キューバのハバナにはクリストファー・コロンブスの名を冠したコロン墓地がある。
世界有数の広い敷地を持つこのネクロポリスは、140年以上もの歴史を誇る世界的に重要な場所で、常に混雑していることでも有名だ。
土葬が一般的なこの地では、死者を一定期間埋葬してから掘り出し、残っていた遺体をコンパクトな箱に移して保管してスペースを維持している。
だが、この墓地は20万体もの遺骨を野ざらしにしていた過去がある。
戦時中の米軍兵をも圧倒した大量の骨の山。そのエピソードを当時の写真とともにお伝えしよう。
料金を払わなければ遺骨も放置?混み合うハバナの墓地
1876年に開かれて以来、56ヘクタールもあるコロン墓地には100万体以上もの遺体が埋葬されている。だが、現在も毎日のように新たな遺体が到着し、常に混雑している。そしてこのペースだと新しい遺体を埋葬する場所が無くなるため、古い墓は3年ごとに掘り返され、腐敗せずに残っていた遺体が箱に納められて墓地の敷地内に保管される。
遺体の一部が納められた箱
image credit: jenni t/Flickr
だが、もし家族が使用料を払わなければ遺体は掘り出され、墓石と一緒にこのように積み上げられる。
image credit:Byron Howes/Flickr
しかし、19〜20世紀初頭のコロン墓地では大量の遺骨が外にさらされていた。
コレラの流行で最初の墓地もすぐ閉鎖に
実はハバナには長らく公共の墓地がなかった。そのかわり、遺体は地元の教会の地下室に埋葬された。その後、人口の増加に伴い教会の敷地も不足したため、1806年にハバナ初の墓地、エスパダが作られた。だがこの墓はのちに予想以上の早さで満員になってしまう。
1800年代初頭から半ばはコレラが蔓延した時期だった。中国や日本はもちろん、アジアからヨーロッパ、イギリスそしてアメリカにかけても大流行。世界規模で遺体があふれる事態が起きていた。
もちろんキューバも例外ではなく、エスパダも敷地が不足し始めた。そして1868年にコレラが激化すると、住民はより大きな墓地が必要だと悟った。
そこで彼らは10年もしないうちにコロン墓地を開き、エスパダを閉鎖した。
大量の遺体を埋葬できず、遺骨が外に山積みに
しかし、新しいはずの墓地は押し寄せる遺体を埋葬しきれず、20年も経たないうちに一時満杯になったようだ。いくつかの情報によると、当時の使用料は5年分で10ドルだったらしい。
そしてもし5年が過ぎて次の世代がその料金を払えなかった場合、遺体は掘り出されて墓地の一角にある骨の山に投げ積まれたそうだ。
およそ20万体。米軍兵も圧倒された骨の山
その山はどんどん大きくなり、1898年に起きた米西戦争の頃に米軍兵士の間で身の毛もよだつ場所と噂になるまで成長し続けた。これらの写真の中には1890年代のコロン墓地のポストカードも含まれており、当時すでに墓地が有名だったことがうかがえる。
コロン墓地にて、20万体分の遺骨(1899)
image credit:Library of Congress
とはいえその時期、埋葬されたのは地元民だけではなかったようで、キューバで戦死した米海軍兵の遺体が1898年から1899年にかけて埋葬され、のちに母国へ運ばれたという記録もある。コロン墓地にて、20万体の骨の上に立つ米軍兵(1899年)
image credit:amusingplanet
image credit:amusingplanet
恋人に送られたとみられるこれらのポストカードには、骨の山に立ち、痛ましい誰かの頭蓋骨と腰の骨を持ってポーズをとる男性の姿が写っている。
image credit:amusingplanet
一方米軍兵の中には、そこから複数の骨を持ち出して通りを行進する者もいた。その行為は当時の米軍司令官からの禁止令と、骨だらけの土地を覆えという命令で終止符が打たれた。それ以後、この大量の骨は処分されたようだ。とはいえ、コロン墓地の裏手では今でも、小さな箱に詰み込まれる順番を待つ複数の遺骨が見られるそうだ。
References:amusingplanet / spanamwarなど /written by D/ edited by parumo
あわせて読みたい
年に一度、墓に埋めた棺から故人の遺体を取りだし新しい服を着せるインドネシア、トラジャ族の風習(閲覧注意)
数百年もの長い間、完璧な状態を保っていたイタリア、ヴェンゾーネ村のミイラの謎
火葬文化は定着しなかった?ドイツの教会風建物内にある火葬場廃墟
火葬にとって代わるのか?遺体を急速冷凍、振動で分解し土に還す、フリーズドライ埋葬法「プロメッション」
コメント
1. 匿名処理班
いやいやコレポストカードで恋人に送ったとかマジありえないだろう;
それとも当時の向こうの方と今の日本人では感覚違うのだろうか
2. 匿名処理班
おデコに肉って書いとかないと骨の山から見つからなくなるね
3. 匿名処理班
火葬にすればいいのに。
4. 匿名処理班
屍の上に立つ光景とかリアルだとマジでアレ
5. 匿名処理班
日本兵の頭蓋骨トロフィーといいこれといい、アメリカ人の生死観と人権の認識ってやっぱり変わってんな
6. 匿名処理班
キューバってことはカトリックだろうし。
骨には愛着ないんだろ。ただの抜け殻。
魂は神さまの元に行ってて、そっちのが重要。
7. 匿名処理班
オレの霊感だとみんなきれいに成仏してるね
8.
