メインコンテンツにスキップ

第一次世界大戦で顔を負傷した兵士たちの為に、オーダーメイドのマスクを次々と作り上げた善意の女性彫刻家(アメリカ)

記事の本文にスキップ

57件のコメントを見る

(著)

公開:

この画像を大きなサイズで見る
Advertisement

 1914年7月28日から始まった第一次世界大戦。当時の戦争は人類にとって最悪だった。軍事技術が急速に発展していったのに対し、医療技術が全く追いつかなかったのだ。

 大多数の軍は改良型の機関銃を使用し、性能の上がった機関銃による戦死者の数は急増した。毒ガスが本格的に使用されたことで戦争の歴史の新しい章を刻んだ。

 運よく生きのびても毒ガスで顔が焼かれたり、顔面を銃で撃たれた兵士たちの顔は目も当てられない状態だった。

 歪んだ顔のまま生きていくことは辛い。そんな兵士たちを救ったのは 医師ではなく一人の女性彫刻家だった。

その生涯を兵士のマスク制作に費やしたアメリカの彫刻家

 1917年、夫と共にフランスに移住したアメリカの彫刻家、アンナ・コールマン・ラッドは、イギリス人の彫刻家、フランシス・ダーウェント・ウッドに出会うことで運命が変わる。

 ウッドは「ティン・ノーズ・ショップ」という店で顔を損傷した兵士達のための人工装具としてのマスクを制作し、彼らの人生に新たなチャンスを与えていた。

 彼に影響を受けたアンナは「ポートレイト・マスクスタジオ」を設立し、兵士のためのマスク作りを開始した。

 1人1人の兵士の顔に合わせたマスクを作るのは容易なことではなく、1つのマスクをつくるのに1か月はかかる。だが彼女はマスクを作り続けた。その生涯をマスク作りに捧げ、手掛けたマスクは200にも上ったという。

Anna Coleman Ladd’s Studio for Portrait Masks in Paris

見た目を気にし心を病む兵士の為に最良のマスクを

 顔を負傷し、潰れてしまった兵士たちはミティレ(傷ついた、切り裂かれた、失った人) と呼ばれていた。

 彼らは他人が自分たちの顔をどう受け止め考えるかをすごく気に病んでいた。人に会うことを拒み、孤独に陥って行くものがほとんどだった。

 彼らはすべての戦争の中で最も悲劇的な犠牲者なのだ。

この画像を大きなサイズで見る
この画像を大きなサイズで見る
この画像を大きなサイズで見る
この画像を大きなサイズで見る
この画像を大きなサイズで見る

 アンナは持ち前の芸術センスと器用さで、当時の水準を上回る素晴らしいマスクを次々と作り上げていった。

 1つのマスクをつくるのに1か月はかかる。しかもそのマスクですら、数年装着し続ければボロボロに崩れてしまう。

 それでもアンナはマスクを作り続ける。そのマスクで人生を救われた兵士が多くいたことは確かである。

この画像を大きなサイズで見る
この画像を大きなサイズで見る
この画像を大きなサイズで見る
この画像を大きなサイズで見る
この画像を大きなサイズで見る
この画像を大きなサイズで見る

 1932年、彼女の慈善活動を称え、アンナはフランス政府によって名誉の勲章を授与された。

この画像を大きなサイズで見る
この画像を大きなサイズで見る

 第一次世界大戦で顔面がつぶれてしまった帰還兵は約2万人にのぼったという。アンナはマスクづくりに没頭し、寝る間も惜しんで約200のマスクを作ったが、それでもほんの1部の兵士しか救うことはできなかった。

