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人工的に作られたヒトの大脳で神経活動が確認される(日本研究)

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(著) (編集)

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whitehoune/iStock
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 私たち人間の体験はすべて脳で作られているが、その仕組みについてはまだまだわからないことがたくさんある。

 たくさんの優れた研究者が日夜研究に励んでいるのに、なかなか理解が進まない原因の1つは、脳を研究するのが難しいことだ。人間の生きた脳を実験台にするなんてことは許されないし、動物実験をやってもその結果が人間に当てはまるとは限らない。

 こうした脳研究の壁を突破するために作られたのが「脳オルガノイド」という、ヒト神経細胞を使った人工的な3次元大脳組織だ。この脳オルガノイドは脳と同じ発達をするために、さまざまな実験をすることができる。

 『Cell Stem Reports』に元京都大学・現米ソーク研究所の坂口秀哉氏らが掲載した研究によれば、発達だけでなく、その神経活動も脳そのままであることが明らかになったそうだ。

脳機能の基礎は同期された神経活動

 1949年、カナダの神経心理学者ドナルド・ヘッブは「セルアセンブリ仮説」を提唱。同期された神経活動がさまざまな脳機能の基礎となるものであると説明した。

 それは1992年の研究でより簡潔にこう述べられている。「神経細胞が一緒に発火するならば、互いに結合している」と。

 坂口氏が確認したのは、実験室で一から培養したオルガノイドが神経細胞同士のネットワークを形成し、本物の脳にある神経細胞とまったく同じように同期発火を行なったということだ。

分散培養による大脳オルガノイド

 この研究で目指したのは、同期発火を行う機能的神経ネットワークを作り、その評価方法を確立することだった。

 実験ではまず、大脳を構成する細胞からミニ脳(大脳オルガノイド)が作られた。ヒトES/iPS細胞の集まりを特殊な培地で培養し、本物の大脳と似たような構造を持つオルガノイドに成長させるのだ。

 次いで、機能的ネットワークを構築するために、成長した大脳オルガノイドからいくつか神経細胞を抜き取り、別個に培養。すると分散2週目までは散発的な神経活動だったのが、4週目からは同期性の神経活動が生じるようになった。

 ――ヒトの脳機能の基礎となる活動だ。

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ipopba/iStock

大脳オルガノイドに意識はない

 大脳オルガノイドがヒトの脳と同じ活動をしているのだとしたら、そこには意識があったのではないだろうか?

 映画『マトリックス』では、人は培養槽の中に閉じ込められたまま、脳だけの活動が許され、仮想現実で暮らしていた。もしや大脳オルガノイドもこれに近い状態にあったのでは?

 だが坂口氏は、大脳オルガノイドに自発的な活動が生じていたとしても、そこに意識が芽生える可能性は低いだろうと説明する。なぜなら本物の脳のように世界を感じるられる体がないために、刺激を受けることができないからだ。

 意識は「主観的な体験を必要」とするために、それを作り出す入出力システムがない限りは、芽生えることがないということらしい。

オルガノイドに体を与えたら?

 ならば大脳オルガノイドを生きた体に入れてしまったらどうだろう? これについて、坂口氏は意識が芽生える可能性を認めている。

 これまでのところ、こうしたことは思考実験でしかない。だが、その準備が進んでいないというわけでもない。

 2018年、ソーク研究は、マウスに移植したヒト脳細胞が、その宿主と物理的に融合して血液を共有し、マウスの伝送回路に対して信号を送信したと報告。そしてやはり、マウスに人の意識が宿ったわけではないことを保証した。

 今のところ、オルガノイドは小さいままだ。心配するには及ばないほど小さい。なにしろ意識が宿るにはずっと大きな神経結合が必要なのだ。

 小さなままの神経組織をただ興奮さえるだけで意識は生じない。でも、科学技術が更に発達した未来ならば?その答えは我々の次の世代が握っているのかもしれない。

References:cira.kyoto-u.ac.jp / inverse/ written by hiroching / edited by parumo

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この記事へのコメント 51件

コメントを書く

  1. 話は聞かせてもらった。
    人類は滅亡する!

    • +14
    1. ※1
      ΩΩΩ「な、なんだってー」。

      しかし今回の記事は永野護さんの「FSS」における「エトラルムファティマ」みたいなものかね。

      • +5
      1. ※18
        人工知能はエトラムルファティマのように演算と状況判断だけするべきなのに
        今のAI機器の時点でヒトっぽい反応と若い女の声搭載だもんなあ

        • +2
        1. ※24
          演算装置としてなら、それで良いのだろうけど、
          ファティマは機械と人間との仲介役の側面も有るから、一概に言えないと思う。
          一般的なエトラムルは、普通のファティマより能力が落ちるし、
          能力の高いエトラムルも有るけど、銘入りで音声機能持ちだったりするからなぁ。
          ロンドヘアラインがそう。

          • 評価
  2. ホムンクルス!生命の冒涜!
    人類の滅亡!永遠の罪!

