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その差72倍、天女の羽衣を持つ「ムラサキダコ」のメスと豆粒ほどのオスに関する事実

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(著) (編集)

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 天女の羽衣(てんにょのはごろも)という言葉があるが、ムラサキダコのマント状の皮膜は、まさに羽衣を彷彿とさせる美しさだ。ただしこれはメスのみである。

 昔の人が聖獣とか神の使いとか、UMA的な何かに見間違ってしまってもしょうがないのかもしれないくらいにムラサキダコのメスが泳ぐ姿は巨大で優雅だ。

 メスの体長が約1.8mなのに対し、オスは2.5cmと72分の1に過ぎない。

 ここでは美しいムラサキダコのメスが優雅に泳ぐ映像や、ムラサキダコのオストメスに関する興味深い事実を見ていこう。

Blanket octopus

羽衣を広げて外敵を威嚇し、危機が迫ると自ら引きちぎる

 ムラサキダコ科ムラサキダコ属に分類されるムラサキダコ(学名:Tremoctopus violaceus)のメスは天使の羽衣(はごろも)のような美しい皮膜をもつことから「ハゴロモダコ」とも呼ばれる。

 英語では毛布のような形状をしていることから「ブランケット・オクトパス」と呼ばれている。

 この優雅な羽衣は、タコならではの長い腕の間に張られた皮膜だ。ムラサキダコのメスは、危険を察知するとこれを広げて近寄ろうとする捕食者などの外敵を威嚇する。

 もし相手が怯まなければ、皮膜をその口に押し込んで引きちぎって逃げてしまう。トカゲの尻尾切りのように、捨て駒として使うのだ。

 こうした不思議な防御戦略を用いるのも、彼らがほかのタコのように海底で過ごしたりはしないことと関係しているのだろう。

 海底ならば岩の裂け目などに滑り込んで敵をやり過ごすようなこともできようが、優雅なムラサキダコはそんな泥にまみれるようなことはしない。

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一方オスはメスの72分の1のほどの大きさ

 だがムラサキダコの特徴といえば羽衣だけではない。

 メスが全長1.8m以上にもなる一方で、オスはピーナッツ1粒ほどの2.5cmほどと見つけるのも難しいくらい小さいのだ。体重差にしてみると1万倍から4万倍もの開きがあるそうだ。

 小さなオスはメスの瞳孔の中にうまい具合に収まるらしい。メスにしてみたら、目に入れても痛くないほど可愛いってことなんだろうか?

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youtube/Dekho Isko

小さくてもオスは策士。猛毒のムチを拝借し敵を撃退

 そんなちっぽけな存在のオスであるが、実は強い。。

 ムラサキダコはあの猛毒で知られるカツオノエボシの毒に対して耐性がある。そこでオスはカツオノエボシの触手を拝借して、敵に向かってブンブン振り回すのだ。

 人間だって死ぬことがある猛毒を使われては、さしもの捕食者も退散するしかないだろう。小さくてもオスはなかなかの策士なのだ。

 ちなみにメスの子供もこの戦術を使うが、大人になるとやらなくなってしまう。

 メスくらいの大きさにもなると、敵となる相手もかなり大きくなるわけで、毒のムチがあまり効果的でなくなってしまうのだ。

 大顎を持つサメにしてみれば、多少ピリッとしたところでそれが? って感じだろうから仕方ない。

オスが小さい理由

 ところで、オスはなぜこんなにも小さいのだろうか? オスがメスの目の中に入ることを発見した研究者の考えでは、大きくなる明確な必要性がなかったからだという。

 メスの場合、体を大きくする明確なメリットがある。体が大きい方が卵や子供をたくさん産むことができ、それだけ遺伝子を後世に伝えやすくなる。自然界で一般にメスの方が体が大きいのはこのためだ。