 だが彼女の活動は多くの人々の心を動かしたし、今もそれは語り継がれている。

References: deMilked / written by いぶりがっこ / edited by parumo

📌 広告の下にスタッフ厳選「あわせて読みたい」を掲載中

この記事へのコメント 57件

コメントを書く

  1. 戦争は英雄伝のようには綺麗に終わらない

    • +91
    1. ※1
      原爆を思い出した
      心や体に残った傷は戦争が終わった後も人々を苦しめるんだよね

      • +1
  2. 心の底から尊敬する。
    装着者は彼女にどれだけ心救われただろうかと想いを馳せてしまうなぁ。

    • +156
  3. たった一人では限界がある
    それでも彼女によって救われた人がいるという事実があるからこそ
    語り継がれてきたんだろう

    それにしてもものすごいリアルな造形力

    • +138
  4. NHKの映像の世紀で見たな。
    塹壕症候群で震え続けてる兵士の映像もすごかった。

    • +38
  5. 尊いなあ、時の中に埋もれても偉大な行いはいつか誰かの目に留まって心を洗ってくれる
    大小に拘らず良い行いを心がけて行きたいね

    • +65
  6. 戦争の悲惨さを語れる人が少なくなってしまった
    うちの一族では90になるばあちゃん1人に

    • +30
  7. 英雄が戦場から消えた戦争だからなおさらである

    • +12
  8. 鶴見少尉(日露戦争1905年)は、WW1(1914)より10年も早く、お洒落マスクしてるんだな。
    視覚的な心理障害の克服、義眼とかは昔からあるけど。

    • -3
    1. ※9
      あれは吹っ飛んだ頭蓋骨の代わりに支える額当てだけで、
      目元の皮膚がえぐれた顔はそのままじゃん。

      • +8
  9. 美容整形って元はこの対戦で顔を失った人たちをなんとかしてあげたいって始まったのね
    つまりもし第一次がなかったら整形技術はもっと未熟なままだったかもしれないね

    マスクの必要な人たちはなんか身分が高そうな人が多いね
    きっと社交界とかで露出する機会が多いから精巧なマスクが必要なんだろな

    • +34
  10. 白黒写真ってのもあるかもしれないけど、言われなきゃ分からないね。

    負傷兵の方々の、どれだけ救いになったものか。こう言う人をもっとテレビでも取り上げて欲しいなぁ。
    それにしても200人分か…作るの大変なんだろうな。

    • +57
  11. 何と気の毒な。
    怪我した兵隊さんたちになんの補償もなかったことは
    ダウントンアビーを見てて気づいたよ。
    国家権力って残酷なことをするよ。

    この人の技量はたいしたものだ。 モノクロだと全く違和感がないもの。

    • +47
  12. これはすげえいい仕事だ
    使う本人だけじゃなく周りの人にも優しい

    • +36
  13. 「生きてるだけで丸儲け」と言えるようになるにはこういう善意やサポートも必要なんだろうな

    • +26
  14. グッと胸に詰まって来た。
    涙が出そうになった。

    • +24
  15. 彼女は、フローレンス・ナイチンゲールやアンディ・デュナンと並んで、教科書や世界の偉い人伝記に載せられるべき人物ではないか?と思う。

    • +66
  16. みんな結構映像の世紀見てるんだな
    数ヶ月で終わる戦争と思い軽いノリじゃないけど意気揚々と戦地に向かったけど現実は塹壕の中で丸くなって震えてたって話が今でも印象に残ってる

    • +20
  17. ゴールデンカムイネタでコメント埋まってるかと思ったら
    意外とみんな真摯にコメントしてて心打たれた

    • +16
  18. 制作に1ヶ月って期間しとて早いほうではないのか?

