この画像を大きなサイズで見るアメリカのFBI(連邦捜査局)で18年以上法医学アーティストとして働いていたリサ・ベイリーさんは、自身のインスタグラムで、その作業内容を公開している。
彼女の仕事は、身元がわからない多くの遺体から、顔を復元することだ。頭蓋骨の特徴や形から、その人の生前の顔を再現していく。
これは、従来通りのDNA鑑定や歯の治療履歴といったやり方でも身元が判明しなかった場合、最後の手段として行われるものだ。
被害者家族の最後の望み
最終手段である顔の復元をしなければならないようなケースの場合、たいていは身元不明者につながる関連情報が他になにもない。
それはまるで込み入ったパズルのようなで、パズルのピースがすべてぴったりあった場合に初めて機能する大変な作業だ。
リサ・ベイリーさんはこう語る。
この仕事をしていて、多くの人々が頭蓋骨から予測できることと、できないことについて、非現実的なまでの期待を抱いているのに気がついた。
これは大切なことだ。警察の介入につながり、身元の判明を実現させるために、一般の人々の助けが必要だからだ。
だから、わたしは顔の復元がどのようになされるのかを、公開することにした。
法医学的には、その頭蓋骨の持ち主の目が寄っていたのか、離れていたのか、すっと通った鼻筋なのか、上を向いた短い鼻だったのかはわかる。だが、髪や目の色はわからず、体重を知る術はないという。
そこでリサ・ベイリーさんのような法医学アーティストの出番となる。作業はCSIやボーンズなどのTVドラマで見られるカッコよさはなく、地味で根気のいる作業なのだ。
リサ・ベイリーさんのインスタグラムアカウント「askaforensicartist」には、顔の復元過程が良くわかる写真が投稿されている。
なお、頭蓋骨を素手で触っているものは、レプリカだそうだ。顔の復元は、まず頭蓋骨のレプリカを作ることから始まる。
レプリカを使って粘土で肉付けしていくそうで、本物の頭蓋骨を扱う場合は、必ず手袋をはめるという。
頭蓋骨で男女や年齢などをどう判断するのか?
男女を判断するのは法医学アーティストの仕事ではないという。遺骨の4大要素、年齢、性別、民族、身長などを判断するのは、法医人類学者の仕事だ。それらすべての情報がまとめられた報告書は、法医学アーティストが頭蓋骨から顔を復元する際に初めて知らされるという。
法医学アーティストは、復顔の仕事をたったひとりで行なうわけではない。頭蓋骨をじっくり調べ、一般公開される前にできあがった顔を見直すまで、必ず法医人類学者の確認が行われる。
法医人類学者が再確認し、OKがでるまで、法医学アーティストは何度も作り直さなければならない。
下顎はどのようにくっついているのか?
下顎を頭蓋にくっつけるとき、たいていは関節部分にクッションとなる滑液用の余地を残す必要がある。これを確実に行うため、少量のコットンの詰め物と熱接着剤を使用する。
後ろの歯の間にまだスペースがあるのがわかるだろうか。人は四六時中歯を食いしばったまま歩いたりしているわけではないからだ。
どうやって鼻を作るのか?
たいてい鼻はなくなってしまっていて、ただの穴になっているが、前鼻棘と呼ばれる部分からヒントを得る。
これは鼻腔にある小さな骨の突起で、鼻の肉や軟骨を支えている。これが、まっすぐ水平だと鼻筋がとおった鼻になり、上を向いていると上向きの鼻、下向きだと下を向いた鼻になる。小鼻の間の肉の下に、小刻みに動く場所があるのがわかるという。
目の位置はどうやってわかるのか
目は眼球孔の中心にあると思われがちだが、実はそうではない。生きている人を対象にしたMRIデータや遺体の解剖など、数多くの研究からそれはまったくの誤解であることがはっきりしている。
たいてい目は、眼球孔の中心から1~2ミリ上の外寄りにあり、側面から見ると、角膜の前面から眼球孔の最前部(後部)まで、およそ16ミリほど見えている。これが法医学アーティストが利用するための標準的ガイドラインとなっている。
また、法医学アーティストは、ガラス製の義眼は使わない。ほとんどの場合、骨だけの遺体を扱うので、その人の目の色を特定することはできないからだ。
たとえ、目が残っていてその色がわかるとしても、死んでから長い時間がたっている場合、生前もその目の色だったかどうか特定するのは難しい。体液や酸素の流れがなくなると、目は曇り、白濁し青みを帯びてくる。死によってブラウンの瞳が青くなることはないが、そういう風に見えることはある。
だから、法医学アーティストたちはニュートラルな色の義眼を使う。目の色がはっきりわからないのに、はっきり特定されたと見る人に思われないようにするためだ。
グリーンの目をした行方不明のきょうだいかいとこを探している人がいたとしよう。彼らは復元された顔を見ても、ブラウンの目をしていたら除外してしまうかもしれない。身元確認ができるかもしれない可能性を、わざわざつぶすことはないだろう。
瞼をどうするのか?
