メインコンテンツにスキップ

猫として初めて宇宙に飛び立った「フェリセット」の知られざる歴史

記事の本文にスキップ

38件のコメントを見る

(著) (編集)

公開:

この画像を大きなサイズで見る
Advertisement

 1963年10月18日、フランス国立宇宙研究センターでは、フェリックス(Felix)という小さな猫を宇宙へ飛び立たせる手はずを整えていた。だが打ち上げ当日、気まぐれな猫、フェリックスはその姿をくらましてしまったのだ。

 そして偶然にも別のヒロインが宇宙へ打ち上げられることになる。その子の名はフェリセット(Felicette)といった。

猫として初めて宇宙に行き、無事戻ってきたフェリセット

 「アストロキャット」の愛称で呼ばれた白黒の猫は、パリの通りでの暮らしから、それまでどんな猫も到達したことがない高さへと辿り着いた。

 1963年10月24日、フェリセットはフランス製液体燃料ロケット「ヴェロニクAG1」でアルジェリア、サハラ砂漠の高度209キロの上空に打ち上げられた。それから15分後に帰還し、母国の英雄として勲章を授与された。

この画像を大きなサイズで見る

 彼女の着陸後、航空医療研究教育センター(Education Center of Aviation and Medical Research/CERMA)で働くフランスの科学者たちは、その旅の前後で変化があるかどうかフェリセットの脳波を調べた。

 その結果やフェリセットの最終的な運命について多くは知られていないが、CERMAは彼女が「研究に価値ある貢献」を果たしたと発表している。

-FRANCE LUNCHING THE FIRST CAT IN SPACE-FELICETTE-The First CAT IN SPACE

歴史から忘れ去られていった猫の偉業

 残念ながら、フェリセットの物語は時間の砂の中に埋もれてしまった。欧米世間は犬社会で、何より犬の業績を重視する。ゆえにその犠牲者とも言えるのかもしれない。また、宇宙開発競争でさしたる記録を残せなかったフランスの地位もまた、その理由を説明するだろう。

 宇宙開発の歴史に詳しいロバート・パールマン氏は、それを「歴史展開の問題」と話す。人類を宇宙に打ち上げる試み。究極的に月へと送り込む試みは、アメリカとソ連との競争だった。

 アメリカとソ連が火花を散らした宇宙開発競争において、人類が月へといたるその道の地均しをしたのは勇敢な犬や猿などの動物である。

 科学者たちは動物を実験台に、生き物に対する無重力の影響を調べた。動物が宇宙の過酷な環境でも生存できるのならば、恐らく人間も大丈夫だろう。少なくとも、そう想定されていた。

 「犬のライカは、人類として初めて宇宙へ行ったユーリイ・ガガーリンや人類初の宇宙遊泳を行なったアレクセイ・レオーノフへと直接続いています。猿のエーブルとベーカーなら、ジョン・グレンやアラン・シェパードのようなアメリカ人として初めて宇宙飛行を行なった英雄たちへと続いています」

 フランスにも素晴らしい宇宙計画が存在したが、結局のところ自国製のロケットで人を宇宙に送り込むことを追求しなかった。

この画像を大きなサイズで見る
左が直前でいなくなったフェリックス。右が実際に宇宙飛行を行ったフェリセット

 「フランスは欧州宇宙機関のパートナーであり、直接NASAやISSと関連があります。ですがフランス人宇宙飛行士の打ち上げは通常ロシアやアメリカのロケットで行われてきました。つまりフェリセットはより大きな歴史へいたる道につながりませんでした」

再び猫が宇宙に打ち上げられるとき

 ネズミのような動物は今でも宇宙に送られているが、現在では宇宙飛行の家畜動物への影響を確かめる実験から大きな転換を見せている。次に宇宙で猫を見るときは、人間が宇宙で暮らすようになったときである可能性は高い。

 「少なくとも短期的には、猫や犬が再び打ち上げられるかどうか分かりませんね。動物実験の段階から宇宙における人体の反応を調べる段階に移ったからです。人間を宇宙へ送り、そこで1年以上滞在させるのです。その意味で、動物の役割は終わっています」

 「旅行やどこかへ行くために宇宙へ飛び立つ家族を私たちが見送りに行くような、そんな時代が来たとき、そのとき私たちはペットをどうやって連れて行くか考えるようになるかもしれませんね」

この画像を大きなサイズで見る

 自身が「どちらかと言えば猫好き」と話すパールマン氏は猫や犬を飼っていない。それでも宇宙猫、フェリセットは彼自身の歴史の1ページに特別な存在として刻まれているそうだ。