    • +17
  19. 傷ついた顔の写真、本来なら撮らせたくないと思うんだ
    でも彼女の技術に救われたから、どれほどそれが素晴らしい事か有難い事か伝えるために
    マスクした写真と共に撮ったんじゃないかと

    • +64
  20. 写真だと普通の人の顔に見えて
    よーく見ないと違和感ないから
    当時の水準ではとても
    精巧な出来なんだろうなーと思うけど
    きっと直接見たら
    「ああ、マスクしてる」って
    分かっちゃうんだろうな…
    当時はラテックスとかシリコンとか
    無かっただろうし…
    でも酷い傷跡を衆目に晒すのは
    物凄い勇気が必要だし
    顔の傷跡って怖がられたり
    気持ち悪く思われたりするからな…
    精神的な負担や苦痛は軽減されたと思う

    • +19
    1. ※27
      保険の適用は負傷の治療までで
      傷跡を目立たなくしたい、といった外見を変える医療行為は保険の適用外だと思う

      • +6
  21. “彼らはすべての戦争の中で最も悲劇的な犠牲者なのだ。”
    これに対し、いいや違う。それは殉職していった者達だ。
    そう昔なら言い張っていたが、今ではどの国の人の気持ちにも寄り添えるようになった。
    だから、ナショナリズムな昨今がとても生きづらい。どうすればいいだろうか。

    • +9
    1. ※28
      自分が生まれ育った国を応援するしかないんだよ。
      全ての人の完全な平等など有り得ないんだから。

      • -9
      1. ※30
        それだと、気が楽になるのは私や私の所属集団だけになってしまいます。
        ※46
        とてもしっくりきました。
        そして、また人を集団として見ていました。反省です。
        ※48
        無意識にはたらく心の動きも、名前があれば対処が始められるので素晴らしいですね。
        カラパイアの読者さまから学ばせていただいたエスノセントリズム、知恵になるまで反復したいと思います。
        お三方、ご返信をありがとうございました。

        • 評価
      2. ※30
        それをナショナリズムというのでは?
        自分と異なる相手とどう共存していくかという試行錯誤と歩み寄りは双方向的なものであるべきで、独善的・利己的なだけの価値観や主張が他者を納得させることはない。
        真の平等があり得なかったとしても、少しでもそこに寄せていこうという意識と努力がなければ、格差も争いも減ってはいかない。

        • 評価
    2. ※28
      “彼ら『も』すべての戦争の中で最も悲劇的な犠牲者なのだ。”
      だと思う
      悲劇や不幸は他人が比べるものじゃないしね

      眼鏡と鼻や眼窩を合わせたマスクは「なるほど」と思った
      当時は今ほど技術も素材もないのに、ただ隠すだけじゃなく、自然に綺麗に作ろうっていう創意工夫が凄いな

      • +20
      1. これは、救われただろうなあ

        ※46
        あなたのコメントを見て気づいた
        木製の鼻まであるマスクとなると
        眼鏡一体型じゃないと眼鏡をかけることすら難しかったんだな
        耳にかける紐タイプの眼鏡もあるとはいえ
        マスクの上からでは、マスクに当たってうるさかっただろうし

        • +1
    3. ※28
      ナショナリズムではない
      あなたを悩ませているのは歪んだエスノセントリズムだ

      • +3
  22. 高須クリニックの院長も
    阪神淡路大震災で顔に怪我した人を
    無償で治してあげてたみたいよ

    • +25
    1. ※29
      元々形成外科・美容整形というのは戦争被害者のために作られた医学なんだからね。
      事故による顔の怪我は健康保険適用だとおもう、無償でやる意味はあまりないかも。

      国家を守るために戦ったものを国と国民は全力で支援しなければならない。
      軍人恩給、戦死者遺族傷痍軍人の補償額は国家予算の多くの割合いを締めている、ときいたことがあるわ。
      戦後70年のいまですら1兆円近いらしい(国家予算の0.8%)
      恩給制度ができた1953年では450億円(国家予算の4.1%)

      • +10
  23. アンナさんのように、誰かの役に立てる人になりたいものです
    彼女のように稀有な才能がなくても、些細なことでも

    • +22
  24. 戦争って体験した事無いけど
    もし体験してしまったら
    思っていたよりも
    きっととても怖いし悲しい思いをするのではないかと思う
    その時だけじゃなくて
    ずっと後、何年何十年経っても
    大切な人や穏やかで幸せだった日々を
    失ったまま生きていかなければ
    ならなくなってしまうだろう

