メインコンテンツにスキップ

地球に現れた最初の生命「LUCA(全生物最終共通祖先)」は半分生きている?(ドイツ研究)

記事の本文にスキップ

47件のコメントを見る

(著)

公開:

この画像を大きなサイズで見る
Advertisement

 生きとし生けるものの祖先の遺伝的特性。それは地上に最初に現れた生命の謎に光を当てるものだ。

 大昔に存在した生命の祖先は単細胞の細菌のような有機体だった。それでも、気高き名前を、少なくとも頭文字が与えられている。

 それはLUCA(Last Universal Common Ancester = 全生物最終共通祖先)という。今から40億年前、地球が生まれて5億6,000万年経った頃に生きていたと考えられている。

生命の起源の謎

 最新の発見によって、2つの立場からの激しい議論が交わされるようになった。

 一方の立場は、生命の起源は深海の熱水噴出孔や火口側面のような極端な環境にあると考えるものだ。他方は、ダーウィンが提唱した”暖かい小さな水溜り(warm little pond)”のようなもっと普通の環境だろうと考える立場だ。

 生物の最初期の祖先の性質は長い間不確かなままだった。

 それというのも、真正細菌、古細菌、真核生物という生命の三大ドメインの起源に共通点が見られないからだ。

 古細菌は細菌のような有機体だが、異なる代謝を持つ。真核生物は全植物と動物を含む。

 最近では真正細菌と古細菌は最も古いドメインで、真核生物は後になって登場したという考え方が主流となっている。

 これによって、ドイツ、ハインリッヒ・ハイネ大学のウィリアム・F・マーティン(William F Martin)を筆頭とする進化生物学者のグループが、真正細菌と古細菌の起源である有機体の性質を確かめられる可能性が開けてきた。

この画像を大きなサイズで見る

生命の起源は厳しい環境下にあった

 スタート地点となるのは、真正細菌と古細菌の既知のタンパク質遺伝子だ。この20年、最新の解析機で数千もの微生物の遺伝子配列解析を行い、600万ほどの遺伝子がDNAデータバンクに蓄積された。

 ヒトとマウスで同じ機能を持つ遺伝子は、遺伝的には最初の哺乳類に存在する先祖遺伝子の共通の子孫という関係にあるため、DNAの配列を比較することで、進化の系統図を描くことができる。

 マーティン博士らは600万の遺伝子をずっと少ない遺伝子族に割り当てた。

 そのうち、真正細菌と古細菌の共通の祖先であるLUCAが起源であろうと判断するための基準を満たしたものは、たったの355個だけだった。

 遺伝子は有機体が生きる環境に適応する。そのためLUCAが持っていた可能性が高い遺伝子を特定することで、それが生きた環境やその方法を伺い知れるのではないかとマーティン博士は考えた。

 355個の遺伝子がまっすぐ指し示していたのものは、深海熱水噴出孔で見られる環境に住んでいる生物のそれだった。

 そこはガスが充満し、金属が存在し、海底から噴出したマグマに触れた海水が作る激しいホットプルームが存在するような場所だ。

 深海熱水噴出孔は珍しい生命体に囲まれており、その極端な化学的性質ゆえに、生命が誕生した場所ではないかとかねてから推測されてきた。

 LUCA由来の355個の遺伝子は、エネルギー源として水素を代謝するものがいくつかと、リバースジャイレースという酵素のための遺伝子を1つ含んでいる。これは極端に高温な環境で生きる微生物にしか見られないものだ。

この画像を大きなサイズで見る

LUCAは半分生きている?