9. 匿名処理班
日本でも各地から日本人以外の墓石が集まる場所がある
理由は廃棄するにもまずいじゃねえの理由みたいで
イスラムやユダヤなど世界中の宗派墓石あるので
なかなかすごい。でもこことは違い中はないので
ただの魂抜きした墓石のみだ
10. 匿名処理班
何百万年もすればこの大量の骨も石灰岩の薄い層になってしまうんだろうな。そして未来の知的生物はここを発掘して得た数少ない原形を留めた骨を見て、この哺乳類が同時期に同じ場所で大量死した理由を考えたりするんだろう。
11. 匿名処理班
こんなんだったらまだ鳥葬とかの方がマシな気が…まるで地獄のごたる (´;ω;`)
12.
13.
14. 匿名処理班
これで20万人
30万人だったら何かしら残ってるはずだよな
15. 匿名処理班
うちのカミさんがどうのこうの
16. 匿名処理班
>それ以後、この大量の骨は処分されたようだ
ふーむ、どの様にして処分したのか気になる。
粉にして地面に埋めたとか、焼いて埋めたとか、かな?
17.
18. 匿名処理班
凄まじいなあこの様子
項羽が生き埋めにしたのも20万人だったっけか
想像すると恐ろしい…
19. 匿名処理班
火葬の合理性を広めたいけどなあ
心の問題もあるし、そもそもムスリムは拒否するだろうしなあ
20.
21. 匿名処理班
※6
カトリックでも本来復活の日のために遺体は重要なんですけどね…
一般的なレベルの信者の認識だと死ぬと「天に召された」だが
22.
23. .
微妙に整理されている骨
24. 匿名処理班
ターミーネーターの冒頭部分
25.
26.
27. 匿名処理班
日本でも料金払わないと墓撤去でバイバイなんだよなあ
管理してる寺に行くわけでもない
永代供養代はらってるわけじゃないからね
産業廃棄物で終いだろうね
28. 匿名処理班
最初から火葬にして骨壷におさめればいいのに
29. 匿名処理班
※21 そうですよね、キリスト教とイスラム教は本来ご遺体大事にする。いつか復活の日が来ると信じるから、その日に備えてできるだけ五体満足で葬るようにする。
その教義があるのにご遺体雑な扱いになるのは、不信心から来るのかそれともそれだけ当時の貧困と死者数が深刻なのか……。前者もあるだろうけど、たぶん後者も大きい。
コレラなら一家全滅なんて悲惨な場合も多かったはず。生き残った人達もその後の生活回復に必死で、埋葬にまで手が回らない日々だったんだろうな。
30. 匿名処理班
※1
向こうは剥製の文化色が強いから弔いとか尊厳より芸術とかが先にくるんじゃなかろうか。例えば日本だと食文化が強いから鯨の件でとやかく言われても困るでしょう。文化や価値観の違いってそういう事なんだろうな〜って思う。
31. 匿名処理班
※5
旧日本軍の記録を漁れば事例が多すぎてすぐにでも分かるんだけど、日本軍も東南アジアや中国の非武装市民、ならびに欧米の兵士達の遺体の一部をトロフィーとして基地や日本に持ち帰ったり(日本へ持ち帰ろうと試みたり)、面白半分に遺体をいたずらに毀損したりしているんだけどね……
旧日本軍のそうした行為がアメリカほどに話題にならないのは、
日本は常に厳しい状況で撤退したり、或いは復員せねばならなかったこと、つまり余分な荷物を持つ余裕がなかったり、戦勝国の人間によって厳しい持ち物検査があったために本国に持ち帰る前に遺棄する必要があったり没収されたりしたし、
よしんば上手く持ち帰れても戦後の政府やGHQの調査によって没収されてしまったからね。
……つまりまぁ、敵国の人間に対する人権意識なんてのはどこの国もそんなもんなんだっていうか、長い歴史を見れば現代の事情が特殊すぎるだけなんだなも。
32. 匿名処理班
つい先日 母校の理科室で死後50年位の頭蓋骨が見つかってびっくりしたばっかり
土葬の遺骨は生々しいね 火葬の遺骨(遺灰)は カサカサと白くて乾いていて すっかり火で浄化されていて あれを見ると虚しいんだけど何となく諦めがつくんだけどな
33. 匿名処理班
※1
遺骨を弄ぶのはアメリカ人はわりとやるよ?
