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真偽検証が間違っていることも。フェイクニュースへの警告は真実を報じるニュースの信頼性を貶めている(米研究)

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MicroStockHub/iStock
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 フェイクニュースがますます増えつつある昨今、ニュースの真偽を検証することがきわめて重要になってきている。

 民主主義の根幹に関わる政治関連のニュースについては特に言えることで、こうした状況に対応するために、ニュースの真偽検証(ファクトチェック)を専門的に行っている組織が2000年代初頭から加速的に増えているという。

 あるニュースがフェイクである可能性を告げる警告は、間違った情報が世間に広まってしまうリスクを下げることができるが、ここで問題が発生する。

 そのフェイク警告自体に信ぴょう性のない場合もあるからだ。真実を伝えるという目的が、いつのまにか印象操作にすり替わっている場合もあるのだという。

 アメリカでフェイクニュースとそれを正すフェイク警告に関する研究が行われた。それによると、フェイク警告も場合によっては悪影響を及ぼすこともあるそうだ。

フェイク警告の信頼性の問題

 フェイクニュースに関する警告の信頼性は必ずしも一貫していない。

 FactCheck.orgPolitiFactをはじめ、信頼性の高い検証を行っている組織もあるが、中にはバイアスを帯び、あまり役に立たない警告を出しているところもある。

 例えば、「事実」を述べているニュースに対してフェイクであるとの警告が出されることがある。それがうっかりミスの場合もある。

 だが、そうしたニュースを報じられては不都合な者たちが、その信憑性を貶めるために意図的にフェイクの警告を出していることもある。

 またフェイク警告の内容が曖昧すぎたり、不正確だったりすることもある。

 誰にでも間違いはある。過失により誤った情報を流してしまったとしよう。その誤った情報に対してのフェイク警告が出されたとする。すると、他に真実の情報があっても、全て誤っていると偏見を持たれてしまう。フェイク警告が印象操作に使用されてしまうのだ。

 フェイク警告を出す側が必ずしも正義の味方とは限らない。真実を伝えるという目的だったはずなのに、いつのまにか、悪者を生み出すことに躍起になっていることもある。任を責め立てる恐ろしい顔をした天使こそが、悪魔の原型だったように。

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Colin Behrens from Pixabay

フェイク警告の弊害

 さらには、こうしたフェイク警告の存在がフェイクニュースに信憑性を与えることすらある。

 人々が記事の信頼性の高さを保証する文言やフェイクニュースであるという警告に慣れてしまったとする。

 すると、たまたま真偽の検証がなされてらず、そうした警告がないフェイクニュースを見た人は、警告がないのだから正しいのだろうと思ってしまうのだ。

 特にSNSでは顕著で、自分では何も調べず、本文すら読むことすらなく、短い見出しだけでリツイートやいいねを飛ばしまくる。その何気ない行為が、正しい情報伝達を妨げている危険性を秘めている。

 フェイクニュースの内容を検証し、それを発表することは、確かに必要なことである。だがその反面、警告自体が人々のニュースの受け止め方に影響していることを考慮しなければならない。

 使い方を誤るとかえって悪影響を及ぼすリスクもあるのである。ゆえにフェイク警告が人に与える影響もきちんと研究しなければならない。

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Artistan/iStock

フェイクニュースや警告の有無は自分で体験した記憶を左右するか?

 アメリカ、カールトン大学などの研究グループが『Political Behavior』(2月5日付)に掲載した研究では、自分で体験した出来事に関するフェイクニュースや、それに対する警告の有無が記憶に与える影響を検証している。

 実験では、ネットで募集した434名の参加者に「映像処理における色の役割を解明することが目的」と告げた上で、ある政治テレビ番組を録画した4分間のビデオを視聴してもらった。

 そのビデオでは、3人の政治家が医療保険制度改革についてそれぞれの意見を述べている。

 視聴後、参加者には、そのビデオの内容に関する記事を読んでもらう。参加者が読んだ記事はどれも同じ構成だが、内容がわずかに異なっており、「映像に関する曖昧な内容」(対照群)、「政治家が話した特定の内容も記載」(真実グループ)、「一部の事実が変更された内容」(虚偽情報グループ)の3種類があった。

 また、それらの記事は、内容の真偽にかかわらず、フェイクであると警告されているものと、されていないものがあった(つまり参加者は6グループに分けられていた)。

 これらの記事を読んでもらったあとで、参加者にビデオの内容について質問し、内容を正しく記憶しているか、さらには間違った内容をきちんと見分けることができるかどうかを検証した。

 その結果、対象群では、映像の内容の59パーセントをきちんと覚えていた。

 しかし、虚偽情報グループでは46パーセントに低下しており、しかもフェイクの警告がなかった場合、実際にはなかった内容の33パーセント(対照群では18パーセント)までをビデオで話されていたと誤って回答していた。

