「最後の晩餐」を超拡大できるサイト image credit:Google Arts & Culture
イタリアのルネッサンス期を代表する芸術家レオナルド・ダ・ヴィンチの象徴的な作品の1つ『最後の晩餐』が、現代のデジタル最新技術によって超高解像度でオンライン上での拡大閲覧が可能になった。今回、イギリスのロンドンにあるRoyal Academy of Arts(ロイヤル・アカデミー・オブ・アーツ)とパートナーシップを組んだGoogle Arts & Cultureによって公開された『最後の晩餐』は、ダ・ヴィンチのオリジナル作品ではなく、彼の弟子2人による模写作品で、キャンバスに描かれた油彩画だ。
そのため、原画では劣化して失われたとされる部分の再現や、超高解像度による詳細部分を非常にクリアに観察することが可能となっている。
ダ・ヴィンチの弟子2人により描かれた模写作品『最後の晩餐』
どれほどまでに拡大して見ることができるのか、実際にGoogle Arts & Cultureのサイトで見てみよう。Explore 'The Last Supper' — Google Arts & Culture 1495年から制作に取りかかり、1498年に作成されたと言われているダ・ヴィンチの原画『最後の晩餐』は、4.2×9.1メートルという巨大な作品だが、今回同サイトで紹介されている絵は、ジャンピエトリノとジョヴァンニ・アントニオ・ボルトラフィオというダ・ヴィンチの2人の弟子により、オリジナルと同時期に作られた油絵だそうだ。
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この模写作品は、オリジナルと比べて8メートルと少々小さく、オリジナルの3分の1が欠如していると言われているが、原画と比較しても経年劣化が目立たず、原画を最も正確に描いたものと評されていることから、多くの学者にとって有益な資料となっている。通常、壁や天井に描かれる絵は、古代ローマ時代からの伝統的なフレスコ技法を用いることが多い。
しかしダ・ヴィンチは、この作品にフレスコ技法ではなく乾いた漆喰に卵とオイルペイントを使ったテンペラ画法で仕上げた。そのため、完成後の劣化が激しい結果になってしまった。
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一方、この模写作品は、オリジナルでは劣化して見られなくなっていた部分も修復され、更に高解像度スキャンでクリアに観察することができる。
「12使徒の中の1人が裏切る」とイエスが予言した情景
『最後の晩餐』は、キリスト教の新約聖書の中にある、イエス・キリストと彼の12使徒による最後の晩餐を題材としたもので、「使徒の1人が自分を裏切るだろう」とイエスが予言している時の情景が描かれている。原画は、所々に損傷が見られた他、設置されてあるミラノのサンタ・マリア
デッレ・グラツィエ修道院の食堂の壁の改装工事によって、イエスの足部分が失われたりしているが、この模写作品ではその足部分もしっかりと復元されている。
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また、原画では劣化してほとんど見えなくなっていた塩の小瓶が倒れている部分も、模写では御覧の通り。
image credit:Google Arts & Culture
塩の瓶が倒れ、塩がばら撒かれるという描写は、16世紀の西欧では悪の兆候を意味していたという。超高解像度で拡大して閲覧できるからこそ、イエスの知らせに感情的に反応している使徒たちの様々な表情をよりはっきりと見ることが可能だ。
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それに反して、イエスは「神」を意味する伝統に倣った容姿で、中央に両手を広げて三角形の構図で描かれ、イエスを取り囲む使徒とは対照的にバランスの取れた穏やかな表情だ。
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聖書に記されてあるように、使徒の1人フィリポは胸に手を当てて、キリストに訴えかけるような仕草をしている。
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また、「手で鉢に食べ物を浸した者が、私を裏切る」と聖書にあるが、絵画ではイエスを裏切ったとされているユダには顔に陰りが描かれ、銀貨30枚が入った袋を持たせることでダ・ヴィンチは裏切りの象徴を示したとされている。
image credit:Google Arts & Culture
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image credit:Google Arts & Culture
一方、ユダの背後でナイフを握っているとされるペトロは、身を乗り出してイエスの隣にいるヨハネに何か耳打ちしているようだ。
image credit:Google Arts & Culture
ちなみに、ペトロはこのナイフで、後にイエスを捕らえようとした兵士の耳を切ったということだ。
image credit:Google Arts & Culture
大ヤコブの背後から顔を出しているトマスは、右手の指を1本突き立てている。これは、イエスに「裏切り者は1人ですか」と問いかけている仕草だと解釈されているが、数日後に磔に処せられるイエスの死のヒントとなるという説もある。
10億ピクセルを超える解像度でスキャン
Googleが手がける世界中の美術館の所蔵作品を鑑賞できるサービス「Google Arts & Culture」は、Royal Academy of Artsと提携し、200を超える作品をデジタル化して公開している。特に、このダ・ヴィンチの模写作品をはじめとするその他19点は、GoogleのArt Cameraテクノロジーを使用してギガピクセルの超高解像度でスキャンされており、作品の1つ1つの細部を詳細に確認することができる優れた資料となっている。
追記(2020/07/07)本文を一部修正して再送します。
written by Scarlet / edited by parumo
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コメント
1. 匿名処理班
有名な絵なのに、テーブルの下の足を初めてよく見た気がする
2. 匿名処理班
懐かしいな...
小学生の時にこの絵を初めて見たときは、真ん中の人が晩餐会でしょーもない食事を出して、文句言われてる絵だと思ってたわ
3. 匿名処理班
>>1
本物は食堂の壁に書かれた絵だから食堂の工事に合わせて足部分はなくなってるよ
せっかく翻訳してくれてるんだし本文読んだほうがいい
4. 匿名処理班
イエスとユダには頭の上の光の輪がないんだね
5. 匿名処理班
美白化粧品販売しないっていう海外の化粧品メーカーがあるけど、やっぱ古より、美しい人は色白なんだなって使徒ヨハネ見て思った。
6. ご注進 処理班
年代がっっつ!
> 1945年〜1948年の間に作成されたと言われているダ・ヴィンチの原画『最後の晩餐』
7. 匿名処理班
※5
個人の嗜好の範疇だと思うけど…
黒猫と白猫どっちの外見が好み?とそんなに違うだろうか
ただ、農民=日に焼けた(赤い)肌、貴族=焼けてない白い肌だね
8. 匿名処理班
※7
個人の感覚ではなくて芸術記号論的な意味よ。
9. 匿名処理班
※8
当時の絵画における決まりごと、みたいなことね。了解
(日本だと鳥毛立女屏風樹下美人図のような目の細さも美人の条件)
10. 匿名処理班
テーブルの上のパンとかの配置がきっちりしすぎだよな、何か都市伝説みたいなのあるのかい?
11. 匿名処理班
やっぱりオリジナルとはかなり違うね
ダヴィンチの絵は緻密で情報量が多くて多弁だけど、弟子の模写かあ〜微妙
記事自体は興味深かったです
ダヴィンチの宗教関係の絵は思わせぶりなのが多いようだけど、自分がキリスト教徒じゃないせいか公式解釈をこじつけるあっちの伝統によくモヤる
マグタラのマリアをヨハネと言い続けるのも解せぬ
解釈を矯めて絵の価値を微妙に損ねてでも権威としておおやけに曝す…スリリングというか
12. 匿名処理班
>>10
粗品が語ってた楽譜の話とか?
13. 匿名処理班
解説も見れて嬉しい