 マーティン博士が明らかにしたLUCAの肖像は広く感嘆されることだろう。しかし彼はさらに一歩進んだ。大きな議論を巻き起こしているのはこれである。

 博士はLUCAが生命そのものの起源に非常に近いと論じたのだ。

 その有機体は生命に不可欠な遺伝子をたくさん欠いており、環境に存在する化学物質を頼らなければならなかった。ゆえに「半分生きている」に過ぎないと論文で論じられている。

 LUCAが水素や金属に依存していたという事実は、深海熱水噴出孔が生命の誕生した環境であるという説に有利なものだ。

 よって、ケンブリッジ大学のジョン・サザーランド(John Sutherland)が提唱する主な反対理論が説くような陸上の環境でなく、深海熱水噴出孔が起源であろうとマーティン博士は結論付けている。

 だが、マーティン博士が描くLUCAはすでに生命の起源からはるかに進化を遂げた、非常に洗練された有機体であったと考える者もいる。

 つまり初期の地球に存在した化学物質から生命システムが形成されたということだ。

 マサチューセッツ総合病院のジャック・ショスタク(Jack Szostak)は、LUCAと生命の起源は「進化による革新の長大な距離によって隔てられた出来事」とコメントする。

 マーティン博士のデータからは、LUCAがタンパク質を合成するという複雑な作業を行えたことが明らかである。ということは、まだ見つかってはいない。

 とはいえ、もっと単純な化学成分を合成できなかったとは考えにくい。

 「ボーイング747を作れるのに、鉄の精製ができないと言うようなものです」と応用分子進化基金(Foundation for Applied Molecular Evolution)のスティーブン・A・ベナー(Steven A. Benner)は話す。

 サザーランド博士もまた、いくつかの必須要素を環境に頼っていたという理由だけでLUCAが半生命と生命の境界の存在であったとする主張をほとんど支持していない。

 「地元のスーパーマーケットに頼っているから自分は半生物だと言うようなものです」と博士。

 サザーランド博士らはLUCAが深海熱水噴出孔にまで辿れることについては異を唱えていない。

 彼らが言っているのは、それが生命の起源がそこであることを意味しないということだ。

 生命がどこか別の場所で誕生し、40億~38億年前に起きた後期重爆撃期(雨のように降り注ぐ隕石で、海洋が沸騰した)のような破滅的イベントによって深海に閉じ込められた可能性もある。

 生命は非常に複雑なため、進化には何百万年もの時間が必要であるかのように見える。だが、最初期の生命の証拠は38億年前にまで遡るもので、爆撃が終わってからほんのわずかのうちに登場したかのようだ。

 爆撃中、深海に逃れれば、生命が進化するためにより長い期間をとれたかもしれない。

 しかし、サザーランド博士のような化学者は、前生物的な化学的性質が海洋で機能するようになったという主張には違和感を感じるという。化学物質が複雑な生命の分子に組み上がる前に、これを大幅に薄めてしまうからだ。

 化学の基本原則に寄って立つサザーランド博士は、正しい反応が起きるには太陽の紫外線がエネルギー源として不可欠であることを発見した。

 ゆえに海洋ではなく、陸上のプールこそが生命の起源として最もありえそうだというのだ。

 マーティン博士のLUCAの肖像について、「非常に面白くはありますが、実際の生命の起源とは無関係ですよ」とサザーランド博士は主張する。

via:naturementalflossnytimesなど、/ written & edited by hiroching

📌 広告の下にスタッフ厳選「あわせて読みたい」を掲載中

この記事へのコメント 47件

コメントを書く

  1. ♪My name is “LUCA” I live on the second floor
    I live upstairs from you Yes I think you’ve seen me before
    ちょっとね、ルカっていうから口遊んでみただけ

    • +3
  2. 原初の生命は生命としての条件を満たしていなかったと。
    ウイルスみたいな高分子体って事かな

    • 評価
  3. 地球自体は苗床でLUCAの種は隕石や小惑星に含まれていたんじゃないかなー
    地球探しても見つからなさそう
    かつて地球の一部だった月にならもしかしたらそのままの形で残っているかもしれない

