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未解決事件簿:12人を斬首した正体不明の連続殺人犯「キングズベリー・ランの屠殺人」(アメリカ)

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(著) (編集)

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キングズベリー・ランの屠殺人/iStock
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 全世界が世界恐慌の打撃を受けていた1935年から1938年にかけて、アメリカ、オハイオ州クリーブランドではさらに大変なことが起こっていた。

 正体不明の連続殺人犯により12人惨殺されたのだ。被害者は全員斬首されており、四肢が切りとられているものや胴が半分に切断されているものもあった。

クリーブランドで起きた悲惨な連続殺人事件

 アメリカで4番目に大きなこの都市は、「コンベンションの街(人・情報・知識・物などの交流の場)」を売りにして、新たなターミナル駅から高級ホテルや最新のホールなどが連なるダウンタウンに人の流れをどんどん誘い込んでいた。

 ここで開催された見本市は、ヒグビー・デパート、スタンダード・オイル、ゼネラルエレクトリックといった地元ビジネスを大いに売り込んだ。そしてもうひとつ、クリーブランドが注目されることがあった。それは、連続殺人犯人がこの町を中心にせっせと仕事をしていたことだった。

 1935年9月23日、キングズベリー・ランで身元不明の男性の遺体が発見された。それを皮切りに1938年8月16日までの3年間で12人の犠牲者が報告されている。

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「クリーブランド市100周年祭」で展示された事件の現場写真やデスマスク

image by:Torso Slayer / WIKI commons

斬首され、バラバラにされた遺体

 1936年6月5日、学校をさぼって釣りに行った2人の少年が、町の東側の木の下にズボンにに包まれた妙なものを見つけた。中身はなんと切断された男の首だった。

 まもなく、近くの鉄道線路で血を抜かれた裸の遺体が発見された。死因は首を切断されたせいで、この1年以内にバラバラにされて見つかった4番目の遺体だった。警察は、連続殺人犯による犯行と断定した。

 身元を特定するため、夏に開催された博覧会で、死んだ男のデスマスクや体に入れていたタトゥーの絵柄が公開された。

 この見本市には1100万人以上が訪れたが、この刺青男のことを知っている者はひとりもいなかった。

 このジョン・ドゥは、オハイオ州北部で連続して起こった、わかっているだけで12人が惨殺されたバラバラ殺人のひとりだった。実際にはもっと多かったのかもしれない。

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刺青の男の遺体発見現場image by:WIKI commons

キングズベリー・ランの屠殺人 vs エリオット・ネス捜査官

 遺体のほとんどがキングズベリー・ラン付近で発見されたため、犯人は「キングズベリー・ランの屠殺人」と呼ばれるようになった。この事件は、当時もっとも有名だったアル・カポネを摘発した、エリオット・ネス捜査官を大いに悩ませた。

 殺人に関係していると思われる容疑者1500人以上が尋問されたが犯人はわからず、犯罪の温床になりそうなスラム街を焼き払うなどして、ネスのキャリアは結局、地に落ちた。この事件は、今日まで未解決のままだ。

 1934年にエリオット・ネスがクリーブランドにやってきたとき、禁酒法の施行を手助けし、アル・カポネなどシカゴギャングとやりあった有名な捜査官としてその名を知られていた。

 押しも押されぬその名声のおかげで、ネスは翌年、市の公安治安本部長に任命された。その使命は、政治の庇護の下で腐敗し、堕落しきった警察組織をたたき直すことだった。

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敏腕捜査官として知られていたエリオット・ネス image by:public domain/wikimedia

 ネスが正式に就任するまでに、「キングズベリー・ランの屠殺人」はすでに4人目を血祭にあげていた。

 最初のふたりは、1935年9月に発見されていて、ふたりとも切断され、血を抜かれ、性器が切り取られていた。

 ひとりの身元はわからないが、もうひとりはエドワード・アンドラーシだと判明している。この一年前、女性の膝までの下半身がエリー湖畔の東にうちあげられていたが、この「湖の女性」はのちに「キングズベリー・ランの屠殺人」の一番最初の犠牲者だと断定された。

 切断された体の部位が次々と見つかっていた。刑事のピーター・メリロは「キングズベリー・ランの屠殺人」とペンシルベニア西部で起こったほかのバラバラ殺人との共通点に気づき、犯人は列車を利用して、遺体を貨車に隠したのではないかと推理した(キングズベリー・ランやクリーブランドの町にはたくさんの鉄道が通っている)。

 カイヤホガ郡の検死官サミュエル・ガーバーは、遺体のきれいな切断具合から、犯人は肉体の切断についての医学的技術と経験がある人間の仕業ではないかと考えた。男性の犠牲者の大半は去勢され、中には化学的処置が行われた痕跡が見られるものもあった。