    • 評価
  3. 人工頭脳使った完全なるサイボーグとか非有機生物も
    将来的に誕生するじゃねえの

    • +11
  4. これを大量に作って繋げよう。
    多分、圧倒的な知能と知識量であらゆる人の性格を即座に診断してくれるはず。

    • -2
  5. 肉体を与えられ意識が生まれたら、いわゆる一般的な概念の魂なんて無いってのを証明する事になりそうだな
    まあそれでも、「人の意識とは似て非なる物だ 人の魂とは違う」「作られた脳と肉体に外から魂が入り込んだんだ!」って主張はされていくだろうけど
    個人的には物質=魂で、その集合体の形成具合で意識が生まれるって事でなにか問題が?と思うんだけど

    • -6
    1. ※7
      別に魂の話なんかじゃなく倫理的な問題でしょ。(科学者の正気を保つためにも)
      実験が殺人であってはいけない

      個人的には意識の大きな受け皿になってくれるのを期待してるな~。これが未来の墓場かもしれん

      • 評価
  6. 神様に作られた設定にしておけばストレス無く生きられるのかもな

    • +5
  7. なので、答えを握る次の世代を産みましょうね

    • 評価
  8. > 4週目からは同期性の神経活動
    脳細胞の個数はどうだったんだろ?。
    ネットワークにつながる個体の数が多くなると意識が生まれるという説があった。
    ネットにつながったコンピュータ群や、重力・電磁力でつながった星の集まりが意識を持つんじゃないかというアレだ。

    • +2
  9. カレンは、おまえなどにはもったいないほど素晴らしい女だ。

    • +2
    1. >>14
      アイテムを入手しました...
      カレンデバイスBD-6Kr:
      格 97 近 98 遠 99 回避 99
      .......ストックします

      • +4
  10. 以前の記事で、脳が11次元構造を持っているってスイスの研究があったから、魂と呼ぶものがないわけでは無く3次元に無いだけかもしれない。
    別の研究の記事で、意識は脳と量子もつれの関係があり、異次元にある脳の周囲の場に存在しているなんつー与太話もあったなあ。

    • +2
  11. マッドな研究に発展して生命の根底を覆してほしい

    • +2
  12. AIとか生命科学とか発展してて、「意識を作り出せる!」みたいな主張は分かるんだけど、それはいったいどこに存在してるのかに関しては全然議論が進まないね。
    クオリアなんてなくても脳みそが処理さえしてくれてれば普通に生きていけるのに、なぜ存在してるのか。どこにあるのか。うがが・・・頭が痛い・・・。

    • 評価
    1. ※19
      意識はホログラムみたいなもんじゃないの?
      それを生み出す装置があれば浮かび上がるけど、実態があるか、存在しているかと言われれば…だし
      生み出す装置である脳をちょこっといじくったり強い変化を促す刺激を与えるだけで、意識の有り様なんてガラッと変わる訳で

      • +3
      1. ※22
        そのホログラムって浮かび上がる必要がないのに、なんでみんな持ってるんだろうね。

        • +3
        1. ※37
          必要不必要の問題じゃなくて、仕組みが出来れば勝手に浮かぶって事
          「意識が浮かぶ必要がある!」って神だか超存在だかが決めたから浮かんだとかじゃない
          それこそ「宇宙なんて存在する必要無いのになんで存在するんだろうね」と同じ
          意味も必要も無い ただの(少なくともこの宇宙の物理法則で)現象として浮かんだから浮かんでる それだけだと思う

          • +2
  13. 安川くん2号の金属脳『ぷるぷるB』を思い出した
    いつか反乱することがあるのかな?

    • 評価
  14. 女店員『アンパ〇マン!新しい顔よ!』
    新しい顔『アンパン饅!』
    古い顔の意識『馬鹿な!』(地面で声も出せずに泣く)

    • +1
    1. ※23
      アンパンマンの脳みそは、実はお腹にあって、頭にあるのは「あんこ」なんだと思う。

      だから、いくらでも取り換えが効く。

      ※24
      たぶん、AIに対して純粋な「機能」よりも、それ以外の「何か」を求めている人が多いんだと思う。

      • +4
      1. >>28
        映画だったと思うけど確か胴体にいのちの星みたいなんあったな

        • 評価
  15. 自分が老人になる頃には日本語でも人と寸分変わらない受け答えをしてくれる対話型AIが一般に普及してるだろうから、それに意識があろうがなかろうがずーっと自分の話に付き合ってくれて、一人暮らしでも別に大して孤独を感じないで生活出来るだろうなーと期待してる

    • +2
  16. 同期することで意識が芽生えるというのは感覚的にわかる。瞑想状態のときに、すべてが見渡せているような感覚は、脳波の位相が全体的にそろっているからだろうと感じている。
    しかし神経細胞の数を増やしただけでは基底状態の意識しか作れないのではと思う。もうひとつ何かが訪れないと、メタレベルの思考ができる状態にはならないと思う。その何かを魂と呼ぶのかもしれない。

    • +2
  17. 補助的な外部脳を装備する日も近いな。

    • +4
  18. 多重宇宙とか、それがそうなんかという気がする

    • 評価
  19. こうゆうので人工人間ができると、普通の人間のほうも改造が当たり前になっていきそうだな。

    • +3
  20. よくわからないけど
    人の意識が発生する要因って既に解明されてるの?