    • +7
    1. ※4
      結局その種がどこから飛んできた以前にどのように発生したかという話なので、地球上のわかっている環境においてその可能性を議論するしかない
      これでもし地球上で最初の生命の形質が割れれば、宇宙のどこかから飛んできたか地球上で発生したかもわかる。ひとまずは地球で発生した前提で原点を探るしかないのだ

      • +3
  4. 濡れたり乾燥したり波打ち際だったりを繰り返す場所で塩基が繋がっていくって話に落ち着いてるもんだと思ってた

    • +4
  5. LUCA(Last Universal Common Ancester = 全生物最終共通祖先)
    恰好よすぎるだろこの学術用語

    • +33
    1. ※8
      非常に厨二心をくすぐられる名称ですな

      • +4
    2. ※8
      隠しダンジョンのラスボスとして出てきそう

      • +1
  6. こう言った議論は幾らでもやって良いと思う。

    • +3
  7. 地球誕生から45億年生命誕生から40億年らしいけど
    最初の生命が生まれてから今まで進化はしてきても新たに
    新しい生命体が生まれたりはしてないのかな?

    • +2
  8. 近代SFアドベンチャーのヒットメーカー、ジェームズ・ロリンズの最新刊がこのLUCAが主題だったわ

    • 評価
  9. 深海の方が筋がいいかな。プール説の人は紫外線に拘ってるけど、当時の地球の湿度は飽和してたはずだし火山活動も活発で、紫外線が透過できるほど晴れていたのかどうか。それに太陽のフレア直撃とか隕石衝突とか、地上のプールでは凌ぎきれない。分厚い海水に守られながらゆっくり進化した、の方がリスクは少ないね。

    • +2
    1. ※16
      私も深海のほうがありそうに思います。
      ただ、大気は可視光に対しては透明ですけど、紫外線に対してはかなり不透明(酸素に吸収される)なので……、と書いたけど、原始大気には酸素は少なくて、窒素と二酸化炭素がほとんどでしたね。 水たまりもアリかと思ったですけど、余計厳しいですね

      • +2
  10. この手の話で進化が出てくるけど
    本当に突然変異だけで進化が成り立つのか
    極めて疑問に思う
    環境が豊かなら進化もおきやすいし
    バリエーションも様々になると思うけど
    人類は50億以上ある人類では突然変異の
    進化のケースはまだ出てない
    (と言うかでてるのかもしれないけど)
    自然突然変異率は1遺伝子当たり
    10万分の1〜100万分の1
    だったと思う、なら進化した人類種が
    いてもおかしくないと思うんだけどな
    進化、進化と言うけど
    実際にはそれ自体
    本当にミステリーだよね

    • -1
    1. ※17
      免疫細胞のレセプターに欠損があってHIVに感染しないとか足の指がカニの爪みたいに二本しかないとか50mの水中で裸眼で物が見えるとか4000m以上の標高で新生児が生存できるとか個体適応ではどうにもならないレベルで特異的な能力を持つ集団が存在しているから人類もまた各所の環境に適応して進化しつつあると言える。

      • 評価
    2. >>17
      数万年のタイムスパンで起こってることをたかだか数十年で観測するのは不可能
      有用な突然変異が起こってもそれが多数派になるには数世代かかるから
      一世代だけでは進化は観測できない
      人類が進化を理解し科学的な記録を残す能力を得てからまだ数世代しか経ってない
      個人的な予測としては、偶然性に頼った従来の進化システムでは
      指数関数的なテクノロジーの進歩スピードに追いつけないので、
      今後はバイオテクノロジーの力を使って自分の意志で進化していくことになると思う
      例えば老化を遅らせ寿命を延ばす、とかね

      • 評価
    3. ※17
      突然変異だけで説明はされてないよ?
      ウィルスによる能力の追加、エラーによるDNAの増幅、子孫個体差による生存者同士の交配が主なとこじゃないすかね

