受精
卵子にだって好みがある / Pixabay

 人間には好みのタイプというものがある。それは容姿や能力だけでなく多種多様な要因があり、周りから見ると意外なカップリングも存在する。

 更に女性の場合、ミクロレベルでも好みのタイプが存在するようだ。

 『Proceedings of the Royal Society B』(6月10日付)に掲載された最新の研究によると、人間の卵子には好みの精子し、その精子とのドッキングを望んでいるそうだ。そしてそれは女性自身の好みとは違っているというのだから興味深い。
スポンサードリンク

卵子は特定の精子を強く引き寄せる


 卵子をおおう「卵胞液」には、未受精卵に精子を引き寄せる「化学誘引物質」が含まれている。精子はその化学誘引物質に誘われて、泳ぐ方向を変え、卵子を目指す。

 受精というプロセスにおいて化学誘引物質が大きな役割をはたしていることはこれまでも知られていたが、卵子がそれを利用して精子の選り好みをしているというのは意外な事実であるそうだ。

iStock-472035843
iStock

 ストックホルム大学(スウェーデン)とマンチェスター大学(イギリス)の研究チームが行なったのは、不妊治療中の夫婦から精子と卵胞液を採取し、その精子を異なる女性の卵胞液にさらすという実験だ。

 このとき、一方の卵胞液は男性の配偶者から採取されたものだったが、もう一方はまったく関係のない女性からのものだった。

 そして卵胞液に引き寄せられた精子の数を数えてみると、旦那さんを落胆させるような衝撃の事実が明らかとなった。

 「人間の卵子には特に強く引き寄せる精子があります。2人の男性の精子で比較してみると、卵子は好みの男性の精子を18〜40%多く引き寄せます」と、ジョン・フィッツパトリック氏は説明する。

 卵子にとって精子が誰のものであるかは重大事項であるらしいが、女性の卵子は必ずしもその夫の精子を引き寄せるわけではないようなのだ。

 夫の精子を引き寄せるのと同じくらい、赤の他人の男性の精子をも引き寄せていたからだ。旦那さんにとっては(奥さんにとっても別の意味で)ショッキングな事実である。


女性自身の好みとはまた違う不思議


 今回の発見を見る限り、どうも化学誘引物質のおかげで、卵子は女性の好みとはまた別の独自の好みを持つことができているようだ。

 だが、男女がそれなりに相手を選んでようやく結婚することを考えれば、少々不思議なことかもしれない。
 
 「人間も他の多くの動物も、かなり時間とエネルギーをかけてパートナーを選んでいますので、卵子が相変わらず選り好みをしている理由はよく分かりません」と、フィッツパトリック氏は話す。
 
 その一方で、精子はそれほど選り好みをしないだろうとフィッツパトリック氏は考えている。その理由は、精子と男性にとって、受精した後のコストが女性に比べるとそれほど高くないからだ。

 女性の生殖器に進入した精子は、首尾よく受精を果たすか、さもなければ死ぬしかない。そうである以上、その時点で精子が選り好みをしてもあまり意味はない。

 ところが卵子と女性の場合、妊娠してからが大変だ。こうしたコストがあるゆえに、卵子としては受精する精子を選り好みした方がいいのかもしれない。

4
Pixabay

不妊は卵子の好みの不一致によるものではない


 なお、卵子に好みの精子のタイプがあるとはいえ、今回の研究は、不妊がそうした好みの不一致によるものであると述べているわけではない。

 実験ではその点も検証されたが、それを示唆する科学的証拠は一切見つからなったそうだ。

 だが、これまであまり研究されることのなかった化学物質が、全体の3分の1を占める原因不明の不妊の謎を解き明かす手がかりになる可能性はあるとフィッツパトリック氏は考えている。
 
 それは新しい不妊治療にもつながることだろう。

Chemical signals from eggs facilitate cryptic female choice in humans | Proceedings of the Royal Society B: Biological Sciences
https://royalsocietypublishing.org/doi/10.1098/rspb.2020.0805
References:iflscience / phys/ written by hiroching / edited by parumo
あわせて読みたい
体外受精を試みた夫婦、別の夫婦の遺伝子を持つ双子を出産。不妊治療クリニックを提訴(アメリカ)


不妊と関連するかもしれない、まったく新しい構造の精子が発見される(米研究)


