iStock-516506375_e
Image by Laures/iStock

 まるでライオンのような威風堂々とした姿で、「東方神犬」との異名を持つ超大型犬チベタン・マスティフは、普通の犬では生きられないような空気の薄い高地であっても生存することができる。

 この驚異的な低酸素耐性は、大昔に彼らがオオカミから遺伝子を譲り渡されたことで獲得したものだということが、新たなる研究で明らかとなった。
スポンサードリンク

オオカミから受け継いだ遺伝子


 『Molecular Biology and Evolultion』(7月30日付)に掲載された新しい研究によると、チベタン・マスティフは、過去のどこかの時点でチベットオオカミと交配し、2つのアミノ酸の情報を持つ突然変異遺伝子を受け継いだという。

 この結果として、彼らの体内に流れる血液の酸素吸収・放出能力がアップグレードされたのだ。

iStock-152940381_e
Image by Laures/iStock

低酸素でも生きていけるようヘモグロビンをアップグレード


 チベタン・マスティフが他の犬種にはないアミノ酸を作り出す遺伝子を持っていることは以前から知られていた。

 今回、新たに判明したのは、このアミノ酸によって、血液の中で酸素を運ぶ役割を担う「ヘモグロビン」が変化したことだ。

 研究では、チベタン・マスティフとチベットオオカミのヘモグロビンを他の犬種のそれと比較した。すると、前者は空気が薄い状況でも酸素の吸収・放出能力が高いことが明らかになった。

Tibetan_Wolf_By_Stanzin_(Stakpa)_cropped_e
チベットオオカミ Image by:Stanzinnamgail/wikimedia commons

 「高地では酸素が少ないために、その補給が問題になります」とアメリカ・ネブラスカ大学リンカーン校の生物学者トニー・シニョーレ氏は述べている。

 彼によれば、ヘモグロビンは酸素をくっつける磁石のようなもので、チベタン・マスティフのそれは単純に普通よりも強力な磁石であるのだそうだ。

iStock-860524844_e
Image by ~User7565abab_575/iStock

かつて、チベットオオカミに起きた突然変異


 遺伝学的な調査によれば、大昔、チベットオオカミの体内で、なんらのタンパク質情報もコードされていない不活発なDNAに突然変異が起きた。

 そしてどこかの時点で、これらの突然変異が活性遺伝子にコピーされ、これによってヘモグロビンが変化したと考えられるという。

 こうして低酸素状態に耐えられるようになったチベットオオカミの個体は、標高の高いところへと移動するうちに、やがて一族の中で主流を占めるようになった。

 そうしたオオカミの遺伝子が、今度はチベタン・マスティフに受け継がれ、同様に彼らの間で広まっていったのだそうだ。

References:Tibetan Mastiffs Bred with Mountain Wolves to Survive at Super-High Altitudes | Live Science/ written by hiroching / edited by parumo
あわせて読みたい
すごく巨大です。オオカミの血を色濃く残すウルフドッグ。一緒に写った女性との大きさ比較(アメリカ)


野生のキツネを犬のような従順なペットにするための交配実験から明らかとなった家畜化遺伝子(ロシア研究)


死後4万年が経過した更新世の巨大オオカミの完全な頭部がシベリアで発見される(ロシア)


個体数が減ったオオカミが子孫を残す相手として選んだのはコヨーテだった。オオカミとコヨーテのハイブリッド種「コイウルフ」


絶滅したタスマニアタイガー(フクロオオカミ)の皮膚DNAから種を救い出せるかもしれない

この記事に関連するキーワード

キーワードから記事を探す

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
カラパイアの最新記事をお届けします
この記事をシェア :    

Facebook

コメント

1

1. 匿名処理班

  • 2019年09月12日 11:40
  • ID:JFvs6OCm0 #

全ての犬がオオカミの遺伝子受け継いでるんじゃないのか?

2

2. 匿名処理班

  • 2019年09月12日 12:02
  • ID:F0FfohRN0 #

>>1
犬として確立された後、新たに狼の遺伝子が組み込まれたってことじゃないかな

3

3. 匿名処理班

  • 2019年09月12日 12:15
  • ID:2I75wIk70 #

バキ外伝で見た

4

4. 匿名処理班

  • 2019年09月12日 12:26
  • ID:iE7CxXbF0 #

空気が悪いとすぐ死ぬっていうのも、このルーツと関係あるのかね。
特定のアミノ酸を作るとか性格を決めるとか体型を決めるとか遺伝子って何でもありだよね。

5

5. 匿名処理班

  • 2019年09月12日 12:28
  • ID:DJnM0mee0 #

>>1
柴犬「然り。そしてわれわれがいちばんこい」

6

6. 匿名処理班

  • 2019年09月12日 12:32
  • ID:Z1jRMrKi0 #

人間で言えばvo2max値の高いアスリート、または山岳民族のような高地に順応した体を持つ、ということかな。

7

7. 匿名処理班

  • 2019年09月12日 12:40
  • ID:lwhOC4Gr0 #

チベットオオカミのほうがチベタン・マスチフより小さく見えるw
実際はどうだかわからんが

※1
イヌとして枝分かれしたあとに、
再びオオカミの血が入ったということだと思う


8

8. 匿名処理班

  • 2019年09月12日 12:42
  • ID:lwhOC4Gr0 #

※4
遺伝子は「特定のアミノ酸を作る」ことしかやってないのでは?
その後の結果が体形や肌の色なんだと思う
性格ってのはどうなのかな。環境の影響も大きいことだし、
遺伝するのは「傾向」程度じゃないの?