外側の角は、外側眼瞼靭帯によって頬骨結節と呼ばれる眼球孔内の小さな突起にくっついている。
これはすべての頭蓋骨にはっきり表れているわけではないので、それがあるのがわからなければ、前頭顎骨縫合の下およそ10ミリのところに瞼をつけるという。
3Dプリンターで頭蓋骨のレプリカを作る
以下の写真は、3Dプリンターで中途まで仕上がった頭蓋骨のレプリカである。左は頭蓋、右は下顎だ。
復顔がまだ始まったばかりのころ、アーティストたちは重油ベースの粘土を本物の頭蓋骨にのせて製作していた。当時、これはまったく新たな分野だったが、今はもうそれ以上やる理由はなくなった。
現在は、3Dデジタルスキャナーとプリンターが手ごろな値段になり、手に入れるのに懐もそれほど痛まなくなったからだ。
本物の頭蓋骨は貴重な証拠品。顔の復元はレプリカで
レプリカを使用する理由は、本物の頭蓋骨はそれ自体が証拠品だからだ。本物の頭蓋骨に粘土を乗せてしまうとと、評価基準を見失い、軌道から外れてしまう可能性がある。
レプリカで復顔したほうがいいし、本物の頭蓋骨はアーティストがいつでも参照することのできる近くの安全な場所に保管しておくほう好ましい。そうすれば、壊してしまったり、あなたのDNAがあちこちにくっついてしまうこともないからだ。
下の写真の赤いラインを見て欲しい。これはレーザーが頭蓋骨の3Dデータを読み取っているところだ。
下の写真は、読み取ったデータをすべてつなぎ合わせたコンピューター上の画像である。
どうしても頭蓋骨のレプリカを作れない場合は、画像加工ソフトを使用しPC上で再現するという。
生体から収集した組織深度データ
どれくらいの量の粘土(肉)を頭蓋骨にのせるかを測るために、顔の各エリアの筋肉、脂肪、皮膚の厚さなど組織の深度マーカーを利用する。
リサ・ベイリーさんは、他の法医学アーティストと情報を共有するため、以下のチャート図を作った。
このチャート図は生きた何万人もの生きた人間をCTスキャンして測定したデータを使っている。このやり方は最新で、測定もかなり正確だ。
1980年代からこうしたチャートは出回っていたが、今や測定データを集める技術はかなり高度になってきた。80年代には、解剖用の死体に実際にピンをさして測っていたのだという。
こうして再現された顔が犯人逮捕の情報につながる
法医人類学者、そして法医学アーティストの多大なる尽力を経て、ようやく出来上がった顔は、警察を経て、報道にリリースされる。
精巧な復元により、犠牲者の特定につながり、犯人逮捕に至ったものもある。とは言え、顔のイメージを額面通りに受け取らないで欲しい、とリサさんは語る。
情報の幅は確かに広がった。だが、目の色が完全わかっているわけではない。髪の色が、例え茶色色だったとしても、明るい茶色だったかもしれない、濃い茶色だったかもしれない。体型もわからない。唇は薄かったかもしれないし、厚かったかもしれない。頭蓋骨だけではそこまで確実なことを知る術はないのだ。
法医学アーティストに興味がある人へ
万が一、法医学アーティストに興味があるなら、そのために必要なことはふたつあるとリサさんは語る。アーティストとしてのスキルと法の執行に携わる意気込みだ。
アメリカには、フルタイムの法医学アーティストのポストは50くらいしかなく、たいていは州か連邦政府関係機関での仕事となるという。だが、掛け持ちの法医学アーティストのポストは300以上あるそうだ。
彼らは、普段は法の執行者(警官、通信指令部員、管理技術者など)の仕事をしながら、必要なときに法医学アートの任務をこなしているという。