 ところがオスが遺伝子を後世に伝える手段は極小の精子だ。そのため、あえて体を大きくする必要がないのだ。

Blanket Octopus – Our Strange World

オスとメスで体が異なる「性的二形」

 こうした性別による体の差異を「性的二形」という。

 たとえば極楽鳥の名で知られるフウチョウのオスは、豪華な飾りで知られているが、メスはかなり地味だ。

 しかし体の大きさで言えばメスの方が大きい。メスは卵を作り出すためにそれだけエネルギーを必要とするからだ。

 一方、小さな精子を相手に与えれば済むオスは、むしろメスの獲得競争に血道をあげる。

 そのためにメスとは逆の進化傾向になる。ただし、この場合、オスも体が大きい方がメス獲得に有利になることもある。人間などはそうなっているようだ。

 ムラサキダコのような極端なまでの性的二形は、海の中ではわりと一般的で、たとえば深海のアンコウもオスとメスでは体の大きさがやたらと違う。

 そして、ちっぽけなオスは顔をメスの体に融合させ、メスの求めに応じて精子を放出するお仕事を続ける。

 彼らの生息環境ではメスを発見することが非常に難しいので、オスは交尾以外の能力をほとんど進化させなかった。その結果として、体はやたらとちっちゃいのだ。

・メスとオスの大きさのクセがすごい!世界初、チョウチンアンコウの交尾の瞬間をとらえた映像 : カラパイア

First footage of deep-sea anglerfish pair

ムラサキダコのオスの悲しい末路

 ムラサキダコのオスもきっと普段は孤独なまま海を漂っているのだろう。

だが運よくメスに巡り会えたら、特別な思い出を残す。自らの足だ。そこに精子のオマケをつけて切り離すと、メスの外套腔へ忍び込ませ、自分はさっと逃げてしまう。

 なおこの時点で受精は済んでいない。メスは自分の卵を受精させたいと思ったときに、体内のオスの足を取り出して、精子をふりかけのようにまぶす。

 ムラサキダコのメスは優雅な羽衣で美しさを競い、ときに複数のオスから精子のプレゼントを受け取る奔放な存在だ。

 だが、悲しいかな、オスは目的を遂げると死んでしまうのだ。

References:theethogram / deepseanewsなど/ written by hiroching / edited by parumo

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この記事へのコメント 49件

コメントを書く

  1. こんな美しいタコがこの世にいたのか
    伝説の生物と言われても信じるレベルの造形美だ
    まさに生命の神秘

    • +19
  2. 宇宙を漂っているみたい。本当に綺麗。

    オス……。

    • +15
  3. 深海魚のオスは
    やたら小さいのが多いと
    聞いたことがある
    ちょうちんアンコウの仲間でも
    メスがでかくオスが小さい
    子供を生落とすメスは
    エネルギーが必要で
    遺伝子提供者のオスは
    それほどエネルギーが
    必要ないのかもしれない

    • +11
  4. 人間のように健康な精 子が必要だから
    受精する際の選別が必要だけれど
    この受精はオスの能力は関係なく
    運でしかないから
    オスいらんだろ

    • -3
    1. ※7
      単為生殖だと繁殖には優位だけど
      環境変化に弱くなるからなあ
      オスが要らんってのは極論すぎる
      それにメスを見つけるまでの間
      生存競争に勝ってるんだから能力は関係あるよ

      • +21
      1. >>10
        遺伝子の多様性の確保とかもあるけど
        雄雌いたほうが楽しいし、面白いよね
        ここまで進化してきた生命は本当に神秘の塊だわー

        • +2
  5. 英語だと毛布蛸でイメージ違うよね(´・ω・`)

    • +1
  6. 性的二型といえば「雪男と雪女は何であんなに姿が違うのか」を思い出した
    「毛深いほうが雪女にモテるからあんな風に進化したと思われる」で〆ていた

    • 評価
    1. ※12
      そもそも雪男はヒマラヤのモンスターで、雪女は日本の妖怪だから出会うことすらないと思われ

      • +5
      1. ※18
        つか、それを言うならマーメイドとマーマンだな
        コレはちゃんと伝承がある

        • +1
    2. >>12
      いや、多分類人猿だろう雪男と妖怪か幽霊の一種である雪女は全くの別種であり、雪男は雪男のメスがいるし、もしかしたら男の雪女がいるのかもしれない。

      • +9
  7. 威嚇できてるのか?
    逆に興味持ってしまうぞ

    • +2
  8. >せい子をふりかけのようにまぶす
    わろてもた
    永●園の「おとなの●りかけ」で脳内再生される

    • +6
    1. ※15

      そなたはいつからそのように汚れてしまわれたのか…

      • +2
  9. オスよ。同じ男として同情を禁じ得ない・・・

    • +1
  10. めちゃ綺麗!なぜかイヴ・サンローランの名が浮かんだ。オートクチュール感がすごい。タコなのに。

    • +11
  11. 分かってもらえなくてもいいわ
    『パンツァードラグーン オルタ』のお母さん攻性生物

    • +1
  12. しゅごい、私もジャイアント小林幸子を想像したw

    • +2
  13. えー、古いヤツだとお思いでしょうが・・・「ギロチン大帝」に見えました。

    • 評価
  14. 切り捨てるからビラビラが左右対称じゃないんだな。

    • +2
  15. ダイビング中に2メートルもあるこんな未知の生物に至近距離で遭遇したらビビってパニックに陥りそう。
    動画だから冷めた目で安心して鑑賞していられる。

    • +6
  16. オスが天女のように儚いやんけ😭

    海の生物ってほんと多様。面白いねえ。

    • +3
  17. 以前、美川憲一のショーを観に行った事がある

    ずっとこのタコの姿を思い出してしまい、せっかくの本人の美声を集中して聞けなかった

    • 評価
  18. 映画「フィフス・エレメント」のエイリアンの歌姫に似ている気がする。
    偏光色というのかな、未知のもの系にはこのカラーだなと。

    • +4
  19. 悲しくはないさ
    愛はさだめ、さだめは死だからね

    • +1
  20. なんて美しい
    海で本物を見たら泣きそう

    • +1
  21. 神々しいと言うか悪魔的に美しいと言うか…
    魅入ってしまったわ

    • 評価
  22. 爬虫類や鳥類みたいな、卵を産んでそれを育てるタイプはメスのほうが大きいことが多い(産卵にエネルギーを要するため)
    でも哺乳類は妊娠中のメスを守る必要があることなどから、オスのほうが大きい事が多い……と聞いた

    • 評価
  23. 皮膚に取り込まれて融着したり深海生物の雄も大変だな

    • +2
    1. >>40
      逆に究極のヒモと思えば幸せかも。
      自我も無くなるかも知れないけど。

      • 評価
  24. 優雅な天女から始まり、オスの悲哀で締めるあたり、カラパイアだとおもたw

    • 評価
  25. 本当に色が変化して綺麗だった。ちょっとだけ、ひとがたっぽいシーンもあったり。何か雄が可哀想な感じもかもしだしているけど、やはり厳しい生存競争を勝ち残って~って事だから大切なのよね雄も。

    • 評価
  26. 「ワハハハハハハハハハハハハハハ」
    笑いながらマントをはためかせて軽やかに逃げる怪人のようだ
    「◯◯くん、また会おう!」って

    • 評価
  27. 天女というよりはポストアポカリプス系のゲームで瞬間移動しながらESP攻撃仕掛けてきそう。

    • 評価
  28. 目に入ってる雄が旦那で脚放り投げてくる雄は浮気相手?

    • 評価
  29. 20年位前に長崎県の五島列島で二年連続で捕獲した事があるが、かなり気持ち悪かった。

    • 評価

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