 彼女の物語を語り続けることで、大抵の人よりも高く飛び立った勇敢な野良猫に敬意を表すことができる。そしていつの日か、どこかの惑星で人間が猫と共に暮らす未来があるのかもしれない。

via:The Secret History of the First Cat in Space/ written hiroching / edited by parumo

📌 広告の下にスタッフ厳選「あわせて読みたい」を掲載中

この記事へのコメント 38件

コメントを書く

  1. フェリックス捕まえて目の前に連れていって「こいつが逃げたからお前打ち上げたよ」って伝えたら超ブチ切れて襲いかかったと思う

    • +11
    1. ※1
      どうなんだろう
      ロシアでは宇宙用に捕まえた野良犬のうち特性に難ありなのは候補から外していって、最終候補陣の犬達は皆テストを受けていたのだけど、急に代役が務まるものなのだろうか?
      (ちなみにライカ以前も以後も多くの犬達のテスト飛行をロシアでは行っていたが、不幸な事故や不具合を除けば多くは生還しており、1匹で何回も宇宙へ行った犬や訓練期間中に母犬になったもの等がいる。犬には皆愛称をつけていた)フェリセットが無事でなにより

      • +5
  2. 人間の都合で フェリセットは頭や内臓がでんぐりかえるような わけのわからん辛い目にあったんだろうな 余生が幸せであったと願う

    • +30
  3. 今もカプセルの中で在りし日の姿のまま、遥か遠くの宇宙を漂う猫や犬がいるんだろうか?

    • +9
    1. 米4
      宇宙飛行士の遺体が云々のやつもそうだけど生き物生きたまま乗せられるほどの荷物を地球から離脱させるほどのロケットはまだなかったと思う。

      • 評価
      1. ※17
        ネコのフェリセットの宇宙飛行は1963年で、ガガーリンの有人飛行が1961年だよ
        動物ではサルが1949年にアメリカで(帰還時にパラシュートの故障で死亡)
        弾道飛行ではソ連の犬が1951年(生還)
        周回軌道では1957年のライカが初だけど、当時は周回軌道から安全に帰還させる技術がまだなかった(周回軌道は1960年にソ連の犬が成功、生還)
        wikiから色々

        • +3
  4. 勇敢っていうけど人間が一方的に打ち上げただけでは?

    • +59
  5. 「研究に価値ある貢献」を果たした
    とは、解剖されました のエスプリある表現な訳ね?

    • +28
    1. ※6
      自分もそれを恐れてる

      単に検査してデータをとっただけで
      ちゃんと寿命が来るまで生きていたなら嬉しいんだけど……

      • +4
    2. ※6
      確か、数ヶ月後に安楽死させて解剖。脳波標本にされたと読んだような・・・

      • +7
  6. 実験終了時には電極の除去をしたんだろうか。ちゃんと老後の世話をしたのだろうか。
    それを公表していないのが何か引っ掛かる。

    • +14
  7. 火星有人探査、実行するとすれば船もそこそこのサイズになると思うしスペースには余裕あるだろうし
    船員の癒しの為に犬や猫に旅の道連れになってもらうのは、実際有用だと思う

    • -1
  8. ブレーメン2という漫画があってだな。その中で四足歩行の宇宙飛行士達について語る場面がある。それを思い出した。

    • +2
  9. 人間でも筋力維持の為のトレーニングが必要だし、猫はトレーニング難しいから宇宙から帰って来たらガタガタになりそうだ…

    • +2
  10. 別の記事で脳の検査のため数ヶ月後安楽死させられたってかいてあるね
    犬の件もしかり、科学の発展の為とはいえ無理やり捕まえて打ち上げて殺しといて英雄だなんて耳障りの良い言葉で美談に仕立て上げるのは汚いな

    • +48
  11. 猫みたいな動物にしたら宇宙行きなんて拷問に等しいと思うのだが…でも無事に戻ってきたようで何より

    • +4
  12. フェリックスが直前でいなくなったことの方が気になる。
    宇宙行かされるって気づいたのか・・・
    猫って宇宙行かされることに気づくもんなの?