大部分はまずは容疑者の似顔絵描きから足がかりをつける。経験や訓練を積めば、実際に復顔を行うことができるようになるかもしれない。
わたしはジョンズ・ホプキンス大学の応用物理研究所にいたとき、たまたまFBIの求人を見た。最高にかっこいい仕事のように思えたので、そのときは狂喜乱舞して、卒倒しになった。
数年で、わたしは来る日も来る日も一日中、亡くなった人の顔を復顔するようになったが、この仕事が大好きだ(リサさん)
法医学アーティトがどのように死者の顔を復元しているかについて知れば知るほど、行方不明者を識別する知識が備わり、復顔の作品やデッサンを見れば、探すべきものがわかってくる。
それは未解決事件の謎を解決し、遺体の身元を特定する助けとなるだろう。
FBI Forensic Artist Creates Facial Approximations from Skulls / WebMDI/ written by konohazuku / edited by parumo
■追記(2020/09/13):2019年08月10日に掲載した記事を再送してお届けします。














overdue manicureでふふっとなった
>>1
先に言われてしまった
専門的には「頭蓋骨」は「ずがいこつ」ではなく「とうがいこつ」っていうらしい。
※2
法律用語なんかもそうだけど、
世間で一般に広く通用している読みって
必ずしも体系立った規則性がある訳でなく
統合がとれてない慣習的なものが多いから、
正式な用語は基本的に「漢音」での統一を優先する傾向があるよね。
古い時代に仏教や貿易とともに流入した呉音や
江戸時代ぐらいに新しく追加で流入した唐音など
非公式で散発的な単語の読みに比べ、
遣隋使・遣唐使の公的留学で持ち帰った漢音は
朝廷が「正音」として普及を後押しした。
コツコツとやっていくんですね
痩せてる人と肥えてる人の頭蓋骨に違いはない
表層筋の痕跡もなく脂肪の痕跡もない
肉付きは復元しようがないのだから適当になって
現実とは全く違う顔になる
骨だけじゃ人相はわからない
※4
それじゃ何のためにこの仕事があるんだよ?
ある程度違っても身元特定の最後の手段て書いてあるだろ。
この復元で可能なこと、不可能なことを列挙してるにもかかわらずよくそんな「全く違う顔」なんて言えるな。
そろそろプロをリスペクトすることを学べよ。
※4
これらの技術は膨大なデータ量と弛まぬ努力から生み出されてるのに、適当ってなんだ?
不完全にならざるを得ないことに苦悩しているのは他ならぬ彼ら自身だろうよ
それでも数少ない情報の中から何とか少しでも手がかりを見つけて愛する人の元へ返してあげよう、遺族の不安や悲しみを解消してあげようとする技術を偉そうに全否定するなら、他にどんな方法があるか代替案を提示してみてよ?
※4
頭蓋骨に違いはなくとも、体重で骨格に差は出る。
場所によっては周囲に脂肪痕跡が残る。
まぁ、最後の手段だからね。
普通は所持品とかで身元判るから、顔復元の出番はない。
>>4
そりゃそうかもしれないけど
現時点での法医学の知識を持って、何度も誤っているだろう箇所を指摘して、公開前に根気強く何度も手直していると説明しているじゃないか!
ここまで専門家達が日々たゆまぬ努力をしていることがわかる動画と説明がついてて、なお「適当」と貴方は表現するのか。
不思議だ。
※4
この日本でも復顔法で事件をいくつも解決してるのに何言ってるんだ
>>4
そうかな?
