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マジ錬金術師。毒性のある金属を食べ、小さな金塊のフンを出す微生物

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(著) (編集)

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 微生物には無限の可能性がある。漫画「もやしもん 」で我々はそれを学んだわけだが、小さな細菌の細胞ほど見事に環境に潜り込める生命体は地球上にはいない。

 細菌が地上で果たしている役割は様々あるが、中には錬金術師も存在する。

 毒性のある金属化合物を食べてもピンピンしているどころか、それを消化し、小さな金塊のフンを出すのだ。

有毒金属を分解し金を生み出す細菌

 その細菌の名を「カプリアビダス・メタリダランス(Cupriavidus metallidurans)」という。

 他の元素と同じように、金は生物地球化学循環を巡ることができる。すなわち分解・転換され、やがて地球の堆積物の中に再集結する。

 この各段階に微生物が関与している。このことが、そうした細菌は一体なぜ土壌の中で金イオンが生じる猛毒の化合物に触れても中毒症状をきたさないのかという疑問を浮かび上がらせていた。

 竿のような形をしたC・メタリダランスが金塊を排泄することが世に知られたのは2009年のことだ。

 当時の研究者によって、仕組みは不明だが有毒な金化合物を消化して、特に悪影響もないままに金属の形に転換してしまうことが明らかにされた。

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カプリアビダス・メタリダランスが排出した金

image credit:American Society for Microbiology

カプリアビダス・メタリダランスの巧妙な防衛メカニズム

 それから数年の研究を経て、ドイツ、ハレ大学のディートリヒ・H・ニース教授を中心とする研究チームはついにその驚異のメカニズムを突き止めた。

 C・メタリダランスは、水素と有毒な重金属を含む土壌の中で繁殖する。こうした環境では、ほかの生物はすぐに中毒を起こしてしまうため、激しい競合を避けられるというメリットがある。

 それは非常に巧妙な防衛メカニズムを備えており、金以外に銅に対しても耐性がある。これらの元素を有した化合物は、簡単にC・メタリダランスの細胞に入り込んでしまう。すると銅イオンと金錯体は細菌内部の奥深くへと運び込まれ、このために破壊がもたらされる恐れが生じる。

 この問題に対処するため、C・メタリダランスは酵素を導入して、危険な金属を細胞の外に追い出そうとする――銅であれば「CupA」という酵素である。

 だが金があるとまた別の問題が生じる。酵素の働きが抑制され、銅化合物も金化合物も細胞から排出されないのだ。

 普通の微生物ならこの時点でお手上げになるため、そうした毒物がない環境で生息するしかない。しかしC・メタリダランスの場合は、科学者が「CopA」と名付けたまた別の酵素を隠し持っている。そして、その力で銅化合物と金化合物を細胞に吸収されにくい形に変換してしまう。

 こうして細胞内部への有害な金属の侵入が抑えられる。そして余分な銅は酵素によって邪魔されることなく排出される。それだけでなく、その過程でC・メタリダランス表面には金塊のナノ粒子まで作られる。

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カプリアビダス・メタリダランスの排出した金

image credit: Technical University of Munich (TUM)
 今回の判明したメカニズムを利用すれば、この細菌の才能を何かの役に立てることもできるかもしれない。

 例えば少量の金しか含まない鉱石からそれを採取するといったことが可能になるかもしれない。たくさん金がとれちゃうと金の相場も変化してしまうのだろうか?

 この研究は『Metallomics』に掲載された。

References:pressemitteilungen / bigthink / wattsupwiththatなど/ written by hiroching / edited by parumo

※追記(2018/02/09):本文の一部を修正して再送します

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この記事へのコメント 63件

コメントを書く

  1. 逆に考えれば金があるところにこれみたいな微生物が関わってることもあるってことか

    • +50
  2. その餌を見つけるのが最大の苦労だと思う

    • +10
    1. ※3
      毒素のある隣国はどうだろ、七色の河、地下を流れる食用油。

      • 評価
  3. この細菌は金の精錬の役に立つ前に投資詐欺のネタにされそう。

    • +26
  4. はえ~すっごい。
    何を言ってるのかさっぱりわからんが、何かすごそうなことだけはわかった。

    • +9
  5. 新たなマイニングのブーム「微生物育成」が来る!?