    • +1
  21. 巨大な神経節になぜ意識が生じるのだろう

    • +3
  22. どの辺の生き物から「意識」ってあるんだろうね。 

    • +4
  23. 読んでる間ずっと頭の中でフリージアのサビがリピートしてた

    • 評価
  24. 完全に素人意見だけど、意識はこれで発生すると思う派だわ
    体性感覚なくてもまた違う”意識モドキ”ができるんじゃないか
    まあ何百万何千万年かけて体や環境とセットで進化してきたんだから今さら脳だけで何かになるとか言うわけじゃないけど
    もうあと少し仕組みが分かればコンピュータ上でも生まれるんじゃないかとすら
    要するに単なる神経構造による複雑系じゃないかと思う

    • +2
  25. 意識は体を動かして0.1秒に生まれてるというのが脳波で確認されていたけど
    神経網の発達で実際に行動したり情報を得てからその状況を追認したものが意識なんだろうな
    とりあえず、これでAIの制作に一歩近づいた

    • 評価
  26. 最初から意識が無いと決めつけないでほしい、体を動かすと同等の信号が発生したらどうなる、人間の脳にも外部から電磁波で反応するのに機械に囲まれた施設で脳に影響が出ないと言い切れるのか

    • +1
  27. 神経が興奮しただけではやはり意識とは言えないと思うね
    外部からの刺激を蓄積し処理して初めて意識
    それ未満のものはただの反応に近い

    生まれたての赤ん坊なんかも腹の中で受けた弱い刺激の蓄積しかないから
    明確な意識を持てず、ほぼ反応だけで生きてるように見える

    だから仮に成人と全く同じ脳のクローンを作れたとしても
    そこに刺激の蓄積とそれを処理する能力がなければ
    シャーレの上で作られた「脳オルガノイド」と同じように
    反応し合うだけの神経網にしかならないんじゃないかと思う

    • -2
  28. 実は全ての原子または素粒子もしくはエネルギーに意識があるのかもね。
    それが集まって1個の群となり同じような意識を持つ(つまりエネルギー・信号が同期する)ことで群としての意識に統合される。
    その群の大きさや意識の同期の強さが大きくなるほど意識(レベル)が強く大きくなって外部から意識があると認識できる状態になる。
    当然、外部の情報を認識できる群のほうが意識が強い。石よりも生物の方が意識レベルが強い。
    そして意識があることを表現できるかどうかで外部から意識があると強く認識できるようになる。植物より動物の方が意識があるとわかりやすい。

    • -2
  29. 未来では大脳新皮質シートが売られていて、脳に増設することで能力アップできるんだろう。

    • 評価
    1. ※47
      それ面白いかも。

      「冷えピタシート」と同じ要領で、額に貼るといろんな能力が覚醒するとかねw。

      • +1
  30. たぶん、意識の有無は脳の多層構造で決まると思う。

    単純に言うと、人間の脳は中心部分に脳幹があって、それを大脳辺縁系が取り巻いていて、その外側を大脳が覆っている構造になっている。

    そして、魚類では、脳幹の周辺に原始的な大脳辺縁系があるくらい。

    で、「意識」は、その多層構造から生まれてくると。

    つまり、層が事実上一層しかない魚類は、本能に基づく単純な意識な意識しかないけど、階層が増すごとに複雑化していくと。

    また、赤ちゃんの意識は脳がまだ未発達なため、「無意識」的な状態だけどそこから脳の発達に伴って、立体的で複雑な意識が立ち上ってくるとかね。

    しかし、これだと昆虫やイカやタコの意識の説明がつかないんだよね。

    彼らは、脊椎動物とは違う脳神経の構造を持つから、脊椎動物前提の意識の考え方では、とらえられないし。

    なんにしても、これから先多層構造を持つ、集積回路とかができてきたら、「意識」を持つAIが生まれるかもしれないとは思うけど。

    • 評価
  31. そもそも意識ってのが俺ら人間の定義でしかないからねぇ
    観測できない=存在しないってのは危険な考え方だ

    • +1
    1. ※50
      科学というか論理の領域ではそれでいいけど(というかそうしないと論理的でない方向に脱線していく)
      倫理やリスクの領域とかではまた別に考えていくべきな気がするね

      • 評価
  32. 人工的に作られた人間のようなもの、、
    バイオロイドとかホムンクルス的なものが現実になりつつあるということか、、
    人類滅亡の結末も決して遠い未来の話ではなくなってきてるかも…怖い

    • 評価
  33. これが後のバイオロイドになるわけか、、未来からこの基礎技術を潰そうとエージェントが派遣されてくるかもしれないな←

    • 評価

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