第二次世界大戦時の日本兵の遺骨を弄びポーズ決めて写真撮影なんて男女問わず日常茶飯事。
34. 匿名処理班
はだしのゲンの、ブルドーザーでバキバキ骨砕き集めるシーンを思い出した。
とはいえ、ナチ収容所の遺体にも同じことやってるしなあ。
肉食メインの民族の死体観はよく分からん。
35. 匿名処理班
つくづく、お墓なんて、どうしても欲しい人だけ持ちゃいいんじゃね? と、思うんですが・・
無理に作らんといけんもんかね。
許可された業者に頼んで、火葬して、骨は粉砕して、人里離れた所定の山へ埋める。
今時、写真だってあるし、必要なら遺髪も爪もあるだろうし。指紋や掌紋を取っておくとかね。故人や本人が元気な内に、信用ある業者?で遺伝子鑑定して貰って、その書類を永久保存版にして置く手もある。
故人や故ペットの遺骨を自宅や自室に本安置している遺族もおられるが、火葬していても遺骨って物凄く臭うのよ。キツイ昔ながらの樟脳を家中に撒いても、樟脳の匂いが完敗だから・・
長く置くほど、家具や服や家人にも染み付く。
家人にとって見ればかけがえのない思い出の最後の砦なのだろうが・・
36. 匿名処理班
※33
カラパイアの記事だった気がするけど
首切って煮詰めて腐らなくしてから恋人に送ったりしてたんだっけ?
37. 匿名処理班
金を払わなければ撤去して山積みというけど、そもそもこれだけの数の遺体をきちんと管理してたと思えない
支払い済みも滞納してるのもごっちゃになって適当に片付けられてそう
38. 匿名処理班
悲惨な歴史の背景に加えて皆が真面目なコメントしてるのに、
>キューバのハバナにはクリストファー・コロンブスの名を冠したコロン墓地がある。
コロンブス=コロン墓地=コロンボチ
で「ほほぅw」と思った私は罰が当たるに違いない。
39. 匿名処理班
※36
西部劇なんかでシカとかの頭蓋骨を飾っているのと同じように骨のトロフィー作りなのよ
動物の加工はYoutubeとかにも有るけど「耐性の無い人は閲覧注意」という事で・・・
他にも水に漬ける・野晒し・埋める・薬品を使う・虫に食わせる なんかも有るけど、一番簡単で手っ取り早い方法が煮沸なわけ・・・
40. 匿名処理班
そんなもんなんで滞納すんだよ!って思ったがまあ、そうもいかんか・・・
決して裕福な国でもないしな
41. 匿名処理班
*1
第2次大戦中もアメリカは日本兵の頭を窯で茹でて、頭蓋骨を取り出し、それを戦利品のトロフィー代わりにされてたよ。
それが有名雑誌の表紙を飾ったりしてたから当時は悪気なんてなかったろうな。
42. 匿名処理班
1800年代後期〜1900年代初頭っていうと、スペインの植民地→アメリカの傀儡国家って時代だから、そもそもキューバ人がめちゃくちゃ貧しくて地位も低かった。
今「歴史ある建物」として観光の目玉になってるのも、大半がスペイン時代のスペイン人のための建物だったり、アメリカ時代にアメリカ資本がアメリカ人のために作った歓楽街だったりする。
当時のアメリカ人からしたら「下等国家の下等民族がろくに病気も直せないで死にまくったってよwww」くらいの感じなんだろう。
43.
44. 匿名処理班
鳥辺野や化野もこんな感じだったのかな
45. 匿名処理班
日航機事故の墜落遺体って本で、イギリス男性だったか?の遺体を一生懸命手がかりを探して、ようやく身元判明して遺体を犠牲者の父親に渡そうとしたら、天に召されて息子は幸せ、遺体は埋めても良いよって言われたって下りがあったな。
日本人の場合、医師や警察から腕とか他の部位が出てくる可能性もあるから全て揃うまで保管しますがと言ってもすぐに連れて帰る→遺体の一部だけじゃ駄目、やっぱり探して!とキリスト圏と真逆の反応だったな。
他国、特にキリスト教は遺体ってタダの物体としか思ってないのか?
46. 匿名処理班
※31
なんだこの、どちもどち論は?