高速電波バーストの発生源を特定
高速電波バーストの発生源を特定 / iStock

 天文学者を悩ませる不可思議な現象は宇宙にはたくさんあるが、「高速電波バースト(FRB)」もまたその1つだ。

 FRBは、ほんの数ミリ秒という一瞬のうちに、銀河すらも上回るエネルギーが突然放出される謎の現象だ。

 2007年にその存在が知られて以来、100件以上が観測されてきたが、そのほとんどはたった一度きりの現象で、同じ場所で繰り返し観測された例は数えるほどしかない(関連記事)。

 宇宙のどこかで前触れもなく突発的に起きるために観測が難しく、そのために研究もなかなか進んでいない。その正体をめぐっては、ブラックホールや中性子星の衝突といったものから、地球外文明によって人工的に作り出されたといったものまで、さまざまな仮説が提唱されている。

 だがこのほど、11月4日付で『Nature』に掲載された3本の研究が(こちらこちらこちら)、ついにFRBの発生源を特定したと報告している。
スポンサードリンク

ガンマ線を放つ中性子星マグネターから高速電波バーストを検出


 この類の突然のエネルギーは何かを破壊すれば作り出すことができる。だが、稀にではあっても高速電波バースト(以下FRB)が繰り返されることがあるという事実は、そこにある何かは破壊されずに存在し続けているということを意味している。

 このことから、中性子星やブラックホールのようなコンパクトな天体が怪しいと睨まれるようになっていた。特に疑わしかったのは、「マグネター」という中性子星の一種だ。

 そして疑惑は正しかった。天の川内のマグネターが高エネルギーのガンマ線を放ったその瞬間、同じ場所からFRBもまた観察されたのだ。

マグネター
マグネターのイメージ図 image by:Sophia Dagnello, NRAO/AUI/NSF

超コンパクトで磁場を持つマグネター星


 マグネターとは、かなり極端な性質を持つ中性子星の中でも、さらに極端な部類に属する天体だ。

 中性子星は、巨大な星が超新星爆発を起こし、崩壊した後にできるコンパクトな星で、太陽に匹敵する質量が半径10キロ程度の範囲に押し込まれている。このような超高密度の星がわずか数ミリ秒で回転していることから、周期的に電波やX線を放つ「パルサー」の正体であるとも考えられている。

 中性子星は通常でも強力な磁場をまとっているが、特定の条件がそろったときにより強力な磁場を形成することがある。それがマグネターだ。

 磁場が親星から受け継がれたものなのか、それともマグネター内部にある超電導物質から発生しているものなのか確かなことは分からない。だがその強さは地球の1兆倍もあり、原子の周囲を飛ぶ電子の軌道を歪め、マグネターに接近する一般的な物質の性質を変えてしまう。
  
 それほど強力な磁場ならば、粒子を加速させるか、あるいはマグネター内部にある物質が移動して磁場が乱れれば、高エネルギー現象を引き起こせると考えられる。


マグネターで高エネルギーパルスとFRBが同時に観測


 マグネターは、半定期的に高エネルギーX線や低エネルギー・ガンマ線を放つことから、「軟ガンマ線リピーター(SGR)」との別名がある。これは私たちが暮らす天の川でもいくつか見つかっており、たとえば「SGR 1935+2154」などが知られている。

 今年4月、そのSGR 1935+2154が活動期に入り、高エネルギー光子のパルスがNASAの観測衛星「ニール・ゲーレルス・スウィフト」によって検出された。

 だが、検出されたのはそれだけではなかった。「CHIME(カナダ水素強度マッピング実験)」と「STARE2(短期天文学的電波放射調査)」の2つの観測機器によって、まったく同じ場所とタイミングでFRBが目撃されていたのだ。

1
image by:

必ずしもFRBが観測されるわけではない謎


 不思議なことに、SGR 1935+2154からガンマ線バーストが観察されたときであっても、必ずしもFRBが検出されるわけではない。

 たとえばCHIMEは2019年後半に4度のバーストを観測していたが、このときFRBは検出されなかった。また中国の500メートル球面電波望遠鏡「FAST」は、今年4月に1日8時間もSGR 1935+2154を観測していたにもかかわらず、今回のFRBを観測していない。

