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一度知ると、その後やたらそれを見たり聞いたりする気がするのは偶然?奇妙な認知効果「バーダー・マインホフ現象」

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Bronisław Drożka from Pixabay
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 それまで知らなかった言葉や物事など、何か新しいことを知ったら、それが急に身の回りに増え始めたような経験はあるだろうか?

 たとえば、新しい言葉を覚えたとしよう。そうしたら次の日、あなたの上司や先生がやたらとその言葉を使っているではないか。それどころか、今読んでいる本の中にまで書かれていた。一体どういうことなのか?

 この不思議な認知効果は「バーダー・マインホフ現象(Baader-Meinhof Phenomenon)」と呼ばれている。

 はたして、これは単なる偶然なのだろうか? それともきちんと合理的な説明ができる現象なのだろうか?

新たに知ったことに注意を向けやすくなるから

 スタンフォード大学の言語学者アーノルド・ツウィッキー教授によると、バーダー・マインホフ現象は、より科学的には「頻度錯覚(frequency illusion)」と呼ぶべきなのだそうだ。

 私たちの日常には、とんでもない量の情報・思考・感情が待ち構えている。さすがの脳といえど、それらすべてを処理することは不可能なので、どこに注意を向けるべきか選ばなければならない。これを「選択的注視」という。

 私たちが何か新しいことを学習すると、この選択的注視が変化する。つまり、それまで無視していたことに以前よりも注意が向けられやすくなるのだ。

 これがバーダー・マインホフ現象の原因の1つだ。

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dorian2013/iStock

脳は自分の正しさを裏付ける情報を求めている

 もう1つの原因として、「確証バイアス」というものがある。

 これは、あることについて自分の正しさを裏付けてくれるような情報ばかりを、脳が積極的に探すために生じるバイアスのことだ。

 頻度錯覚の文脈でいうと、何か新しいことを学んだとき、この新しい情報が興味深いために、私たちはそればかりを探し求めるようになる。すると自然にその情報が目につくようになる。

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Bronisław Drożka from Pixabay /iStock

本当は元々あったことに目が向くようになっただけ

 こうして新しく覚えた情報をそこかしこで見聞きするようになると、脳はその理由を説明しようとする。そして、こう告げるのだ――きっとみんな同時に同じことを発見したに違いない、と。

 現実には、ただあなたが元々そこにあった情報へ注意を向けるようになっただけのことだ。発見したのは、あなた1人だ。

 選択的注視と確証バイアスのおかげで頻度錯覚が生じると、なんだか特別なことが起きているように思えてくる。しかし、ここで”錯覚”と呼んでいるように、これは究極的には脳の働きによって生じているに過ぎない。

 脳は世界が合理的に見えるようにパターンを探すのが大好きだ。一度、新しい情報を見つけたら、脳は引き続きそれを探し求め、そのために急に増えたと錯覚するようになる。

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Bronisław Drożka from Pixabay

バーダー・マインホフの由来とは?

 バーダー・マインホフ現象の「バーダー・マインホフ」とは何か?それは、1970年代に爆破や放火、誘拐や暗殺といったテロ行為を行った西ドイツの極左民兵組織のことだ(日本では「ドイツ赤軍」や「西ドイツ赤軍」との名称が一般的)。

 1994年、アメリカのセントポール・ミネソタ・パイオニア・プレス紙のある解説者が、それまで聞いたこともなかったバーダー・マインホフという言葉を24時間で2度も耳にしたことがあったのだという。そこで、この奇妙な現象を「バーダー・マインホフ現象」と紹介した。

 この用語が世に広く知られるようになって、解説者も驚いたことだろう。だが2006年、ツウィッキー教授がより科学的に妥当な名称として、「頻度錯覚」という用語を考案した。

バーダー・マインホフ現象のビジネスへの応用

 なお頻度錯覚は、ビジネスの世界で心理学を利用したマーケティング戦略としても利用されている。製品やサービスを人の心に根付かせ、それをずっと考えさせ続けることで、狙い通りの結果を得るやり方だ。

 つかみとして、印象的なイメージやタイトルなどが使われる。こうしてターゲット層の気を引いたら、あの手この手でそのメッセージを送り続ける。

 すると、その人たちは、製品やサービスがやたらと目に付くようになったことには何か特別な理由があるに違いないと思い込むようになる。そうなったらシメたものだ。

 ただし、この戦略を採用しようか検討している会社は気をつけることだ。ターゲット広告を繰り返し流した結果、特別なものと思われるどころか、かえって気味悪がられる恐れもあるからだ。

References:Baader-Meinhof Phenomenon: a Curious Cognitive Effect – Learning Mind/ written by hiroching / edited by parumo

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この記事へのコメント 29件

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  1. 道理で最近「バーダー・マインホフ現象」って聞くと思った

    • +32
  2. 極端に反復の多い広告やターゲット戦略は、短期的には収益につながる反面、一定数の顧客には反感を招き、長期的にはイメージの低下からいずれ収益が落ち込むと思われる。