      • -1
    4. ※17
      現生人類に見られる進化の例としては肌の色のバリエーションなんかはそれじゃないかな。もっとこう体のデザインがドカンと変わるような進化が起こらなかったのは、それぞれの環境がすでに適応した生物で埋まってたからじゃないかな。それぞれの環境にライバルがいなかったなら適応放散によってもっとデザインにバリエーションが生まれていたかも。まあそんな状況は大絶滅ぐらいでしか起こらないだろうし、大絶滅が起こってたら人類も絶滅してただろうけど…

      • 評価
    5. ※17
      昔に読んだ本の受け売りだけれど
      人間の進化は既に起きていているけれど、それを普通の人は「奇形」と解釈し(例えば多指)
      「治療」してしまう、だったかな。
      人間の種族別骨格を見ると、差異が出ていて面白いよ。

      • 評価
    6. ※17
      進化を否定もしくは疑問だという人程進化論を理解していないんだよなぁ
      否定する前にもうちょっと勉強しようや

      • 評価
  11. どっちにしろ俺らの先祖様はかつて深海にいたんだろ

    • 評価
  12. クレイジージャーニーであの面白い深海研究者のおっちゃんが言ってたやつだ!
    確か27億年前に酸素が発生したから、それより前の無酸素時代の菌を調べれば生物の起源が分かるって話で
    海底噴出口の高熱の部分だけが地球上で唯一、46億年間無酸素状態を保ってる場所らしい

    • 評価
  13. おそらくこれを目覚めさせると地球の全生命体が終わると思う

    • +1
  14. 地球外生命がいることがはっきりしたら、Universalを別の言葉にしなきゃね

    • +1
  15. むしろ土星の衛星エンケラドスやタイタンなど地球外で見つかるであろう微生物にヒントが隠されているのかもしれない。

    • +1
  16. その前は宇宙を漂ってたのかは知らんけど

    • 評価
  17. 俺は今じゃ生命は化学反応の産物だと思ってる。
    勿論、魂なんてものも無いと思ってる。

    • 評価
  18. UCLAを卒業した俺でも半分しか理解できない論文だぜ・・・

    • 評価
  19. なに、UCLA?
    全生物最終共通祖先ってすごい強そうなんですけど

    • 評価
  20. 凄すぎて何言ってるのかさっぱりわからない。

    • +2
  21. 全生物最終共通祖先とかいう名前から神的な何かを感じる
    僕らの見えないはるか遠くの地から僕らを見つめてそう(中二病)

    • 評価
  22. 祖先なのに最終ってのは混乱する言葉だなぁ
    その辺の矛盾がまさに中二心をくすぐるがw

    • 評価
  23. 難しくてよく分かんないけど、ルカちゃんは凄いのね!

    • +1
  24. 生きてるってなーんだろ
    生きてるってなーあーに?!

    • +1
  25. つまり2つの説を統合すると、海岸線近くに噴火口があって、地獄谷みたいにボコボコ沸いてる泥水が潮の満ち引きで水たまりになったり遠浅になったりしてる所が生命の起源なんじゃない?私天才じゃね?

    • 評価
  26. 半分生きてるって、半数の個体が今でも生存してるって意味かと思ったじゃねーか

    • -1
  27. 原始のスープの中で色々な”膜”が出来、
    膜にまた色々な有機物やリン酸などが出入りすることで多様な細胞が生まれたんだと思う。

    マグマと海水が渦巻くような極限状態であれば様々な有機物が高密度で生体膜に出入りする環境が出来たんじゃないかな
    そうすれば膜に守られて複雑な塩基配列が組みあがる可能性もある

    • 評価
  28. 取り敢えず、生命作り出してから環境推定した方が速そうだな。

    • 評価

コメントを書く

0/400文字

書き込む前にコメントポリシーをご一読ください。

リニューアルについてのご意見はこちらのページで募集中!

知る

知るについての記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。

植物・菌類・微生物

植物・菌類・微生物についての記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。

最新記事

最新記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。