 このことから、2つの可能性が考えられるようだ。1つは、FRBが生じるには、ガンマ線バーストを放つ際にごく稀にそろう何らかの条件が必要であるという可能性だ。

 もう1つは、FRBは全方向に放射されているわけではなく、一方向に照射されているという可能性だ。こちらの場合、FRBが観測されるのは、それがたまたま地球めがけて照射されたときだけということになる。

 また、そもそも今回検出されたものが、過去に観察されてきたFRBと同じ現象なのかどうかもよく分からないという。

 STARE2の研究グループの試算によれば、4月のFRBのエネルギーは1034エルグだとされている。しかし一般的なFRBは出だしからその100倍も強力で、最終的には1043エルグを超える。4月に検出されたFRBは、エネルギーが桁違いに弱いのだ。

 したがって今回の発見はFRBの謎の解明につながる大きなヒントではあるだろうが、これをもって正体が完全に突き止められたとまでは言えないようだ。

References:public.nrao / arstechnica / sciencealert/ written by hiroching / edited by parumo
あわせて読みたい
宇宙の奥深くから届く謎の電波シグナルに16日の周期が確認される


深宇宙から発せられる謎の電波放射現象「高速電波バースト」に157日の周期があることが判明(英研究)


深まる宇宙の謎。深宇宙から地球へ発せられていた「高速電波バースト」の1つが消失、その理由は?


人工知能(AI)が、地球に降り注ぐ謎の高速電波バーストを発見(オーストラリア研究)


またしても...宇宙の深淵から高速電波バーストを13回確認。その謎に迫れるかも。(カナダ研究)

この記事に関連するキーワード

キーワードから記事を探す

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
カラパイアの最新記事をお届けします
この記事をシェア :    

人気記事

最新週間ランキング

1位
6741 points
散歩に出かけた猫、背中にオポッサムの赤ちゃんをおんぶして家に連れ帰る(メキシコ)

散歩に出かけた猫、背中にオポッサムの赤ちゃんをおんぶして家に連れ帰る(メキシコ)

2020年11月26日
2位
4365 points
ソ連が領海侵犯していると思い込んで15年、実はニシンのオナラだった(スウェーデン)

ソ連が領海侵犯していると思い込んで15年、実はニシンのオナラだった(スウェーデン)

2020年11月25日
3位
3641 points
江戸時代以来約400年ぶり。木星と土星が大接近!12月21日〜22日は世紀の大天体イベントがやってくる

江戸時代以来約400年ぶり。木星と土星が大接近!12月21日〜22日は世紀の大天体イベントがやってくる

2020年11月27日
4位
3535 points
余命わずかな愛犬の為、最後にもう一度大好きだった雪を見せたい。その願いがSNSユーザーの協力で叶えられる(カナダ)

余命わずかな愛犬の為、最後にもう一度大好きだった雪を見せたい。その願いがSNSユーザーの協力で叶えられる(カナダ)

2020年11月28日
633441328
5位
2464 points
バッテリー不要。乗る人の体重をアシスト機能に変換する世界初の自転車が登場

バッテリー不要。乗る人の体重をアシスト機能に変換する世界初の自転車が登場

2020年11月24日
4901898670
もっと読む
スポンサードリンク

Facebook

コメント

1

1. 匿名処理班

  • 2020年11月09日 20:43
  • ID:7uckjhIJ0 #

宇宙ヤバイ

2

2. 匿名処理班

  • 2020年11月09日 21:00
  • ID:FGohfH2H0 #

なるほどこれが5Gか

3

3. 匿名処理班

  • 2020年11月09日 21:05
  • ID:rJTOv.ej0 #

まぁた微妙な結果が判明したんか…

4

4. 匿名処理班

  • 2020年11月09日 21:09
  • ID:OP9NwGUK0 #

ふむふむ、なるほどなるほど。つまりSGRがFRBでワーッとなってダーッとなってガンマ線で超人ハルクになるんだな。わかった!(わかってない

5

5. 匿名処理班

  • 2020年11月09日 21:20
  • ID:rZyelPFr0 #

FEBと読むと、どうしてもアメリカの「連邦準備制度」を思い浮かべてしまいます...

