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ブラックホールのジェットの強さを物理学者たちが初測定。そのパワーはなんと太陽1万個分!

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(著)

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Image credit:ICRAR/Curtin University
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 ブラックホールが宇宙空間に噴き出す高速ガスの柱「ジェット」のパワーを、物理学者たちが初めて直接測定することに成功した。

 そのパワーは太陽1万個分に相当する途方もない大きさだった。

 オーストラリアのカーティン大学が主導したこの研究では、地球規模に広がる電波望遠鏡を駆使し、恒星の風に押されて踊るようにしなるジェットの動きを観測することで、これまで不可能だった瞬間的なパワーの算出を実現した。

 この研究成果は『Nature Astronomy』誌(2026年4月16日付)に掲載された

参考文献:

ブラックホールのジェットとは何か

 ブラックホールは強力な重力で周囲の物質を引き寄せるが、吸い込まれた物質はそのまま一直線に落ちるわけではない。

 物質はブラックホールの周囲で渦を巻きながら「降着円盤」と呼ばれる巨大な円盤状の構造を作り、そこで圧縮・加熱されることで強力な磁場が生まれる。

 その磁場と回転エネルギーが組み合わさることで、物質の一部が円盤の上下方向に光速に迫る速度で噴き出される。これがジェットだ。

 今回の研究対象となったのは、地球から約7,200光年離れた連星系「はくちょう座X-1」だ。

 史上初めてブラックホールの存在が確認されたこの天体は、太陽の約21倍の質量を持つブラックホールと、太陽の約40倍もの大きさを誇る超巨星が互いの重力で引き合いながら軌道を周回している。

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ブラックホールのジェット噴射のイメージ図 Image credit:NASA

恒星風がジェットを曲げるしくみ

 ブラックホールのジェットのパワーを測定するうえで、カーティン大学の研究チームが注目したのは伴星である超巨星が放つ「恒星風」だった。

 恒星風とは恒星の表面から絶えず吹き出す高速の粒子の流れで、太陽にも「太陽風」として同じ現象が見られるが、超巨星のそれは桁違いに強力だ。

 ブラックホールが軌道を周回しながら超巨星に近づいたり遠ざかったりするたびに、この恒星風がジェットに横から吹きつけ、ジェットを繰り返し異なる方向へと曲げていく。

 研究チームはこの動きを「踊るジェット」と表現した。地球上で強風が噴水の水を押し流す様子に似た現象だ。

 恒星風のパワーはすでに別の観測から判明していた。

 そこでジェットがどれだけ曲げられたかを測定すれば、ジェット自身のパワーを逆算できる。

 研究チームはこの発想を実証するため、地球上の遠く離れた複数の電波望遠鏡を同期させ、事実上「地球サイズの巨大望遠鏡」として機能させる超長基線電波干渉計という技術を用いて、踊るジェットの連続画像を撮影した。

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超巨星から吹き出す強い恒星風が、ブラックホールから放たれるジェットを星から遠ざける方向へ押しやる。
そのため、ブラックホールと超巨星が互いの軌道を回るにつれて、ジェットの向きは変化する。 Image credit:ICRAR/Curtin University

初めて測定された瞬間のパワーは太陽1万個分

 研究の解析結果によると、はくちょう座X-1のジェットのパワーは太陽1万個分の出力に相当することが判明した。

 またジェットの速度は光速の約半分、秒速約15万kmであることも確認された。いずれも数十年にわたって科学者たちが直接測定できずにいた値だ。

 従来の手法ではジェットのパワーを数千年から数百万年にわたる平均値としてしか算出できなかったが、今回初めて瞬間的なパワーを測定できたことで、ブラックホールに物質が落下する際に瞬間的に放出されるX線エネルギーとの直接比較が可能になった。

 さらに、物質がブラックホールに落下する際に放出されるエネルギーの約10%がジェットによって周囲の宇宙空間に運び出されていることも明らかになった。

 この値は科学者たちが宇宙の大規模シミュレーションモデルで長年仮定してきたものだが、実際の観測で裏付けられたのは今回が初めてだ。

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ブラックホールと恒星が軌道を回るにつれて、電波ジェットの向きが変化する(赤色で表示)

今回の測定値が宇宙研究の基準になる

 今回の測定値は、今後の天文学研究における重要な基準値となる。

 ブラックホール周辺の物理法則は質量の大小によらず非常に似通っていると考えられているため、太陽の10倍から1000万倍の質量を持つさまざまなブラックホールのジェット研究にも、この測定値を応用できる。

 現在、西オーストラリアと南アフリカで「スクエア・キロメートル・アレイ」という世界最大規模の電波望遠鏡群の建設が進んでいる。

 完成すれば遠方の数百万の銀河でブラックホールのジェットを検出できるようになる見込みで、今回得られた基準値はそれらのパワーを算出する際の校正にも役立つ。

 ブラックホールのジェットは周囲のガスや星の形成に直接影響を与えており、銀河がどのように進化してきたかを解き明かす重要な手がかりになっている。

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この記事へのコメント 15件

コメントを書く

  1. 太陽の1万倍って・・。太陽のナニを基準にしてるのだろう?

    • +2
  2. 強大さを表現したいんだろうが、
    「レモン1000個分」とかと同じで、どうすごいのかよく分からない

    • +6
  3. つまりBH1個分の出力と言うことである。レモン1個分のビタミンCなどイチゴの1/1000と同じ。別に太陽とかレモンに換算しなくてもいいんだが、わかりやすい指標じゃんってだけ。

    • 評価
  4. 途方もない超絶パワー過ぎて理解が追い付かなくて混乱するわ…:((´゙゚’ω゚’)):

    • +3
  5. 太陽の約21倍の質量と太陽の約40倍もの大きさと別の側面で話されるのも分かりにくい

    • 評価
  6. なんか、、昔見た怪獣図鑑を思い出したな、、
    レッドキングの腕の力はアジアゾウ100頭分!
    とか、書いてあったな、、

    あと有名なのが、ツインテールはエビの味!

    • +4
  7. 太陽風とジェットを比べてるっぽいよ。
    途中で恒星風が噛んでるからややこしいね。

    太陽風とブラックホールジェットは同じ類の現象ってことなのかな?
    太陽の表面でほよほよしてるやつとブラックホールの上下から出てるビームみたいなやつは1万倍差くらいはありそうではある。

    • +3
  8. 「東京ドーム1万個分」のわかりやすそうでわかりにくい奴の宇宙版!
    太陽がだすジェットの1万個分のパワーとの意味だろうけどその強さがわからない

    …我々はフィーリングで生きている!

    • +5
    1. 地方の人間にとっては東京ドームと言われても実物見た事無い人の方が多いんじゃないかな。
      まだサッカーコート〇面分とかの方が想像つきやすいかも。

      • +1
  9. ブラックホールの降着円盤の左と右が同じ色な理由がわからなくて教えて宇宙に自信ニキ

    • 評価
  10. 乗用車の荷室容量をイメージするのに使われる基準がスーツケースだったりします。例えば大型スーツケースなら2個、小型スーツケースなら4個程度とか…それですらわかりにくいのに…

    • 評価
  11. 太陽1万個分のエネルギーって凄いことが良くわかるだろ
    何が不満なんだよ

    • +1
  12. 宇宙望遠鏡だけじゃなくて、地上の電波望遠鏡もどんどん増えるんだ!

    「地球サイズの望遠鏡」の精度が上がっていく・・・と想像するとすごいね。

    • 評価

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