    • +10
  25. 銃は顔に向けて撃っちゃ駄目だゾ
    俺は口から脳みそまで貫通しちゃったけどな

    • -5
  26. 鶴見中将!
    って書こうと思ったら皆真面目かよ

    • +2
  27. 結構広い範囲をカバーするものが多いのを見るに、マスクの下は検索してはいけない言葉でおなじみのモーターサイクル男みたいになってたのかな?

    • -4
    1. ※37
      モーターサイクル男がなにか知らんけど、マスクの下の顔を写してる写真は記事内に何枚もあるよ?鼻が抉られ口唇も失っている人が何人もいる。小さい範囲なら隠して生活できなくはないから、隠しようがない人を優先してマスク製作したんじゃないかな。

      • +5
  28. 昔、NHKの映像の世紀で見たなぁ。

    「戦争からきらめきと魔術的な美がついに奪い取られてしまった。
    アレキサンダー やシーザー や、ナポレオン が兵士達と共に危険を分かち合い、馬で戦場を駆け巡り、帝国の運命を決する。
    そんなことはもう、なくなった。

    これからの英雄は、安全で静かで物憂い事務室にいて、書記官達に取り囲まれて座る。
    一方何千という兵士達が、電話一本で機械の力によって殺され息の根を止められる。
    これから先に起こる戦争は、女性や子供、一般市民全体を殺すことになるだろう。

    やがてそれぞれの国には、大規模で、限界のない、一度発動されたら制御不可能となるような破壊のためのシステムを生み出すことになる。

    人類ははじめて自分たちを絶滅させることのできる道具を手に入れた。
    これこそが人類の栄光と苦労のすべてが最後に到達した運命である」

    って『パリは燃えているか』の音楽に乗せ、チャーチルの言葉とともに流れる映像が印象的だったな。

    • +10
  29. 犬神家の一族のスケキヨのマスク
    原作だと記事のような仮面だったってな

    • +16
  30. 漫画のブラックジャックが言ってたが、有史以来延々と、人を救うより、傷付ける方が簡単で効率化されているんだよな、彼女も勲章を貰うより、彼女の作るマスクを必要とする人が居なくなる事を願っただろうに

    • +18
  31. 一つの物事に一途に真摯に打ち込める人って素敵だわ

    • +12
  32. 負傷した顔に衝撃を受けてしまう。
    本人はどんなにつらかったろう。

    アンナさんのマスク、マスクだと一目でわかるとしても、傷ついた顔を見てぎょっとされることはなくなるんだから、作ってもらった人は救われただろうな。しかもマスク自体の精巧さ、ある種の美を備えている。アンナさん、人間としても芸術家としても素晴らしい。

    • +28
  33. 自分は記憶力以外特に能がない。だから、せめてラッドさんとウッドさんの愛と技のこもった献身を覚えておいて、将来必要な場面が来たら語ろうと思う。

    • +4
  34. 軍隊をなくせば戦争はなくなるのになぜできない

    • -12
    1. ※52
      統率すら取れてない私兵・ゲリラ兵・暴動民の類が各地で暴れて
      講和交渉もままならず、
      よけい泥沼化するだけだと思います。

      • +10
  35. これ以上に才能を有効活用した事例ってそうそうないんじゃないか?

    • +7
  36. オーダーメードのマスクとかグールだ

    • 評価
  37. 今は形成外科があるからね失った部位を復元可能だ。
    医学の発達はめざましい。

    • 評価

コメントを書く

0/400文字

書き込む前にコメントポリシーをご一読ください。

リニューアルについてのご意見はこちらのページで募集中!

知る

知るについての記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。

歴史・文化

歴史・文化についての記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。

最新記事

最新記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。