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自殺願望を抱く人を特定して悲劇を未然に防ぐAIの開発が進められている(米研究)

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(著) (編集)

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 自殺は深刻な問題である。世界的に見ると毎年80万人もの人々が自らの手で命を断っているそうで、WHOによると自殺は2015年の世界の10~19歳の若者の死因の3位とな自殺、欧州と南アジアにおいては死因の1位または2位を占めているそうだ。

 自殺願望を抱く人は家族や友人にも告げず突然ことに及ぶため、それを予測することは非常に難しいとされてきた。

 しかし最近の研究によると、脳の活動パターンの中に生物学的なサインが隠されていることがわかってきた。AIによる脳撮像技術で、自殺防止対策ができるかもしれないという。

脳の電気活動に現れる自殺傾向の有無を特定

 米カーネギーメロン大学の神経学者マーセル・ジャスト教授は、「最新の研究成果は、自殺願望と行動に関連する概念の変化を特定」すると説明する。これを脳と心を覗く窓として用い、自殺のおそれがある個人の思考や感情を探り出すことができるのだという。

 これまでジャスト教授のチームは、脳が複雑な思考を処理する方法をマップ化するコンピューターモデルを開発してきたが、今回も同じ技術を利用している。

 研究チームはその技術を応用し、悲しみ、恥、怒り、プライドといった感情に関連する神経のサインを探り、脳の電気活動に現れる自殺傾向の有無の特定を試みた。

91パーセントの精度で自殺願望者の特定に成功

 実験では34人の若い成人に参加してもらい、fMRIでその脳を調査した。参加者のうち17人には自殺傾向(その半数が以前に自殺を試みた経験があった)があり、残り17人は対照群として参加した健康な人々だ。

 脳を測定する際、被験者には自殺に関連する10単語(絶望や無気力など)、ポジティブな10単語(気楽など)、ネガティブな10単語(トラブルなど)が提示され、脳の活動と感情反応が記録された。これを基に自殺傾向のあるグループと対照群とで最もはっきり差異が現れる6単語(死、残酷、トラブル、気楽、良い、賞賛)と5つの領域を特定した。

 このデータを基に機械学習アルゴリズムを用いて各被験者を解析したところ、91パーセントの精度でそれぞれがどちらのグループに属しているのか正しく判定することができた(自殺傾向グループは17人中15人、対照群では17人中16人)。

 さらに自殺傾向グループに絞って機械学習を行わせたところ、過去の自殺未遂歴の有無を94パーセントの精度で判定できた。

 研究チームによると、特に「死」「無気力」「気楽」という単語への反応から最も高い精度が得られるという。

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image credit:Carnegie Mellon University

 今後さらに大規模なグループで実験を行うことで予測精度を高め、臨床の現場で自殺の危険がある患者を特定するツールとして利用されればとチームは期待している。

実用化するには様々な問題点も

 しかしこうした意見については懐疑的な見方もある。実験に参加したのが少人数であることに加えて、この類のテストには技術的な欠点があるからだ。

 例えば、ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドンの脳撮像技術の研究者デレク・ヒル氏は、そもそも実験で使用された脳撮像装置は高度な研究機関でしか利用できず、また対象が協力的でなければならない点を指摘する。そのため近い将来、精神疾患の患者に対して一般的に使用されるとは考えにくいそうだ。

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 だが一方で、脳に自殺願望のパターンが現れる点については、ある程度受け入れやすいかもしれない。

 トロント大学の神経科学者ブレイク・リチャーズ氏は、「自殺する危険があるかどうかを知る生物学的な基礎は存在する」と話す。

 彼によると、心の動きのあらゆる側面にそうした生物学的な基礎があることは確かなのだという。したがって問題は、そうした基礎をfMRIできちんと検出しうる信頼性の高いテストを開発できるかどうかという点にあるそうだ。

 こうした問題に対応するため、今回の研究チームは脳波(EEG)センサーを装着した被験者から同じようなパターンを検出しようと試みている。こちらは高価なfMRIよりもずっと安く、また携帯性でもずっと優れている。

 現時点ではその効果についてはっきりしたことは言えないが、社会問題となっている自殺を未然に防ぐ上で重要な研究であることは間違いないであろう。

 この研究は『Nature Human Behaviour』に掲載された。

via:cmu / nypost / sciencealertなど/ written by hiroching / edited by parumo

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この記事へのコメント 57件

コメントを書く

  1. 止めるっていったってどうやって
    お金でもくれるの?

