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人間の細胞を宿したマウス。人と動物の差はますます曖昧に(米研究)

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(著) (編集)

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人間の細胞を宿したヒト化マウス/iStock
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人間とマウスには、想像以上に共通点がある。それゆえに様々な実験に使用されているわけだが、今後両者はさらに近い存在になることだろう。

 『Science Advances』(5月13日付)に掲載されたニューヨーク州立大学バッファロー校の研究では、少しだけ人間が混ざったマウスが作られたと報告されている。

細胞の4%が人間のヒト化マウス

 人間の細胞を宿したマウスは、これまでにも作られたことがあり、たとえばコロナウイルスのワクチン開発のモデルとして利用されている。

 だが、そうしたヒト化マウスは、その名称からイメージさせるほど人間に近いわけではない。体の中に発現したヒト細胞は、せいぜい全体の0.1%程度でしかなかったからだ。

 しかし今回作成されたマウス胚の1つは、じつに4%の細胞が人間のものだったそうだ。そうした細胞は、網膜細胞・赤血球・幹細胞など、初期の組織のいたるところに発現していたとのことだ。

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Pixabay

体内で自己複製するナイーブ型幹細胞

 研究では、マウスの胚盤胞(初期胚がさらに発達したもの)にあらゆる細胞に変化できる「ヒト幹細胞」を注入して、ヒト化マウスが作られた。

 幹細胞と一口に言っても2種類に分けることができる。1つは、永久に自己複製を続け、基本的にどのような細胞にでも変化できる「ナイーブ型」、もう1つはペトリ皿では永遠に複製し、いかなる組織にもなれる「プライム型」だ。

 ヒト幹細胞はプライム型であることが多く、動物モデルに使ってみてもうまく機能しないことがしばしばだという。

 そこで研究チームは、プライム型幹細胞をナイーブ型に転換させられないか試みた。そして判明したのが、「mTor」というキナーゼ(酵素の一種)を阻害すると幹細胞をリセットすることができ、人間の痕跡を留めたままマウスの細胞内で増殖させられるということだ。

 リセットされた細胞は、プライム型とナイーブ型の中間の状態にあり、完璧というわけではないらしいが、それでもイイ線を行っているとのことだ。

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image by:Zhixing Hu

およそ15時間で倍に増殖、17日間成長

 こうして得られたナイーブ型ヒト幹細胞を生後3.5日のマウス胚盤胞に注入すると、17日後に4%がヒト細胞で占められた胚が出来上がったという。

 ナイーブ型に転換された細胞は、増殖が速いことも分かっている。プライム型では細胞が2倍になるまでに平均35時間または33.5時間(種類による)かかっていたが、ナイーブ型では14.9時間または12.9時間だったとのこと。

 さらに17日間という成長期間も、ペトリ皿で培養される一般的なものに比べれば長いのだそうだ。ちなみにヒト細胞を宿した動物の胚に関して、これまでの最長成長記録は、サルの胚を使った20日である。

応用可能性への期待と倫理的な懸念

 どこか不気味な研究にも思えるが、こうしたヒト化動物は、人間の治療法を調べる実験モデルとして優れているだけでなく、いずれは人間の内臓を育てられる可能性があるなど、社会全体にとって有益な使い途がある。

 一方、人間と動物の境界を曖昧にするとして、倫理的に懸念する声もある。

 たとえば、2014年の研究では、マウスの脳に移植されたヒト幹細胞が、急速に増殖したことが確認されている。そのマウスは実際、普通のマウスよりも知能が高かった。

 これについて、コロンビア大学のジョン・D・ロイク氏は、どれほど賢くなれば「ヒト化動物に人間が享受している権利を与えるべきであろうか?」と、疑問を提起している。

Transient inhibition of mTOR in human pluripotent stem cells enables robust formation of mouse-human chimeric embryos | Science Advances
https://advances.sciencemag.org/content/6/20/eaaz0298

References:Scientists generate millions of mature human cells, far more than have ever been produced – UB Now: News and views for UB faculty and staff – University at Buffalo/ written by hiroching / edited by parumo

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この記事へのコメント 39件

コメントを書く

  1. 進化の過程で現人類種に近い種族は全て滅ぼしてきた歴史がありながらなんと愚かな…と言いつつ今後の展開がめっちゃ気になる(やっぱり愚か)

    • +4
  2. 技術が進めばドナーを待たなくても動物の体を借りて移植用のパーツが作れるかもしれないって感じで、まだまだけものフレンズの領域には至ってないのね。

    • +2
  3. 人語を喋ったり道具を使ったりするようになる訳でも、顔や身体が人間っぽくなる訳でもあるまいし(ネズミの前肢の指の形は人間っぽいけどね)。

    ちょっと普通のネズミよりも賢い程度だろうから、何も問題無いんじゃないかな。

    • -1
  4. 移植用臓器の培養が捗るだけならいいんだけどね

    • 評価
  5. 「何故低きへ流れていることに気付かないのか。
    不死、不変を成し遂げたところで行きつく場所は見えているはずなのに。」

    • +1
  6. ロマサガ3でこんななボスいたよな・・・。

    • 評価
  7. ヒトの細胞の割合が何%から人権が認められるのかな?