    • +13
  6. おれも黄金を出してたらどうしよう
    だれか確認してくれない?

    • +5
    1. ※9 君が長野人なら可能性はある
      金が採れる土地では地下水にも金が溶け出しており知らず知らずのうちに摂取、排出しているのだ

      • +4
  7. 問題はどれだけコイツ(というよりはCupA酵素産出菌?)の生産コストを抑えられるかだな。
    菌が金より高かったらシャレにならんからなw

    • +45
    1. ※10
      微生物より金になる前の毒のある金属の価格でしょ。
      フライパンを買っても料理を作らなきゃ特はないっしょ?

      • -4
  8. つまり我々はこいつらのウ〇コを有難がっているわけである

    • +17
    1. ※12指輪とか冠とか有難がり金粉入りの日本酒を飲んでいるわけである

      • +8
  9. 昔「燃えるお兄さん」という漫画で人間のう⚪こを食べて金のう⚪こを排泄する宇宙人ちゅうのがいたな。

    • +7
    1. ※15※30
      こんな短時間に2人も知っている人がいるっていうことは、そんなに有名な漫画なのだろうか・・・w

      • 評価
      1. ※44
        アニメやゲームにもなってるから知ってるはず

        • +1
      2. ※44
        ジャンプ黄金期の連載作品でアニメ化もしてるしそれなりに有名ではないのかな?

        • 評価
  10. やっぱり最強なのは微生物とかウィルスなんだなー(遠い目

    • +9
  11. 神様がこの世界に隠した裏技やろなぁ

    • +4
  12. 酵素ってめっちゃマイクロ化した神じゃね?

    • +2
  13. 人間にとって毒と認識される物質を餌にする生物は実に多いですね。
    タンカーから流出したオイルを餌にするプランクトンなんか実にありがたい。
    その時だけ大量発生して、浄化が済むとどこかへ行ってしまう。

    • +15
  14. 錬金術ではなく生化学反応でしょうけど、こうした微生物が生まれる背景には、巨大な叡智の存在も考えさせられるものです。モーガン・フリーマン「海は思考するのか?」。参考まで。

    • +3
  15. これは凄い、こういった微生物がもっと研究されれば世界中の鉱山跡といった汚染された土地の浄化に繋げる事ができるようになるかもしれないね

    • +9
  16. 金は地球上にまだまだたくさんあるからな。特に海とか。
    それを取り出すコストに見合っていないから実行されてないわけで、この微生物によってコストが抑えられたならすぐに金の値段は下がるぞ。

    • +2
  17. CupAが出てきた時点で話に集中できなくなった中学生並みの僕を許して欲しい

    • +6
  18. ダイヤなんていらないけど金はないとみんなが困る

    • +2
  19. ゴミ食わせて金を出すなら欲しかった

    • 評価
  20. 昔「燃える!お兄さん」って漫画に
    ゴミや排泄物を食べて金のウンチを排泄する
    ポキール星人って宇宙人が登場してたけど
    まさかそれに近い生物がこの地球にいたとは…
    微生物…恐ろしい子

    • +1
  21. 錬金術師
    「金を作るのに中性子星は必要無かったのか….」

    • +1
  22. 他の大抵の動物より人間は長く繁栄できると思うけど、
    虫・微生物・ウイルスには勝てる気がしないw
    人間も自然の一部だなってつくづく感じる。

    • +3
  23. まず金がイオン化してるって時点でかなり極端な環境な気が……

    • +7
  24. あの猛毒の銅に耐性があるってすごいな
    台所の排水溝に銅のコインか何かを入れとくだけでヌルヌルも臭いも無くなるくらいに殺菌能力高いのに