体内に入った精子により記憶力が向上するミバエのメス(フランス研究)


不妊治療に自分の精子を使って受精させていた80歳の医師が免許剥奪。その数50〜100人(カナダ)


精子バンク仲間を探して三千里。同じ精子から産まれたきょうだいを探し続け、5年間で40人を発見(アメリカ)

この記事に関連するキーワード

キーワードから記事を探す

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
カラパイアの最新記事をお届けします
この記事をシェア :    

Facebook

コメント

1

1. 匿名処理班

  • 2020年06月12日 09:05
  • ID:Of2FGdRa0 #

じゃあ倫理的な問題はおいといたとして
短期間に複数の段数の男性とまぐわえば一番相性のいいの相手との子が生まれるのか

動物としてはそれがあってるかもね

2

2.

  • 2020年06月12日 09:32
  • ID:pbYwVkay0 #
3

3. 匿名処理班

  • 2020年06月12日 11:09
  • ID:AP8AhZ1P0 #

つまり押しかけ旦那ではなくミクロレベルの逆ハーであったか……

4

4. 匿名処理班

  • 2020年06月12日 11:12
  • ID:Eff5aSzH0 #

この世の全員、皆、選ばれし者なんだね。

5

5. 匿名処理班

  • 2020年06月12日 11:15
  • ID:7DAjWfZ00 #

科学者の主観が入ってない?

6

6. 匿名処理班

  • 2020年06月12日 11:58
  • ID:tvjKzSYP0 #

健康な夫婦がなんでか子供ができないっていうのがいたりするけどこういうことか…
※2というか健康な種をより選別するには複数の男と間を置かずにやったほうがいい
なんせ健康な男性でも種には問題あるものが一定以上ある
他の生物だと妊娠しにくいが人間は妊娠してしまいやすく
一夫一妻制度になってから男性不妊が急増してる
本来なら妊娠しにくい問題ある種で妊娠してしまってるからね
20〜30年前の不妊症にあたる種数が今では問題なしになってて
50〜60年前の平均種数よりも数十%近く減ってるよ
あと男のモノのカリは中の液などを掻き出すためのもので中に出された90%以上があれで掻き出せる
つまりあの形は前の男が出したのを掻き出すというのが前提

7

7. 匿名処理班

  • 2020年06月12日 12:06
  • ID:XCMTUIzz0 #

同一の女性の卵子だとしても卵包液の組成(卵子の好み)が違ったりするのかな。
そうならそれは卵子の個性、意志なんでしょうね。
いきものって不思議ーーー

8

8. 匿名処理班

  • 2020年06月12日 12:29
  • ID:gDNUKkT70 #

研究者の所見だけで、実験の結果が一切書かれてないんじゃが。

9

9. 匿名処理班

  • 2020年06月12日 12:38
  • ID:ZKCmZguP0 #

あまり言いたくないけれど、この研究の母集団が『不妊治療中の人の』卵胞液に限られているのは気になる。

『より好み現象のせいで不妊になっているという可能性も排除できない』、ということだと思うんだ。

不妊治療を必要としていない人の卵胞液と比較する必要があると思うのだけど、倫理的には難しいんだろうか…

10

10. 匿名処理班

  • 2020年06月12日 12:48
  • ID:8S3om8FL0 #

けど引き寄せられた所で壁を突破出来ないと結局外で死んじゃうんでしょ?
どの道強い奴が生き延びる事には変わりない様な

11

11. 匿名処理班

  • 2020年06月12日 14:24
  • ID:HIjU2TGY0 #

>>5
実験🧪🧫した数もまだ少なそうだしね

12

12. 匿名処理班

  • 2020年06月12日 14:38
  • ID:i15hFeET0 #

親と子は別個体なんだから必要素材が違うのは不思議じゃないな
母体と子の体質が違うのに免疫や代謝機能を共有せざるを得ないせいで
妊娠中毒症とかも起こるし
男性も結婚に向く相手と後腐れなく付き合いたい相手は一致しないことも多いだろう
子供を育てながら生き延びるのによいパートナーの素材と
次世代がより多くの免疫を持ち得るがエラーが出ない素材が
運よく一致する幸運に出会える人は少ないんじゃないかな

