メインコンテンツにスキップ

植物は見ている。 植物に残された痕跡から森の中の遺体の場所を見つけ出す「法植物学」(米研究)

記事の本文にスキップ

23件のコメントを見る

(著) (編集)

公開:

この画像を大きなサイズで見る
植物を使って森の中の遺体を探し出す方法 / Pixabay
Advertisement

 緑が生いしげる森はときに人を癒してくれるが、その奥には深い闇をたたえており、森の中で息絶えた人の遺体は、そう簡単には見つからない。

 鬱蒼としげる木々や人間の侵入を拒む地形が捜索隊の行手を阻み、そうこうしている間に遺体は腐敗し、失われていく。ゆえに森に隠された遺体が何らかの犯罪の犠牲者だったとしても、その解決は難しい。

 そこで科学者は考えた。植物に目撃証言を得て遺体を探し出すことはできないかと。これは「法植物学」と呼ばれるもので、『Trends in Plant Science』(9月3日付)に掲載された研究では、植物に残された痕跡から遺体を発見する方法が模索されている。

植物の目撃証言とは?

 人が死んだ後に残された遺体は、やがて腐り始め、化学物質を放出するようになる。だから遺体の周囲に生えている植物は、その化学物質の影響を受けて状態が変化する。

 これをいわば”植物の目撃証言”として利用することができる。たとえば、それは葉の色を変えるかもしれない。あるいは、それによって特に繁殖しやすい植物もあるかもしれない。

 テネシー大学(アメリカ)の研究グループが特に注目しているのは「窒素」だ。

 腐敗する遺体から放出される窒素は、植物にとっては栄養なので、その中で「葉緑素」がたくさん作られるようになる。その結果として、遺体の周囲にある植物の葉は、普通よりも緑色が濃くなると考えられるのだ。

この画像を大きなサイズで見る
Pixabay

ボディファーム(遺体農場)で実験開始

 このことを検証するために、研究グループは大学構内にある「ボディファーム(遺体農場)」と呼ばれる区画で実験してみることにした。

 ここは、さまざまな遺体が放置され、その腐敗プロセスやそれが周囲の環境に与える影響などが観察されている世界でもユニークな施設だ。

 すでに述べたように、人間の遺体から化学物質が放出されるために、その周囲の土壌や環境の化学組成・微生物叢には変化が生じる。こうしたエリアのことを、研究グループは「死体腐敗島(cadaver decomposition island)」と呼んでいる。

 そうした独特の化学・生物組成(「死体生物叢(necrobiome)」は、周囲に生えている植物内の化学組成を変え、その葉に遠くからでも検出できるような変化を生じさせる。

この画像を大きなサイズで見る
Pixabay

遺体のある場所では植生の変化も

 また死体腐敗島の植生自体も変わると考えられる。遺体による環境の変化に素早く対応できる生物ほど繁殖しやすいからだ。そうした植物は往々にして、長い根を伸ばして環境の変化に対応することに長けた侵略性外来種であるという。

 さらに植物の変化を生じさせた遺体が人間のものなのかどうかは、人間に特有の「代謝体」の影響を調べることで区別することができる。

 あとはこうして集められたデータを元に、人間の遺体が作り出した死体腐敗島の木々の葉の色――つまりは反射率や自己蛍光をドローンなどで上空から検出してやればいい。

この画像を大きなサイズで見る
image by:Brabazon et.

アメリカでは毎年10万人が行方不明に

 こうした法植物学の研究が行われているアメリカでは、毎年10万人もの人々が行方不明になっているそうだ。

 しかし、その捜索のための人手や資金は限られており、しかも森のような場所は捜索隊にとっても危険なので、行方不明者の捜索はいっそう困難なものとなっている。

 将来的には、法植物学の知見がそうした捜索の効率を改善し、迅速な遺体発見を可能にしてくれるだろうとのことだ。

Plants to Remotely Detect Human Decomposition?: Trends in Plant Science
https://www.cell.com/trends/plant-science/fulltext/S1360-1385(20)30243-0

References:arstechnica / inverse / futurism/ written by hiroching / edited by parumo

