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ナメクジの粘液から内臓の止血を行う強力な接着剤が開発される(米研究)

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 ネバっとしたナメクジの粘液から、生体組織をつなぎあわせ内臓の止血を行う接着剤が開発された。

 これまで、鼓動する豚の心臓など、さまざまな組織で実験が行われ、その安全性と効果が確認されている。

ナメクジ接着剤

 ヨーロッパ全土やアメリカ北東部に分布するダスキー・アリオン(Arion subfuscus)というナメクジの仲間は、捕食者に脅かされると、のりのようにネバネバとした粘液を分泌する。こうすることで自らをその場所にはりつけ、相手に剥がされて食われないようにするのだ。

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ダスキー・アリオン image credit:wikimedia

 この性質を応用したい科学者はかねてからダスキー・アリオンに注目してきており、これまでの研究で粘液に強い粘着性を与える化合物の正体はすでに判明していた。

 そこでハーバード大学ウィス研究所のジャンユ・リ(Jianyu Li)氏らはこれを参考に、表面が濡れているといった条件のために接着が難しい生体組織であっても接着が可能な物質の合成を試みた。

 『Science』に掲載された研究によれば、皮膚・軟骨・心臓・動脈・肝臓といった複数の組織上で人工的に作られたナメクジ粘液の実験が行われ、従来の医療用接着剤よりも良好な結果が得られたという。

ナメクジ接着剤の強力粘着力の秘密

 その粘着力の秘密は、強靭な基質内にある正電荷を持つタンパク質だ。この力を模倣するために、表面から正電荷構造が突き出ている二重層ヒドロゲルが作り出された。この構造と特別に設計された基質が組み合わさることで驚異的な粘着力が発揮される。

 リ氏の説明によると、従来の接着剤は組織と接着剤との間の接点のみに着目したものだった。しかし今回のアプローチでは、基質の層を通じてエネルギーを発散するため、剥がれる前に大きく変形することが可能になっているのだという。

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 ナメクジ接着剤を剥がすためには、既存の医療用接着剤の3倍もの力が必要になる。しかも剥がれた場合であっても、それは接着剤と組織の接点ではなく、ヒドロゲルが剥離したことによるもので、その優れた粘着力を証明している。

 ナメクジ接着剤の実験では、濡れた部分や乾いた部分も含めた豚の組織での効果や、マウスの体内でも2週間安定したままだったことが確認された。豚の実験では、鼓動したままの心臓の穴をきちんと塞ぐことに成功。またマウスの実験では肝臓の出血に適用し、組織の損傷が起こることもなかった。

 実験映像はこちらのサイトから見ることができる(閲覧注意)

ナメクジ接着剤の応用の可能性

 “次世代”接着剤にはいくつか医療的な応用が期待できるという。例えば、パッチに形成して、必要な形状や大きさに応じて自由に切って使うという応用が考えられる。

 体内奥深くでの出血を止めるため、注射溶液として利用するやり方もあるもしれない。ほかにも医療機器を体内に固定するという使い途もあるだろう。

 ナメクジ接着剤は人体に無害であるため、生体分解される物質で作ることができる。つまり傷が治った頃には、勝手に体内で分解されるのだ。

 薬剤を運ぶ手段として利用したり、あるいはロボット工学に応用してネバっとしたソフトロボットを開発するなんてことも考えられるそうだ。

via:telegraph / sciencetimesなど

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この記事へのコメント 70件

コメントを書く

  1. 蜘蛛の巣にもそんな作用があるとかいうけど、見つける人ってすごいね
    昔は内出血したらヒルを張り付かせたって言うし

    • +10
    1. ※1
      ヒル(医療用に無菌で育成)を使った治療って現代でも行われてるはず

      • +6
      1. 3Dプリンタで出力した、義歯を生体融着型の接着剤で歯茎に張り付けることができれば、入れ歯とかに革命がおこるって、以前から思ってたけど、このナメクジ接着剤はその用途に適していると思う。

        あと、※29ヒルどころか無菌状態で飼育された蛆虫に腐った傷口を食べさせる治療法もありますよ。「マゴットセラピー」と呼ばれるもので、「糖尿病による足の壊疽(えそ)・壊死(えし)の治療や、床ずれなどによる重度の褥瘡(褥瘡性潰瘍)の治療、やけどなどによる重度の炎症治療に使われる」。そうです。

