この画像を大きなサイズで見るとんでもない設定の夢をみる日もあるが、その夢は偶然生まれたわけではない。 現実で経験した出来事や記憶をもとに脳が組み替えて新しく構成した結果、夢となって現れているのだという。
これは、イタリアのIMT高等研究院ルッカ校の研究チームが287名の参加者から集めた3,700件以上の夢と日常経験の記録をAIによる分析で明らかになったものだ。
さらに夢の内容は個人の性格や感情、睡眠習慣によって異なることもわかった。
この研究成果は『Communications Psychology』誌(2026年4月28日付)に掲載された。
参考文献:
- Your dreams aren’t random. Here’s what’s really happening
夢は現実の記憶をもとに脳が作り出している
夢はまったくの偶然で生まれるものではない。
イタリア中部トスカーナ州にあるIMT高等研究院ルッカ校の研究チームは、18歳から70歳までの287人が2週間にわたって記録した夢と日常の出来事、あわせて3,700件以上を分析した。
睡眠の質や性格、認知能力との関係も同時に調べることで、夢がどのように作られるのかを詳しく検証している。
分析にはAIの自然言語処理という技術が使われた。
自然言語処理とは、人が使う言葉の意味や構造をコンピューターが読み取る技術で、ChatGPTのようなAIにも使われている。
この技術によって膨大な夢の記録を体系的に分析することが初めて可能になった。
この画像を大きなサイズで見る脳は記憶を再現せず、再構築して夢の内容を作り替える
日常の体験と夢の描写を比較した結果、脳が睡眠中に日常の記憶をそのまま再生しているわけではないことがわかった。
職場や学校、病院といった見慣れた場所は夢に登場するが、現実と同じ形では現れない。
複数の記憶が混ざり合い、場面が唐突に切り替わるなど、現実とは異なる形に作り替えられている。
脳は過去の記憶だけでなく、そのときの感情や、これから起こりそうなことへのイメージも組み合わせながら新しい場面を生み出している。
夢は現実を受動的に映し出す鏡ではなく、脳が素材を選んで組み立てた再構築物だといえる。
この画像を大きなサイズで見る性格や思考の癖が夢の見え方を変える
夢の見え方には、はっきりとした個人差がある。
日中に考えが別のことへ移りやすい、マインドワンダリングの傾向が強い人は、場面が次々と切り替わる断片的な夢を見やすいことがわかった。
マインドワンダリングとは、今やっていることとは無関係なことへ心が自然と漂っていく状態のことで、「気づいたら別のことを考えていた」という経験に近い。
一方、夢には意味があると考え、普段から夢を意識している人は、細部まで鮮明で没入感の強い夢を見やすい傾向があった。
夢の内容は、その人の性格や日頃の思考の癖を色濃く反映している。
この画像を大きなサイズで見る社会を揺るがす出来事が夢の内容を塗り替える
個人の特性だけでなく、社会全体を揺るがす出来事も夢に影響を与える。
新型コロナウイルスの流行で外出が厳しく制限されたロックダウン期間中、ローマのサピエンツァ大学の研究者たちが夢の記録を収集した。
後にIMT高等研究院ルッカ校のチームがそのデータと自分たちの結果を比較したところ、ロックダウン中の夢は感情的な強度が高く、閉じ込められる感覚や行動の制限をテーマにしたものが多く見られた。
時間が経ち、人々が新しい生活に慣れていくにつれて、そうした夢のパターンは徐々に薄れていった。
夢の内容は固定されたものではなく、心が社会の変化に適応していく過程とともに変化することが示された。
この画像を大きなサイズで見るAIを活用した夢の分析が意識や記憶の解明につながる
AIを使った今回の分析では、自然言語処理モデルが夢の記録に含まれる意味や構造を、人間の評価者と同等の精度で読み取ることができた。
筆頭著者のヴァレンティーナ・エルチェ研究員はこう述べる。
夢は過去の経験を単に反映したものではなく、私たちが何者であり、何を経験してきたかによって形成されるプロセスです。
大規模なデータと計算手法を組み合わせることで、これまで検出が難しかった夢の内容のパターンを明らかにできました(エルチェ研究員)
AIによる自動分析が実用レベルの精度に達したことで、意識のしくみ、記憶の形成、メンタルヘルスとの関係といったテーマを、はるかに多くのデータをもとに解明できるようになることが期待されている。
References: Nature












