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木は言葉を話し、私たちはそれを学習することができる(生物学者)

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(著) (編集)

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 木はおしゃべりだ。ひっそりと静かではあるが、音、匂い、信号、振動を使って会話を交わす。あらゆるものとつながるネットワークを形成する性質があり、その中には人間であるあなたも含まれているのだ。

 生物学、生態学、林業、博物学など、こうした分野に携わる専門家はこれまでにも増して木々が会話をしていると論じるようになっており、しかも人間はその言葉を聞くことができるとまで主張している。

木は確かにおしゃべりしており、メッセージを発している

 生物学者ジョージ・デビッド・ハスケルは、その著書『The Songs of Trees:(木の歌)』の中で、こうした話を聞いて面食らう人は多いと述べている。

 一見、木々は相互につながりあっているようには見えない。コミュニケーションを行い、言葉を交わすにはつながり合い、ネットワークを築くことが必要だ。木々のおしゃべりを耳にするための最初のステップは、自然がネットワークであることを理解することである。

ワオラニ族の言葉に隠された木々からのメッセージ

 森とはほとんど縁のない一般的な人にしてみれば、酷く抽象的な話に聞こえるだろう。だがハスケルはエクアドルにあるアマゾンの熱帯雨林を例に挙げる。

 そこで暮らすワオラニ族にとって、自然のネットワーク的性質と、そこで暮らす生き物たちが会話を交わしているという見方はしごく当然のことだ。実際、ワオラニ族の言葉の中には木と他の生き物との関係が反映されている。

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 ワオラニ語において、事物は一般的な種類だけでなく、周囲にあるものによっても記述される。例えば、1本のセイバの木を単なる”セイバの木”といった表現はせず、”つたが絡みついたセイバの木”や”黒いキノコが生えた苔むしたセイバの木”といった表現をする。

 彼らは西洋文化でなされるような特定の種に対する単独の名称を思い浮かべることができず、必ず周辺の植物との兼ね合いで語る。ゆえにワオラニ語を英語などの他の言語に翻訳することは非常に難しい。

 ワオラニ族が樹木のことを周囲の人々や生物と密接につながる生き物と捉えているために、彼らは切られた木が悲鳴を上げると聞いても当たり前のように受け止めるし、木を伐採するとしっぺ返しがあるといった話にも驚かない。

 都市生活者はワオラニ族から「何もかもを細分化することで共同体の生活が分断されること」「それが人を孤独にすること」といった教訓を学ぶべきだとハスケルは話す。

 ハスケルは、文学と音楽の歴史を通して、木々の歌声や会話といったことが言及されてきたと指摘する。マツが擦れる音、枝の落ちる音、葉が揺れる音……穏やかな歌声が森中に響いている。芸術家は心の深いところで木々がいわゆる”言語”に依らないとしても話すことを知っていた。

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木の言語:コミュニケーションの再定義

 木の言語という概念は、30年間を森の研究に費やしてきた生態学者スザンヌ・シマールにとっても当然のものだ。彼女は2016年6月にTEDトークで公演を行なっている。

 シマールはカナダ、ブリティッシュコロンビア州の森の中で育ち、林業について学んだ後、林業に従事したという経歴がある。

 しかし木々を伐採することに葛藤を抱き、木のコミュニケーションを研究するべく研究者の道に足を踏み入れた。現在ブリティッシュコロンビア大学で教鞭をとる彼女は、「地下には樹木とつながる菌のネットワークが広まっており、木々のコミュニケーションを円滑」にしていると話す。これについて公演では以下のように説明している。

森でかわされる木々の言葉

あなたの森についてのイメージを変えたいですね。地下には別世界があるんです。生物学的な経路が無限に広がっていて、それが木々とつながることで、植物が会話をすることや、森がまるで1つの生き物のように振る舞うことを可能にしています。知性のようなものだって感じられるんじゃないかしら

人間のネットワークに似ている木々の共生的ネットワーク

 樹木は菌類と化学物質を交換し、風や鳥やコウモリなどを介して種子(本質的に情報のパッケージ)を広める。

 シモールの研究からは、地下に張り巡らされた根のネットワークが菌類と協働して、全樹木種の間で水、炭素、栄養を動かしていることが明らかになっている。

 こうした複雑な共生的ネットワークは人間の神経ネットワークや社会的ネットワークに似ている。木々の中心には情報の流れを統括するマザーツリーすらあり、この相互のつながりが病気と戦う際の手助けとなり、共に生存する道を確保する。

