確かだ。ダリの映画業界への参入が、この業界の巨大企業ディズニーとダリを結びつけることになった。
・スペインの船上でのウォルト・ディズニーとサルバドール・ダリ(1957年)

この画像を大きなサイズで見る

 ダリはウォルト・ディズニーとあるパーティで出会い、自分は『ファンタジア』路線の短編映画において完璧なパートナーになれるだろうとウォルトに売り込んだという。

 だがウォルトは、「そうした機会はもっとほかのアーティストたちに与えたい。我々は彼らを必要としていて、新しい道を切り開き続けなくてはならないから」と答えた。
・ウォルト・ディズニーとダリの『ディスティーノ(運命)』

この画像を大きなサイズで見る

 これが実現することはなかったが、のちに埋もれていたこの企画が再発掘された。

 パリのアニメーターチームとディレクターのドミニク・モンフリーによって、上のようなダリの概念図をベースにした、ディズニーの6分間の短編フィルムが2003年に公開された。

Walt Disneys Destino (Full)

 シュールリアリストであるダリにとって、ディズニーとの接触は敵地に乗り込んだようなものだった。

 ダリはヨーロッパのアヴァンギャルドのひとりだったため、仲間たちからシュールリアリスト活動やマルキシズムの価値を失ったと言われた。

 1924年にシュールレアリズム宣言でこうした活動をたちあげたアンドレ・ブルトンは、一般社会の規範に従わず、資本主義利権に徹底して対抗する仲間たちと団結していた。ブルトンはセレブブランドと結びついたダリの広告を拝金主義だとした。

 1969年、ダリはもっとも成功した広告ロゴに貢献する。有名なチュッパチャップスキャンディーのロゴを、従来の脇から上に持ってくるよう主張してデザインし直したのだ。

この画像を大きなサイズで見る

 「1960年代から、ダリが自分の贅沢な生活を支えるために1ヶ月50万ドル近くが必要だったことはみんな知っていた。ダリはまるで大王のような暮らしをしていた」ダリの専門ジャーナリストのスタン・ラウリッセンズは2009年に語っている。だから、広告の仕事は、そのための手っ取り早い解決法だったというのだ。

この画像を大きなサイズで見る

 「ダリは20代のときに自分は天才だと主張していた」2004年、ニューヨークタイムズの評論家アラン・ライディングは書いている。

 「ダリはこうした考えをあまりにやみくもに推し進め続けたため、最終的には彼自身に影を落とすことになった。1989年に亡くなるまで、おびただしい数のサインの入った書類が残され、これが偽の

ダリ産業を生んだ。その結果、アート界の多くが彼に背を向けた」

 確かに一ヶ月に50万ドルもの生活費がかかる者は、規範に縛られないアヴァンギャルドなアーティストとはいえないのかもしれない。
・ダリが出演したアルカセルツァー(胃薬)のCM

Alka Seltzer

 だがそれでもダリはダリだ。没後30年となった今でも、その作品の数々は強烈なインパクトを放ち続けている。

 ダリの肉体は死んだが、そのマインドは我々の脳裏に焼き付いている。

 没後30年イベントとして、フロリダ州セントピーターズバーグにあるサルバドール・ダリ美術館が「ダリはまだ生きている」とするAIのダリの映像を公開した。

Dali Lives – The Master of Surrealism is Back

 「私はサルバドー・ドメネク・ファリプ・ジャシン・ダリ・イ・ドメネクである」と語るAIのダリ。

 ダリはかつてこう語っている。

 「私が死んでも、それは完璧な死ではない」

 まさに今、シュールレアリストの奇才は行き返ったのである。

References: messynessychic

📌 広告の下にスタッフ厳選「あわせて読みたい」を掲載中

この記事へのコメント 33件

コメントを書く

  1. ダリとディズニーのツーショットに感激!

    • +8
  2. 去年お亡くなりになった
    天井桟敷で活躍した役者さんで、
    サルバドール・タリさんっていたなぁ。
    寺山修司が芸名つけた。

    • +2
    1. >>3
      タリさん亡くなってたのか……
      田園に死すにも出てたよね

      • 評価
  3. ダリ&ディズニー
    なるほど、そうなったか、個人的には好きだぞ!

    • +4
  4. 2~3年位前にちょっと美術鑑賞の視野を開拓しようと、京都市立美術館のサルバドール・ダリ展に行ったけど、個人的にはルネ・マグリットの画風の方が好みだった
    サルバドール・ダリ氏の功績が色々と凄いのは解ってるけどなぁ・・・

    • -2
  5. ダリで映画を語るならルイス・ブニュエルとの初期作も重要でしょ

    • +4
  6. ディズニーの奴全く意味が分からなかった…

    • +3
    1. ※7
      私の解釈だけど、思い人という物は真実の姿を求めはしても、受け入れられる者では無い、理想は理想として、心の中にその象徴を残しておく事がベターだ。
      もう少し言えば、リアルな自分と相手がお互いのリアル(エゴ)をさらけ出したまま一緒になるには、それを削ぎ落とさなければ到底一緒にはいられない。
      リアルな姿はエゴの象徴、抽象的な像は実際に理解できる相手の範囲、と言う風に受け取った。

      • +1
    2. ※7
      「観ていると不安になる」とかそういう気持ちを
      かきたてること自体がこの人のテーマの一部だったり
      するから「意味不明」も立派な感想になってるよ。

      • +4
    3. ※7
      同じくよく分からなかったけど最後まで見れたから、何かしらの魅力があると思う!