太ってるバージョンと痩せてるバージョンの両方作ればいいだけの話。
最近は手配書だって、加齢予想された顔も併記されてるじゃん
動画のやつは特に化粧の感じで全然違ってる印象だな、体重の変化もあっただろうし
復顔されても家族じゃないとなかなかわからんやろうな
長い文の翻訳ありがとう
唇の厚みが不明で再現できないというが残念
唇は決定的に重要な情報になりうるからだ
再現が本人と大きく違う唇になったら混乱して支障をきたす可能性が高い
BONESのアンジェラがやってるヤツはSFなのでこれから復元される方はご注意ください
>>8
私もBONESを思い出した
あのドラマだと事も無げに年齢や人種を特定して再現CGにしてたけど、あれはあくまでフィクションなんだよね
>>30
一応骨から太ってるか痩せてるか年齢なども分かるけどね
人種は骨格から推測できるし
整形した形跡のある頭蓋骨はややこしいだろうなぁ
※11
整形している場合は整形外科のカルテと照合するので
大抵それだけで身元は絞れます。
復顔に回ってくる事は殆ど無いはずですよ。
サムネでエグそうと思ったが内容はしっかり技術記事してて驚いた
解剖学からのセオリーすげーな
医学を学んだ時に、面白いと感じた分野だったな。
講師は、某有名事件などの監修をする教授だったけど楽しい時間だった。
CTで撮影した自分の頭蓋骨💀を
3Dプリンターで再現して
復顔してもらったら
どのくらい自分にそっくりになるのか
やってもらいたい
言うほど正確じゃなかった思うが。漠然としてて決め手に欠ける印象。事件解決にしても補助的な役目でしかないだろ。
もの凄い時間とお金がかかりそうだね
あと10年ぐらいしたら3DスキャンからAIが自動生成してくれそう
骨から豚っ鼻が決まってるとはな
泣くしかない
>DNA鑑定や、歯の治療履歴から人物が特定できない最終手段
と有るので、とにかく未解決事件を調査する際に、どうしても生前の顔を知る必要が有る…という場合に使われるのだろうね。出来上がった顔は100%正確ではないかも知れないが、それでも傾向は判るので、何かの参考にはなるかも知れない。膨大な届けが出ている行方不明者の顔との照合や、複顔した結果を家族や知人が見て『これ〇〇じゃないか?』となるケース等も多いと思われる。
そして実際の生前の写真と見比べてみて、程好く特徴が再現されていたら(つまり身元が判明したら)この複顔作業という根気のいる作業を行った人も『事件が解明に向かう手助けが出来て良かった…』と思う事だろうと思う。(ちょっと外しちゃった…という時にも反省材料になると思う)
アメリカ人にしては歯が無い骸骨多いね。
※27
アメリカ人が歯を磨くようになったのは割と近代からで、それ以前は歯の無いも多かったよ
本人の顔の再現かぁ……超能力でも備えていない限り完全再現は無理でしょ
骨だけになったペンギンの全身骨格から肉付けして再現しろよって言われても無理なのと一緒で
そういやサイコメトラーEIJIって漫画あったなぁ
サイコメトリー能力者の人たちってどういう仕事してんだろう
※28
こういう手法の目的は、元々『100%の再現』が目的ではない。『他に方法が無いから手掛かりを得る為に復顔する』な訳だ。その人が誰なのか…が最初から判っているのなら、その人の生前の写真を持って来れば『100%正確な顔の画像』って事になる。でも、その人が誰かが判らなければ、この手法は使えない。だから『最終手段』な訳だ。(手間もお金も掛かるだろうし)
言ってみれば、仕方がなくやっている事になる。その人が誰だか判明させる方法が他にない訳だから、しょうがない。(もしこういう事をしなければ、永久にその人が誰だか判らないまま…になる可能性が高くなるという事でもある)
すごくくだらないことなのだが、以前からの疑問で、ターミネーターT-1000の金属の頭蓋骨を復顔したらどれくらいシュワちゃんに似てるのかが気になる。
※29
T-1000はロバート・パトリッくん(液体金属のやつね)
ほんっとにどうでもいいけど、リサさんの瞳はなんだか吸い込まれそうでドキドキした
試しにぼくの頭蓋骨をスキャンしてリサさんに復元してもらったら、どれくらいぼくに似てるだろか。ちょっと見てみたい。
整形手術で、ちょびっと目をいじった、鼻を弄った、だけでも全然違った印象になるのだから、こういった再現は正確でないと全然違った印象の顔ができあがるんでしょうね。
日本人なら一重か二重かでもかなり印象変わるけど、あれって頭蓋骨では分からなさそうだけど、際限の時はどういう風にするのかな。
何処の国だったか忘れたけど、壁にびっしりと髑髏が埋め込まれている名所があったよね?あれを生前の顔で復元してみて欲しい。あと、こういうのってパターンで解析するものだろうから、AI技術とか役立ちそうね