13

13. 匿名処理班

  • 2020年06月12日 14:39
  • ID:HIjU2TGY0 #

生める性と
生めない性の違いかな
生めない側は数打ちゃ当たるのバラ撒き方式で
生める側は時間がかかるし体に負担もかかるから
自分の遺伝子と相性の良い遺伝子🧬を選別して合成
次世代の個体の生き残りがかかってるし

14

14. 匿名処理班

  • 2020年06月12日 15:12
  • ID:nQTXF7VQ0 #

本体がやろうと思わないと卵子にまで到達しないのに、卵子に好みがあっても意味ないじゃん

15

15. 匿名処理班

  • 2020年06月12日 15:27
  • ID:yHlhdU.V0 #

女性の意志(合意するか否か)が尊重されだしたのなんて人類の歴史から考えると最近のことだろうし
複数の男性の種からより良いものを選別する役割が備わっているのは納得かも

16

16. 匿名処理班

  • 2020年06月12日 15:39
  • ID:5a.zD1wj0 #

二重パスワードみたいやな
脳:この種でヨシ!
卵:この種でヨシ!

言ってみれば種籾を塩水で選別するかどうかだったり
センター試験で競争相手たくさんいる中で偏差値75とかとるようなもんなんだな
乱交推奨で地域ぐるみで丸ごと育てるような原始スタイルが
肉体的に健康な子孫を得て繁栄するための最適解だなんて
まぁ弱肉強食の自然界見てれば当たり前っちゃ当たり前なんだけど

17

17. 匿名処理班

  • 2020年06月12日 16:22
  • ID:Eff5aSzH0 #

※1
狩猟採取民は男女別々に住んでいて、決められた日に男が集団で通って乱行する、という部族が多いのはそういうことなのかもね。
縄文期は日本もそうだったと考えられてる様だし、奈良時代までは男女別居だったと文献にも残ってる。江戸時代までは祭りの乱行とかも普通だった様だし。

18

18. 匿名処理班

  • 2020年06月12日 17:25
  • ID:M6Fj50M90 #

※6 最後までよく読んで!その誤解が生じないよう説明してある。

今回の研究は、不妊がそうした好みの不一致によるものであると述べているわけではない。実験ではその点も検証されたが、それを示唆する科学的証拠は一切見つからなったそうだ。

19

19. 匿名処理班

  • 2020年06月12日 19:00
  • ID:lL76Akea0 #

なんでその結果が俺なの???

20

20.

  • 2020年06月12日 19:01
  • ID:yedWX3J90 #
21

21.

  • 2020年06月12日 19:14
  • ID:eLTg1TGC0 #
22

22.

  • 2020年06月12日 20:01
  • ID:sr4t7KLn0 #
23

23. 匿名処理班

  • 2020年06月12日 20:27
  • ID:TIt2DHiG0 #

この世に生まれてくる時、母体を選ぶからね
好き嫌いでなく必要性だから仕方ない
どういう必要性なのかはそれぞれだし、必ずしもそれを知る必要はないけど、偶然でないことは知っておいた方がいい

24

24. 匿名処理班

  • 2020年06月12日 20:29
  • ID:J.fLfGCr0 #

※18
社会問題化するのを恐れて一言付け加えただけな気もする…
だって、より強く引き付ける方がより妊娠しやすいっていう、
すごく当たり前な論理を否定してるわけだし、なんかヘンだと思う。

25

25. 匿名処理班

  • 2020年06月12日 21:20
  • ID:d9sY46Fs0 #

>>19
お前にも役割りがあるってことだ

26

26. 匿名処理班

  • 2020年06月12日 22:13
  • ID:uvD646j70 #

お玉につかってるのモヤシだよね

27

27. 匿名処理班

  • 2020年06月12日 22:22
  • ID:xIEcK9fp0 #

魚が陸に上がって哺乳類になった

水中に居る時とそうでないときでは
細胞の働き方を反対に変えることが必要だ

そういった違いは陸や水中他にもある

そういった違いによるものだろう

28

28.

  • 2020年06月12日 22:23
  • ID:xIEcK9fp0 #
29

29.

  • 2020年06月12日 22:24
  • ID:6eaw6lGD0 #
30

30. 匿名処理班

  • 2020年06月12日 22:35
  • ID:QbbMaB3D0 #

>>14
お若い方には解らぬであろうが、ある年齢に達するとな、本体はその気でも、愚息が言うことを聞かぬ場合がな……

31

31. 匿名処理班

  • 2020年06月13日 00:22
  • ID:FhlOiaRn0 #

>>10
強さで篩にかけらるとしても、ただ強いだけの適当な奴よりはちょっとでも好みに近い方がよくないか?