    • +4
  13. 私はフェリセットのことを知らなかった⤵
    人間は欲が深すぎる…

    • +10
  14. 勝手なイメージだが猫に宇宙は似合わない

    • 評価
  15. その後どうなったのかわからないところがもやもやする

    • +7
  16. 古川日出男の『ベルカ、吠えないのか』でソ連とアメリカの宇宙開発は書かれてたけど、フランスの猫は知らなかったな。
    何か打ち上げた動物のイメージと国民性が似てる気がする(勿論段階的に色々打ち上げたんだろうけど)

    • +1
  17. この記事観て思ったが、意外な事だがソ連で宇宙へ向かった実験犬達の多くは生還できれば平穏な余生を送っている。クドリャフカの悲劇が宇宙開発者のトラウマになった
    ためでもあるが、諸外国の実験動物の処遇よりも遥かにマシな待遇を用意したのがあの冷血国家と思うと不思議な気分にさせられる。

    • +12
    1. ※22
      ソ連はな、いろいろ問題もあったがよい所もあるんだ
      医療は全員無料だったし、仕事や家屋はとにかく全員にいきわたるようにしてたし
      国の支配者は人民であるから、と宮殿のような駅を作ったりした
      チェルノブイリの事故対応では今の日本よりソ連のほうがマシなぐらいだ

      共産主義の理念は全員が平等に豊かになりましょうってことだから
      庶民にはやさしい運営が理想なんだ
      なぜか独裁ばっかりで粛清が多かったが……
      一方的にソ連を悪とするのは西側社会の都合にすぎない
      ベーシックインカムなんか共産主義と大して発想は変わんないよね

      • +6
  18. 自分のミスを棚に上げといて勝手に命の保障はしないと所まで打ち上げて
    生きて帰ってきたら英雄とかいうなら自分で行けばいいやろ。

    • +8
  19. 実験動物の最後は例外なく殺処分だろ
    それが今も続く現実

    • +11
    1. ※25
      これな…。スポット当たる動物だけが哀れまれるが、自分達がよく使う化粧品やシャンプーなんかの薬剤、新しいサプリメントの開発なんか全て動物実験されてる訳だし
      自分達の生活は数々の動物が惨い動物実験を経たものに囲まれてると忘れちゃならんと思う

      • +20
  20. いつだってそうだ・・・・・・言葉だけは立派だ。>彼女が「研究に価値ある貢献」を果たした

    • +11
  21. 額に電極が埋め込まれている。
    逃げたネコチャンもどこかで電極部が腐ってそれで死んでしまったのではないだろうか。
    泣けるよ。

    • +6
  22. 猫様が嫌がるなら宇宙に行くのはやめよう、そう考える未来人がたくさんいる世の中になって欲しいのです

    • +1
    1. ※33
      ディストピアになったらデイスポーザフルヒューマンに、
      その役割が代わるだけになるかもね

      • +2
  23. ”多”を守るためには”少しの犠牲”が必要。”多”のために”犠牲”を作るなど非道。しかしそうしなければ”多”が滅ぶ。
    一番美しいのは『自然であること』。
    つまり、滅びに抗うことなく、手を出すことなく、絶滅する種を見守る事。人類自身も、科学・医療・文明発展がないために死にゆく家族・死にゆく恋人をただ見守る事。
    しかし一番選択すべきなのはどれだ、どうしていくのが最善なんだ、という話になるとそこに答えはない。
    賛否両論、さまざまなバランス感覚の中で、非難を浴びながらでもやり遂げていく人たちがいる。
    だから目の前に見えたことを印象だけで批難するような人間になってはいけないと私は主張する。
    そうするといつも「人の心を持っていないんだね」と非難されるよw
    でもそれでいい。人それぞれの視点や意見がある事は、とても大切な事だ。

    • +5
  24. 余生が幸せ?すぐ解剖のため安楽死させられたぞ

    • +4
  25. ”悲劇”を忘れてはならない。
    動物実験絶対反対!

    • +1
  26. 脳波を調べる実験も拷問みたいなもの。
    電極を埋め込んだ実験の果てに、バラバラのパーツ状態に切り刻まれて冷凍された猫の画像を見たことがあるが、似たような末路を隠してると思われる。

    • +2
  27. 勇敢な野良猫ってさぁ…。今それ言うかなー。

    • -1
  28. 「無事に戻ってきて何より」ってコメントしてる人何も知らなくて幸せだね
    人間でもとんでもない苦行なのに、小さな動物達が無事なわけなかろうに
    宇宙に無理矢理打ち上げられてそのまま戻ってこない(宇宙で苦しんで亡くなった)動物もいるし生きて戻っても地獄が待ってる

    • +1

コメントを書く

0/400文字

書き込む前にコメントポリシーをご一読ください。

リニューアルについてのご意見はこちらのページで募集中!

知る

知るについての記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。

動物・鳥類

動物・鳥類についての記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。

最新記事

最新記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。