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ラグナロク、北欧神話で語られる世界の終わり

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(著) (編集)

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ラグナロク、北欧神話における世界の終末/iStock
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 「ラグナロク」と聞くと某オンラインゲームを思い出してしまいがちだが、その本来の意味は、神々の運命を示し、北欧神話の世界における終末の日のことである。

 その日、炎の巨人と霜の巨人が神々に戦いを挑み、世界は炎に包まれ、海中に没するという。

兄弟は殺し合い、姉妹の子供たちは親族を冒涜する。世界は荒れ、背徳が蔓延る。それは斧の時代であり、剣の時代である。盾は両陣営に分たれる。それは風の時代であり、狼の時代である――やがて世界は真っ逆さまになる。もはや誰からも慈悲の心は失われるだろう(ドロンケ 1997:19)

北欧神話の神々と世界

 北欧神話の舞台は9つの世界で構成されており、そこに「アース神族」と「ヴァン神族」という2氏族の神々と、それらと敵対する「ヨトゥン」という巨人が存在している。

 しかし最大のトリックスター(秩序を破壊し、物語を展開させる存在)は、主神オーディンの義兄弟でありながら、ヨトゥンの血を引く「ロキ」という神だ。彼はときに神々を助け、ときに仇なす。

 アース神族が暮らすアースガルズで暮らすことを許されており、オーディンが乗る9本足の馬「スレイプニル」や、ラグナロクで重要な役割を担う「フェンリル」という狼の父親でもある。

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ロキの悪戯が神々との確執をもたらす

 あるとき、ロキはオーディンの息子である盲目の神「ヘズ」を騙して、兄の「バルドル」を殺させてしまう。美しく誰からも愛されていたバルドルの死は、神々を大いに怒らせた。

 ロキは捕らえられ、巨大な岩に縛り付けられて幽閉される。その頭上では毒蛇が毒液を垂らしており、ロキはそれを顔に受けるたびにもがき苦しみ、大地を揺らした(この点、人間に火を与えたことで、岩に磔にされたギリシア神話のプロメテウスと似ている)。

 大地が揺れるおかげで世界は不穏な空気に包まれた。またバルドルが死んだことで、地上から美しさや純粋さが失われ、悪が蔓延るようになった。

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岩に縛り付けられ、蛇の毒でもがき苦しむロキ(J. D. ペンローズ作)

image credit:public domain/wikimedia

神々の最終決戦。そして世界の再生

 復讐にかられたロキは封印を破り、巨人と共にアースガルズに攻め込む。

 最終決戦の場「ヴィーグリーズ」で神々と巨人との熾烈な戦いが繰り広げられる。オーディンはフェンリルに飲み込まれ、トールもまた巨蛇ヨルムンガンドの毒で倒れる。最後は炎の巨人スルトが放った炎によって世界は焼き尽くされ、海中に没する。

 こうして無に還った世界だが、やがて大地が再び海から浮上し、新しい世界が始まる。その世界の始祖となるのは、「リーヴ」と「リーヴスラシル」という人間の男女だ(なお、2人の性別は資料によって異なる)。

 また戦いを生き残ったオーディンの子「ヴィーザル」と「ヴァーリ」、トールの子「モージ」と「マグニ」、アース神族の1人「ヘーニル」は、新世界の神となる。

 ちなみにラグナロクでは、ヒンドゥーの神話と同じように人間も巻き添えになっている。この点、神に対して忠実でなかった人間が罰を受けるというキリスト教における終末とは違う。

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グナロクで戦う主神オーディンとフェンリル狼、豊穣の神フレイと炎の巨人スルト

image credit:public domain/wikimedia

現実の出来事か? それとも未来への警告か?

 有史以来、人類は世界の終わりに強く関心を惹かれてきた。キリスト教やユダヤ教の「最後の審判」しかり、アステカ神話の5つの太陽の伝説しかり、ヒンドゥー教の最後のアヴァターラ「カルキ」しかり——。

 注目すべきは、こうした神話のほとんどにおいて、現在の世界が終わったあとで新しい世界が再創造される様子までもが語られていることだろう。それは昼と夜、季節、生と死といった、自然の循環についての古代人なりの理解の仕方だったのかもしれない。

 あるいは過去にあった現実の出来事を今に伝えているとも考えられる。それとも、そう遠くない未来に訪れる危機について現代人に警告しているという可能性もあるのだろうか?