    だから、ハゲとかデブとかシワとかシミとか借金とか解決しますよ~
    のしつこい広告やめれっつってんだ。

    • +20
  3. いやきっと自分が世界を動かしてるのよ

    • 評価
    1. ※6
      いやきっと自分だけしか世界に居ないんだよ

      • +4
  4. 山菜採りやキノコ採りに行った時、
    最初の1つを見つけると後は
    サクサク見つかるのも同じ事でしょうか。

    • +5
    1. ※7
      もしかしたらそのために脳が発達した結果もしれないね。

      ※5
      最近、ホント多いもんな。
      シワとかシミとかハゲとかデブとか極端に酷い例を出して煽ってくる広告。
      気分が落ち込んで前向きな購買意欲につながらんよな。

      • +11
    2. ※7
      つまりそうなると家に帰ってから自分の部屋にもキノコがたくさん生えていたことに気がつくようになるってことだね

      • +1
    3. ※7
      それは単に、実際、菌の散らばってる範囲や
      (「菌環」「フェアリー・リング」「エルフ・サークル」
      等と呼ばれる輪っか状の群を成したりもする)
      生息条件の整った土壌の関係などで、
      一つある場所が見つかれば芋づる式に周囲から出てくるだけかと…

      • +3
  5. 最近ジストニアについて調べてたらその数日後にテレビでやってたんだがこれやったんか。

    • +1
  6. ネットスラングが正にこれなんじゃないの?
    みんな、覚えたての言葉を言いたいだけだろ。
    それを同時多発的に沢山の人が口にするから、色んなとこで「それ最近よく聞くなぁ…」って感じるんだよ。

    自分は「バズる」という言葉が大嫌いなんだが、リアルでもネットでもどこに行ってもだれに会っても、みんなこれを連呼するから、辟易する。
    みんな、もう少しマトモな日本語喋れんのかよ。

    • -3
    1. >>10
      それは単なる流行語では。
      何年か経てば恥ずかしくて誰も使わなくなるよ。

      • +4
  7. あるある、これこれ!!

    小学校のころ、「月並み」って言葉を知って数日、まるでこの「月並み」に囲まれたかのように感じた時期がありました。

    この感覚をバーダー・マインホフ現象って言うんですね…初めて知りました!!

    • +14
  8. 昔この現象でオーラが開いた新しい世界だって言ってくる人がいて怖かったな

    • +6
  9. パパラッチ、カチューシャの言葉を知ったときこの現象あったのよく覚えてる

    • +1
  10. 「セーラージュピター」って言葉を同じ日にコンビニと普通のドラマで耳にしたのは偶然だろうな

    • +2
  11. >本当は元々あったことに目が向くようになっただけ

    ちょっと譬えは違うかもしれないけど、
    「とどまれば あたりに増ゆる 蜻蛉かな(中村汀女)」

    • +3
  12. そうか、消防団を経験してから、消火栓を認識しやすくなったのはそういう理由かw
    仕事で高所作業車に乗る経験をしたら、意外と高所作業車がたくさん走ってることにも気づいたけど、同じかな。

    • +7
  13. これの身近な例が、自動車教習所に行った後の、交通標識への気づきの強さじゃないかしら。

    • +5
  14. 妊娠するとやたら街中で妊婦が目につくようになるのはこの現象か

    • +2
  15. >ターゲット広告を繰り返し流した結果、特別なものと思われるどころか、かえって気味悪がられる恐れもあるからだ
    「かえって」というより、繰り返し見る広告は「基本的に」気味悪がられるものじゃないか?あるいは「ごり押し・無理やりねじこもうとすること」に不愉快さを覚えるというか
    それとも健常者はこれをごり押しと思わず「特別なものだ」と感じるのか?

    このサイトの左側の広告欄で、お酒のサイトとたぶん韓国コスメとウエスト124㎝の広告を毎度目にするけど、「ああ、誰も食いついてくれないから大量に広告打ってるんだろうな、かわいそうに(と思いつつ内容見ないで素通り)」ってなる

    • 評価
  16. どうして欧米のほうは、こういう現象とか理論とかに人名を(しかも時にはフルネームを)つけて ○○効果 とか ××法 とか名付けがちなんだろうな。

    日本でそういうの、まず聞かないよな。
    基本的には端的に内容を表す単語で呼ぶもんな。

    • 評価
  17. 少年犯罪なんかもこれか
    昔からあったのに(むしろ昔の方が多かったのに)
    まるで最近増えてるように思われているっていう

    • 評価
  18. その時の自分に内在した新鮮なテーマや情報に選択的に意識が行くっていうのはあるあるだよね
    そして改めてその視点や概念の遍在に気付いた時に人は新鮮な驚きや印象を持つんでしょうな
    それを同時多発的にそれを言う人が増えたのだ、ととらえたら単に認知の不足かエラーだよね
    つうかそれホラーじゃないか…

    • -1
  19. ほしい車が決まった途端、街中でよく見かけるようになるわ。

    • +1

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