iStock-860968818_e
Thomas-Soellner/iStock

 抗生物質の発明によって細菌との戦いに勝利したかのように思われた人類だが、圧倒的な適応力を持つ細菌たちは、薬剤への耐性を身につけ始めており、これが世界中で大きな問題となっている。

どの抗生物質も効かないスーパーバグとの戦いの行方を握る鍵は、もしかしたら細菌を殺す攻撃ではなく、防御にあるのかもしれない。

 そこで、カナダ、マックマスター大学の研究グループは撥水性のハスの葉をヒントに、どんな細菌でも弾くことができる抗菌ラップコーティングを開発した。
スポンサードリンク

あらゆる細菌を弾く抗菌ラップコーティング


 カナダ、マックマスター大学の研究グループが開発した抗菌ラップコーティングは、どんな細菌でも弾くことができる。

 よくある透明なラップに処理をほどこしたプラスチック製フィルムで、熱で収縮させればドアの取手、レール、点滴スタンドといった細菌の付着が気になる表面を簡単に抗菌コーティングすることができる。

 病院から家庭のキッチンまで、どんなところにも手軽に使えるので、MRSAやクロストリジウム・ディフィシルなどの薬剤耐性菌による汚染を未然に防ぐにはぴったりだ。

 大腸菌、サルモネラ菌、リステリアといった食中毒の原因になる細菌の汚染を防ぐために、食品のパッケージに利用するなんて使い方もあるという。

iStock-1131003688_e
Manjurul/iStock

ハスの葉の撥水性がヒント


 新型抗菌ラップのヒントになったのは、撥水性を持つハスの葉であるそうだ。ナノテクノロジーによって表面に微細なシワを作り、分子が付着しないような仕組みになっている。

 ここに水滴や血などを垂らしてみると、落ちた瞬間ぴょんとバウンドしてしまう。細菌だって同じように弾かれるので、表面に付着することができない。

 化学的な処理をほどこすことで撥水性はさらに高められており、柔軟で耐久性があり、しかも低コストで製造できる仕上がりになっているとのことだ。

giant-leaf-1556769_640_e
PIRO4D from Pixabay

防御こそ最大の攻撃?


 MRSA緑膿菌は特にやっかいな耐性菌として知られている。

 実験でこれらが新型抗菌ラップコーティングに付着するか試してみたところ、電子顕微鏡でチェックしても事実上汚染は発見されなかったという。

 「企業でもご家庭でもどんな状況にも利用できると考えています。薬剤耐性菌が世界中で大問題になっていますので、これが重要な抗菌ツールになってくれればと思います」とトーヒード・ディダール氏は述べる。

 1928年にペニシリンが発見されて以来、抗生物質は医療の発展に大きく貢献してくれたが、乱用されたために耐性菌という新しい問題を作り出してしまった。

 敵を殺すのではなく、そもそも最初から寄せ付けない――そんな発想が問題解決の糸口になるかもしれない。

 この研究は『ACS Nano』(12月13日付)に掲載された。
あわせて読みたい
薬が効かない耐性細菌。ゲノムを変化させるだけでなく、変形して抗生物質の目をくらましていたことが明らかに(英研究)


イギリスの貨幣から抗生物質の効かない細菌「スーパーバグ」が発見され全英に衝撃が走る(※細菌注意)


手術後の人体と糖分が大好き。病院で繁殖する恐怖の細菌が発見される(英研究)


アメリカの医療費問題。一部の人は魚用の抗生物質を人間に使用していることが判明


今後10年内に致死率を高めた疫病によって6ヶ月で3000万人の犠牲者が出るとビル・ゲイツが警告

この記事に関連するキーワード

キーワードから記事を探す

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
カラパイアの最新記事をお届けします
この記事をシェア :    

Facebook

コメント

1

1. 匿名処理班

  • 2020年01月04日 09:12
  • ID:h.pJGh9M0 #

暫くすると細菌とかウィルスが普通に克服してそう

2

2. 匿名処理班

  • 2020年01月04日 09:56
  • ID:ZcdbcAd40 #

医療器具など無菌状態が望まれる物には良いね

3

3. 匿名処理班

  • 2020年01月04日 09:59
  • ID:knEmrIWo0 #

こんなのが日常に普及したら抗体弱まって空気感染ウイルスでパンデミック起きそうで怖い
医療現場にとどめてほしいんだが

4

4. 匿名処理班

  • 2020年01月04日 10:32
  • ID:1HBDJdE40 #

変な切れ方して端っこが分からなくなった
サランラップの端っこを瞬時にみつけて
ロールを正常化する技術の開発もお願いします。

5

5. 匿名処理班

  • 2020年01月04日 10:59
  • ID:Ck7CZWE90 #

付着せずに落ちた細菌は足に付着することになるよね
それでも効果は大きいんだろうな

6

6. 匿名処理班

  • 2020年01月04日 11:01
  • ID:uH7d.xHD0 #

それすらも乗り越えて来るんじゃないかなぁ

7

7. 匿名処理班

  • 2020年01月04日 11:05
  • ID:TuMM.n4V0 #

良い菌もガードすることにもなるから、用途はちゃんと限らないとだね

8

8. 匿名処理班

  • 2020年01月04日 11:27
  • ID:MGLPDTmG0 #

こういう話題でる度に日本の現状に鬱になるわ。
今の日本の、医者の金儲け(と患者の過剰サービス要求)により莫大に処方されてる不適正抗生剤は、マジで人間の未来を殺す予定なんだけど、ほんとにみんな何考えてんだろ。

9

9. 匿名処理班

  • 2020年01月04日 11:41
  • ID:h9xRyMA70 #

蓮の葉も虫が食べたりするけど
まあそういうことなんだろうな

10

10. 匿名処理班

  • 2020年01月04日 13:56
  • ID:hyzPx6A60 #

粘性のある油や垢は付着するんだろうか
それが付くようなら、いくら水滴を弾いても無菌状態にはならなそう

11

11. 匿名処理班

  • 2020年01月04日 14:01
  • ID:ErGlx0jB0 #

>>4
セロハンテープ

12

12. 匿名処理班

  • 2020年01月04日 15:21
  • ID:WvQPtWBy0 #

イタチごっこ。

13

13. 匿名処理班

  • 2020年01月04日 15:57
  • ID:2FJPJaBr0 #

何かコレ、細菌の進化よりもヒューマンエラーで突破されそう

14

14. 匿名処理班

  • 2020年01月04日 17:01
  • ID:ZnP4PXJR0 #

>>8
自分さえ良ければ良いという考えが蔓延中かな

15

15. 匿名処理班

  • 2020年01月04日 17:32
  • ID:jWCA16w60 #

接触用途だと本体やコーティングの物理的な耐久性がネックだと思うよ。一日に一回張替えとかやってられない。ウレタン塗装みたいにチンパンでも気軽に(乱暴に)使えるレベルじゃないと

16

16. 匿名処理班

  • 2020年01月04日 18:28
  • ID:Dt4by4Av0 #

防御力に極振りしたいと思います、ってやつ?

17

17. 匿名処理班

  • 2020年01月04日 19:48
  • ID:.tO5kYwc0 #

※8
抗生物質を本当に大量に使っていて耐性菌を作っているのは畜産
過剰医療とはまた別の話

18

18. 匿名処理班

  • 2020年01月13日 15:58
  • ID:vteSIsk30 #

>>2
コンドームに流行りそうな予感

お名前
スポンサードリンク
記事検索
月別アーカイブ
スマートフォン版
スマートフォン版QRコード
「カラパイア」で検索!!
スポンサードリンク