References:The Story of Ragnarok, The Ancient Norse Apocalypse | Ancient Origins/ written by hiroching / edited by parumo

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この記事へのコメント 41件

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  1. 無線で歌ってたドラゲナイは
    どこに消えたんだ。メンバーに
    明智小五郎の地獄の道化師が参加してる
    異色のメンバー構成だったのに。

    • -1
  2. 能力はともかく、性格はロキみたいな連中っているよな。
    逆恨みの人生

    • -6
  3. 世界が続こうと、主体である自分が亡くなれば認識できないから世界は存在しないに等しい

    • +5
  4. 英雄的な人々がこのときのために蓄えられてる(具体的な活躍の描写は著しく少ない)
    光り輝く太陽の神の死が原因(バルドルの火葬は夏至であったと言われる)
    神々が燃え盛る炎に飲み込まれたり何なりして死ぬ
    全部終わった後に太陽の神が蘇る

    アステカの儀式では英雄は神の名で呼ばれ神として殺され、神は別人に引き継がれ若々しく蘇る事は有名
    ここで重要なのが、神=英雄となりうると仮定した場合、ラグナロクは夏至になると英雄=神々が炎の巨人によって殺され、その後に太陽が蘇る現象。と単純化しうると言う事

    つまり夏至を経て太陽が弱まった(死した)為に、神々(=英雄)は太陽を復活させる儀式(極端な例ではアステカ人が毎朝捧げた生贄のように)の為に殺され、炎で燃やされたのではないか?
    英雄達の活躍が異様に少ないのは彼らの活躍は神々の活躍と=であるからそもそも描写しようがないと考えれば辻褄は合う

    文化圏によっては、英雄を犯罪者や奴隷等で代用した事を考えると、彼らを滅ぼした炎の巨人や毛穴という毛穴から火を放つ狼とは、犯罪者を詰め込み火を放つ事で殺害したガリアのウィッカーマンと同様の宗教儀式が神話化された存在ではないか?

    世界に悪徳が蔓延るというのも、季節の変わり目に殺人すら許される無礼講と、その無礼講時の悪徳を悪霊の類に押し付け払う儀式は珍しくもない為、それを物語的に描写したならば一時的に世界は荒れ、背徳に満たされると言ってもおかしくはない
    つまりラグナロクの正体とは、神話的に詩化物語化されただけの単なる冬の到来と、それに伴う宗教儀式でしかないのではないかと言いたい

    • +4
  5. ロキだけ頭おかしいww
    自然に人格を与えた結果なんだろうけど

    • +6
  6. 日本には終末神話はないが、くれぐれも天照大神だけは怒らせちゃダメだぞ。
    彼女が引きこもっちゃうだけで現世に有り難くないモノが蔓延しちゃうから。

    • +5
  7. 日本神話において世界の終末ってどういう感じなんかな

    • 評価
    1. ※8
      強いて言うなら天照大神の引きこもり。
      岩戸から引っ張り出せたから良かった物の、ほっといたら世界が常夜になって魑魅魍魎の跋扈して病気とか不作とかあらゆる有り難くないことで蔓延して滅ぶと思うよ。

      • +6
    2. ※8
      日本神話に終末はたぶん、存在しない気がするよ。

      一応最高神的な立ち位置に見えるアマテラスも、家は父子家庭でその長女だったというか、実際には上に10人いてさらに母が死別する前に生まれた神もいっぱいいてアマテラスは母親の死後に父親の目から生まれた(!)ことになってるけど、

      とにかく一応長女的な立場のアマテラスも、本人は岩に隠れて拗ねちゃうようなアレな感じだし、弟スサノオは海を治めよと言われたのに仕事はあまりしないニートでゆくゆくは勘当されるけど揉め事をおこしては姉の気をひこうとするシスコンだし、二人の争いがいろんなことの起点になって日本神話の大部分を作っている。