      • 評価
  7. YouTubeにダリミュージアムがあげてる、
    ダリ作品を題材にしたvr動画は凄い。
    毎晩、vr視聴しているが現実逃避できる。
    ダリが生きてるときに本人に見せてみたかった。

    • +3
  8. 動画でしゃべってるダリは「AIのダリ」とのことだけど、どの部分にAIが使われてるの? イマイチよく分からないんだけど……。

    • 評価
  9. デザインを生業にしている人なら理解してくれると思うんだけど、こういう「商業デザイン」の仕事って楽しいんだよ。
    アーティスティックな作品で感心されるより小粋なデザインでニヤリとさせるほうが楽しいって感じかな?

    ダリの作風と性格を考えればこの流れは必然だったと思う。

    • +7
  10. AI deepfake techniqueを使った他の動画、ダリのも含めて他にも複数あって疑問は自己解決しました
    もっと長くしゃべってるダリの動画もあって面白かったよ

    • 評価
  11. シド・ミードにインスピレーションを与え、
    ターンAガンダムがデザインされた。
    (ウソ)

    • 評価
    1. ※14
      この前スーパーにいた外人さんで
      カイゼル髭なるものを初めて見た
      あまりの格好良さに魅入ってしまった

      • +1
  12. Datsun 610って日産のブルーバードやないの。

    • +1
  13. アルプスとオーヴェルニュのポスターは素晴らしいな。欲しい。

    • +2
  14. なんかデューンの後に、「ディズニーとの接触」って書かれるとずいぶん後に
    接触した様なニュアンスになるけど、

    – 1945 白い恐怖
    – 1946 ディスティーノ

    そもそもハリウッドに参入した結果、ディズニーに結びついたんじゃなくて、
    単に、アメリカでそこかしこに触手を延してた時期ってだけなんじゃね?

    • +2
  15. 私はダリの娘だと母が言っていた!って主張した女がいたな。どうなったんだろ?

    • +3
    1. ※18
      ダリの墓掘り起こしてまでDNA検査したが全く無関係だった。

      • +4
  16. ウルトラセブンに登場した宇宙細菌ダリーはダリの名に由来すると言われている

    なおアンドレ・ブルトンはウルトラマンに登場した四次元怪獣ブルトンの名となった

    • 評価
  17. アニメーションが個人的によかったよ

    淋しくてやさしい悪夢って感じ

    • +2
  18. ダリは生前、「私はドルの亡者だ。」と言っていた。これはこれで社会通念を何とも思わない天才らしくて潔いね。 
    ディズニーのアニメは、ダリの幻視世界が堪能できて楽しい、貴重なものを見させてもらった。

    • +5
  19. ダリは奇才でもなんでもなく、商売根性の汚いクソ嫁の傀儡でしかなかった
    話題作り、営業の為に奇妙な行動を取らされてただけ
    ダリにそうして稼がせた金でダリ嫁は若い男を囲って浮気しまくってた
    正直、なんでこんな連中が評価されてるのか理解に苦しむ

    • -13
    1. ※23
      それこそが評価される理由なのさ。
      自分で答えを書いただろう、「理解に苦しむ」

      • +1
      1. >>25
        ああ、ごめん、なんで評価されてるのかおれには理解できないって意味で、俺自身は評価してないよ
        商売が上手いんだなーという意味では評価するけどね
        個人的には商売がクッソ下手くそでトラブルばかり起こした挙句人殺しまでしたのに絵の実力だけで評価されてるカラバッジオの作品の方が好き
        まーでも結局人の好き好きだから比べられないよね、芸術なんてそんなもんなんだろう

        • -5
    2. ※23
      非難されるべきは嫁であって、ダリじゃないだろ。
      彼女はダリにとってミューズだったので、逆らえなかったみたいだね。

      • +1
      1. >>27
        そうなんだよ、だから尚更嫌なんだ
        嫁に先立たれた後に自殺を繰り返してたと聞いたし
        なんていうか、もっといい人捕まえてほしかった
        イームズ夫妻みたいにさ

        • 評価
    3. 凡百のデザイナーからは生まれ得ないこの発想を、広告の世界に持ち込んで現実の中に侵食させてる時点で、すでにアートとしては恐るべき仕事やと思うけれどもな。拝金主義への堕落とかではなくてさ。

      まあ、本人そこまで考えてなくて、やりたい事やってただけかも知れへんけど。

      ※23はダリの肉筆見たことあるかい?
      すげえぞ。あれは確かに一個の天才よ

      • +2
  20. 個人的にはダリほど分かりやすいアーティストも居ないと思うけどな
    アートを大衆に分かりやすい物にしたのがダリの功績だ
    だから他のアーティストから叩かれもする

    • +4
    1. ※26
      それはちょっとズレていて
      『【「これがアートである」という大衆が理解しやすい事をアートとする】という事がアート』とという二重構造になっていて、現在で言えばコンセプチュアルアートに近い。
      一番近い例えとして、「ロックは生き方である」という事がロックである。みたいなね

      だから、表層的に見れば※23のような批判が出て来るのは当然で(何かコメントが低評価になってるけど、それすらお門違い。ダリ生存中にもそんな話はあったけど、ダリはそれも許容してる)
      けど、それすらもダリという物に内包されるのでダリの評価が下がる事は無い。

      • +2
  21. 何をどうしたら一ヶ月に50万ドルもかかるの?普通の人間だったら破産一直線だよ

    • 評価

コメントを書く

0/400文字

書き込む前にコメントポリシーをご一読ください。

リニューアルについてのご意見はこちらのページで募集中!

知る

知るについての記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。

人類

人類についての記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。

最新記事

最新記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。