 シマールによれば、こうした交換は私たちの言語とは異質なものではあるが、紛れもないコミュニケーションである。

 そして木々の関係から学ぶべきこともある。それは彼らがこれまで考えられていたようにただ競うのではなく、大いに協力し合っているということだ。

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切り株ですらコミュニケーションをとっている

 ペーター・ヴォールレーベンもまたドイツの古い樺の木の森を管理する中で同じようなことを悟った。

 彼は500年も生きて葉っぱもなくなった古い切り株に躓いた時、樹木が複雑な社会生活を営んでいることに気がついた。

 「生物なら栄養が必要です。そばにある樹木の根から養分を与えられているとしか考えられません」とヴォールレーベン。

 「林業家として、これまで木々が光や空間を競い合うものだとばかり学んできましたが、その逆のことが行われていました。木々はコミュニティの仲間を生かそうと心を砕きます」と話す彼は、木々は人間と同様の家族生活を営み、他の種との関係を築くのだと考えている。

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 あらゆる生き物が互いに依存していることを知れば、世代から世代へと知恵を伝えるマザーツリーを守るだけの賢明さが人間にはあるとシマールは話す。

 それがより持続可能な木材の商業利用へとつながるだろうと彼女は信じている。森の中の1本のマザーツリーは無数の木々とつながり、地下に伸びる緻密なネットワークを通じて余った炭素を送り、苗木の生存率を高めている。

木々の発する異言語の研究

 苗木がきちんと成長するかどうかは人間にとっても重要なことだ。なにしろ私たちには木が必要なのだから。国連食糧農業機関の2016年の報告書にも、「人類の福祉に対する森林の貢献は極めて大きくかつ広範」と記されている。

 同報告書によれば、地方の貧困対策、食糧の確保、生活手段の提供、空気と水をきれいに保つ、生物多様性の維持、気候変動の緩和など、森林はさまざまな分野において鍵を握っている。

 世界中で森林保全へ向けた取り組みが進んでいるが、その人類の生存における重要性を鑑みれば、より一層の努力が必要であるという。

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 保全が重要であることについて疑問に思う科学者はほとんどいない。木々がつながり合いコミュニケーションを図る達人であり、人間自身も含んだ複雑なネットワークを巧みに利用していることを私たちが知れば、環境に優しい政策が自然に優先されるようになるとハスケルは信じている。

 彼は木々を「生物の哲学者」と呼んでいる。世代を超えて対話し、知恵を授けているからだ。私たちは彼らの声に耳を傾けるべきだとハスケルは言う。「彼らは動けないゆえに、生き残るためには動ける動物よりはるかにきちんと地球における立ち位置を知っておく必要があった」のだ。

via:theguardian / goodreads / qz / tedなど/ written by hiroching / edited by parumo

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この記事へのコメント 46件

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  1. 以前テレビで見た実験が素晴らしかった。ハサミで葉を切ろうと思考した瞬間(行動する前)に植物の電位が即座に反応していた。テレパシーなのかな。

    • 評価
  2. 空想ではなく、事実だとすればものすごい発見だけど、もう少し科学的な形での説明がききたい
    どういったメカニズムでコミュニケーションしているのか、そのコミュニケーションには進化的にどういった意味があるのか、コミュニケーションが行なわれないことでどのような不全が起こりうるのか、そのコミュニケーションはどういった種で行なわれているのか…

    • +20
  3. 大いに研究されるべきテーマだと思う
    ただ、この記事読む限りではロマンと情緒が先走っているような印象

    • +11
  4. 森岡浩之の『夢の樹が接げたなら』を思い出す

    • +2
  5. シマールじゃなくてスザンヌ・シマードじゃないの?

    • 評価
  6. 相互共生的な意味では言ってる事は解らないでもないが、言語と言う言い方すると過度な擬人化じゃないかなと思わないでもない

    • +9
  7. 植物に感情があるとかアッテンボローの番組でやってた気がするね
    別の番組だったかもしれんけど(うろ覚え)
    美味しいワインを作るためにそういやぶどうの木にクラシック聴かせてるね

    • +4
  8. ちょうどこの前、友人から聞いた話とリンクしてて面白い。
    学校で木の伐採の実習があって、電ノコで切るんだけどノコギリ入れた瞬間に樹液が飛び散ってその臭いが辺りに充満した際に「あ、生きてるんだ」と実感したそうな。
    んで可哀想になって切れなかった、と。
    スタニスワフレムなんかは異なる認識体系をもったものとの遭遇をよくテーマにしてたけど、植物は身近にあるそういう生物なんたろうな。