      ただ争いはあっても最後は美味しいご飯とか宴会とか、そういうのでなんとなく収まる。

      そして二人の間にはさまれた次女ツクヨミが、夜つまりいちばん終末に関係ありそうな時間帯の神なんだが、古事記ではたった一行『夜の国を治めよと言われた』と言及されているだけ。

      今でこそ夜の街といったら感染症の巣だったりとかく犯罪が多かったり何かと問題が起きてるけど『とにかく治めよ』のひとことで済ませてしまうのが日本神話だと思うよ。

      人間のいろんな話が夜を舞台にしてるのは神話が夜に余地を残しておいてくれたからという考え方もあって、人(というか日本人?)は古事記の続編を今でも作っていると見ることもできる。それから目玉という体細胞から子供を産むようなiPS細胞の技術は古事記によって予言されていたとか言うオカルトな人もいる。

      いろいろ言われてるけど、紆余曲折とにかくわざわいをおさめて生きろというのが日本神話な気がするよ。

      地震とか火山とか津波とか台風とか現実に破滅的な災害が頻発していたから、わざわざ神話に残して伝承する必要がなくとにかく生きろという話になったのかもしれないと思ったり思わなかったりするよ

      • +2
      1. ※11
        1点だけ。
        明確な記述が無くハッキリしないのですが、
        ツクヨミは一般的には男神と解釈されてますね。

        • +5
      2. >>11
        古事記や日本書紀って古神道のあり方そのままじゃなくて、ぶっちゃけ天皇のための夢小説だからこうして天皇家の支配が始まったぜばんざーいで話が終わってるんや、だからそれ以前の伝説や言い伝えじゃイザナギとイザナミはエクストリーム離婚してなくて普通に母イザナミが天照を産んだって話も地方に残ってるぞ、もっと古い言い伝えの中には古代の日本人がこの世の終わりをどう考えてたか分かる話があるかもね

        • +3
    3. ※8
      神話から歴史への接続が直接的で、神話世界がそのまま政治的現実に直結してたので、世界が滅ぶとか言う現実を否定するような考えを容れる余地が無い

      こじつければ、日本の国土は伊弉諾尊伊弉冉尊から生まれた神々なので、神でも死ぬときゃ死ぬ日本神話からすれば、国土が消滅して大海原に戻るだけのような気もするけど

      • +4
  8. 今の時期に終末論は嫌だな・・・
    正直1年前まで2020年がこんな状態に
    なるなんて想像がつかなかった

    世界は滅亡する、なんだってー!!

    なんて軽く言えなくなったもの
    2021年はどうなっているのか?
    嫌な予感しかないな

    • +7
  9. ロキはフェンリルの父親じゃなくてお母さんですよ

    • +2
    1. >>13
      んにゃ、腹を痛めて産んだのはスレ/イプニルだろ

      • +9
  10. 神話よく知らない
    でも神話はエロいとだけ記憶してる!

    • -5
  11. 9本脚の生えてる馬ってどういう生え方しているのか気になる

    • +3
  12. 神話の世界が滅んだから今の世界には神も見えないし魔法もない。この構図は指輪物語なども参考にしてると思われる。だけどラグナロクの最後にはミョルニルなど神の遺物が少し残ってるんだよね。

    • +3
  13. ロキってむしろ苦労してるイメージの方が強いわ。
    最初のエピソードでさえ
    戦争で城壁が壊れる

    神々「直すのめんどい、マジでだるい」

    ロキ「巨人だましてタダで修理させようぜw」
    神々「やべぇ、天才かよ…それで行こう!」全会一致

    ロキ「ヤバい、巨人が有能すぎてもう城壁直りそう。報酬払わなアカン」
    神々「は???お前のせいだろなんとかしろ」
    ロキ「はい…。(みんな賛成したじゃん)」

    ロキが工事を妨害、納期に間に合わなくなり巨人ブチギレ
    巨人「騙してたんか!報酬払え!」
    トール「これが報酬じゃ!」ミョルニルで頭カチ割る
    神々「やったぜ!」

    おわり

    こんなんだぞ

    • +24
    1. ※19
      そうそう、実は他の神様たちの尻拭いさせられてハズレくじ引いてることのが多いんだよね。
      そりゃ切れるし仕返しするだろう、と思ったことある。

