メインコンテンツにスキップ

お酒が止められない理由。飲酒の記憶が脳にこびりつき、関連するものを見ると誘発される(オランダ研究)

記事の本文にスキップ

32件のコメントを見る

(著)

公開:

この画像を大きなサイズで見る
意思だけではやめられない、飲酒に潜む罠 / Pixabay
Advertisement

 新型コロナウイルスの影響で、家庭内で消費する酒量が増加傾向にあるという。外出自粛中、先行きの見えない不安やストレスから、自宅で深酒をする人が増えたためとみられている。だが懸念されるのがアルコール依存症だ。

 アルコール依存症の多くの人たちは、映画でお酒を飲むシーンを見てしまったり、飲み屋で楽しそうにしている客に出くわしたり、飲酒と関連づいたものに遭遇すると、脳にこびりついているお酒の記憶が蘇ってしまう。

 そのために、たとえ何年も禁酒に成功していたとしても、お酒を飲みたいという強い衝動に駆られてしまうのだという。

 『Science Advances』(5月6日付)に掲載されたマウスを使った研究では、そうしたアルコールを飲みたいという欲求とそれを誘発する記憶の関係について調べている。

A persistent alcohol cue memory trace drives relapse to alcohol seeking after prolonged abstinence | Science Advances
https://advances.sciencemag.org/content/6/19/eaax7060

意志の力では止められない、飲酒を誘発するトリガー

 アムステルダム自由大学の研究者によると、人間とマウス双方にとって、アルコールは強い満足感が味わえる体験であり、それを飲んでいるうちに、脳には持続的な変化が生じてしまい、ついついお酒に手を出したくなってしまうという。

 厄介なのは、飲酒と関連づいた特定のサインだ。それはお酒のボトルかもしれないし、赤提灯の明かりかもしれない。その状況の中で何度もアルコールを摂取すると、脳にいつまでも残る「記憶痕跡」が形成されてしまう。

 なお、記憶痕跡は、脳に保存された経験を意味する記憶とは少々違い、学習時に活動した特定のニューロン集団(セルアセンブリ)という形で脳内に残った物理的な痕跡のことだ。

 この記憶痕跡は、アルコールと関連づいたサインがトリガーとなって活性化する。その結果、お酒の記憶が蘇り、また飲みたいという気分になってしまう。記憶痕跡はいつまでも脳に残るので、どれだけ禁酒を続けていても、ふとしたときに無性にお酒が恋しくなる。

 よく言われることだが、サインによって”再発”してしまうこうした欲求は、単純に意思の力で止められるような代物ではない。

この画像を大きなサイズで見る
axelbueckert/iStock

マウス実験で分かったアルコールの記憶痕跡

 今回の研究チームは、脳のどこにアルコール関連の記憶痕跡があるのか調べるために、マウスに”飲み会”を開いてもらい、そのときの脳の活動を観察するという実験を行なった。

 飲み会はこのような感じだ――。

 マウスがレバーを操作すると、アルコール入りの溶液を1滴飲むことができる。同時にライトが点灯する。これを繰り返すと、やがてマウスはライトからアルコールを連想するようになる。

 そうなると、ただライトを点灯しただけで、アルコールを求めるようになる。つまりアルコールに関連するサインによる誘発だ。

 次いで研究チームは、アルコールで活性化したニューロングループに特殊な方法でマーキングを施し、クロザピンN-オキシドという薬剤でそれを選択的に鎮静化させてみた。

 そして前回の飲み会から1ヶ月後にサインを与えてみると、誘発率が低下したという。アルコールで活発化するニューロンを鎮静化されたマウスは、ライトが点灯してもあまりレバーを操作しようとはしなかったのだ。

 なお、研究チームはアルコールに並ぶなかなかやめられない物質、砂糖でも同じような実験を行なっている。

 興味深いことに、砂糖を食べているときに活発化したニューロンを鎮静化しても、再発率の低下は確認されなかったとのことだ。このことは、アルコール関連の記憶痕跡が前頭前皮質に存在することを示唆しているという。

この画像を大きなサイズで見る
iStock

人間にもアルコールの記憶痕跡が形成されている可能性が大

 今回の実験はマウスを対象としたものだが、研究チームによれば、人間でも同じようなアルコールの記憶痕跡が形成されているだろうとのこと。

 さらに研究を続けることで、将来的には、なかなかお酒を止められないアルコール依存症患者の治療にも役立つ可能性があるという。

 ちなみにマウスの脳にアルコール関連の記憶痕跡が形成されるまで、たったの15日しかかからなかったそうだ。

 人間の場合の日数はまだ分からないが、お酒が脳に作用する力はそれだけ強力であるということだろう。

 巣ごもりで昼間からお酒を飲む機会が増えたという人も多いかもしれないが、ほどほどにしておかないと依存症になってしまうかもしれないので注意しよう。いつでも止められると思っていても、関連するサインを見ただけで飲みたいという強い衝動に駆られてしまう。

 それは脳にこびりついて離れない、意思の力だけでは抗えないほど強いものだというのだから。

References:An “alcohol memory trace” in the brain can trigger relapses — study/ written by hiroching / edited by parumo

📌 広告の下にスタッフ厳選「あわせて読みたい」を掲載中

この記事へのコメント 32件

コメントを書く

  1. お酒って下手なクスリよりもやばさ度ではワーストテン1位と
    海外の表で見たぜ
    そりゃ一度依存症になったら少々のことでは逃げ切れん

    • +9
    1. ※1
      アビガンの副作用、催奇形性の話がよく出てくるが、
      アルコールだって催奇形性あるし、妊婦は飲んじゃダメだしね。

      • +4
  2. (ついついお酒に手を出したくなって)