    • +3
  9. この種の記事を読むたびに「ヴォイニッチ手稿」を連想する

    • +1
  10. 「脳細胞と内臓の細胞が会話をしている」というのと同レベルの話だと思うが、ミクロの細胞間コミュニケーションとマクロの異種間コミュニケーションの相似は面白い。侵略的外来種というのはこの種のコミュニケーションが取れないんだろうな。

    • +5
  11. 実話
    あまり実を付けないザクロの木を前にして老夫婦が、
    来年も実がつかなかったら切り倒そう
    と言う結論を出した。

    その翌年、それまでに無かった様な数のザクロの実が、枝という枝にたわわに実った。

    ザクロの木は命拾いしましたとさ。

    • +8
  12. こういうのを知れば知るほど収穫作業がしづらくなる
    苦しまないよう一撃で収穫してくれよう…

    • +3
  13. もうちょい分かりやすい具体的な説明が欲しかったが、まぁこんなもんかな
    そこから先は自分で調べればいいか

    • -1
  14. なんか、賢いものは大切に扱うべきみたいな西欧的価値観が垣間見えてなんだかなあ。

    コミュニケーションしてなかったら伐採しまくっていいのかしら。

    • +5
  15. >4
    そのテレビのことはわからないけど、テレビの実験は話半分で見た方がいいと思うよ。
    ドキュメンタリー番組ですらフィクションだったりする時代だから。

    制作側にだます気が無くても基本文系が作ってるから科学的な内容になってないし、
    科学者か否定してもそこはカットとか平気でやるし。

    例えばそのはさみに静電気がたまっていなかったかとか
    金属製じゃないはさみではどうなるのかとか、
    金属の棒ではどうなるのかとか、
    近づける速度、反応する距離、角度、湿度温度明るさ、電位差が生まれるメカニズム、他の個体や種での比較実験とか、テレビでまともにやること無いよね。

    • 評価
    1. ※23
      時代だから、というけど、昔からだからな
      ドキュメント番組もノンフィクション小説もどこかしら作為だからな

      • +6
  16. 意思があっても知ったことではない。
    杉の木は無くなればいい15年以上花粉症で苦しめられて今なお続く苦痛の根源に慈悲はない

    • -4
  17. だから、ネイティブな皆さんは木や草を切ったり抜いたりする時に許しを得るんだよね。

    日本の縄文人達もそうだったんじゃないかな・・と妄想してる。

    • +8
  18. 緑の王という漫画を思い出す。
    植物がインターネットに潜り込んで学習したり、匂いなんかで植物間のコミュニケーションをとったり、て話があった。

    • +1
  19. 特命リサーチでこれを大真面目に研究している爺さんがいたな。葉っぱをディスクドライブに差し込んで情報を読み取ろうとしてた。

    • +1
  20. TED が面白かったな、木々が炭素や窒素を送り合っているという話も、複雑ネットワークの中のハブに相当するマザーツリーがあるという話も興味深かった。これからの伐採は森の生態学的なネットワーク構造を知った上で、なるべくネットワークを壊さないように木を切らせてもらうというやり方にした方がいいんだな。

    • +4
  21. リママメという植物は葉をナミハダニに食害されると香気物質を放出し
    その香気物質でナミハダニの天敵チリカブリダニを誘引する防御機構を持っている
    さらに被害リママメの周囲にある未被害リママメも香気物質を感知し
    チリカブリダニを誘引する準備を始めるというから実に巧妙だ

    • +4
  22. 木々が互いに共生しあっているから、森林の生態系が保たれていると言うTEDの講演。
    それを、実験で確かめたわけだ。
    木々の言語を人が簡単に聴き分けられるようになったら、世界が変わるだろうね。

    • +5
  23. もっとこういう研究が増えて、ベジタリアンが肉食を見下すのを止めさせてほしいね。動物も植物も、元は同じ単細胞がルーツなのに、植物は食べて良いなんて傲慢だ

    • +3
    1. ※35 けして、見下してる人ばかりじゃないと思うよ!
      彼らも変わり者扱いされて、苦しい時もあるはず。
      食べ物を肉多めで摂るより、植物多めの方が
      環境に悪影響が少ないし、健康に良いもの前者。
      でも、みなそれぞれのSDGのための行動や
      健康法があると思う。