    • +4
    1. ※36
      「ヌルヌルになりにくい」という宣伝文句で
      銅製のゴミ受けを買ったけど、ステンレス製同様
      ヌルヌルになった自分はどーすればいい?
      (フツーに掃除する、以外でお願いします。)

      • +3
  25. 貴金属のフィルタリングと集積ができるというのは結構貴重だよな

    • 評価
  26. 大多数の読者にとってはどうでもいいことですが、こちらの研究はドイツのハレ大学(マルティン・ルター大学)、ミュンヘン工科大学とオーストラリアのアデレード大学の研究者7名による共同研究なので、一応国際研究ですね。
    論文のお約束で、ボス(元締め)の名前は最後に書くことになってまして、それはハレ大学のディートリヒ・H・ニース教授です。しかもこの人は連絡著者(corresponding author)でもある(「質問があったら私がお答えいたしましょう」の人)ので、
    「オーストラリア、アデレード大学のフランク・リース(Frank Reith)らの研究チーム」は間違いではないけれど、ニース教授を差し置いてオーサーとするには若干不適切かと。
    (これに先立つ2009年の論文はリースが第一著者かつ連絡著者なので、上記の言い方でOK)
    むしろ「ドイツ、ハレ大学のディートリヒ・H・ニース教授を中心とする研究チーム」としたほうがよろしいかと思いますよ。何より、プレスリリース出したのがハレ大学なんだし。

    あと、「錬金術」は卑金属を貴金属(とくに金)に製錬しようとする試みで、Cupriavidus metalliduransは毒性のある金化合物から金属の金を単離する、つまりそこに金はあるのだから、ちょっと誤解を招く表現かも、と思った。

    • +12
  27. ・・・なんかみんな勘違いしてない?

    • -4
  28. 比喩ではなく実際に黄金を出すのか。
    カッコイイ

    • 評価
  29. 賢者の石は細菌だったってことですね?

    • +1
  30. 生物が自分の住みやすいように地球環境を調整するって昔流行ったガイア理論(シムアースのベース)はファンタジーだそうだけれど、
    こう都合よく都合のいい細菌が見つかるとかファンタジー並に出来過ぎてるな…。

    • 評価
  31. 漫画「おぼっちゃまくん」の主人公、茶魔が自身に仕込んでいる身代金の一つとして、尻に入れた金塊が有ったね。

    • 評価
  32. 金を作り出してるっていうより取り出してる、だから別に金を作ってるわけではないんだよなあ。とはいえそれでも大概とんでもない話だなこれ、生き物にそんな芸当ができるとは

    • +3
  33. YouTuberが金箔食べまくってて勿体ねーと思ってたが、ンコとして排出された金も循環しやがて何処かで抽出されるのだろうか

    • +1
  34. 有機水銀を無機水銀か辰砂に変えてくれる微生物いないかなあ

    • 評価
    1. ※56
      役に立つ菌を拾えるかどうかは多分に運に左右され、その確率は宝くじに当たるのと同じくらいと言われている
      ここはひとつ菱沼さんに登場してもらうとか

      • +2
  35. 人類が唯一成功した錬金術は発酵という話をもやしもんで知ったが
    金を産む細菌の発見と発酵の技術でホントの錬金が完成するかもしれないね

    • 評価
  36. 何故猛毒に犯されないのかって?
    その猛毒自体が食い物だからだろ

    • 評価
  37. じゃあイオン化した金をもっと作らないと

    • 評価
  38. 細菌が採金ってな・・・・・ハハッ(激寒細菌ギャグ)

    • +1
  39. イオン化した金や銀なら下水や海底火山周辺の海水だな

    • +2
  40. メタリックアーキアが現実に居るとはたまげたなあ

    • 評価
  41. 細菌って凄い。こんな話知ると、人間って自力で資源を見つけて利用法必死で考えて繁栄しているように見えて、実はありとあらゆるものに依存しているだけなんだなあ、と思ってしまう。

    • +2
  42. 微生物が排出する金って微量じゃないの?資源として活用するには流石に無理じゃね?

    • +1

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