容疑者を特定したものの裁判に持ち込めず

 最終的に、ネスはクリーブランドの名家出身の医師、フランシス・スウィニー(いとこのマーティン・スウィニーは下院議員)を最重要容疑者として目星をつけた。

 クリーブランドの住民は恐怖でパニックになり、ネスに犯人逮捕の圧力がかかった。スウィニーをダウンタウンのホテルに監禁して尋問し、ポリグラフも行った。ネスはスウィニーが犯人だと確信したが、裁判に持ち込むことはできなかった。

 1938年8月16日、公式には11番目と12番目の遺体が、ネスのオフィスの目と鼻の先で発見された。

 2日後、クリーブランド警察は、キングスベリー・ラン周辺を一掃するため、数十人を逮捕し、スラム街を焼き払うという強硬策をとった。ネスは激しく非難されたが、これを境に殺人もぴたりと止まった。

犯人からの手紙

 1938年後半、クリーブランド警察は犯人だという者から手紙を受け取った。そこにはこう書いてあった。

まあ、今はゆっくり休んでくれ。冬になったので、今度は太陽輝くカリフォルニアに来たから

 犯人は、また人を殺して、ロスのクレンショーとウェスタンの間のセンチュリー通りに埋めたと言っているが、遺体は見つかっていない。

The Ghastly Cleveland Torso Murders

 結局、このバラバラ殺人事件で逮捕されたのは、フランク・ドレザルというレンガ職人だけだった。

 ドレザルは、3番目の犠牲者フローレンス・ポリロと同棲していたし、身元が判明しているアンドラーシやローズ・ウォレスのことも知っていた。

 だが、ドレザルはポリロの殺害は認めたが、ほかの殺人は否認した。彼は拘留中に不審な死に方をし、自殺だと言われているが、どうにも釈然としない。

 1947年、のちにエリザベス・ショートという名前が判明する女性が、ロスのレイマート・パークで死体で発見された。

 その体はまっぷたつに切断されていて、腸が取り除かれ、血が抜かれていて、その手口は「キングズベリー・ランの屠殺人」に似ていた。

 ショートはブラック・ダリアとして知られるようになったが、この有名な事件もやはり未解決のままだ。

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ブラック・ダリア image by:WIKI commons

未解決のまま、エリオット・ネス捜査官死去

 ネスは1957年に54歳で失意のうちに死んだ。かつて、全国一の禁酒法捜査員だった男が、自身の深刻な飲酒問題を抱えていた。

 ネスの死から半年、自伝『The Untouchables(アンタッチャブル)』が出版され、これがのちにテレビ番組や映画の題材になった。

 それ以来、ネスはカポネをぶちこんだ英雄としてもてはやされている。死後40年がたってから、警察によるネスの正式な葬儀がクリーブランドで行われ、遺灰は市の東にあるレイク・ビュー墓地にまかれた。

 そこは、「キングズベリー・ランの屠殺人」が最初の犠牲者の遺体の一部を遺棄した場所からそう遠くない場所だった。

References:The Cleveland Torso Murderer: The Scariest Serial Killer You’ve Never Heard Of | Mental Floss/ written by konohazuku / edited by parumo

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この記事へのコメント 11件

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  1. アンタッチャブルか ケビン・コスナーがネスを演じてたっけ 懐かしいな

    • +4
  2. もしかしてマフィア絡みの案件だったんだろうか??
    そんでいつ見ても綺麗なのにゾクッとする不気味さだなブラックダリアの被害者の写真…

    • 評価
  3. さらっと流してるけどスラム街焼き払うってそれだけで1本記事書けるよね
    犠牲者でなかったのかな?

    • -1
  4. Wikiだとスラム街住人を全部収監して、スラムを破壊したとあるね。
    犯人はスラムで被害者を物色してる(身元不明が多いのもこのため)と思われてた。

    防腐処理やら解体の手口やら考えるとスウェニー医師が最有力だろうねぇ。
    第一次大戦で医師として従軍してる。

    • +9
    1. ※5
      犯人もそこまでやるとは思わなかったからスラム街の件以降は犯行を辞めたのだろうか

      • -1
  5. 死体に色々と専門的な処置をしているってところに最大限の恐怖
    しかも未解決

    • +3
  6. 手段を選ばず、否応無し。
    このくらいやらないとどうにもならない事もあるってのが
    恐ろしいんだよな…

    • -1
  7. 日本も井の頭公園の事件とか似たような手口で未解決のままだよね

    • 評価
  8. 科学捜査が進んだ現在だったら犯人わかったかなぁ。

    • -1

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