メインコンテンツにスキップ

デザイナー・タンパク質の革命的な回復力。麻痺したマウスが再び歩けるように(ドイツ研究)

記事の本文にスキップ

18件のコメントを見る

(著) (編集)

公開:

この画像を大きなサイズで見る
デザイナータンパク質で麻痺から回復したマウス/Pixaboy(イメージ画像)
Advertisement

 脊椎を損傷して体が麻痺し、動かなくなったマウスの脳に神経を伝達するデザイナー・タンパク質を注入したところ、神経細胞の再生がうながされ、ついには歩けるようになったそうだ。

 サイトカインの一つ、インターロイキン-6を人工的に合成し、ハイパーインターロイキン-6という融合タンパク質を作り上げ、神経細胞を刺激したところ、根治が難しい神経線維の軸索(じくさく)が修復したという。

根治が難しい軸索損傷と有望な治療法

 脊椎の損傷は、体への影響が特にはなはだしい大怪我だ。神経細胞のもつ突起「軸索(じくさく)」という部分がダメになってしまうと、脳と筋肉との間で信号を送受信することがきなくなり、手足は動かなくなってしまう。軸索は再生しないので、治る見込みは薄い。

 だが、最近では脊椎刺激療法や神経細胞の抑制・興奮シグナルのバランスを回復させる化合物など、麻痺してしまった手足を回復させることが可能になるのではと期待を抱かせてくれる研究成果もいくつか報告されている。

この画像を大きなサイズで見る
image by: Quasar Jarosz / WIKI commons

デザイナー・タンパク質で神経細胞が再生

 今回、ドイツ・ルール大学ボーフムのグループは、そうしたものとはまた別のアプローチで麻痺の治療に挑んでいる。

 本来なら治らないはずの壊れた軸索を「ハイパー・インターロイキン-6(hIL-6)」というデザイナー・タンパク質で修復しようというのだ。インターロイキン-6はサイトカイン(細胞から分泌される低分子のタンパク質)の一つなので、デザイナー・サイトカインともいえる。

 ”デザイナー”と呼ばれるのは、自然に生成されるインターロイキン-6を人工的に合成したものだからだ。もちろん単純に合成したわけではなく、神経細胞の再生を刺激するよう工夫がほどこされている。

 今回の実験では遺伝子治療に適したウイルスが用いられ、「hIL-6を生産せよ」という遺伝的な指示を与え、脊椎が完全に損傷して後ろ足がまったく動かなくなったマウスの脳の感覚運動皮質に投与された。ウイルスは、hIL-6生産のための設計図を運動ニューロンに送り込む。

 すると投与した部位の運動ニューロンがhIL-6を作り始めただけでなく、その指示は軸索の枝を伝って通常なら届かない重要な神経細胞にまで引き渡されたという。

 そのおかげで、たった1度だけの注射だというのに、数週間もするとマウスの後ろ足は動くようになり、再び歩けるようになったとのことだ。

 研究グループのディートマル・フィッシャー氏によると、ほんのいくつかの神経細胞にこの遺伝子治療をほどこしただけで、さまざまな神経細胞の軸索と脊椎の運動を担う経路の再生が同時に刺激されたのだそうだ。

この画像を大きなサイズで見る
image by:Lehrstuhl fur Zellphysiologie

怪我から時間が経過していても効果はあるか?

 研究グループの次のテーマは、脊椎を損傷してから直ちに治療を受けるのではなく、ある程度時間が経過してからでも同じような効果があるのかどうか確かめることだそうだ。

 人間でも同じことができるかどうかはまだ分からない。しかしそれまで10年かけて開発していたワクチンをたった1年で完成させた人類だ。案外近い将来、体の麻痺が過去の病になるなんてこともあるかもしれない。

 この研究は『Nature Communications』(1月15日付)に掲載された。

References:newatlas / Ruhr-Universitat Bochum/ written by hiroching / edited by parumo

追記:(2021/1/21)本文を一部訂正して再送します。

📌 広告の下にスタッフ厳選「あわせて読みたい」を掲載中

この記事へのコメント 18件

コメントを書く

  1. これが本当にヒトで実現できたらすごいことだよね。

    • +22
  2. 映画、CASSHERNで出たやつか

    ちょっと新造人間作ってくる

    • +1
  3. 応用したらいわゆるゾンビとか作れそう

    • 評価
  4. ユーチューブで看護師試験や遺伝技術を調べたら、
    今度はrat trapが紹介に出てきておりどういうAIだと
    にやにやしてみてた
    そんな中カラパイアではネズミを使った神経再生とは
    ユーチューブもだが俺の先見性の見える能力に
    少し怖くなってきたぞ

    • -2
  5. 人でも幹細胞注射で回復したってのはすでにあるけど、タンパク質で済むならかなりお手軽だな

    • +9
  6. これ人体でも再現できたら麻痺どころか欠損した手足の再生とかもかなり前進しそう

    • +4
  7. 「脊椎を損傷して動かなくなったマウス」
    なのか
    「脊椎を損傷させて動かなくなったマウス」

    なのかはまでは記事の内容だけだと分からないけど、どっちにしてもニンゲンはネズミ様に感謝の気持ちを持たないといけないね。

    • +7
  8. 実現したら、小児麻痺治療に革命的な進歩が来そう。

    • +1
  9. 昔誤って切断された指を再生させたマトリックスパウダーなるものはどうなったんだろう。
    ガセなのか頓挫したのか…。
    ロンブーがMCのベストハウス123とかいう番組で初めて紹介されたから指再生成功から2~30年くらい経ってると思うんだけど。
    この記事の研究もやがてシレッと無かったことに…なんてならなきゃいいな。

    • +2
    1. ※13
      あれはガセではないが大げさだった
      指先が1cmほど切断されても骨や神経さえ傷ついていなければ、それほど特別な処置をしなくても人間は再生できる
      細胞外マトリクスパウダーがあれば傷の治りを早くすることはできるかもしれないが、失った指を完全に再生するのは現状では不可能だ

      • +2
  10. 実験台でいいからやってほしいって人もいそう

    • +5
  11. こういう専門的な最新文献を平易にして紹介していただけるの、大変感謝です
    この活動を応援します

    • +6
    1. ※16
      今の時代に貴重だよね
      ありがたいなー

      • 評価
  12. つか昔はワクチン開発に10年てゾッとした^^;
    今の状況に10年はとても耐えられそうにない…

    • +1
  13. ワクチン自体の開発にはさほど時間はかかりません。
    その後の治験が長いだけです。

    今回の新型コロナワクチンは、その重要な治験の時間を省いて処方しようと
    している訳ですから、今後長期的にどんな影響が出るかは誰も知りません。

    • 評価
  14. 筋萎縮性側索硬化症(ALS)を根治させる手段として期待できるのでは?

    • 評価

コメントを書く

0/400文字

書き込む前にコメントポリシーをご一読ください。

リニューアルについてのご意見はこちらのページで募集中!

サイエンス&テクノロジー

サイエンス&テクノロジーについての記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。

知る

知るについての記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。

最新記事

最新記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。