 なおフェイクであるとの警告は、記憶の定着をわずかに向上させるようで、虚偽情報グループでも警告があった場合は、内容の52パーセントを覚えていた。

 一方、正しい記事は記憶の定着をうながすようで、真実グループでは、ビデオの内容の72~76パーセントをきちんと覚えていた。

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Colin Behrens from Pixabay

誤ったフェイク警告は正しい記事の信憑性を損ね、記憶を低下させる

 ただし、記事の内容が正しいにもかかわらず、それがフェイクであると警告が出されていた場合、記憶していたビデオの内容は68~70パーセントとわずかに低下した。

 情報が正しいにもかかわらず、その信憑性を貶めて内容を疑わせるような警告は、その情報に記憶する価値がないという印象を与え、記憶するのが難しくなる。

 これを「汚染された真実効果(tainted truth effect)」というが、今回の実験でもまさにそれが裏付けられた形だ。

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kudou/iStock

ニュースは自らの体験の記憶すら左右する

 この研究では、何かを体験したあとで、それについてのニュースを見ると、体験の記憶が影響を受けることを明らかにしている。

 たとえば、ある出来事についての虚偽情報を伝えられると、その偽の情報を実際にあった出来事と認識することがある上に、実際にあった出来事すら分からなくなってしまう。

 反対に、正しいニュースに触れれば、もともとの出来事をより確かに覚えていられるようになる。

 それでもニュースがフェイクであるという警告が出されると、正しい記事ですら疑わしく思え、もともとの体験の記憶を歪める結果になる。

 しかし、そうした悪影響は比較的小さいと考えることもできる。汚染された真実効果が事実を伝えるニュースを完全に侵食してしまうことはないようだ。

References:.springer / harvard/ written by hiroching / edited by parumo

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この記事へのコメント 29件

コメントを書く

  1. 正直、TV局の連中が真実の代弁者を気取って「ネットは信用ならない」なんて言ったところでソッチのほうが信用ならんからね。商売敵のネガキャンやってるようにしか見えん。
    まあ、いずれSF映画みたいな通信が発達すれば「○○は信用ならない」とネットメディアが言うだろうけれども。

    • +13
    1. むしろフェイク警告がある記事は、事実が誤っている場合の他に、対立する主張がある場合も含んでいて、どちらがより正しいかの判断を受け手に促すことで理解が深まる=記憶に残りやすいといえるかな。それは受け取る人によって対応が変わるから、この実験の結果にどう反映するかわからないけど。

      ※1
      まあマスコミの行状から「信用できない」というのは仕方ないけど、少なくとも電波に乗せるメディアや一般紙ならば一応責任者によるチェックや報道基準などは存在するからね。誤報は大きな信用低下に繋がるし。十把一絡げに嘘を垂れ流す機関と断ずるならちょっと待てと言いたい。ネットメディアだって昨今は厳しい目で見られてるから、不用意な記事を書けばすぐ炎上もある。

      • +8
    2. >>1
      そもそも、フェイクニュースという言葉がよく聞かれるようになったのは、トランプ大統領がマスコミに対してフェイクニュースだと反論したのがきっかけだしね。
      今は必死にネット発のデマの事だと喧伝してるがね。武漢発のコロナウィルスについてのフェイクニュースには一切触れないからね、彼らは。同じテレビ、新聞同士で自浄作用なさすぎ。

      • -2
  2. 誰かに都合の悪い情報はすぐフェイク扱いされそうな昨今
    情報を制する者が世界を制すという言葉があるように
    情報操作にたけた組織を作ってコントロールすれば・・・
    というか既にされていると考えたら、色々恐ろしいですねぇ

    • +8
  3. 少なくとも日本だと何が正しいのか
    歴史ある大手ニュースでも疑いの目で見ないといけない
    真偽審査とかすら省いているんじゃないかと思うことが多々あるし

    ネットが発達して個人レベルでも良くも悪くも情報が発信出来るようになった
    それがポジティブな面だけだとは思わないけど
    情報を見定める目は個人レベルでも持った方が良いな

    • +21
  4. 身も蓋もないけど、ネットで流れてくる情報が真実であれ虚構であれ
    信じる必要のあるものなんてそんなに無いと思うよ。

    • -9
  5. ニュースがフェイクかどうかを警告する機関がフェイクかどうかを警告する機関を作れば問題ないな!

    • +1
  6. ようするに、信ぴょう性を確認するにはファクト警告だけを信じずに、自分できちんと裏を取れってことね。

    仮に誤った報道をしたメディアがあったとしても、そのメディアの報道すべてがフェイクなわけではない。偏見が目を曇らせないように、事実確認ができるまではうかつに拡散させないってことも大事なのかな。

    • +29
  7. 震災の時にさぁ「放射性物質を扱っている施設で火災が発生している」っていうのが、悪質なデマ認定されて、政府がプロバイダーとかに削除を要請したりしてたんだけれど、数年後になってようやく実際に「火災が発生していた」っていう話が明るみになったんだよなぁ。

    • +7
  8. 完全な嘘だけじゃなくて、事実に思想や主観を混ぜて発信する事が問題

    • +10
  9. 真偽ももちろん重要だけど、みんな結論ありきで取材をしてるからな…
    記事の内容より、誰がどの会社が書いてるかで、だいたい内容がわかってしまうのが問題な気もする