    • +2
  8. 賢いハツカネズミさんとお友達になって
    悪いやつに監禁されたときにロープ齧ってもらって助けてもらうのが
    5歳のころからの夢なんだ♪

    • +3
  9. 50%まで増やしたら見た目も半分人間になるのか?

    • 評価
  10. 実に興味深い

    ブタヒトならぬヒトブタですねー!

    • 評価
  11. 人も先祖をたどればネズミみたいな生物らしいしね。

    • 評価
  12. 背中に耳の培養細胞埋め込まれてたネズミを見た記憶あるのだけど、あれは違うの?

    • 評価
    1. >>16
      あれは、あなたの言う通り「埋め込めれた」だけ。超雑にいうならヒトの耳を背中にくったけたのに近い。
      これは「全ての細胞にヒトの遺伝子が混じってる」って事かと。

      前者は1+1、後者は0.96+0.04というイメージ。

      • 評価
  13. 0,1%では失礼だったな……4%でお相手しよう………。

    • 評価
  14. このマウスにアルジャーノンとか名付けないのか

    • +9
  15. こういうのこそ動物愛護団体は糾弾しろよ
    この実験の結果そのマウスが人と認定される状態になったらどうする気なんだよ
    もちろん処分したら殺人だぞ

    • +1
    1. >>19
      あつ森の機械の魚の方が大事な愛護団体です

      • -1
  16. 人化マウスの実際の画像あるかなぁ?と元記事を英語読めないながらに見てみたけど無かったわ
    どんな見た目してるんだろうな

    • +2
  17. 倫理とか気にしてじっとしてたって中国が容赦なくやって遅れをとるの目に見えてるしな
    気にするだけ無駄なのかもしれない

    • -3
    1. ※23
      遅きに失することが必ずしも不利益に繋がるとは限らない。あまりに先行しすぎて国際的な非難を浴びれば、独裁的な国とはいえ当局のお叱りも受けるし、他分野や他国の協力が得にくくなることで発展が見込めなくなる。外部の倫理的な懸念を解消するよう丁寧な説明はやはり必要。

      ※33
      原文には「マウス胚における成熟したヒト細胞の生産を劇的に増加させる方法」とあります。

      胚から細胞を取り出すES細胞(ナイーブ型)の使用が倫理的に問題があり、ハードルの低い体性幹細胞(プライム型)の方を効果的に使用できるよう開発した手法のようです。なので人間の胚は使っていない、というか使ったら意味がない。

      言うまでもなく人体内で実験を行っているわけではないので、「人体実験」には当たりません。

      • +1
  18. キキッ!搭乗券ノ無イ方ハ入レマセン(諸星大二郎。バイオの黙示録)

    • 評価
  19. 会話できるレベルの獣人がでてきたら摩訶不思議

    • +1
  20. 豚の体内でヒトの臓器を…ってのも有ったよね

    もう倫理観もヘッタクレも無いね
    アメリカやロシア中国辺りはヒトのクローンとかデザイナーチャイルドとかもこっそり作ってそうな気がする👶 臓器提供用のクローンが出てくる輝夜姫の世界がシャレでなくなってくるな

    • +5
  21. 人細胞を持つマウスが人のように変異して、そのうち人のように変異した亀を忍者にしたりしないだろうな。

    • +1
  22. 面白いなぁ
    人間も案外こうして作られた偶然の産物だったりしてね

    • 評価
  23. ネズミの獣人がいつか生まれるんですね。

    • +1
  24. そもそも、遺伝子の発現の仕方が違うだけで、人と動物はそもそも類似性が高い。
    チンパンジーとは96%の類似性、ある種の猫に関しては類似性が90%近く、牛とは80%近く、ハエとか鶏とかは60%近く。というか、植物との類似性もそこそこあって、バナナとは50~60%の類似性がある。

    • 評価
  25. その胚ってどこから取ったんだ?
    中国かバチカンあたりからか?
    元を正せば人体実験じゃん。

    • 評価
  26. 2枚目の灰色ネズミはスナネズミかな?

    • 評価
  27. 脳細胞を人の付けられて、知恵付いて脱走
    繁殖し似たような劣化か知恵だけ進化したネズミが人類に反撃

    Z級映画にありそうで無い話

    • 評価
  28. マウスとヒトのES/iPS細胞はもともとは最初は前者がよりナイーブ(初々しい)型って言われてて、後者は胚盤胞以上に成熟したプライム型だったけれど、2013年くらいにヒトもナイーブなiPS細胞が作れるってことが証明されたみたいですね。
    そこで証明されたヒトナイーブ幹細胞とマウスの胚盤胞の組み合わせでより人に近い種を超えたキメラマウスができるようになったそうです。
    これらの研究が進めば、人臓器生成もそうですが、他の人工染色体等の技術が組み合わさって薬の安全性を確かめたりすることがさらに容易で確実性の高い物になって行くかもしれませんね。
    サルより人間の仕組みに近いマウスができれば、迅速かつ低コストに・・・・

    • 評価

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