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 世界には変わった法律が結構ある。

 その多くは数世紀も前に可決されて、そのまま現在まで残っているものだ。

 たいていは適用されないが、それでもきちんと条文として存在するために、たくさんの人が知らず知らずのうちに、しかもヘンな理由で犯罪を犯してしまっている、なんてこともある。

 現代の感覚では馬鹿げたものに思えても、可決された当時はきちんとした理由があった。ここでは、そんな世界の不思議な法律に触れてみよう。一部は既に廃案、修正されているものもある。
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10. 公共の場でシルクハットをかぶることを禁止(イギリス)


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 1797年1月16日、ジョン・ヘザリントンという男がイギリスではじめてシルクハットをかぶった。

 誰もが初めて見るその帽子は、一般の目にはかなり奇抜で不気味なファッションだった。当時の記録によると、シルクハットをかぶった彼の姿に人々は怯え、子供は叫び、犬が吠え、女性は気を失ったという。

 そして、ヘザリントンの周囲にできた人だかりに押された人物が、倒れて腕を骨折するという事故が発生。ヘザリントンは社会紊乱の罪で逮捕され、50ポンド(500ポンドという記録も)の罰金が科された。

 この事故を受けて、政府は、二度と同じような悲劇が繰り返されぬよう、公共の場でのシルクハット着用を禁じたのである。


9. 歩道からヘラジカの酒場入店を禁止
(アメリカ・アラスカ州フェアバンクス)


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 米アラスカ州フェアバンクスには、ヘラジカは歩道から酒場に入店してはいけないという法律がある。

 これは20世紀初頭に可決された法律だ。当時、ペットとして飼育されていたヘラジカにお酒を飲ませるくせのある酒場の店主がおり、酔ったヘラジカが暴れて、いろいろ被害が出ていたのである。

 やがて議会はヘラジカが歩道から酒場に入店することを禁じる法律を可決。実質的に、ヘラジカは酒場に入れなくなった。

 この店主はヘラジカを店には連れてこなくなったが、自宅では相変わらずお酒を飲ませていたようだ。なお、単純にヘラジカにお酒を飲ませることを禁じなかった理由は不明だ。


8. 武器や鎧を着用で議会に入ることを禁止(イギリス)


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 1313年10月30日、イングランド王エドワード2世が鎧着用禁止法(Statutum de Defensione Portandi Arma)を採択。議員が議会に入る際に、武器の携帯や鎧の着用が禁止された。

 これは王と議会との会合がいくどか妨害されたことを発端としている。事件後、エドワード2世は、国民はスコットランドとの戦争か、彼が同性愛者であるという噂に不満を持っているのではと推測した。

 今日、議会に設えられたクロークのコートハンガーは、剣置き場に改装されている。だが、はたして現職議員の何人が帯剣しているものか疑問ではある。

 また鎧以外にも防弾チョッキにも適用されると解釈されている。
 

 なお議員でない者については、法は適用されず、武器を所持していたり、防弾チョッキを着用したままでも、議会に入ることができる。


7. 町内で死ぬことを禁止
(イタリア、フランス、スペイン、ノルウェー)


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 一時的であれ、恒久的であれ、町の中で死ぬことを禁じた法律はいろいろな国や都市にある。

 たとえば、2012年、イタリアのファルチャーノ・デル・マッシコでは、墓地がいっぱいになってしまったことを理由に、新しい墓地が完成するまでの間、住人が町内で死ぬことが禁じられた(なお、法律の施行中、少なくとも2名は死んだようだ)。

 フランスのボルドーやスペインのランハロンでも似たようなことがあった。墓地がいっぱいになり、町内で死ぬことが禁止されたのだ。

 ノルウェー、ロングイェールビンでも1950年以降、住人が死ぬことを違法としているが、こちらは世界最北端の町ならではの理由がある。

 遺体を墓に埋葬しても、腐らずに凍ってしまうのだ。そのために危険な病原菌がそのまま残り、住人に感染するおそれがあるのである。

 この町では、死期が近づいた老人や病人は、島の外に搬送されるのが一般的な慣行となっている。


6. 銀行での携帯電話の利用禁止
(アルゼンチン、ブラジル、フィリピン)