        • +7
        1. ※41
          昔読んだ暮らしの手帖で、第二次大戦の日本兵は傷口に蛆が湧いて痒かったが、蛆をほったらかしてた方が傷跡が残りにくく治りも早かったと言う話があった。

          • +2
          1. ※66
            それほったらかしてたんじゃなくて
            蛆を払う気力もなかったって話だったと思う

            • 評価
  2. 小林製薬「えーと、ナメ・・・ナメ・・・」

    • +71
  3. つまり、ナメクジを一飲みできるムツゴロウさんは内臓の出血を即座に止めることが出来るわけだな。

    • +4
  4. ソフトロボットてことはターミネーターの液体金属風の何かができちゃうの!?

    • 評価
  5. トラックの荷物がこれでなくて良かった

    • +7
  6. 銃創とか刺し傷なんかをすぐ塞げるわけですね。
    すごい発明だ。

    • +6
  7. ナメクジはいつかやってくれると思ってました

    • +3
  8. 素晴らしい天の配剤と人類の叡知!!

    • 評価
  9. ナメクジは危機が去った時にどうやって自分を剥がすのだろう。

    • +32
    1. ※12
      同じく手術中に接着面付け間違えたらどーすんだろね。

      • +1
  10. これってSF漫画でよくある、貼るだけで一瞬で止血して目立たなくなるあのシートの
    完成がほぼ見えて来たってことかな?
    指先切っても、貼るだけですぐ作業に戻れて、決して剥がれず、張り替え必要無しの絆創膏を早くください。

    • +8
  11. ナメクジ踏んだらあのネバネバかなり取れなかったから、粘着力はすごいと思う

    • +3
    1. ※14 ※39 ※44 「ナメクジやカタツムリを触ったら、寄生虫予防のためよく手を洗いましょう」って言われるよね。脳髄膜炎で四肢麻痺や死亡例もあるそうで。だから洗ったけど、石鹸とブラシを使って必死になってもヌルヌルは取れなかったよ。その後アルコールで拭いたけど、やっぱり取れない。注意を促した機関は、責任を持って取れる方法を明記してほしい。 

       

      • +5
      1. ※46
        ショーン・ハトスン作「スラッグス」(映画化もされている、大量発生した肉食ナメクジがとある街を襲う話)を読むと、ナメクジをつい間違って食べるとどうなるかが、書いています。

        ナメクジの代表的な寄生虫である「住血吸虫」が脳内で成長して、云々とか言ったり。

        • +3
  12. すこし話がずれるが、生体には得てしてこういう可用性が発見されるから、
    生物の多様性を保ちましょうって言われてるのよね
    だけど人類の時代の淘汰を乗り越える鍵はここにある
    地球の生命はすべてをひっくるめて一つの共同体なんだなと感じさせられるね

    • +18
  13. あのベトベトを見て応用できると考えてしかも実現しちゃうのが凄い

    • +5
  14. Androidでリンクを踏んだらランサムウェア的な対応されました

    • +1
  15. この様な発見があるから生物多様性は大事なんだと思う。
    ただゴキブリだけはって感じだが。

    そういえば、ちょっと前に開発された止血剤はカニ由来の物があったな

    • +1
    1. ※20 Gはね、悪いやつらじゃないって頭ではわかってる。家の外にいてくれればね、ずいぶんとショックは少ない。家の中でもね、出てこなければ結構忘れてる。でもナゼカ出会っちゃうんだよ、これが!