📌 広告の下にスタッフ厳選「あわせて読みたい」を掲載中

この記事へのコメント 23件

コメントを書く

  1. 植物の育ち具合でも古代都市や宝探しも可能
    反面、ヒトの傷つけた自然は1000年や2000年程度では戻らないという
    地球の現実を思い知る

    • -6
    1. ※2
      極論それを元に行方不明者探すのと変わらんのだよね
      シンプルな手段を精密を極める手法で行う科学の粋だね

      • +3
  2. 遺体の埋まっている場所の植物が、枯れてるとか、元気になるとか、色が変わるとか…推理物で時々あるやつの進化バージョンか

    • +5
  3. 虫はよく犯罪捜査に使われてる、その植物版か。
    日本では昔から「桜の樹の下には死体が眠っている」と言われてるよ。
    (本当は塚に桜を植えることが多いんだけど)

    • +6
  4. 人知れず山奥で眠っている人が家族のもとへ帰ってこられるといいね
    もし関わった悪人がいたなら逮捕のきっかけにもなってほしい

    • +4
  5. 日本では昔から…桜の下には屍体が埋まっている…とか言うからなぁ?
    これらは当てずっぽうな言い伝えも多いのかも知れんが、
    中には『実際に掘ったら遺体が出て来た』等の例も有ったのだろうと思う

    昔は現代みたいに法医学的な捜査はしなかったろうから、
    ほとんどの事例は迷宮入りだったろう…とは思うが?

    • 評価
  6. 毎年10万人も行方不明になってるなら人知れず殺されてどっかに打ち捨てられてる人も割と居そう…

    • +2
    1. ※9
      失踪した人がヒッピー的な暮らしをして人知れず樹木を世話している、とか

      • 評価
  7. ジミー・ホッファ「早く・・・ワイを早く見つけてクレメンス・・・」

    • +2
  8. ……やがて実をつけた果実には苦悶の表情を浮かべる人の顔が!

    • +2
  9. 庭にある果物の木々の中で、一本だけ別格に甘い果実がなる木があって……『食べても良いけど、あまり食べ過ぎない方がいい』と言われた話があったなぁ……。普通の恋愛青春物だと思わせといて、最後は名探偵カップルのミステリーになって終わったのは不意打ちでしたよ。

    • 評価
    1. ※13
      かーらサンの「美貌の果実」ですね。
      彼女、精神を病んだようで地元に帰ってからはポツポツとしか製作してないけど、アークエンジェルが映画化されるなどで再認識の動きもあったので、良い方向に進むといいのだけれど。

      • -1
  10. サスペンスで、埋められた時期を年輪から割り出した話があった。

    • 評価
  11. これは埋めた場合に限定されるだろうね。
    環境にもよるが、死体は1~2週間ほどで虫や動物がほぼ分解・運搬してしまい、広範囲に散逸する。
    わずかな痕跡もバクテリアや細菌が分解してしまう。
    現場には骨すらほとんど残らない場合もある。
    植物にとっても肉そのものはただの負の要素で、雑菌に根がやられるので吸収できるのは細菌が分解してくれた後になるが、その状態の栄養素はキノコ類などの菌類やあらゆる植物が欲しがるので分解された端から奪われて行く。
    表層に投棄された場合一個体あたりの吸収は限定され、有意な変化は認めらないだろう。

    • -2
  12. 何故か蟲師っぽい何かを想像してしまった。

    • +1
  13. 「死者の指」茸が生えるんですね。木耳が生えるんですね。怖いですね~。

    • 評価
  14. 果たして、見ているのは屍だけかな?

    どんな悪事も、イジメも、人が見ていなくても植物は見ていて、自分のあんな悪事もこんな隠し事も、みんな見られて知られている。彼らは責め立てたりすることはないけど、ブツブツと彼らなりの言葉で僕らの悪事を告白し続けていて、僕らのなかの誰かが、その声を聴いて翻訳してくれようとしているんだ。

    もちろん、隠れてなされた良いことも、明るみに出るかもしれない。

    人が見てなくたってお天道様がみてる。曇っていたって草木や虫が見ている。なんだか小学校の道徳みたいな研究だな

    • -3
  15. 人間じゃないけど、愛犬(中型より大きめ)が亡くなった時に庭にお墓作ったら
    フキが増え、猫の時は雑草が増えた程度、インコは変化なし。
    人間サイズでも普段から観察してないと難しいだろうなーと思う。

    • 評価

コメントを書く

0/400文字

書き込む前にコメントポリシーをご一読ください。

リニューアルについてのご意見はこちらのページで募集中!

知る

知るについての記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。

植物・菌類・微生物

植物・菌類・微生物についての記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。

最新記事

最新記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。