    • +27
  2. 自殺願望がわかるって事は
    他殺願望がある人もわかるのかな?

    • +12
  3. 自死を禁じられたロボットが、人間の自死を禁ずるというのは、なんというかディストピア感があるね。ジョージオーウエルが生きてたらもう一本名作が生まれていたかもしれない。

    • +13
  4. 危ないと分かっていたのに止められなかった経験がある
    リスク保持者を突き止めた後の有効な対処法も同時に確立してもらいたい
    いずれにせよ100%の精度には決してなり得ないとしても

    • +11
  5. 自殺行動を止めるだけでは何の解決にもならないよ
    自殺を止めるなら、その要因を解決しないとダメでしょ

    • +31
  6. 自殺を認めないとすれば思想の侵害だね。
    人権を尊重するなら自殺も認めなければ。

    • +14
    1. ※7
      ローマ時代だと助からない病気や高齢化すると自死があった
      現代でいう自殺とは言葉や意味が違い、自ら死を選ぶことにより
      社会的にも名誉ある死として扱われた。いわゆる武士でいう切腹
      ティック・クアン・ドックでも同じように自害の道をたどったけど
      今でも高尚な僧侶としてあがめられてる

      この事件だとマダム・ヌーが暴言吐いて国民や世界のジャイアン怒らせて
      軍事クーデター勃発後国外追放させられたっけ
      しかもこいつほか一族まともな生き方してないし、人の生き方に
      ケチつけることはやっぱいけない

      • -2
      1. ※18
        ローマの老齢の皇帝が自殺の許可を得に訪れた哲学者に触発され、哲学者に倣って服毒しようとお付きの医者に「服毒自殺したいから毒薬くれ」と言うも、言われた医者が「皇帝陛下を殺す薬など渡せる訳がないが皇帝陛下の命令にも逆らえない」と悩んだ挙げ句自殺してしまった話を思い出した

        • 評価
    2. ※7
      自殺者のほとんど(特に若者)って、
      確固たる意志で「よし、死ぬんだぁ!」と
      思っているようなタイプってあまり無く
      (切腹等の死と引き換えの強い自己主張や
      準備を整えた末期患者の安楽死の類は別にして)、
      無気力感でボーっと日々を送っている中で
      ふとある瞬間、発作的に死への衝動が高まり
      実行してしまうようなのが大半だよ。
      そこでたまたま成功してしまうと死に、
      方法が失敗したり誰か邪魔が入って未遂になると
      「あれっ…なんであの時はあんな事しちゃったんだろう?」
      と我に返って震えたりする。

      • +10
      1. ※31※32
        そういう人たちは説得されれば応じるかもね。
        まあ、だから説得したい人はすればいいと思うよ。それも自由だ。
        ただし、国家的に個人の思想を圧殺するようなことは行われてはいけない。
        それは人権侵害だろうと。どうしても自殺したいという人に対しては、その自由を認めるべきではないかな。

        • +5
    3. ※7
      座間の事件だって、「一緒に自殺する人募集」
      とかツイートしながら、犯人とはニアミスで生き延びた人は
      案外ピンピンしてインタビューに応じてるじゃん?
      あれも、集団練炭自殺みたいな仲間に巡り合っていたら
      そのまま皆でなんとなく流れで自殺、みたいに
      既遂になっていた可能性もある。
      自殺衝動からの生死の分かれ目って、
      そのくらい紙一重で曖昧な差だったりもする。

      • +6
  7. 未然に防ぐ、ねぇ
    原因を解消しなければ
    次の自殺に動くだけだと思うがね

    • +23
  8. AI 「自殺志願者は自殺禁止法により、発見次第、排除します」

    • +13
  9. これ犯罪行動に応用したらそのまんまマイノリティレポートになるんじゃ…。

    • +6
  10. 緊急避難みたいなもん??
    根本解決にはならないでしょ

    • +3
    1. ※16
      今の日本はそうなんですよね。
      死にたいという願いはあっても、死ぬ自由がない。
      手助けしたら、殺人罪だものね、手伝えない