      • +4
  16. 人体に使用したら塩分で溶けてしまいました、ってオチじゃないだろうな

    • +4
  17. これが実用化されて場末の病院まで浸透するのに、何十年待てばいいのやら…
    削らない虫歯治療すらまだまだなのに…(´;ω;`)

    • +7
    1. ※22
      削らない虫歯治療、おそらくもう研究では実用段階に入ってると思われるけどなぜか歯科医達は使おうとしないよね。まぁ利権だろうな…。今までの歯科医が培った技術が全否定=イチから勉強し直しだもんなぁ…。既存の医者の生活を脅かさずに新しい技術を普及させるにはどうしたらいいんだろうね…。

      • +6
  18. 人類の大先輩の生き物は大事にしようね
    どの生き物に有益な素質があるかわからないからね

    • +2
  19. 腹腔内手術にかなり使えそうですね。
    濡れた組織面でも強固に張り付くのはすごい。
    縫合の代わりにもなりそう。

    • +4
  20. ゴキブリのキチン質を皮膚に… ってはなしもあったよね うーむ
    いつかいつの日か選択をせまられる予感が

    • +1
  21. 商品名はナメックジンで。ピッコロさんとコラボや

    • +2
  22. なるほど、飯を食いながら見る記事じゃなかったな…

    • 評価
  23. 蚊の口の構造を利用した痛くない注射針とか開発してくれないかな…
    どうしても注射は慣れない

    • +1
    1. ※31
      インスリン注射だったかな?
      蚊からヒントを得た注射針なら既に開発されてたような
      あとは製造コストと用途に合うかどうかが普及に対する問題なんじゃない?

      • +4
    1. ※32
      カタツムリもG同様か顔パックなんかに使われてましたよ

      • +4
  24. カドケウスのヒールジェルが現実になるのか

    • +1
  25. 31
    もう開発自体はされてたはず
    針の部分が凄く細い奴だった気がするけど詳細は覚えて無い

    • +1
  26. 白くべたつくなにか

    Gはゴキリンガルとかコミュニケーションはかる道具でおかえりいただく時代になればいいとおもうんだ

    • +1
  27. なめくじ素足で踏んじゃうとしばらくぬるぬるとれないんだぜ…

    • +2
    1. ※39 ※46

      大分前の記憶だけども、自分も素足で踏んづけたとき
      石鹸じゃぬるぬる全然落ちなくて
      ナメクジには塩じゃね?と塩擦りつけてもダメで
      やけくそになって重曹擦りつけたら取れた気が

      当時はわからなかったけど
      ぬるぬるの成分が記事中にあるようにタンパク質だから
      重曹のアルカリで落ちた(溶けた)んだと思う
      タンパク質が分解できれば良いんだから
      パイナップル果汁でもいけそうな気もする

      • +4
  28. 素足で踏みつぶしたときはタワシで10分くらいこすり続けてやっと落ちた

    • 評価
  29. 俺はナメクジはやればできる子なんだって信じてた
    はーやっぱりナメクジサイッキョ

    • +1
  30. ナルトに出てくるなめくじも絆創膏みたいに治療に体液を使ってたのを思い出したけど
    リアルに医療現場で活躍するようになったなんて

    • +1
  31. >ナメクジ接着剤は人体に無害であるため、生体分解される物質で作ることができる。つまり傷が治った頃には、勝手に体内で分解されるのだ。

    縫合要らずじゃん

    • +5
  32. これだからあの生き物はいらないんじゃないか
    絶滅してもいいんじゃないかなんてことはありえない

    • +4
    1. ※52
      蚊だけは滅ぼしてもいい気がする

      • -1
      1. ※57
        でもね蚊の針を模した痛くない注射針とかも開発されてるのよ……

        • +1
  33. こういう事発見したり開発したりする人、本当尊敬する
    とても自分と同じ種の生物とは思えん

    • +1
  34. 3,4年前にチューブ入りの止血ジェルが話題になったよな
    一瞬で止血できる、某ゲームの回復薬と同じ名前のメディジェル
    ゲームの方は、超音波を当てるまで剥がれ落ちないジェルだった

    • +1
  35. 切り傷にアロンアルファを塗る様なもん?

    • 評価
    1. ※59
      実は医療用のアロンアルファもちゃんと存在するんだぜ

      • +3
  36. ティラピアやタラの皮で皮膚を再生する治療をTVで放送していたし、
    血液の抗凝固剤としてヒルから作られたヒルジンがありましたね

    • +1
  37. 切断されたのをくっつけた後にヒルを使ったり、
    ウミを取り除くためにウジを使ったりした記事は読んだことあるけど、
    まだまだ蟲は役に立つんだなあ。自然すごいよ

    • 評価
  38. すごく有用だけど研究者は出勤のたびにSAN値削られたんだろうな

    • +1

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