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1万年もの間、人類の歴史や環境の変化が克明に描かれた先史時代の岩絵が数多く残された世界遺産 タッシリ・ナジェール(アルジェリア)

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 タッシリ・ナジェールは、アルジェリア南東部、サハラ砂漠にある台地状の山脈である。ニジェールと東のリビアの国境から、西のAmguidまでのおよそ7万2000平方kmに渡るエリアに広がっており、最高点は標高2158mの Adrar Afaoである。何千年にも渡るサハラの気候の変化と浸食のせいで、砂岩の柱や深い峡谷、300以上の自然石のアーチといった目を見張るほどの独特な地形ができあがった。

 タッシリ・ナジェールが世界的に有名になったのは1930年代のことで、その独特な景観だけでなく、発見以来、1万年の間の人類の歴史や環境の変化を描いたとされる、1万5000以上もの岩面線画や絵画が話題を呼んだ。これらのもっとも目をひく特徴のひとつは、気候の変化とともに絵の内容や描き方が変わっていったことがよくわかることだ。

 もっとも古いものは、紀元前1万年から6000年のもので、カバ、ワニ、ゾウ、キリン、バッファロー、サイのような大型動物の姿が克明に描かれている。当時サハラが緑豊かな肥沃な土地で、野生動物の宝庫だったことがよくわかる。こうした動物の多様さに、我々人間などあまりにも小さくてかすんでしまうほどだ。人間はブーメラン、投げ槍、棍棒、斧、弓を持つ姿でよく描かれている。

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image credit:Patrick Gruban/Wikimedia
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 この時代に重なって、紀元前8000年から6000年には、着衣の人間の姿が描き込まれるのが主流になった。身長数センチのものから数メートルのものまでさまざまで、ほとんどが目鼻のない丸い頭に、不格好な体という姿で描かれている。シャーマンのような人物が空中を飛んでいる姿や、そびえたつ大男の前で人々がひれ伏しているような絵もある。

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image credit:africanrockart.org
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 約7000年前には、こうしたアートの中に家畜が描かれるようになった。田園時代として知られているこの時代の岩絵の指向は、自然や持ち物や道具へと変わっていく。人間の姿がよりフューチャーされるようになり、もはや人間は自然の一部ではなく、自然の上に君臨し、そこから食料を得ているものとして描かれるようになる。

 野生動物よりも家畜が多くなり、3500年前くらいの絵になると、馬や馬が引く馬車が描かれるようになる。岩の多いサハラを馬車が走っていたとは考えられないので、馬車や武装した男たちの絵は、土地の所有権や住民の支配を表わした象徴として描かれたのではないかと研究者は推測している。気候がますます乾燥していくと、馬よりもラクダの絵が多くなる。これは2000年前くらいの岩絵からその証拠が残っている。

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 タッシリ・ナジェールは、砂漠よりもおよそ500メートル高い地点にあるが、ここにたどり着くにはキャンプ装備や食料などをロバやラクダに運ばせて、歩いて登らなくてはならない。激しい温度差や、生活必需品がなにもないため、旅は非常に困難なものになり、若くて屈強な者しか近づこうとしない。最近の国家の政情不安が、さらにタッシリ・ナジェールを観光客が近寄るルートから孤立させている。

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image credit: magharebia/Wikimedia
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image credit:www.archmillennium.net

Tourisme en Algerie – Djanet, le cœur du Tassili n’Ajjer
The Prehistoric Rock Art of Tassili N’Ajjer, Algeria・written konohazuku / edited by parumo

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この記事へのコメント 26件

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  1. 諸星大二郎の「砂の巨人」はアフリカ原住民漫画の傑作。

    • +5
    1. ※2
      ここは地中海世界の果てだったんだろうな
      あるいは、世界の出会う土地だったのか

      • 評価
    1. ※3
      四つん這いになってる人物の胸部には乳房のようなものが描かれており、背後から覆いかぶさってるように見える人物にはそれがない
      おそらく通常の交尾風景かと

      • 評価
  2. >観光客が近寄るルートから孤立させている。
    むしろこのほうが遺跡の保存に役に立つからいいのではないかと思ってしまう。
    政情不安ならなおさら。もう遺跡が破壊されるニュースを見るのは嫌だ。

    • +1
  3. 文字や絵を使って時間と空間を超越して知識と経験を共有できる。
    地球上で人類のみに与えられた超能力だな。
    現代日本人が1万年前のアフリカ人の生活を知ることが出来るなんて、本当にすごい。

    • 評価
  4. たった1万年?アフリカだったら、もっと時代を遡ったのが見つかっても
    よさそうな気がするけどなー
    1万年前なんて、もう農耕始まってるし縄文時代も始まってるじゃん
    そのへんはもう、先史時代ではなく有史時代って気がするけどな

    • 評価
  5. 有名な巨人の画が無いじゃないか。パルモさんらしくない(´・ω・`)

    • +18
  6. これは、20年前にアメリカの学者の探検家達によってつくられたものだ

    • +8
  7. >岩の多いサハラを馬車が走っていたとは考えられないので、馬車や武装した男たちの絵は、土地の所有権や住民の支配を表わした象徴として描かれたのではないかと研究者は推測している。
    これってヨーロッパの人がアフリカに来たので戦ったってのを描いたってことでOK?

    • -5
    1. ※9
      文字の有無が明瞭な歴史の区分になっているので、明確な当時資料としての文献が存在しない一万年前は有史時代には含まれません

      • -5
  8. ヤギの絵の中に、クラゲみたいのが紛れ込んでる???

    • +1
  9. 正直な感想というか直感で
    あやしいと感じた 悪い意味で

    • 評価
  10. なんていうか、エジプトの壁画に通じる体だけ正面斜めで顔や行動は横向きっていうのが
    共通した流れなのね。
    地域史として興味深いわ。

    • 評価
  11. 古代エジプトでは車輪は発明されなかったって聞いたことあるけども、こっちの方には早くから伝わってたのか?

    • +4
  12. サハラは今は砂漠で、かつては肥沃な土地だったというわけですね。
    思い出されるのがイースター島です。
    かつては木々が生い茂った島でしたが、モアイ像を建てるために伐採して、森が失われたとされています。サハラも同じように畑作や放牧等で木々が失われて砂漠になったのではないかと想像しちゃうと、アマゾンはどうかなとか……
    そんな想像をかきたてる記事でした

    • 評価
  13. 子供の頃はまだお金は葉っぱだったっけな・・

    • 評価
  14. しっかりモザイクかかってますねぇ・・・(感心)

    • +1
  15. バックで致すのが、この当時は主流だったのか。そして肝心のところが剥がれている。

    • +1

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