      • +1
  11. AIが自殺志願者に感化されて自懐したりして

    • +1
  12. これそのまま殺人衝動とかそう行った犯罪行為の危険度も特定できるんじゃないの
    まさにサイコパスの世界

    • +3
  13. いじめといっしょだな、いじめの報道を見てるといつも思うんだが、なぜいじめっ子が生まれるのかにほとんど焦点があたらない。
    楽な対処療法ばかりではいづれ教師の自殺者が増えそうだな。
    現に昨今の教師のペド●ィリア率のなんと高いことか。

    • +9
  14. 優秀なAIには死にたそうな人を止めるよりも、死にたいと思うような人が減るような社会作りを演算してほしい。

    • +22
  15. いや、まぁ、分かるけどちょっと過干渉な気がする。それよりも殺人を防ぐほうがいいんじゃない。

    • +6
  16. 死にたい人は死ぬ
    生きたい人は生きる

    これじゃ駄目なんかい?

    • +2
    1. ※24 そうなんだけど、残された人のダメージが
      ハンパないのがね。。。

      • +1
    2. ※24
      「死にたい」と言っている人が本気で死にたがっているとは限らない。
      自殺者は大抵、本当は生きたいと思っている。正確には自殺者は生きる喜びを感じたいと思っている。でも、どうすればいいか分からないから死ぬしか選択肢がなくなるんだ。

      • +16
      1. ※29
        それ本当?
        生きてるより楽だからそっちを取るのが多いと思うけど

        • -3
        1. ※45
          自殺者が楽になりたくて自殺するのは確かに事実ではある。でも、事実であっても本質ではない。
          死ねば楽になれるのなら、自殺者は何故生まれて物心ついた瞬間にすぐ死を選ばなかったのか?
          「死ねば楽になれる」事を理解した程度では、人は普通は自殺なんかしない。それは僕や君が今現在生きている事実からも明らか。
          自殺者だって、生まれてから自殺を決意するまでの間は、生きる為の努力を散々してきたはず。
          しかし、生きる為の努力をしようにも、手段なくなってしまうと、楽になるしかなくなる。

          • +4
  17. 自殺の可能性が高いと診断された被験者たちは、当然、社会適応力に瑕疵ありとされるわけで、その診断結果も、金融における信用審査結果と同様に社会的に遍く共有され、「取り消しのきかない」重要事項として、当人の人生に文字通り一生ついてまわる。
    根本的なところで確実に治癒し、救うことのできる施策がないなら、ただの優生学的個人調査に過ぎなくなると思う。

    • +14
    1. ※26
      自分は20年以上ウツで、治る見込みが薄い。
      なので生産性が低いという意味では、瑕疵ありだ。
      もしもこれで差別される未来が来たら、という恐怖はある。
      障碍者の人と実際に付き合う事は無理だけれど、
      (健常者とでもむずかしいくらいなので)
      存在を否定することは絶対にしない。
      街中でのささやかなサポートなら、喜んでしている。
      自分も明日は同じ立場、という思いがあるからです。

      • +5
  18. みんなが幸せに生きていける世界を実現できるAIの開発が急務

    • +8
  19. ただの対症療法だな
    根本的な解決になってない

    • +3
  20. よく自殺の議論で「死ぬくらいならもっと頑張ればいい」や「死にたいと口に出す人は死なない」と言う人は
    自殺に劇的で自分が納得できるものを求めすぎなのでは

    確固とした誰にも納得してもらえるような死にたい原因があるわけじゃなく
    自殺願望って言うより生きるにのに向いてないって感じの
    ぼんやりとした希死念慮と付き合いながら
    人生や日常をやり過ごしてる人もそこそこいると思うんだよね

    • +13
  21. SNS の投稿内容から判別する話かと思った。

    • +3
  22. 特定するよりも、自殺願望ある人も自殺願望無い人も関係なく
    まとめて悩みを解決したり、幸せにしたりするAIが欲しいな・・・
    今は自殺願望無い人だって、悩みを放置したり過酷な環境に置いたらそのうち変わってしまう

    • +10
  23. マイノリティレポートみたいな世界が来るのかな?

    • +2
  24. ベーッシック インカムを導入すれば自殺者は減ると思うけどね。AIを使うなら、社会構造を人間に優しいものにするためのアイデアを出させるような使い方をしてほしい。

    • +3
    1. ※37
      …どうだろうなぁ…?