    • +3
    1. ※14
      良くも悪くも結論への導線がないと視聴者は事件を記憶してくれないんだよね。
      マスコミの偏向報道が叩かれてるけど、分かりやすい報道と偏向報道は紙一重。
      あからさまにイデオロギーに沿って誤報道してる機関は問題だけど、
      別に日本のマスコミ全体が悪質だとは思わないな。

      • -1
  10. そもそもフェイクニュースって言葉が生まれることがダメでしょ
    国民を煽って戦争になった時代から何一つ変わってないことが怖ろしい

    • +1
  11. ぶっちゃけ報道機関ってスポンサーの為に有る様なモンだと思ってるよ
    抑々現状の混乱招いたのは報道機関自らフェイクニュースかまして信頼性貶めた結果だよね
    ソレが有ったからSNSの方へ向いちゃった層は結構いるんじゃないか?

    • +4
  12. 人の間違い勘違いを「嘘(フェイク)」と断じる人が本当に増えたよ
    「それ間違ってる」じゃなく「嘘ついたな!この嘘つきめ!」と
    嘘ってことにして相手が悪意を持っていたように見せかける、戦略的過剰反応とでもいうのか
    そういうやり口があると頭に入れておいた方がええ
    嘘や真実なんてオーバーな言葉気軽に扱うもんじゃないよ

    • +44
  13. 「一犬虚に吠ゆれば万犬実に吠ゆ」の諺は情報化社会の今こそ当てはまる例が多いのかも

    • +3
  14. それが真実かどうかは、長い時間をかけて衆目に晒せば自然と淘汰されるから、読み手として重要なのはその場での鵜呑みはしないこと、だと思う。

    幸いネットでは良くも悪くも情報は消えにくいから、断続的な検証がされやすく、仮にフェイクニュースの発生数が増えるとしても最終的に真実として残されるものは新聞やテレビ、電波で流しっぱなしだった頃よりは遥かに多くなるはず。

    • +2
  15. もうニュース記事の著者などによってある程度の信頼性を持たせないとあかんな。いい仕事してますね~のお墨付き!みたいな。

    • +1
    1. ※25
      多分記名記事ってそういうことなんですよね。
      反対に、その意見が気に入らない人たちにとっては正しくない記事の判別に使いやすいとかね。

      レッテル貼りやすいとも言えます。
      ある事象が記事になった時、他紙が報道してないとき、それはスクープかもしれないですね。その新聞社が、朝日だったら?日経だったら?東スポだったら?……もしそれらが等価だったなら、心の中のレッテル(予断ともいう)はないか、非常に薄いし、純真だといえるでしょうね。

      本記事のフェイクニュースについて、笑うために見るのか、だますために見るのか、悪意はなくともだましちゃうのか、いろいろ考えさせられる、良記事だと感じました。眉に唾を付けるという言い方もありますので、常に気を付けたいものです。最後にかのカエサルが『人間はみな自分の見たいものしか見ようとしない。』 ということも自戒したいと思っております、拝。

      • +2
  16. 自分たちの都合の良いように嘘の報道してたのがネットの発達でバレるようになっただけ
    ミスをすれば他もミスしてるんじゃないかと思われて当たり前だし何度も同じミスをするならばわざとだと思われても仕方ない

    • +4
  17. > 特にSNSでは顕著で、自分では何も調べず、本文すら読むことすらなく、短い見出しだけでリツイートやいいねを飛ばしまくる。その何気ない行為が、正しい情報伝達を妨げている危険性を秘めている。

    あるある

    • +22
  18. テレビの放送は今のウイルス騒動でも、クルーズ船のニュースから脱線して「クルーズ船のスイートで一泊○○万円~」「いやーこういうの乗る人は住む世界が違いますね」とかやってて
    何がだめって言うわけじゃないけど
    わざと意味のない火を立てるような事は良くないと思うんだ
    普段は配慮配慮ってうるさい側なのにさ

    • 評価
  19. 気軽さからネットに記事を載せている人が多い。一番、怪しいのは誤字まみれのネットニュースかなぁ。誤字を見つけたら、そこで読むの止めている。カラパイアは別として(笑)

    • 評価
    1. ※32 カラパイアは誤字や間違いを指摘するとすぐ訂正してるみたいだしな。追記で検索すると結構多いけどな(笑)

      • +2
      1. ※33
        コメント欄での指摘で本文が訂正されるとそのコメントが訂正記事しか見てない人にとって的外れになったりするのはご愛敬

        • +3
        1. ※35
          正しい指摘なのに、何言ってんだコイツ?
          みたいになっちゃってる事が良くありますね(笑)

          • +1
  20. アナウンサーの私的な感想とか要らないから、事実を淡々と報道してればいいだけの話

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  21. 嘘を嘘と見抜けない人には(情報を扱うのは)難しい。

    • 評価
  22. 検証以前に、初めから嘘と決めつけてかかる人が少なくないんだよな。「自分が知らないことは全部嘘」とでも言いたげな。そういう性根の人は、発端となった出来事から外れて単なる人格攻撃をするフシがある。むしろそっちが目的だったんじゃないかと疑うほど

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