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 これは銀行強盗防止のための対策である。

 銀行強盗は、銀行にお金をおろしにきた客に目をつける。店内で狙いやすそうなカモを見つけると、外で待機している仲間に携帯電話で連絡し、ターゲットを指定して襲わせるという手口だ。

 リオデジャネイロでは、銀行内での携帯電話使用を禁止してから2年で銀行強盗発生率が23パーセント低下。アルゼンチンでも20パーセント低下したという。

 フィリピンではさらに厳格で、携帯電話だけでなく、ノートPCや通信デバイス一般の使用が禁止されている。

 もちろん銀行員の場合は許可されているが、それは顧客がいないときに限られる。また医師や救急隊員も例外で、銀行内に体調を崩してしまった人がいれば、携帯電話を利用してもいい。


5. 街中で携帯電話などの機器の使用禁止
(アメリカ・ウェストバージニア州グリーンバンク)


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この小さな町では、携帯電話もWi-Fiも電子レンジも使うことが許されない。というのも、グリーンバンクには、アメリカ国立電波天文台が運用する世界最大の電波望遠鏡があるからだ。

 この電波望遠鏡は、宇宙の最果てから届く電波をキャッチしている。そうした電波は、往往にして微弱なもので、近くにちょっとした電波の発生源があるだけで影響されてしまう。

 携帯電話など、電波を発生させる機器の使用が禁止されたのはそういうわけだ。

 電波規制では、天文台から半径16キロの範囲内における電波を発生させる機器の使用を一切禁止している。またさらに33700平方キロの範囲も規制対象とされており、それはお隣のペンシルベニア州やバージニア州にまで及んでいる。


4. 女性による車の運転禁止(サウジアラビア)※昨年解禁


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 サウジアラビアで女性の車の運転が認められるようになったのは、2018年になってようやくのことだ。

・サウジアラビアで女性の運転がついに解禁!2018年6月までにウーメンドライブGO!

 念のために言っておくと、この国が明示的に女性の運転を禁じたことは一度もない。が、運転を許可しなかった。免許を取得させなかったのだ。無免で運転すれば、当然捕まるのである。
 
 これはワッハーブ派のイスラム法によるものだ。ワッハーブ派では、女性はアバヤを着用するものとし、男性とも分けられねばならないと教えている。女性には男性の後見人までついている。

 念のために言っておくと、この国が明示的に女性の運転を禁じたことは一度もない。が、運転を許可しなかった。免許を取得させなかったのだ。無免で運転すれば、当然捕まるのである。
 
 これはワッハーブ派のイスラム法によるものだ。ワッハーブ派では、女性はアバヤを着用するものとし、男性とも分けられねばならないと教えている。女性には男性の後見人までついている。


3. 白鳥を食べることを禁止(イギリス)※すでに廃止


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イギリスでは、コブハクチョウ(一般的な白鳥)の捕獲・殺害が禁じられている。

 これは1981年の野生動物および田園地域法(Wildlife and Countryside Act)を受けてのものなのだが、それ以前にあった法律では白鳥を食べることを禁じていた

 自然保全が目的である1981年法とは違い、旧法は貴族が食べる白鳥を確保するためのものだ。

 白鳥食は12世紀ごろからヨーロッパの貴族の間で広まり、すぐにイングランドにも伝搬。支配者階級の者たちは、珍味として、また富の象徴として白鳥をもてはやした。

 1482年、英王室はこれが平民に食べられてしまうことを懸念し、白鳥を飼育する権利を貴族のみに限る法律を可決。白鳥の狩猟・販売・屠殺ならびに卵の窃盗を厳しく禁じる一方、地主などの富裕層にのみ白鳥の飼育が許可されたのである。

 白鳥食は20世紀に入ってから廃れ、旧法は1998年に廃止された。


2. 給食で自由にケチャップをよそうことを禁止(フランス)


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 2011年、フランスでは、学生がソース(ケチャップやマヨネーズなど)を自由によそうことを禁じ、料理にあわせて提供されねばならないと決定された。