      社会保障の必要性についての議論はひとまず措いて
      自殺防止との関係から言えば、
      案外「ドン底生活」よりも
      「中流からこぼれ落ちそうな瀬戸際」ぐらいの方が
      一番心を病みやすいらしい。

      例えば、既にリストラされてしまっていると
      開き直って目の前の生活のやりくりに気持ちが向くけど、
      大手勤務のプライドがありつつリストラの危機に晒され
      ピリピリしながら過重業務をこなす、みたいな立場の方が
      鬱病から自殺に至りやすかったり。

      過去数十年の日本の自殺推移でも、
      焼け野原で物資もなくて大変だった終戦直後は
      自殺率はごく低く(明治・大正・昭和初期よりも)、
      高度成長へ向かいつつある昭和30年代前半に
      空前の自殺ブームが到来した。

      • +5
  25. 鬱病患者と子供は助けてやるべきだろ
    鬱病患者は治りかけの時期に発作的に死んじまうから
    そこで自殺阻止出来りゃあ家族も本人も救われるよ
    親に知らせもせずにいじめに悩んで自殺するような子供や
    親に虐待されて自殺を考える子供だって救うことが出来る

    ネガティブにとらえすぎだぞコメント欄

    • +3
  26. AIがカンペキなカウンセリングでもしてくれるのかと思った

    命の電話がパンク状態で、「死ぬ気」がなかったら追い払われると聞いたことがあるよ
    カウンセラーを探すのも結構な労働だし、人間の友達もいないから、この研究をはじめとして、人の心に寄り添ってくれるAIの開発にはとても期待してる

    • +2
    1. ※41
      いのちの電話ってそんなことになっているのか知らなかった
      この手の相談は自分の気力も削りそうだからキャパシティーにも限界があるだろうし
      一般の人の力を生かせるような場を作れないかな
      何人もの相手は無理でも一人の悩みに対して真剣に話を聞くくらいならできるかもしれない

      • 評価
  27. こういうこと書くとあれだけど、自殺しそうな人を見つけてどうするの?
    例えば借金苦だったら然るべき法的機関を紹介するとかできるだろうけど、そういう現物的なもの以外の、治療法の見つかっていない病気や障害だったりで苦しんでる人にはカウンセラーでもあてがうの?

    • +3
  28. やっぱ死亡フラグ立てる人やここは引き受けるお前らは先に行けや国や世界のために自殺行為みたいなのも止めるのかなw

    • -2
  29. 殺人も被害が起こる前に確保したり
    殺人に至るトリガーが惹かれる前に精神障害を治療した方が良いんじゃね

    • 評価
    1. ※50 日本では「ストーカーに脅されてる」と警察に訴えても、
      うまく事が運ばずつぎつぎ殺されてるから、
      結局AIの情報も無駄になるかもねー。

      • +2
  30. 100人の自殺者は問題でも1千万人の自殺者は統計に過ぎないを実践してる国があるんだから無意味だろう
    それこそ高価なAIが自殺しかねない

    • 評価
  31. 自殺を防ぐってこれほど「余計なお世話」があるだろうか
    もちろん自殺を奨励するわけではない
    だけど、こんなことをして善いことをしたなどと思える人がいるという現実は地獄だ

    • -2
  32. 自殺を未然に防ぐと書けば聞こえはいいけど、死ぬ権利すらAIに管理されていると書くと途端にディストピア臭が凄まじいことに

    • +1
  33. 自殺って、「衣食住の確定」が実現すれば、劇的に減ると思う。

    辛いまま働かなくていい。
    学問のことで将来悩まなくてもいい。
    人に会わなくていい。
    心がもとに戻るまで休んでいい。

    ご飯も住処も服も、あなたの生きる分はきちんと保証されてる。
    あなたは、あなたのまま、ありのまま生きていい。

    違うかな。

    • +2
  34. 派遣会社で辞めそうな人をAIで見つけるという動画があるけど、文章から人間にはわからない特徴を発見するそうだけど、それと同じなんだろうな。

    • 評価
  35. 何も言わないで、隣でやさしい目をして見守る・・・とか
    ※ キャワイイメイドAIが、してくれたらすぐ元気になるかも知らんな
    (これはオレに限らんと思うが・・・)

    • +1
  36. 介護ロボット(AI)が良く提唱されているけど、私は少し懐疑的、懸念を抱いてる
    人を助けられるだけの力を持つのなら、同じ様に人をあやめる事も必ずできるはずだから
    ただただがんばれがんばれ、って言葉を放り投げてるだけで相当数の人は死を選ぶんだもの

    • 評価

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