      • +21
  14. 日本では末法思想あたりが近いかなぁ
    国生みや洪水とか世界の神話で共通する部分は割とあるのに
    終末論が日本神話にないのは面白いね
    まぁ神が世界を滅ぼすなら神である天皇が自ら治める国を滅ぼす構図には無理があるし
    むしろ日本の神である天皇は常に祈りを欠かさず国を守ってくれてるわけだしね

    • -5
  15. 俺の妄想 

    ギリシャ神話→火星で起きた事
    北欧神話→ギリシャ神話の続き、オーディン=ゼウス、ラグナロクで火星が焦土へ
    生き残った神々は地球に移住、主神がいなくなり方々に散った神々が各地で国を作り、世界中にある神話の元となった。

    • -4
  16. 日本ってやたら外国の文化や宗教をありがたがったりする傾向があるし、メディアを湧かせるような風雲児であればブラック企業の社長でも素晴らしいと褒めちぎるし、ごく一部の有能な人間の活躍で世界が守られたんだってコンセントの創作物が好きだから、近隣国家の有力者だけが来れる軽井沢的なみたい存在だったのでは?と思うようになったわ
    上が入れ替わるだけで平和が保たれるんだから、終末思想なんて生まれるわけがないのよ
    そういう意味でも日本神話って面白いなって思う
    アマテラスやスサノオって単なる役職名で、実は各エピソードで中の人が違ってる可能性がある

    • 評価
  17. 北欧神話って一見凍てつく寒い地域で生まれた伝説と思われがちだが、実際は彼らは移住者で、元々は黒海のあたりに住んでいたゲルマン民族とドイツ北部やブリテンに住んでいたケルト系の混合。
    なので成立は比較的新しい。
    ユダヤ・キリスト教とも古くから交流があったからその影響も見える。
    多分「巨人」は当時蛮族だったゲルマン系の人々の比喩で、オーディンらは文明圏に属していたケルトやラテン系の支配層なんだろう。
    北欧はもともとイヌイットみたいなアジア系のモンゴロイドが住んでいて、その背丈は極端に低く、移住民に支配された後は製鉄・炭鉱奴隷だったらしい。これが後にゴブリンやオークのアイデアになったと言われる。
    そう考えればラグナレクもある程度の史実に基づいているのかもしれないね。
    西ローマの衰退でヨーロッパ中のラテン系が死ぬか東に逃亡し、残されたケルト系はゲルマン人に駆逐されたので、その辺の話を拾ってんじゃないかね。

    • +1
  18. キリスト教の伝播後の文献だから、もともとの北欧神話に終末神話があったかどうかも分からないんだよなあ。

    • +6
  19. 北欧神話、人(神)のエゴ丸出しな話が多かったり最終決戦で双方共倒れだったり、
    イデオンやダンバイン等の黒富野節全開の物語の元祖みたいな話よね。

    • +2
  20. アース神族の首領格なのに無能ぶりが輝くヘーニル。オーディンやロキと一緒にいることが多いけど特に何もしない。あまりの無為無策にヴァン神族もキレる。ラグナロクでもちゃっかり生き残る。いつでもどこでも昼行燈。でも人間に心を与えたのは彼だという。なかなかユニークな神だと思う。

    • +4
  21. ロキの嫁はロキを見棄てず鉢持って毒を受け止めてくれているが
    鉢がいっぱいになると捨てに行くのでその間だけ地震が起きるんやで
    そうじゃなかったら大地揺れっぱなしやがな

    • +2
    1. ※39
      北欧神話っていうけど、地震とか炎の巨人が世界を滅ぼすとかって
      火山島アイスランド人のイメージじゃないのかな?
      「日本書紀」の「一書に曰く」みたいに、ノルウェーやスウェーデンの人間は
      別ヴァージョンの神話を持っていたのかも、と想像する

      • +1
  22. 人々の争いでなのか、はたまた天災や災害うんぬんでなのか、地球外生命体の侵略なのか、
    そもそも人類滅亡を終話とするのか?

    神は人類がいる限りいつまでも繁栄されてゆくのだなー

    • 評価

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