32

32. 匿名処理班

  • 2020年06月13日 02:21
  • ID:wpRxtBIE0 #

「浮気/不倫相手との子どもは妊娠しやすい」ってのは俗説じゃなくてモノホンなのかもしれないな
倫理的な面ではお察しください、だけども

33

33. 匿名処理班

  • 2020年06月13日 03:09
  • ID:39634v.a0 #

これ前から言われてたよね
人工授精何回やっても失敗するカップルとかいるんだよ

34

34. 匿名処理班

  • 2020年06月13日 07:23
  • ID:.yxU6.zt0 #

>>25
ありがとう
もうちょっとだけ頑張ってみるわ

35

35. 匿名処理班

  • 2020年06月13日 08:50
  • ID:zMrx0dWn0 #

ムツゴロウの番組で二匹の犬が出したのを混ぜるという実験をやっていたが見事に全滅していた。他の個体が出したやつと接触すると酵素で相手を道連れにしてしまうとか。この結論が正しければ短期間に複数人とした場合最初に致した人のが受精する確率が高いことになる。

36

36. 匿名処理班

  • 2020年06月13日 14:19
  • ID:.mpNidlt0 #

大昔は一晩で大勢の男たちと交わってたからでしょ
いまみたいにコストのかかる面倒くさい恋愛を経ることなんて不要だったんよ

37

37. 匿名処理班

  • 2020年06月13日 17:03
  • ID:Y3NeC5oY0 #

確かに
女性は複数の男性から優秀で遺伝的にも相性いいものを本能で自然に選別してるとしたら
今の一夫一婦制なんて馬鹿らしすぎる
多夫一婦、多夫多妻にすべき

38

38.

  • 2020年06月13日 19:50
  • ID:pTldaiLr0 #
39

39. 匿名処理班

  • 2020年06月13日 19:50
  • ID:.5f8Iida0 #

好みなのか、いきがいいからなのかわからんな

40

40. 匿名処理班

  • 2020年06月14日 14:44
  • ID:cb.5agh00 #

※32
数撃ちゃ当たるってだけだと思うよ
不倫するような人が一人の愛人だけで満足し続けるわけないでしょ?
嫁一人で満足できないような人なんだからw

41

41. 匿名処理班

  • 2020年06月14日 23:47
  • ID:H.FTtlzc0 #

※10
子宮内膜「受精ご苦労さま。ではさようなら」

42

42. 匿名処理班

  • 2020年06月18日 06:54
  • ID:BziV8GMX0 #

言い方が少々よろしくなくなるが、
卵子がえり好みする、とはあるが一人の女性がもつ卵子全てが同じ好みとも限らないからどうなんだろうなこれ
ついでにこの手の科学者って倫理観無視した結果出すことにある種のカタルシス感じてる輩が多いからどうなんだかな。既に言われてる通り実験結果とするにはデータがあまりに不足してるし

43

43. 匿名処理班

  • 2020年06月18日 12:38
  • ID:QBHdb11M0 #

米1
チンパンジー型だね、複数による肉欲の宴によって強い精.子が生き残る
人間もこの先男が絶滅するっていうし人間という種を残すなら移行するんやろか?
遺伝子操作で解決するんかね?

44

44. 匿名処理班

  • 2020年06月18日 12:44
  • ID:QBHdb11M0 #

>>42
卵子にも個性があるなら生物多様性にも寄与するとも考えられるが、同じ個体のものは抗体できるとか可能なら幅広く遠い遺伝子と混ざれってのが生物の本懐なのかも

45

45.

  • 2020年06月19日 07:18
  • ID:mllt4E4x0 #
46

46. 匿名処理班

  • 2020年06月22日 21:57
  • ID:bSt3qJRJ0 #

何億分の一の確率で愛されたのが俺だと思うと、自分のため他人のためにまっとうに生きようという気持ちが湧く

お名前
スポンサードリンク
記事検索
月別アーカイブ
スマートフォン版
スマートフォン版QRコード
「カラパイア」で検索!!
スポンサードリンク