6

6. 匿名処理班

  • 2020年11月09日 21:40
  • ID:.nTNH7tN0 #

やっぱりなー。俺が予想した通りだったぜー(棒読み)

7

7. 匿名処理班

  • 2020年11月09日 21:47
  • ID:S7Ejt7a.0 #

>FRBは、ほんの数ミリ秒という一瞬のうちに、銀河すらも上回るエネルギーが突然放出される謎の現象

ヤバすぎやん

8

8. 匿名処理班

  • 2020年11月09日 21:57
  • ID:JdVbBzXe0 #

発生源をついに特定、その正体は
とタイトルで言って煽っておいて
「突き止められたとまでは言えない」
で締めるの好きこれが他人の時間を葬る〇意でしょうかそれ好き

9

9. 匿名処理班

  • 2020年11月09日 22:21
  • ID:tEHsq9It0 #

これを裏付けるマグネターがγ線バーストするシュミレーションは、まだどこも発表してないのかな?

γ線バーストが中性子星由来ならいろんなことがわかるね。
マグネターが生まれる確立からその場の星の分布がわかるとか。
あるいはかなり遠方からくるのがわかるから深宇宙の様子も。
(もちろん指向性だろうから、そこの修正もして)


うまく重力レンズを通して見られれば、同じ現象を2回観測もできるだろう。
もちろん確率は低いけど。

10

10. 匿名処理班

  • 2020年11月09日 22:41
  • ID:ymw6pivp0 #

チーラさんたちは無事だろうか?

11

11. 匿名処理班

  • 2020年11月09日 23:12
  • ID:.MD9msrI0 #

1043エルグなんて全然大したことない。リファレンスを見たら10の43乗エルグですね(1034の方も同様)。でも今時CGS単位系なんて…

12

12. 匿名処理班

  • 2020年11月09日 23:36
  • ID:hvhbG26Z0 #

銀河はもっともっと莫大なエネルギーを放出しているのかも知れない。
ただ、地球の方角にジャストで飛んでくる事がないだけで。
パルサーやマグネターのように、メッチャ早い自転とずれた磁軸が、銀河中心核だともっとコントロールされているか、或いは取り囲むガスや物質が遮ってしまうのかも知れない。

13

13. 匿名処理班

  • 2020年11月10日 13:24
  • ID:ah.yUU3J0 #

宇宙人よ、俺はいつも空に向かって真心を込めて「あい・らぶ・ゆー」と電波を発信しているのだが、なぜ答えてくれないのだ?
恥じらいにもほどがあるぞ?

14

14. 匿名処理班

  • 2020年11月10日 13:38
  • ID:un4hN9qa0 #

2msで一回転なら
30000rpmで
180万回転/時
4320万回転/日か
直径20kmの30000rpmの周速度は31415.92653590km/s
光速の約10.48%
とんでもねぇ早さだ

15

15. 匿名処理班

  • 2020年11月10日 15:20
  • ID:ow5adaBu0 #

磁力で死ぬらしいから近くまで行ったらいかんで

16

16. 匿名処理班

  • 2020年11月10日 21:30
  • ID:gDld7mNO0 #

※15
ちょっと見に行こうとしてたけどやめときます。

17

17. 匿名処理班

  • 2020年11月11日 10:36
  • ID:i36sQbTv0 #

※16
ガンマ線? がんばりません。

18

18. 匿名処理班

  • 2020年11月12日 14:53
  • ID:.EFsEhwc0 #

※6 な、またアーモンドアイだったろ。

お名前
スポンサードリンク
記事検索
月別アーカイブ
スマートフォン版
スマートフォン版QRコード
「カラパイア」で検索!!
スポンサードリンク