9

9. 匿名処理班

  • 2019年09月12日 13:01
  • ID:QCzbcVbO0 #

大ウナギのDNAだって判明したばかりだぞ

10

10. 匿名処理班

  • 2019年09月12日 13:50
  • ID:XDqQ6nbu0 #

変異種は通常種の群れの中でイジメられて追い出されてより酸素の薄い高地へ追いやられて、一層低酸素耐性を強めて行ったのかも、なんて想像して悲しくなってしまった

11

11. 匿名処理班

  • 2019年09月12日 14:05
  • ID:zrmZDfGq0 #

「世界一高価な犬」だね 安い交配種もたくさん生まれてて純血はすごく少ないんだってね

12

12. 匿名処理班

  • 2019年09月12日 14:13
  • ID:MwpKEEQn0 #

威風堂々というよりは生活に疲れて丸くなったオッサンって表情に見える

13

13. 匿名処理班

  • 2019年09月12日 15:13
  • ID:gM2a1lrd0 #

※10
いじめられてというより、低酸素耐性が高い個体は生息域が広がることで他の個体より生き延びやすく、かつ子孫を残しやすかったんじゃなかろうか
そも目に見える変化があるのか分かんないし…

14

14. 匿名処理班

  • 2019年09月12日 15:43
  • ID:iJ3Y.B.00 #

人工血液に導入して!

15

15. 匿名処理班

  • 2019年09月12日 16:40
  • ID:8TyFxzpn0 #

テンジュの国って漫画に出てくる
欲しくて値段を調べたら恐ろしくてすぐ諦めた…中国が目をつけるわけだ

16

16. 匿名処理班

  • 2019年09月12日 17:15
  • ID:0W9kk.So0 #

こんなん表走ってたら脱走したライオンかと思って通報するわ普通に🦁

17

17. 匿名処理班

  • 2019年09月12日 18:39
  • ID:Vb.HEXlP0 #

チベットオオカミとは似ても似つかんな・・・
寒地に適合するとこんなモッサモサ(モフモフではない)になるのか。

18

18. 匿名処理班

  • 2019年09月12日 20:26
  • ID:SHc1Va550 #

もっと荒くれてる画像あったけど、ケルベロスかよと思ったわ。

19

19. 匿名処理班

  • 2019年09月12日 21:19
  • ID:jg.pdJFE0 #

バリカンで狩りたい毛だな

20

20. 匿名処理班

  • 2019年09月12日 23:24
  • ID:j.kUhX5H0 #

>>1
チワワ見て「これはオオカミ」って思える?

21

21. 匿名処理班

  • 2019年09月13日 01:32
  • ID:Rn.4vW2e0 #

人間は燃費悪い

22

22. 匿名処理班

  • 2019年09月13日 09:17
  • ID:KvSDIXEe0 #

前からオオカミ系はスタミナがあるイメージはあったわ

23

23. 匿名処理班

  • 2019年09月13日 11:16
  • ID:48x0nCAW0 #

ちべタンねえ、ちべタンお腹しゅいたの

24

24. 匿名処理班

  • 2019年09月13日 16:00
  • ID:S57bzaBm0 #

飼い方とかいろいろあるんだろうけど、えらいこと凶悪な面もあるみたい…
中国で飼い主食べちゃったとかそういう類のがちらほら。

25

25. 匿名処理班

  • 2019年09月13日 17:37
  • ID:xXwbpXlV0 #

※15
金持ちがみんな欲しがるから、沢山ブリーディングして、それでも数が用意できないから他の犬種とまぜた大量の雑種チベタンが作られ、中国の住宅バブルの影響で世に大量のチベタン(+雑種)が出回るようになったんだが、元々躾が難しく、子犬時の躾に失敗すると熊や虎に匹敵する気性の荒い猛獣になるらしい。 

さらに言うと、飼い主の殆どは金持ちアピールの自己顕示欲のために飼うので、躾を満足にしなかったり、他人任せにしたせいで手の付けられない危険獣化して大問題になってるらしい。 それのせいでチベタンの価値は暴落して、誰も欲しがらないゴミカスみたいな存在になってるって中国のニュースサイトで見た。

お名前
スポンサードリンク
記事検索
月別アーカイブ
スマートフォン版
スマートフォン版QRコード
「カラパイア」で検索!!
スポンサードリンク