      • 評価
  24. ヒトが感知できないだけで、考えはあるのかもね。
    隣の草が伸びやがった、こっちも日の光浴びなきゃヤバい、とか。
    蔦が絡んでウゼー、とか。

    • +4
  25. でも肉を食べないといかんし草を食べんといかんし
    捕食が罪だなんてセンチメンタルを捨てないと

    • +2
  26. これは日本人には感覚的に受け入れやすい話だと思う なにしろ何物にも神が宿ることが当たり前な文化があるから

    • +6
  27. 植物や、土壌内に大量に存在する細菌や古細菌、それらが物質循環で互いにフォローしあう関係にあるのは化学的にも正しいし、以前から知られている事だけど
    それを「コミュニケーション」と呼ぶのは感傷的というか、一種の擬人化じゃないかな

    調べれてみれば分かるけど、我々を含めた生物はほぼ例外無く他の生物と何らかのやり取りをしている
    人間も、普通に生きているだけで自覚無しに細菌や古細菌と物質のやり取りをしているけど、それをコミュニケーションとは呼ばないよね
    それらは意思や意図に基づいたやり取りでは無く、生物全体から見たシステムとしての「生きる為の仕組み」であり、長い時間をかけて成立した合理性なんだ
    その精緻さや巧妙さに感心する事は問題無いけど、そこに人間視点で変な属性を付与するのは「生物」を真の意味で理解する事の妨げになるんじゃないかなあ

    • +2
    1. ※40
      人間視点で属性を付与するのが理解するという事だと思うけど…
      カラパイアでは実在論が基底なの?

      • 評価
  28. 木が何考えているか興味あるけど
    時間感覚が人間とはものすごく違いそうだ

    • +1
  29. 楽器とかやってる考ることあるだろうけどプラスチックでもアルミでも鉄でもダメ、木の表現力って凄いと思う。
    楽器に教わるって言われるぐらい表現力が人間より上だから、木の方が人間なんかより感情の力で勝ってるだろうな
    実は木としてはしょうがないから人間に力を貸してやってるんじゃないかと思う

    • +3
  30. 違うねん
    木々が共生してコミュニケーションを取っているから伐採を辞めろというのか?植物を食べろというのか?

    ではなく、

    そんな尊い1つの生命を有り難く使わせて頂いて、食べさせて頂いている、という感謝を深めれば良いねん

    • 評価
  31. 伊藤三巳華先生(視えるんです、スピ散歩シリーズ)とか、霊感強い人とか、わりと昔から木と会話するって作品に残してますよね。

    私は直で人間の言葉のように聞き取ることはできないけど、
    田舎の家の裏手に山があって、いつも竹がザワザワと気持ちいい音で鳴ってて、
    それが歓迎されてるみたいに心地よくて
    「もしも木が話しかけてたら、そうだったらいいのになー」とか思いながら
    よく田んぼの畝の隣の、魔女の宅急便のOPに出てくる雑草生えた傾斜で寝転んでお昼寝してたわ。

    私の個人的な世界の考え方って「ミクロの世界で起きてることは、宇宙の世界や、人の世界や動物の世界でも同じ理論が適用される」ってので
    IPS細胞の山中教授が、NHK特番「人体」で「脳が全てを司ってるんじゃなくて、各臓器がメッセージ物質を出して直接会話している」ことが今回わかったわけだけど

    この木の世界でも同じことが起きてるんじゃないかと予測してる。。

    • 評価
    1. ※49
      全く同じことが起きているとシマール博士が説明しているよ
      この18分の講演は面白かった

      また博士は伐採するな、とは言ってない
      ただ商業戦略に基づく規格化され効率化された植林伐採は最も危険であると主張しているね
      それは脆弱であるばかりか元よりある森林ネットワークを破壊し結果全滅に至るものだとし
      保護の在り方と伐採の在り方を提案していた

      何事もめんどくさいもの(ハブ木を見切れ、植生はごちゃ混ぜにしろ)であるという
      この博士の主張は前向きでとても好感が持てるね

      • 評価
  32. 人間は食物連鎖の外に出てしまったから地球を操作しているように見えるけど、操作しているのはほんと短期的な事しかできないんだよな
    自然が考えていることはもっと長期的なことだと思うんだよな時間的に
    人間は地球の時間軸の上で横に生きようとする生物なのかもしれない

    • 評価
  33. 植物ってのは動物より先に群体化と言う進化を果たした連中だからね。
    より進んでいたとしても不思議じゃない。

    • 評価

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