 つまり、どんなにケチャップ好きな生徒であっても、ポテトフライにしか使ってはいけないといった具合になったのだ。

 このソース規制の目的は、食事全般の質を向上させることだという。

 だが、メディアでは学校でのケチャップ禁止法令として報道された。その真意については、学生の健康を守るためや、フランス料理をもっと広めることが目的など、諸説ある。



1. 深夜のオンラインゲームのプレイを禁止(韓国)※のちに修正


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2011年、韓国では若者のゲーム中毒を抑制するためにシャットダウン法(通称、シンデレラ法)が可決。16歳未満の子供は、午前0時から6時までの間、オンラインゲームのプレイが禁止された。

 これを実施するために、この時間帯にオンラインゲームをプレイするためには、社会保障番号を入力しなければならなくなった。

 しかしオフラインのゲームについてはこの限りではなく、ネットに繋がってさえいなければいくらでもプレイできるために、本当に意味がある規制なのかという疑問はある。

 なお、後に改正され、16歳未満であっても、両親の許可さえあれば、深夜でもオンラインゲームをプレイできるようになった。

image:istock/pixaboy/ written by hiroching / edited by parumo

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コメント

1

1. 匿名処理班

  • 2019年04月02日 20:42
  • ID:Xl0bGsTH0 #

法を破って死んでしまった人は罰せられるんだろうか…二重に悲しい。

2

2. 匿名処理班

  • 2019年04月02日 20:50
  • ID:yTKsNWie0 #

どんなに庶民が飢えようとも王侯貴族にしか食べることが許されなかった白鳥に姿を変えられてしまうという皮肉も白鳥の湖の背景にあるんだよね。

3

3. 匿名処理班

  • 2019年04月02日 21:00
  • ID:FI.kuVDr0 #

Wow!シグナルの正体は電子レンジを途中で空けたことらしいぞ。

4

4.

  • 2019年04月02日 21:05
  • ID:z9oyiLwu0 #
5

5. 匿名処理班

  • 2019年04月02日 21:06
  • ID:PBIpY.C50 #

綱吉に糞をかけたカラスは生類憐みの令のお陰で死罪を免れ新島への遠島に減刑された。二人の役人に連れ添われ島に上陸したカラスはカゴから出されるとすぐに江戸の方へ飛び去った。

6

6. 匿名処理班

  • 2019年04月02日 21:08
  • ID:GGW.8mfK0 #

変な帽子かぶっただけで大騒ぎとかコントみたいだな

7

7. 匿名処理班

  • 2019年04月02日 21:14
  • ID:Qc5FSvkx0 #

イギリスだとヒゲ生やすと死刑とか夜明かりをつけないで
歩いても同じく死刑だった(中世)
理由は髭の場合軍人以外は生やすといかんらしく
明りの場合強盗だと思われたようだ

8

8. 匿名処理班

  • 2019年04月02日 21:34
  • ID:Huv3EkVQ0 #

大事な事なので二回言いました。

9

9. 匿名処理班

  • 2019年04月02日 21:59
  • ID:00rotwrq0 #

みみみ皆さん落ち着いてください、一旦死ぬの辞めましょう

10

10. 匿名処理班

  • 2019年04月02日 22:00
  • ID:1qxnnn.10 #

「剣置き場がクロークのコートハンガーに」、置き換えられたのではないのかしら?

11

11. 匿名処理班

  • 2019年04月02日 22:05
  • ID:9DwJpKcc0 #

そういえば、フランスには「豚にナポレオンと名付けてはいけない」って法律もあったよな。
あれってどう意味があったんだろう。

12

12. 匿名処理班

  • 2019年04月02日 22:29
  • ID:caK3HTjq0 #

町内で死ぬことを禁止wwwwwww

13

13. 匿名処理班

  • 2019年04月02日 22:34
  • ID:3UCfdknz0 #

>なお議員でない者については、法は適用されず、武器を所持していたり、防弾チョッキを着用したままでも、議会に入ることができる。

そこは禁止しないんかいw

14

14. 匿名処理班

  • 2019年04月02日 22:48
  • ID:Y1Inezcj0 #

未成年の深夜オンゲ禁止法は改正しなくて良かったのでは。むしろ良法。

15

15. 匿名処理班

  • 2019年04月03日 01:15
  • ID:nHuUb11.0 #

※9
えっそんな!私今死んだところなのにそんな事言われても困っちゃうわ

16

16. 匿名処理班

  • 2019年04月03日 01:35
  • ID:F.iFXyBh0 #

白鳥はすごく脂身があって旨いと聞いた

17

17. 匿名処理班

  • 2019年04月03日 04:52
  • ID:ICuSKcbb0 #

実際にあった世界の奇妙な風習

日本の女性専用電車

男性蔑視だよね

18

18. 匿名処理班

  • 2019年04月03日 13:07
  • ID:neC83q9k0 #

4 大事なことだから2回書いてみた?