    おっしゃる通りございます。

    • +4
  3. それをいったらタバコも同じだと思うが、自分は5年前に禁煙して1本も吸ってないなあ。オジーオズボーンいわく禁煙できるか出来ないかは、そいつの準備が出来てるかできてないかの違いなんだそうだけど、本当にその通りだと思う。喫煙や飲酒を依存症でとか脳の回路がって言うのも、結局は準備が出来てるか出来てないかでしかないのかもしれない。自分が喫煙や飲酒や薬物をやめる理由をきちんと理解して納得していたらきれいにさよならできるのかもしれない。やめることに対していい訳があったり、何か理由をつけてしょうがなくやめる、本当はやめたくないけど、みたいな自分が被害者であるかのような心理状態だと失敗するのではないのかね。
    人間の意志は時に本能を凌駕して、摂食障害などを引き起こすほど強いものなので、意志の力ではどうにもならないと言うことはないのではないかとも思う。

    • -2
    1. ※3
      タバコは酒よりも依存度が低いんだよ
      アルコールが依存度「高」ならタバコは「中」
      アルコールはLSDや大麻よりも依存度が高い
      もちろん意志の強さも重要だけど、中毒になってしまったら「意志」だけでは無理

      それに摂食障害は「食べないぞ」という意志でなるもんじゃない
      逆に「食べるぞ」と強い意志をもってしても、食べられないから病気なんだよ

      • +3
    2. ※3
      てか摂食障害自体が依存症だった気がする…。意思が本能を凌駕した結果が摂食障害って聞いたことない。

      • 評価
  4. 暖かくなってきてビール(偽物の安物)がうまいです

    • +1
  5. 下戸の人間にとってはアルコールなんて頭は痛くなるし気持ち悪いだけのつらい記憶しかないから、飲みたいなんてこれっぽちも思わないんですが・・・

    • +11
  6. 酒が飲めるだけで飲めない人間を見下してたアイツらどうしてるかなあ

    • +5
  7. 偽薬みたいにノンアルコールを酒だと偽って飲ませれば良いんじゃないかな?

    • -5
  8. これは別に酒に限った話じゃないだろ。
    人間が中毒になるメカニズムであって、対象はさまざまなはず。

    • +6
  9. 砂糖の記憶痕跡というのははないのだろうか
    どうしてもお菓子がやめられないんだよおぉぉぉぉぉぉぉぉ
    (魂の叫び)

    辛い時や悲しい時、嫌なことがあった時など
    家に帰ってお菓子を食べるとほっとするんです…(;∀;)

    • +7
    1. ※11
      栄養が偏ってるか単純に食べる量や回数が足りなくて、体が砂糖に頼ってたりしないかな
      毎日きちんと食事をとればあっさりやめられるかも(ソースは自分)
      お菓子以外のストレス発散方法を2つ3つ増やせばなおよし

      • +3
  10. 逆に良い習慣で記憶痕跡形成出来るとちょっと幸せに成れそうだね

    • +9
  11. 何を今更って言う内容だね。
    アル中だけど、深夜にオープンバーで飲んだくれてる若者を見ると
    飲みたくなるね。

    • -7
  12. 「美味いものを見ると菊正宗が飲みたくなる」

    • +1
  13. ヤク中だった人も「⚪⚪逮捕」ってニュースがトリガーになって、またやらかしちゃったりするんだろうな。

    • 評価
  14. おい待てよ。それじゃ俺ただのアル中じゃん

    • +4
  15. 俺タバコも酒もやめたけど、結局最後の所は自分の意志だぞ

    • 評価
  16. 依存する人しない人の違いは何かな
    それこそ若い頃は週7で浴びるように飲んでたけど
    学校卒業して間もなく結婚、2年後には子供も生まれて全く飲まなくなった
    そしたらもう全然飲みたくなんかないんだよ
    誘われたって嫌
    気の合う友達となら喜んで行くけど、飲まなくていいなら飲まなくてもいい
    要は、普通の酒好きって酒が好きなんじゃなく酒を飲む環境が好きなんだよ
    でもアル中はトイレにいる時すらアルコールのこと考えてる
    味さえ関係ない
    そのスイッチが入る人はなんなんだろう
    正直、こんなに「よくない」と言われててもアル中になるまでブレーキ効かない人は頭のネジ飛んでると思うけどね

    • +1
    1. >>23
      お幸せな方には分からない。

      孤独な人が溺れるのがアルコールで、陽気に全部忘れちゃうのが薬物。

      • 評価
  17. 煙草はやめるのが大変だったな
    成功したのは「無くても死なないんだから」という気持ちだけだった
    体に必要でもないものに支配されていることへの嫌悪かな

    • +4
  18. やめられる人とそうでない人の研究をして欲しいものだ。
    自分には、やめられない人の気持はわからん。

    • +2
  19. 毎晩僕二本、父一本ワインのボトルを空ける
    月に90本のワインのビン。缶とビン回収の日はうちのビンだけで
    プラスチックのビンケースがほぼ一杯になる

    • -1
  20. 酒はやめられたがタバコがやめられん…
    タバコやめたい…

    • 評価
  21. 見方を変えれば酒に関わる大きなトラウマさえあれば禁酒につながる可能性も出てきたと

    • 評価
  22. 体に悪いのわかってるんだけど、たまに友達と一緒に飲む楽しいお酒はすごくいいはず(精神的に)。

    • 評価

コメントを書く

0/400文字

書き込む前にコメントポリシーをご一読ください。

リニューアルについてのご意見はこちらのページで募集中!

知る

知るについての記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。

料理・健康・暮らし

料理・健康・暮らしについての記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。

最新記事

最新記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。