19

19. 匿名処理班

  • 2019年04月03日 13:25
  • ID:1DV2gZfu0 #

昔のイギリスの一部地方には「自殺した者は死刑に処す」って法律があった、という噂を聞いたことがあるが。

20

20. みあきち

  • 2019年04月03日 19:13
  • ID:6Vg9X0zO0 #

シルクハットのは昔に本で読んだのを、再度調べようと検索しても出なかったので、
今回取り上げられてありがたい

21

21. 匿名処理班

  • 2019年04月03日 20:20
  • ID:uNXng.db0 #

※15
成仏して

22

22. 匿名処理班

  • 2019年04月03日 20:26
  • ID:DcaKhSmj0 #

※5
完全にコントw

※13
護衛についての言及じゃないかな
乱入者がいるなら警備員も武装する必要があるから

23

23. 匿名処理班

  • 2019年04月03日 20:46
  • ID:.ZN7o21N0 #

※17
やってることは女に対する隔離政策なんだが
本当に羨ましいか?

24

24. 匿名処理班

  • 2019年04月03日 21:05
  • ID:lpO3xWOy0 #

>>10
もともと議会には議員のためのクロークがあり、議員の帯剣を禁じる法律ができたときに、クロークのコートハンガーを剣置き場にした(正確には、コートハンガーに剣を吊るすためのリボンが設置された)のです。
この法律は現在も撤廃されていないので、剣置き場もまだあります。

25

25. 匿名処理班

  • 2019年04月03日 21:24
  • ID:lpO3xWOy0 #

イギリスには変な法律が多いけど、私の知る限り断トツに変なのは「妊婦はどんな場所に用を足してもよい。それがたとえ警官のヘルメットの中でも違法とならない」ってやつ。

26

26. 匿名処理班

  • 2019年04月04日 00:24
  • ID:ZO5EmYJr0 #

※25
多分それ、実際にやった妊婦がいて
裁判にかけられた結果、無罪になったんだろうな…。

イギリスって慣習法だから、
判例の積み重ねが成文法と同等に「法律」としての効力を持つ。

27

27. 匿名処理班

  • 2019年04月04日 00:27
  • ID:ZO5EmYJr0 #

※19
「意味ないじゃん」と思うかも知れないけど、多分それ
死刑囚扱いになれば、教会の墓地に埋葬してもらえないとか
財産の没収とか、何かペナルティーがあったのでは?

28

28. 匿名処理班

  • 2019年04月04日 08:47
  • ID:JwGSeHPr0 #

魔女に対する法律がいまだに欧米にはありそう
日本も自殺は罪になるよね

29

29. 匿名処理班

  • 2019年04月04日 12:44
  • ID:TCAtVhtS0 #

>>23
痴漢の冤罪に巻き込まれた経験のある人なら喜んで乗ると思うよ。男性専用車両
むしろ通勤の時なら隔離してくれた方が有り難いぐらいなんじゃない?

30

30. 匿名処理班

  • 2019年04月10日 01:53
  • ID:cCgvzL400 #

※6
魔女狩りとかのパニック騒ぎが起きてた時代って考えると、
盛った話とも言い切れないのが怖いところ。

31

31. 匿名処理班

  • 2019年04月10日 12:38
  • ID:ICjCsHmb0 #

※17
性犯罪防止目的なんだから差別じゃないし何が問題なんだ?
明治時代はすでに議論されてたらしいし
銭湯やトイレを男女別にするのと同じようなもん
男も必要だと思う人が増えたら男性専用も出来るだろうけど
必要だと思う人が少ないから出来ないだけ

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